3人は宿屋に泊まり次の日の朝出発した。
「次はどこにいこう?」「この町はどうかしら?」フィリナが地図を指差した。それは海沿いの町であった。「少し遠いみたいだな。歩いて2、3日といったところか」とユードー、「でも海は久しぶりだし、面白そうだわ」
そしてサンクたちはその町を目指して歩き出した。道中はあまり人家もない草原だったが、ちゃんと食料を買いだめしておいたのでそれで料理をしながら生活した。夜はテントでの野宿だった。ポロやチビドラが番犬代わりになってくれた。旅では、たまに魔物に襲われることもあったが、ユードーが追い払ってくれた。
そして歩き続けて3日目のこと、とうとう目指した町にやってきた。「町だ!」「さっそく見て回りましょう!」サンクとフィリナはユードーも誘って町の観光をしようとした。でもユードーは、「おれはいくところがあるから」と1人でどこかに歩いていってしまった。「せっかくパーティなのに」フィリナは口先を尖らせたが、ユードーとは夕方ギルドで待ち合わせることにしてひとまず別れた。
そこで2人は町を観光することにした。浜辺が砂利だったため海水浴はできなかったが、港を見にいったり、店を見て回ったりした。名物である海鮮料理も食べにいき、スープと硬いパン、焼いた海老とか貝とかに舌鼓をうった。
そして夕方ごろギルドへいった。ユードーとも合流し、ギルドマスターになにか依頼はないかときく。するとマスターは、「ちょうどこなしてもらいたいクエストがあるよ」といった。
ギルドマスターは、「実はこの町の海には悪魔がたくさん住み着いていて漁師や浜辺の人間を海に引きずり込んで困ってるんだよ。そいつの討伐をお願いしたいんだ」ギルドマスターは悪魔がよく出没するスポットを教えた。「それで、どんな悪魔を倒せばいいんだ?」「あの海にいる悪魔をどれか1匹討伐してくれば賞金は出るよ」
サンクたちはそれを聞き、その依頼を引き受けた。
ギルドを出て、「じゃあ今度は海へいって悪魔退治ね!」「きょうはもう遅いから、明日の朝いこうぜ!」「うん」そして3人は宿屋に泊まり、やがて朝になった。
サンクたちはさっそくいわれたスポットにいってみた。「このあたりでいいのかな?」とりあえず浜辺のあたりを歩き探してみたが、特に変わったものは見当たらなかった。
「いないな……悪魔」
「まだ探し始めたばかりだわ。もうしばらく待ってみましょう」
サンクたちは浜辺で1時間ほど待ってみたが、なにも出てこなかった。
「ちっとも出ないぞ、ここにはいないんじゃないの?」
「うーむ、もう少し違う場所を探してみるか」すっかり飽きて、格闘技の修行をしていたユードーがいった。
そこへ、老人と小さな男の子が歩いてきた。
「あんたたち、さっきから長いことそこにおるようじゃが、いったいなにをしとるのかね?」と老人。「このあたりは悪魔が出て危険だからすぐに立ち去ったほうがいいぞ」
「おれたちその悪魔を探しにきたんだ。おれたちはギルドメンバーで、悪魔の討伐にきたんだよ」とユードーはいった。
老人は「ほほぅ!悪魔を討伐にか!それはありがたい!」「おじいちゃん、この人たちが悪魔をやっつけてくれるんだね!」と男の子。
「でも、探してもなかなか見つからなくて、まだぜんぜん討伐できてないんだ」とサンク。
「悪魔は浜辺より沖のほうがよく出る。どうだろう?わしらは船で釣りに出たいと思っとったんじゃが、お前さんたち、わしらの護衛についてきてくれんかの?ひょっとしたら悪魔が見つかるかもしれんぞ」「えっ?」
こうして、サンクたちは船で沖のほうを探しにいくこととなった。
じいさんは船着場に案内した。
「これがわしの船じゃ」
見た目はただのボートだが、念動力が搭載されていて、船足も結構速いそうだ。
じいさんが操縦し、船は沖のほうまで進んでいった。じいさんの話によると、近頃海に悪魔が増えてしまったそうで、大型の船に乗る漁師たちはギルドメンバーに護衛を頼んだり、自身で悪魔と戦ったりして漁に出るのにさほど支障はないが、自分たちみたいな個人で漁をしたいものはなかなか漁に出られないといっていた。
やがてじいさんはボートを止め、釣竿を取り出し、釣りをはじめた。男の子はサンクの魔物を気に入り、一緒に遊んでいた。
サンクたちはじいさんにオールを借りて、あちこち探してみたが、やはり悪魔は見つからなかった。
「うーん、沖まできてもなかなか見つからないな」
退屈した3人は、じいさんから釣りをすすめられた。
「ちょうどいい!これで今夜のおかずを釣ろう!」ちょうど3人の泊まる宿にはキッチンもあった。
3人も釣りを始め、魚を何匹か釣った。
すると……遠くのほうでなにか水しぶきがたち、動いているのに気づいた。
「なにかしら?」「さぁ、なにかあるのかな?」「いってみよう!」ユードーはオールをこぎ、そこへ向かった。
すると、魚の群れと大きな魚人のようなものが暴れている様子が見えた。どうやら魚人は魚たちを棒でつつき、いじめているようだ。
「あれは!」
「なんだ!?魔物か!?」
「魚のほうは魔物だけど、あの棒を持ってるほうは……悪魔だわ!」
じいさんは悪魔を見、「サハギンだ」といった。
「くわしいですね」
「もしかしてよく出るんですか?」
「あぁ、倒してもまた発生する」
魚はサハギンに反撃して水を吐きかけたが、まるで効いておらず、サハギンの棒に叩きのめされた!
