提督になったし艦娘ぶち犯すか   作:ぽんこつ提督

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『英雄』の住まう鎮守府 ⑦

 ――夏祭り当日。

 普段の無骨な造りとは一転して、鎮守府内はすっかり祭り模様となっていた。

 

 夏祭りの人混みの中を、一組の男女が歩いている。

 一人は横須賀鎮守府の提督。

 騒ぎを避ける為にいつもの軍服を脱ぎ、甚平を着ている。

 もう一隻は神通で、こちらもまた浴衣を着ており、更には薄くだがメイクもしていた。

 本当は川内も近くにいるのだが、気配を消している為、常人には認識不可能。

 

 これはもしかして、良い雰囲気というやつなのではないだろうか。

 寄り添う様に歩く中で、ふと提督はそんな事を思った。

 

「思ったより盛況だな……」

「恐れながら。提督のご威光を持ってすれば、当然かと」

 

 いや、決して良い雰囲気ではないな。

 恋人同士というには、空気が張り詰め過ぎている。

 先ほどから色々屋台を回ってはいる。

 しかし神通は、提督が何か誘っても「私は大丈夫です。お気遣いありがとうございます」と言った具合に、ちょっと離れた所で笑っているだけだ。

 もしかして嫌われてるのではなかろうか……?

 提督は首筋に嫌な汗をかいた。

 

「……ん?」

 

 歩いていると、提督は見慣れた顔を見つけた。

 いや、屋台を出しているほとんどは艦娘だから、そういう意味ではほとんどが見慣れた顔なのだが……来賓の方で、見慣れた顔を見つけたのだ。

 

「ヤッタ当タッタ! ナニ、棚カラ落チナイト景品ハ貰エナイノカ!?」

 

 ――戦艦水鬼が射的で遊んでた。

 浴衣に着替え、頭にはお面つけ、右手にはわたあめ持ち、左手にはかちわり持ってるが、アレは間違いなく戦艦水鬼だ。

 めっちゃノリノリだった。

 こっちが遠慮しちゃうくらいノリノリで夏祭りを遊んでいた。

 

「提督……」

「私に任せておけ」

 

 心配そうに見つめる神通をよそに、提督は戦艦水鬼に近づき、肩を叩いた。

 

「ン、ナンダ。今イイトコロ――オ、オ、オオオ、オ前ハ!?」

 

 無駄に良く顔を見合わせているせいか、戦艦水鬼は一瞬で提督の変装を見破ったらしい。

 動揺する戦艦水鬼に、提督は優しく微笑んだ。

 

「今日はみんなが楽しむ日だ」

 

 そう言って提督は、自らの財布から千円札を取り出し、戦艦水鬼の手に握らせた。

 

「オ前……イイノカ?」

「今日、私は一般人で、お前は一般客だ。何の心配もないさ」

「ソウカ……。コンナ時、何ト言エバイイノカ分カラナイノダガ――アリガトウ、カ?」

「ああ、それで合っているよ。どういたしまして」

「フッ。人間ノ会話トイウ奴モ、タマニハ悪クナイ物ダナ」

 

 戦艦水鬼はそっと微笑んでから、提督とは違う方向に向かって歩き出した。

 しかし途中で足を止め、振り向く。

 

「オ前サエ良ケレバ、一緒ニ……ソノ、周ラナイカ?」

「そうしたいが、私にも事情がある」

 

 提督は目で神通を指した。

 神通は恐ろしいほどの無表情で戦艦水鬼を見ていた。

 なるほど、これでは命がいくつあっても足りないだろう。

 ――所詮は敵同士、か。

 戦艦水鬼は自嘲気味に笑った後、再び歩き出した。

 「マタ会オウ」とは言わない。

 次会うなら、それは戦場で、敵同士としてだからだ。

 それがほんの少し嫌で、だけど避けられないだろうと思って、しかし再会を楽しみにしている自分がいて――戦艦水鬼は悲しげに笑って、静かに歩き出した。

 

 ――次の瞬間、提督が弾かれた様に走り出した。

 そして戦艦水鬼に追いつき――一瞬の迷いもなく、後ろから思いっきり足払いをする。

 

 ――どちゃ!

