意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。 作:嵐電
『フィードバック(feedback)とは、もともと「帰還」と訳され、ある系の出力(結果)を入力(原因)側に戻す操作のこと。古くは調速機(ガバナ)の仕組みが、意識的な利用は1927年のw:Harold Stephen Blackによる負帰還増幅回路の発明に始まり、サイバネティックスによって広められた。システムの振る舞いを説明する為の基本原理として、エレクトロニクスの分野で増幅器の特性の改善、発振・演算回路及び自動制御回路などに広く利用されているのみならず、制御システムのような機械分野や生物分野、経済分野などにも広く適用例がある。自己相似を作り出す過程であり、それゆえに予測不可能な結果をもたらす場合もある。』
前回書いたフィードバックについての説明だが、これでは余計にわからない。『フィードフォワード』についてはさらによくわからない説明が多かったので割愛させて頂きます。
「光井さんは、エレメンツの末裔だよ」
少佐が、光井さんの事を教えてくれた。僕の光井ほのか評が高いので調べてくれていたようだ。とはいえ、どこで少佐はそれを調べて来たのだろうか。
『エレメンツは、日本で最初に作られようとした魔法師である 。
2010年代から2020年代にかけては4系統8種の分類・体系化が確立しておらず、伝統的な属性、「地」「水」「火」「風」「光」「雷」といった分類に基づくアプローチが有効だと考えられていた時期で、エレメンツの開発も、このコンセプトに従って進められた。
しかし、4系統8種の体系が確立したことにより、伝統的な属性に基づく魔法師の開発は非効率と見做されるようになり、エレメンツの開発は中止され、開発を行っていた研究所のほとんども閉鎖された。
魔法に対する権力者の怖れが迷信的に強かった時代に開発されたため、決して反逆を起こさないようエレメンツの遺伝子には主に対する絶対服従の因子を組み込むことが科学者に命じられていた。
その課題に沿って科学者はできる限りの措置を施した。その影響のためか「エレメンツの末裔」には高い確率で強い依存癖(あるいは忠誠心)が見られる。
エレメンツの血筋は高い権力を有する者にとって大きな利用価値を持つ。』
うーん。予算欲しさとはいえ、研究者達は絶対服従遺伝子なんて存在しそうにないものをどうやって組み込んだというのだろう?依存性の強い魔法師の遺伝子を研究するのが精一杯のはずなのに。当時の魔法研究がいかにいい加減だったか良くわかるエピソードだ。ただ、依存性は体質と関連もある。心理学的な発想だが。
あまりややこしい事を考えなくても、親の依存性が高ければ子供もそうなる確率は高い。これで、魔法師に依存性が高い人物が多い理由もわかったと思う。元々、依存性の高い魔法力を持った人物が用いられたし、そのような性格や体質を持つ魔法師を交配させて魔法師を創り出してきた。
依存性は、仕える主人に対しては忠誠心となって、仕えられる主人には都合が良い。しかし、依存する対象は立派な主人だけとは限らない。つまらないプライドだったり自己憐憫だったりもする。
魔法科高校が一科生と二科生に分けているのは、一科生のつまらないプライドを満たし二科生の自己憐憫を正当化する働きをさせているとも考えられる。
なので、簡単にはなくならない。七草会長が尽力した程度では。
卒業後に、何らかの組織に忠実な番犬になってもらう為の準備でもある。学生の内に独立心を養ってしまうと多くの魔法師が国家や企業の為に働いてくれなくなるかもしれないと魔法師集団を仕切っている頭の悪い連中は考えているのだろう。九島烈とかだ。
ハッキリ言って老害である。目の曇った老人はサッサと引退するべきなのだ。100年先が見通せないただの人に魔法師の未来を委ねてはならない。
まぁ、あと◯年であの世行きだから放っておけばいい。
