提督になったし艦娘ぶち犯すか 作:ぽんこつ提督
失ってから初めて気付くモノがある。
例えば昔――俺が住んでいたアパートにはインターホンがなく、代わりにベルがぶら下げられていた。
家を出るたびにカランカラン鳴るし……それに他の住人にまで俺が帰って来た事や外出した事がバレるのは、何となく気持ちが悪い。そんな理由で俺は、あのベルが嫌いだった。
あれは嵐の日だった。
強風に煽られ、家のベルがバカみたいに鳴り響いていた。
鬱陶しい……。
そう思っていると、ふと音が消えた。
次の日見てみると、ベルを結んでいた紐が切れていた。そのままベルは風に乗り、二度と帰らない旅に出たのだろう。
最初は清々した、と思っていた。
実際その後二週間くらいは、実に清々しい気分でドアを開けたもんだ。
しかし一月が経ち――工事も終わってインターホンが取り付けられた頃。俺は奴が恋しくなっていた。
インターホンの出す音は、常に一律の機械音だ。
それに比べて、ベルはどうだ。
俺が不機嫌にドアを強く開ければ、奴もデカイ音を出す。俺が落ち込みながらドアをゆっくり開ければ、奴も情けない音を出す。
俺は奴のそんな所が堪らなく嫌いで、同時に愛していたのだ。
だが、後悔先に立たず。
奴の大切さに気がついた時には、奴は俺の手元からなくなっていた。
それ以来俺は、出来るだけ後悔しないように生きて来た。
しかし、人はそう簡単に変われるものではない。俺は再び、同じ過ちを繰り返した。
俺がその愛おしさに気がついたのは、またしても無くした後だった。
そう、俺は――
――俺はとてつもなくオ◯ニーがしたくなっていた。
提督になる話を受けた時、俺は艦娘をぶち犯すと意気込んでいた。その時、愚かな俺は『女所帯に入る』というメリットばかり見ていて、デメリットの方にまるで目を向けていなかったのだ。
その上、俺が大淀をぶち犯そうとして以来、艦娘達の監視の目が厳しくなった。複数の艦娘が常に俺の周りを取り巻き、一挙手一投足に目を光らせている。
この前の夜など、下着の一つでも盗もうかと部屋を出ると、部屋の前に川内型三隻が待機してやがった。
『何か御用でしょうか?』
白々しい。
俺の行動を読んだ上での張り込みのくせに。
毎夜待機などしてるわけがない、きっとあの夜俺の様子のおかしさに気がついて張り込みしていたのだろう。
俺はとっさに「今から訓練をしようと思ってな」と言ったら、何と「ご一緒します」とか言ってついて来やがった。そのせいで夜通し訓練する羽目になった。深夜二時から明け方六時までだぞ? アホか。
そしてその後も、俺には常に監視の目が向けられるようになった。いや、益々厳しくなったと言っていい。
そのせいで俺は艦娘をぶち犯すどころか、オ◯ニーの一つも出来なくなってしまったのだ。
考えてみても欲しい。
女所帯に男一人。しかも全員美少女と美女と来ている。
当然、性欲が溜まる速度は並のそれではない。
当たり前だ。
男と女、体つきも能力も思考も全く違うのだから。
人種の差別も、経済格差もそうだ。問題提起はされても、解決には至らない。
そこへ来て――オナ◯ーには真の平等がある。
手頃な場所と、一人の時間。
それさえあれば、例え孤独であっても成すことが出来るのだ。
だが今の俺には、手頃な場所も一人の時間もない。
さっき俺はベルの事を話したが、◯ナニーにも似た箇所があるといえるだろう。
自分の好み……趣味嗜好によって、人それぞれのオナ◯ーがある。そこには人種も、性別の壁もない。ただ『己』があるだけなのだ。
それを――全人類に平等に与えられた権利を――俺はこの地球上でただ一人『禁止』されているのである。
――そこで俺は休暇を取る事にした。
二日前、俺は鎮守府付近の海域を解放した。
と言っても狭い範囲で、それ程の功績ではないと思っていたのだが、なんか表彰された。
その際――俺は有給をもらえた。厳密に言うと有給ではないらしいのだが、そのあたりの難しいことはよく分からない。
プライベートで休暇を取るから、お前らはついてくるな。
ざっくり説明するとそんな感じのことを艦娘に言い、俺は休暇を取った。
するとあいつら気の利いた事に、宿と便を取ってくれると言うのだ。俺としてはちょっとした東京観光でも、と思っていたのだが……。
箱根あたりの宿を予約してくれたのだろうか?
ていのいい厄介払いだとは思うが、有り難く受け取っておく事にする。
――次の日。
死ね。
ホント死ね。
あいつら俺のこと嫌いすぎない?
なんかインドに飛ばされたんだけど……。
アメリカやヨーロッパならともかく、インドって。
何すればええねん。
人生観でも変えればいいの?
あの大学生とかがよく言う「インド行ったら人生観変わるよ?」的なやつをやって来いと、そう言いたいのか?
いや、なるほど。
確かに俺みたいに艦娘を性的な目で見る奴はこうなって仕方がないのかもしれないな。
だが、そう素直にインドを楽しむ俺じゃない。
ナンパだ――そう、ナンパしてやる!
外人ってその辺おおらかだって言うし、そうしよう!
よっしゃ、テンション上がって来た!
――次の日。
死にたい。
美人のお姉さんに話しかけたらマッハで断られた。
俺は帰ってベッドに突っ伏した。体にまったく力が入らないのに、何故かチ◯コだけが勃っている。
死にたい。
――次の日。
俺の寿命三年やるから、リア充全員死なないかな。
――次の日。
とんでもないことが起きた。
果たして俺は日本に帰れるのだろうか。
とりあえず、今回の休暇で学んだこと。
俺は二度とナンパをしない方がいい。
【オマケ・神通の“真実”】
・神通は1日に36時間の鍛錬を積む。それも2回。
・深海棲艦が海にしかいないのは、神通が陸にいたから。
・神通の水上移動方法は三つ。歩く、走る、殺す。
・神通は弾を使わず、空砲でヲ級を殺した事がある。
・深海棲艦の死因は四つ。空爆・砲撃・雷撃・神通である。
・実は神通は2年前に轟沈しているのだが、運営側にそれを伝える勇気がない。
・海が何故しょっぱいのか。それは神通の存在を知った深海棲艦の涙で出来ているからである。
・ガダルカナル島の戦いの時、ガダルカナル島は神通と一緒に写真を撮ってもらった。
・世界に光があるのは神が「光あれ」と言ったからではない。神通の探照灯が実装されたからだ。
・駆逐艦は浜辺に落書きするが、神通は海に落書きをする。
・神通は海の上を歩いているのではない。海が彼女の下にあるのだ。
――引用・チャック・ノリスの“真実”