 

 戦艦水鬼が見事に、それはもう見事に顔から倒れこんだ。

 かちわりが床にばら撒かれ、わたあめが土に汚れ、お面が割れ、せっかくの浴衣が台無しになった。

 

「神通、やれ」

「御意」

 

 そこで手を緩める提督ではない。

 即座に神通に畳み掛けさせる。

 神通は無言でマウントポジションを取ると、無言で戦艦水鬼を殴り続けた。

 

「ヤメ、オマ! イタイ! ヤメテクダサ……イタッ! 何デソンナニ殴ル!? 私ガ何ヲシタト言ウンダ!?」

 

 神通にぶん殴られながら、戦艦水鬼が叫んだ。

 その声にはあらゆる悲痛が含まれていた。

 しかし、戦艦水鬼に情をかける人間はここにはいない。

 神通はひたすら戦艦水鬼を殴り続け、提督はそれを半笑いで見つめた。

 

「神通、辞め」

「はい」

 

 提督の号令により、ようやく神通は手を止めた。

 戦艦水鬼の上から退き、返り血がついた拳を拭う。

 殴られ続けた戦艦水鬼はよろよろと立ち上がり、涙と血でぐじゃぐじゃになった顔を拭き始めた。

 

「グス、ヒッグ……」

 

 ハンカチを取り出し、涙を拭う。

 痛みと悲しみ。

 しかし次から次へと涙が溢れ出てくる為、一向に拭き終わらない。

 

 そんな戦艦水鬼を見て、提督は下衆な笑い顔をした。

 

「ァ、アアア――アアアアアア!!!」

 

 戦艦水鬼は自分のひたいにつけていたお面が割れている事に気付き、痛む身体に鞭を打って、何とか這いずりながら、お面の元へと……。

 お面の破片を、震える手で何とかかき集める。

 

「グス、グス……ヒッグ………。私、何モシテナイ。ナンニモシテナイノニ………。普通ニ遊ンデタダケダジャナイカ! ナゼダ!?」

「神通、どう思う」

「はい。私達の油断を誘う為の演技と思われます。犬畜生にも劣る下賤な発想……即刻首をはねる事を進言いたします」

「なるほど」

「オイ! ドウ見テモモウ動ケナイダロ! コノ足ヲ見ロ! 私ノ治癒能力ヲ持ッテシテモ治ラナイ程壊サレテルンダゾ! 良クゴミガ取レルブラシ見タイニバッキバキダ!」

「神通、どう思う?」

「はい。本当に動けないのであれば、捕縛の後拷問にかけ、情報を引き出した方が良いかと」

「なるほど」

「鬼カ! 貴様、私ヨリ鬼ダナ! 分カッテタケド!」

 

 提督は考える。

 神通の言う通り、戦艦水鬼を捕まえて、大本営に渡すなりなんなりした方が良いのだろう。

 しかし――

 

「クベェ! オ、オマ、踏ムナ!」

 

 ――面白い。

 

 戦艦水鬼の頬をグリグリと踏みつける。

 戦艦水鬼はありったけ恨みの篭った目で、提督を睨みつけた。しかし、その目にはわずかに涙が浮かんでいる。

 ……ふむ。

 戦艦水鬼をいじめるのは大変に面白い。愉快だ、わはは。

 こんな良いオモチャを、他人に明け渡す?

