その女性はあなたに技の指南をしてくれると言った。
この世界に飛ばされて右も左も分からないあなたは二つ返事で『YES』を選んだ。
「まず、技は魔法と特技の二つに大別されるの。魔法は魔力を使って超常現象を起こす。特技は身体を使って科学的な現象を起こす。ここまではいい?」
この世界に飛ばされる前は様々なゲームや小説を嗜んできたあなたの理解は速い。
「魔法は個人個人で使えるものが違うから……基本的に教えるのは魔法の基礎知識とか、魔力の操作になるわね」
女性はそう言うと、荷物から一本の杖を取り出す。
「扱う魔力は大気中の魔力・自分の魔力・自分以外の物質の魔力の三つのうちどれかを使えるの。私は、自分の魔力を使うんだけど―――プチボム!」
女性が杖を振りながら魔法名を唱えると、空間に小規模な爆発が起きる。
「こんな感じ。他にはアイスランド!」
今度は地面から氷の棘のような物が現れる。が、すぐに溶けて水になり、蒸発する。
「見ての通り、魔法で現実に影響を及ぼせるのは一瞬だけ。ただ、大気中の魔力を使うならその大気中の魔力が尽きるまで魔法が発揮され続けるの」
つまり、『魔力が流れる限り魔法は発動しており、魔力の供給が終わると同時に魔法は終了する』ということだとあなたは理解した。
「分かったみたいね。で、次は特技ね。……え、魔力操作のコツ?」
女性はうーん……と考え込む。どうやら、彼女は感覚で魔法を使うタイプのようだ。
「ま、まあ、その―――そう、特技を使うみたいに血液をグワァッてする感じ!」
取り敢えず自分の考えが当たったという事だけ分かったあなただった。
「……えぇと。特技はね、理論上は誰でも使える技なの。例えば魔法だと大地讃頌みたいな地形の上書きとか、メテオクラッシュみたいに宇宙から隕石を呼び出したりする―――みたいな事出来るんだけど、そこに理論も何も無いでしょ?」
地形の上書き……砂漠地帯に使えそう。
あなたはそう思ったが、直後に魔力を流し続ける必要があることに気付いた。
「だけど特技なら―――
女性は近くの木に掌底を打ち込む。と、打ち込まれた場所を中心として木にヒビが入る。
「あっ、危ない!」
女性が走る構えを見せる。
次の瞬間、あなたは先ほど居た場所から数メートル離れた場所に移動していた。
破岩掌によって内部から砕かれた木が崩れ落ちる。
「ごめんごめん。……今移動したのは特技の一つで、縮地って言って比較的簡単に使える奴よ」
縮地も破岩掌も理論自体は実に簡潔。
縮地は『全身の筋肉を最適に使い、高速で走る』
破岩掌は『掌底で生物内部の組織を振動させて破壊する』
「だけど……言わなくても分かるわよね?」
理解は簡単。実行は―――難しい。
「私は一ヶ月でどっちも出来るようになったわ。―――あ、別に自慢してる訳じゃないわ。才能がある人は一目見ただけで出来るようになるし才能が無い人は一生かけても出来ない。人それぞれって事よ」
どうしても色とりどりにならない。もっと……もっとだ!