「師匠!人の寿命がわかるの?」
少佐が、意外なところに食い付いた。
「明日死ぬとわかったら、今日は何もする気がしないね」
「ええっ?!そ、そうかなぁ」
少し、少佐は納得出来ないようだ。
「仮に一年後死ぬとわかったら、やはり今日のやる気は失われる」
「そうね」
「それは、三年後でも五年後でも同じなんだ」
少佐は、何とか理解してくれたようだ。
「だから、人の寿命はわかっていても言わないのが神の世界のルール」
彼女は、自分の寿命が気になったのだろう。彼女には自分の寿命に対する漠然とした不安がつきまとう。しかも、それが全くの杞憂であると否定できないのだ。
「いつ、死ぬのかなぁ」
「これで、60は大丈夫」
僕は、手と腕を太陽に向けて座り直した。
「ホント〜?」
「本当。本当」
「もぉ〜、なんか嘘っぽい⤴︎」
少佐がふくれっ面になった。
他人の寿命がわかるのなら、自分自身の寿命もわかるようになる。先程の理屈から言えば、あと◯年で自分は死んでしまうとわかればその瞬間から全くヤル気が出なくなる、はずだ。
実際に、第六段階(六位階あるいは六位と表現した方が一般的らしいので、以後六位と書く。)に至ったら、普通の人のヤル気はなくなる。普通の人のヤル気は焦りや不安から出ている事がほとんどだ。そういう意味でのヤル気がなくなるのだ。
『心の欲する所に従えども矩を踰えず』
焦りや不安から出た行動の結果は、大概良くない。しかし、今の自分の行動が焦りや不安から出たものかどうかは本人にもわからない。
これは、そうでないものから出た行動は良い結果を出しやすいとも言える。
『君子危きに近寄らず』
『「君子」とは、学識・人格ともに優れ、徳のある人のこと。(☜六位であるのが前提だ。ただ五位でも危険を察知して逃げれば大丈夫。)
「君子危うきに近寄らず」は孔子の言葉と思う人も多いが、これに酷似した言葉は『論語』にはない。
正確な出典は不明であるが、『春秋公羊伝』には「君子不近刑人」とあり、これが元になっているという説がある。
「君子危うきにのぞまず」ともいう。』
世間の解釈とは違うが、孔子が道を得ている前後の話が収められているから論語は貴重であり、同じ理由で福音書も貴重なのだ。
スッカリ話が逸れてしまった。
「私もニブルヘイム出来るようになるかなぁ?」
少佐も、六位の話よりA級魔法師の使う大規模魔法を出来るかどうかのほうが気になるようだ。
「大規模魔法を発動させるのに必要なのは莫大なサイオンだけではないよ。規模が大きければ大きいほど量子力学的な理解が必要なんだ」
少佐は、意味がわからないようだ。
「我々が持っている科学的な知識はニュートン力学に基づいている。だから、無意識のうちにエネルギー保存則に縛られてしまうんだ。『規模が大きいから大変だろうなぁ』とか」
「でも、それって当たり前じゃないの?」
「でも、宇宙の果てとか観測できない程度の微小の世界ではエネルギー保存則は崩れている」
「一応、そう習ったわ」
少佐は、思い出したようだ。
「変な話だと感じるかも知れないけど、『エネルギー保存則』自体が普通の人間の普通の心理状態から出た束縛、つまり不安や恐れなんだ」
少佐は、黙ってしまった。
「だから、エネルギー保存則を気にしないで大規模魔法を発動させる為に不安や恐れをなくしていこうと決心するべきなんだ」
「決心するだけで、不安ってなくなるの?」
「不安や恐れの正体を探るより、よほど効果的だよ。ただ、何に対する不安から無くしていこうとするのかは、座禅の先生の助言をもらったほうが良い」
「え〜ッ」
少佐は、ご不満のようだ。
「例えば、自分の身体に関するコンプレックスは彼氏ができたらすぐに克服出来るよ!」
少佐がギョッとした。
「光をたくさん取り入れられるようになれば、組織の長として立って行くのに不安や恐れはなくなるよ!」
さらに少佐は、動揺した。
「心を読まれるのは、きついわ」
「これが、本当の禅問答」