 馬鹿な。

 あり得ない。

 

 今更だが、提督はクズである。

 今まで自分より下の人間がいなかったせいか、自分より格下の人間を渇望していたのだ。

 戦艦水鬼は正に格好の的であった。

 

「神通、戦艦水鬼を海に捨てて来い」

「御意に」

「チョ、角ヲ掴ムナ! 引キズルナ! 浴衣ガ泥デ汚レルダロ! チャント歩クカラ!」

「む、待て。戦艦水鬼」

「ナンダ!? コレ以上私ニ――」

「餞別だ」

 

 新しいお面を戦艦水鬼に渡す。

 これは善意から――ではなく、完全に打算であった。

 適度に餌付けすれば、こいつはまた来る。その確信があっての行為だ。

 

「アリガトウ……トデモ言ウト思ッタカ!」

 

 流石に、そう甘くはなかった。

 戦艦水鬼は最後の力を振り絞り、提督に反撃。袖の辺りを掴み、思いっきり引っ張ったのだ。結果、提督の服がビリッビリに破けた。

 袖を引っ張ったのに、何故かパンツや靴下まで破けた。

 帽子だけは無事だったが……しかしそれ以外は全部無事ではない。

 

「ふむ」

 

 とりあえず「ふむ」と言っておく。

 こう言うと、なんだかクールで知的に見えるという噂だ。

 

 不意に訪れた、提督の全裸。

 それに一番動揺したのは当の本人である提督でもなければ、意外なことに戦艦水鬼でもなかった。

 

「……ふぇ」

 

 顔を真っ赤にしたのは神通である。

 いつも冷静な彼女が目に見えて分かるほど動揺しだした。

 

「えっ、あの、ごめんなさ――じゃなくて、申し訳ありません!」

 

 神通はワタワタしながら、その場にうずくまってしまった。

 

 ――最初に提督が感じた、張り詰めた空気。

 提督は神通が任務に意気込んでいる為、空気が重いと思っていたが、それは違う。

 そもそも普段から提督の護衛に着いている神通が、今更気を引き締め直すとか、そんな事はあり得ない。

 つまり、彼女は最初から、それこそ提督と同じように、緊張していたのだ。

 夏祭りを一緒に過ごす、という事に。

 

「あー、えっと……神通」

「は、はい!」

 

 空気がいたたまれなくて声をかけてしまったが、何と言ったものか。

 しがない童貞である提督には、上手い慰めの言葉が思い浮かばない。

 それでも、何か言わなければ。

 

「気にするな。誰にでもミスはある。神通も、もちろん私にも」

「そんな! 提督にミスなどあり得ません!」

「あるのだ」

 

 というかミスしかない。

 昨日も布団の中で誤発射してしまったくらいだ。

 ……誤発射。

 その時、提督は閃いた。

 

ミス(誤発射)があるからこそ、成功(性行)が輝くのだ」

「なるほど! 勉強になります」

「そうだ。いつもお前には助けてもらっていたのに、何の報酬も出してなかったな。何かあるか?」

「私などに、そんな……」

「それでは私は、優秀な部下に適切な報酬も渡さない、無能な上司になってしまう。私のためにも、何か欲しい物を言ってくれ」

「それでは……その、頭を撫でてはいただけないでしょうか」

 

 むしろご褒美です!

 女の子に撫で撫でをせがまれる。

 全世界の男の憧れと言っても過言ではない。

 

 顔を真っ赤しにして、恥ずかしそうにする神通。目も少し潤んでいる。

 提督がそんな神通の頭に、手を乗せようとした。その時――

 

 ――神通が吹き飛んだ。

 

「よっしゃ勝ったあああああ!!!」

 

 雄叫びを上げたのは、曙である。

 曙はずっと狙っていたのだ、神通に一撃入れるその瞬間を。

 今日もずっと、曙は神通を尾行していた。

 もちろん、それに気がつかない神通ではないが……提督と話す内に、知らず知らず警戒を解いてしまっていたのだ。

 その隙を見逃す曙ではない。

 すかさずドロップキックをかまし、見事にあてた。

 

 狂喜乱舞する曙。

 事態についていけない提督。

 その提督より更に話においていかれてる戦艦水鬼。

 彼らを、強烈な悪寒が襲った。

 

「曙ちゃん」

 

 ――鬼。

 そこには鬼がいた。

 

「良い一撃でした。ええ、本当に。おかげで目が醒めました。ふふ、ふふふふふ」

 

 これ以上ない程ブチ切れていらっしゃる!