「ああっ!」
「ひどいわね」
「悪魔はたまに魔物もいじめるんじゃ」
「すぐ討伐しよう!」と戦闘の準備をした。
ユードーはボートのへりに立ち、構えた。
「じいさん!もっと悪魔に近づいて!」
「ムチャいうな。船が壊されるわ!」
「わたしに任せて!」
フィリナは杖から光を出し、攻撃した。悪魔はそれを受け、「ギャアッ」とのけぞった。
「わあっ!すごい!なに!?いまの!」と男の子。
「エスパー技のライトアタックよ。わたし、エスパーなの」とフィリナ。
「この距離じゃ攻撃しずらいぞ、チビドラ!空を飛んでそいつに火を吐くんだ!」
「ギャッ!」
チビドラはパタパタ空を飛び、火を浴びせた!悪魔はダメージを受けたが、水を吐いて反撃!チビドラはあわててよけた!
「サンク!チビドラは水に弱いわ!」
「わかってるよ!」
サンクはあせった。でも危険なのでいったんチビドラを戻すサンク。
「おれは泳ぎに自信がある!ここはおれに任せろ!」
ユードーは海に飛び込み、悪魔を殴りにいった。ポロもいっしょに飛び込み、悪魔に噛みついた!「ハーッ!」ユードーのパンチが命中し、クリティカルヒット!悪魔は逃げ出そうとする、フィリナは宙に浮いて、悪魔の前に通せんぼした。
「逃がすもんですか!」
そしてエスパー技で攻撃!ポロも噛みつく!ユードーも泳ぎながら、悪魔にラリアット!
飛んでいく悪魔。
悪魔はまた水を吐いて反撃し、それがポロに命中し、「キュウンッ!」「あっ!ポロ!」遠くに飛ばされ沈み、フィリナが助けにいき船に戻した。そしてまた「ホワイトブラスター!」と攻撃!
ユードーも、パンチで攻撃した!悪魔も応戦し、ユードーと水上での格闘技をしていた。しかし、水上の動きは圧倒的に魚人の悪魔のほうがよく、ユードーは苦戦した。ユードーはいったん船に戻り、「ううむ、水のなかでさえなければ倒せる敵なのだが……」と苦しげにいった。
その間フィリナが次々にエスパー技で攻撃し、悪魔はどんどんダメージを受けていった。
「やったぞ!フィリナ!だいぶダメージを受けてるぞ!」
「ええ!」とフィリナ。
「こりゃ今回はフィリナの手柄かな」
だがフィリナは、ふとなにかに気がつくと、ボートに戻ってきた。
「どうしたんだよ?」
「MPがもうなくなりそうなの、きょうは浮いて戦ってたから減りが早かったみたい」
「なんだって!?」
悪魔はこちらに向かい、水を吐いてきた!
