儚げなその姿はチャンピオンの座を奪われてなお女性プレイヤーを魅了してやまない、あの、お方だっ!
謎のログアウト不能事件から数日が経ったある日のこと、エンデュランスからメールが届いた。内容は至ってシンプルでこれから会わないか、と言った内容だった。
特に断る理由もなかったからマク・アヌの港区の方で待ち合わせることにした。
「改めて久しぶりだね、ライ」
「ああ、久しぶりだな。まさか昔の知り合いにまた会えるとは思ってなかったよ」
「うん、ボクもだよ。それにボクはあんまり人と関わってなかったから。ライが初めて会った昔の知り合いだよ」
「そうか。それでどうだ調子は?」
「悪くは無いと思う。……人間って不思議だよね、一回きりだって分かっててももう一度、って思っちゃうんだから」
「どういう事だ?」
「ボク達が再会した日、あの日みたいにThe Worldにボクがエンデュランスとしてじゃなく、ボク自身が立てたらって思わずにはいられないんだ。……それがいけない事だと分かっていても」
「そうか。……でもなエンデュランス現実もそんなに悪いもんじゃないと俺は思うぞ」
「……でもリアルにはミアは居ないよ。ボクが好きなミアはもうどこにも居ないんだ。だからいっそボクも──」
「なんつーか思考が極端なんだなお前。例えばだ、お前さんがThe Worldをプレイしていなかったとする。そしたらお前、死ぬのか?」
「えっ?……死なないよ。何言ってるのさ」
「そうだろ?じゃあ次の質問だ。ミアはお前が自分で命を絶つのを見て喜ぶか?それでミアは笑顔になるのか?……俺はアイツがそんな性格破綻者だとは思えない。それに一度だけアイツと二人で話した時、お前のこと楽しそうに話してたんだよ。──そんな奴がお前が死んだことを喜ぶと本気で思ってんのか?」
「それじゃあボクはどうすればいいの?……つらいんだ、ミアがいないこの『世界』はとても空虚なんだ、何にも楽しいことがないんだっ!」
「じゃあさ、俺らの仲間にならねぇか?ヤベェのが結構集まってるから退屈はしない筈だぜ?」
そう言い、エンデュランスへ手を差し伸べる。……願わくば手を取ってくれるようにと。
どれくらい、手を差し出した状態で姿勢を固定していただろう。往来を行き交う人の視線が結構辛くなってきた。
「ボクでいいの?」
「あぁ、人は多い方が楽しい」
だから早く手を取ってくれと言外に言い含める。それにこれは自分で考えなきゃいけないことだから俺が手をとるような真似はしない。いや、そろそろ人だかりが出来始めたからそんなこと言える状態でもないかもしれない。
「──わかった。ライが一緒なら大丈夫だよね?」
「任せろ」
「ふふっ、そういう所は変わってないんだね?キミって」
ようやくエンデュランスが俺の手をとる。その瞬間女性プレイヤーからの黄色い歓声が上がった。その理由については思い当たる節が目の前にあるけど気にすることなく@HOMEへ向かう。
途中でバイクに乗って尻ライスにタックルをかまし気持ちを落ち着かせた。まぁ自動で回避されるからあんま意味無いんだけど。
@HOMEに着いたが、どうやら俺たちが一番乗りらしい。
この時間でエンデュランスにこのギルドの活動目的(笑)でも話しておこう。
「えーっとこのギルドはエマ・ウィーラントの黄昏の碑文について研究していこう的なギルドだ。ちなみにもっとちゃんと考察とかしてるギルドが他にあるぞ!」
「ふーん、そうなんだ。ギルドマスターってライなんだよね?」
「そうだぞー」
「そっか、じゃあ何となくだけど納得かな。ここ何だか懐かしい感じがする」
懐かしい感じか。ほかのギルドよりはR:1を意識した内装にしてるせいかもな。
すると、エンデュランスが手を出してきた。握手ってことか?
「これからよろしくね、ライ。ここでならまた楽しかった頃のThe Worldがプレイ出来そうだよ」
「そりゃ良かった。こちらこそよろしく」
本日何度目か分からない挨拶をしてとりあえず他のメンバーが揃うまでお互いぼーっとしていた。
最初に@HOMEへ戻ってきたのは見た目は少年、中身はガチチートコンビだった。
「お疲れ様です、ライさん。……あれ?エンデュランスさんのこと勧誘したんですか?」
「お疲れ〜またおもしろいことしてるんだw」
面白いって酷くね?取りあえずエンデュランスにコイツらの紹介をしておこう。
「エンデュランス、右から欅とクビアだ。欅は月の樹のギルドマスターだから多分知ってるかもな」
「ごめん、ボク興味なくって……」
「まぁそんなこともあるか。二人共、これから仲間になるエンデュランスだ、あんま苛めないようにな」
「「はーい」」
この二人のコンビは本当に息ピッタリで色々不安にさせられるな。
「あっ、どこかで見た気がしたと思ったらエンデュランスって『マハ』の碑文使いのお兄さんか!思い出した」
あっれ〜どうして欅くんはそんなに笑顔になってるんだ〜?おっかしいなぁー。
「お兄さんに宿ってるマハの碑文を抜き取るために一人のNPCが殺されたんだよね〜。確かそのNPCの名前は『ミア』だったかな?」
「──そっか、ミアはボクと一緒に居てくれたんだね。それなのにボクは……」
「なんであのお兄さん泣き出しちゃったの?僕、何がやばいこと言っちゃった?」
「大丈夫だよ、取りあえず今は泣かせておいてやってくれ」
「ごめん、少し取り乱しちゃって。それとありがとう、ミアのこと教えてくれて」
「いいよ泣きたい時は誰でもあるだろうしな」
「僕もただ知ってただけだし、そんなに気にしないで」
「みんなお疲れー!……って何よこの重たい空気!」
「おうお疲れ揺光」
「うんっ!──ねぇ、私の見間違えじゃなきゃ、そこにエンデュランスが見えるんだけど、どういう事?」
「どういう事も何も新しいメンバーだけど?」
「だけど?じゃないわよ!どうして相談もなくメンバー増やすの!?」
「癖で」
「ほんっとバカ!」
「ボクは辞めた方が良いのかな?……ボクのせいで二人が争ってるみたいだけど」
「あぁ、いつもの二人ですからご心配なく。……ほら、もう話も終わったみたいですし」
「……正直、アンタのこと嫌いよ。言いたいことも山ほどある。──でも、これから心を入れ替えるなら仲良くしてあげる!」
「心を入れ替える……?」
「つまりですね、これから仲良くしようってことですよ」
「──うん、これからよろしくね」
( ^ U ^ )美しい友情だな、だが無意味だ。
話の展開上こんなことは起きない。
揺光がボルドーの姐さんにPKされて未帰還者になるのを素で忘れてた作者、感想を見て震える
原作沿いのタグ付けてないし(小声)