 提督と戦艦水鬼はお互い抱き合いながら震え、曙は最早静かに天に祈った。

 

「提督」

「はい!」

「これから曙ちゃんにお稽古をつけて差し上げようと思うのですが、許可をいただけないでしょうか?」

「もちろんです!」

「良かった――改二実装」

 

 まさかのここで、改二初披露である。

 神通は曙の頭を掴むと、常識外れの脚力で訓練所の方へと飛び去った。

 後に残されたのは、戦艦水鬼と提督のみ。

 

「提督。ここからは私が護衛を変わるよ」

 

 いや、もう一隻いた。

 ずっと気配を消していた川内である。

 

「ありがとう、川内」

「ぜーんぜん。提督の為に働く事が私の喜びだからね。それで、どうするそいつ? 今なら私でも殺せると思うけど」

 

 川内が目線で刺した先には戦艦水鬼。

 戦艦水鬼の戦闘能力は圧倒的だ。

 先程は不意打ちで大破まで追い込んだが、真っ向から相手するのは、川内では手に余る。

 しかし今は、回復してきたとはいえ、中破程度の傷は負っている。川内でも『処理』は可能だろう。

 それが分かっているのか、戦艦水鬼は怯えた瞳で提督を見上げた。

 

「いや、いい」

「りょーかい」

「お前もあれだ、今日はもう大人しく帰れ。曙が神通を抑えてる間に」

「ウ、ウン。今日ハモウ帰ル」

 

 意外なほど素直に、戦艦水鬼は帰っていった。

 

 戦艦水鬼とちょうどすれ違いで、大本営所属の不知火がやって来る。

 不穏分子を捕獲した際、大本営に引き渡す手筈になっている。不知火はその輸送役として派遣されて来たのだ。

 

「何か騒ぎがあったようですが、大丈夫ですか?」

「問題ない」

 

 流石は不知火。

 提督の全裸を見ても、平然としていた。

 思えば不知火と会うときはいつも全裸な気がするが、きっと気のせいだろう。

 

「今日は任務で来ましたが、個人的に貴方にお礼を言いたく、私からこの任務に志願しました。

 あの時は助けていただきありがとうございます。貴方のおかげで不知火は、まだ国に尽くせます」

「気にすることはない。艦娘を助ける事は当たり前のことだ」

「……貴方のような方が元帥なら、提督ももう少し楽になれるのですが……失礼いたしました。今のは失言でした」

 

 五人の元帥の内、“調停”の元帥以外は人格破綻者だと聞いた事がある。

 不知火の提督であり、彼らのまとめ役である“調停”の元帥は苦労しているのだろう。

 

「ところで。一つ、ご報告があります」

「なんだ?」

「この付近で、次々と鎮守府が壊滅している事件はご存知でしょうか?」

「ああ」

 

 三週間ほど前から、横須賀鎮守府付近の鎮守府が壊滅していた。

 しかし、一週間ほど前にピタリと止み、それ以降なんの音沙汰もない。

 その為、事なかれ主義の提督としては、無視していたのだが……。

 

「不知火の提督は、その犯人に心当たりがあるようです。ですが、情報漏洩の観点か、あるいは確証がないためか、その犯人が何者なのか、明かしてはくれません。

 ……気をつけて下さい。最後の襲撃事件は、この鎮守府の付近です。まだ犯人がこの付近にいる可能性もあります」

「忠告ありがとう」

 

 まあ、多分大丈夫だろう。

 この鎮守府には強い艦娘が数多くいるし、現在確認されている深海棲艦の中で最強クラスの戦艦水鬼だって撃退した自信がある。

 

「それからもう一つ。こちらは非公開の情報なのですが、壊滅した鎮守府からは、何故か深海棲艦の死体も発見された(・・・・・・・・・・・・・)様です」

「深海棲艦の死体も?」

「はい。不知火にはその意味が分かりませんが、その事実だけは確かな様です。

 それでは、不知火は失礼します。

 重ね重ね、命を助けていただきありがとうございました」

 