「わぁーっ!」「逃げて!」ボートは水をぶつけられ、「うわあっ」大きくゆれ、危うく沈みそうになった。子供が泣いていた。
「おのれ!」ユードーはまた水に飛び込み悪魔相手にやりあうが、やはり泳ぎながらでは戦いにくそうだ。
「あっ、やられちゃう!」
ポロも飛び込もうとするが、あわててフィリナが止めた。
「ダメよ、もしまた飛ばされたら、もう念力が使えないの」
このままでは悪魔は倒せずユードーも倒れてしまいそうだった。
「今回は引き返すしか……」
と、そのとき、さっきの魚たちがやってきて、サンクたちの前にきて張り切っていた。
「あっ!」「さっきの魚たち!」
ユードーは悪魔にぶっ飛ばされ「うわあっ」と倒された。そこを魚の1匹が助けにいき、つかまらせ、ユードーをボートまで運んだ。それを引き上げるサンクとフィリナ。
「そうか!お前たち手伝ってくれるんだな!よぉし!みんな!その悪魔に体当たりだ!」
魚たちは怒涛のように悪魔に体当たりしていった。悪魔は次々と攻撃され「グォアッ」とうめき声をあげた。
悪魔は持っていた棒を振り回し、魚たちはあわてて逃げ出した!そして悪魔は大きく上体を動かし巨大な津波を起こした!魚たちは波をかぶり流されていった。
「う~ん、あれじゃ近づけないな」
困るサンクたち、と、サンクは、「そうだ!」と思いついた。
「みんな!その悪魔の周りを泳いで回るんだ!」サンクは指示した。
魚たちは、いわれるまま悪魔の周りを回りだした。すると、海に渦ができ、悪魔が巻き込まれてぐるぐる回った。
「ようし!」
悪魔はからだが回転するうちに目を回してしまった。
「いまだ!体当たりで攻めるんだ!」
魚たちは次々と体当たりしていった。そのうちに……
「グッ……グゲーッ!」
悪魔のからだが消え、魔石に姿を変えた。
「おっとあぶない」
ユードーがあらかじめ用意しておいた網で魔石をキャッチした。
「悪魔がドロップアイテムで棒も落としていったが、まぁ、あれは買い手がなさそうだしほっとこう」
「お前さんたち、よぉやってくれたの、またうちの町の悪魔退治をよろしく頼むよ」とじいさん、「ぼく、ギルドの人が戦うところを見たのは初めてだ!すごかったよ!」
男の子は興奮していた。
ボートは船着場に着き、サンクたちはボートから降りた。
そして釣った魚を貰う。
「いやー、クエストもこなせたし、食料も手に入ったし、よかったよかった」ユードーは魚の入った箱を見て満足そうだ。
「でも、だいじょうぶなの?さっきずいぶん悪魔に殴られてたけど」とフィリナ、「なぁに、ちょっと休んだらもうだいぶ回復した」とユードー。「ただし、服はすぐに乾かしたい」「だったら、あの浜辺で焚き火をすればいいよ、チビドラの火で」とサンク。
そのとき、そばの海から水音と、「ピルル……ピル……」という声がした。「ん?」振り返ってみると、港にはさっきの魚の魔物がいた。
「あっ!さっきの魔物!」「ついてきてたのか!」
サンクはしゃがみこんだ。
「一体どうしたんだ?」
魔物はピチピチと飛び跳ねて、笑顔でなにかを訴えている。
「……もしかして、おれたちについてきたいのか?」
魔物はうなずき、「ピルーッ!」とないて飛び跳ねた。魔物はさっきのサンクのバトルにほれ込み、ついてきたのだった。
「う~ん、でも困ったな、魚の魔物じゃ一緒に歩けないぞ」とサンクは考える。
フィリナが、「だったらバッグのなかに入れればいいわ。そのバッグは冒険者仕様でしょ?」
「まぁ、一応そうだけど……」
実はこの世界のバッグはただのバッグではなかった。入れたものがぶつかり合ってつぶれることはなく、入れたものをベストな状態で保存してくれ、入れたものを瞬時に容量圧縮してくれるのだ。便利なので冒険者以外にも広く愛用されていた。
「水がなくてもバッグのなかなら平気なはずよ」
「そうか、ようし!じゃあお前も一緒にいこう!」とサンクはいった。
魔物は「ピーッ!ピルルッ!」と手をバタつかせて喜んだ。
「それじゃあ、この魔物にもなにか呼び名がいるな」とサンク、「この子の名前、ピスクアランっていうのはどうかしら?」とフィリナ、サンクはちょっと身を引きつつ、「赤い魚だからアカザカナって呼ぶ!」といった。
「なっ!アカザカナ!」サンクは魔物を海から引き上げ、魔物も喜んでいた。
「ホラ!」フィリナはちょっとつまらなさそうだったが。
そしてサンクはアカザカナをバッグに入れ、次は浜辺でチビドラの火で焚き火をした。からだを乾かすユードー。
そしてギルドにいき、魔石を渡す。ギルドマスターは魔石をモノクルで確かめ、「ご苦労。これは間違いなくこの海の悪魔だ。サハギンだね。報酬を支払おう」と報酬をくれた。サンクたちは喜び、宿屋に戻った。ギルドを出た後、ドアのガラス越しに、ギルドマスターが奥の部屋に入りながらニタリと笑っているのが見えた。
宿屋に戻るとキッチンで料理をし、魚のフライの甘酢がけとか香草焼きとかにしておいしく食べた。