 頭を下げた後、不知火は去っていった。

 その時、何処か遠くの方で爆発音がした。

 今日は花火など上げる予定などなかったはずだが……。

 

 

   ◇

 

 

 暗い海の上を、戦艦水鬼は歩いていた。

 本来はもっと速い速度が出せるが、今日は浴衣を着ているし、何よりお面がある。風で飛ばされでもしたら大変だ。

 

「……ン?」

 

 横須賀鎮守府から少し離れた海岸付近を通過した時、戦艦水鬼の電探に“何か”が引っかかった。

 艦娘でも、深海棲艦でもない。

 しかし、とてつもなく大きなエネルギーを持つ“何か”が。

 

「――艤装展開」

 

 すぐ様、戦艦水鬼は浴衣を脱ぎ捨て艤装を展開する。

 戦艦水鬼の勘が告げていた。

 こいつは敵だ、と。

 そしていかな戦艦水鬼といえど、浴衣を着たまま相手出来る敵ではない、と。

 戦艦水鬼の巨大な艤装が、一気に熱を持つ。

 

 ――次の瞬間、戦艦水鬼は砲撃し“何か”がいた海岸ごと、辺りを吹き飛ばした。

 

 海を蒸発させ、地形さえも変える一撃。

 生物が生きれる余地はない。

 事実、電探も「生物反応無し」と伝えている。

 しかし、どうにも不安が拭えない。

 見えない何かがずっと付き纏っているような、後ろから首筋に剣を当てられているような、そんな感覚。

 

「ッ!」

 

 背後に何かの気配を感じ、戦艦水鬼は咄嗟に裏拳を放った。

 パシ。

 しかし、呆気ないほど簡単に、戦艦水鬼の裏拳は止められた。

 電探に反応がなかったのは――近づかれ過ぎていたから。

 先程まで確かにあの海岸にいた“何か”は、一瞬で戦艦水鬼の背後に回り込んでいたのだ。

 

(コイツ――何テパワーダ!)

 

 戦艦水鬼は拳を引き戻そうとしたが、ビクともしない。

 神通に負けるのは、戦艦水鬼に『技術』がないからだ。

 しかし、単純な性能。

 力や速度や装甲といった基礎能力は、戦艦水鬼が圧倒的に優っていた。

 その戦艦水鬼が、長門型にすら力で勝る戦艦水鬼が、振り向く事すら出来ないほどに、簡単に抑え込まれている。

 

 やがて背後に立つ“何か”は、戦艦水鬼の腕を握る手に力を込め始めた。

 神通の様に『技術』による一撃でもなければ、天龍の様に『武器』を使ったわけでもない。

 単純な『力』だけで戦艦水鬼の装甲を上回り、ダメージを与えている。

 

「アアアァァァァア!」

 

 ベキッ!

 戦艦水鬼の腕が、嫌な音を立ててへし折れた。

 それでも、敵は腕を離さない。

 それどころか、更に強い力を込めて腕を握ってくる。

 

 腕が吹き飛んでもいい。

 戦艦水鬼がそう覚悟し、超至近距離で砲撃しようとした瞬間、先程まであれだけ硬く握られていた腕が離された。

 

 ――ゴシャ!

 

 代わりに、敵は戦艦水鬼の顔面を殴りつけた。

 まるで水切りの様に、戦艦水鬼の体が水面を跳ねて行く。

 たった一撃。

 たった一撃受けただけで、戦艦水鬼は動かなくなった。

 殴打された顔は半分以上消し飛び、自慢のツノも折られた。この感じだと、首も折れているだろう。

 

 水面に漂う戦艦水鬼。

 彼女の顔を、いつの間にか横に立っていた敵が、更に殴りつけた。

 巨大な水柱が立ち――ゆっくりと戦艦水鬼が海底へと沈んで行く。

 

 暗い海の上には、ただお面が一つ浮かんでいた。

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