プチファンタジー・ストーリー   作:クリステリアン

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第19話 恋という気持ち

 4人は町に戻り、ギルドの職員に剣を渡し、報酬を得た。

 そして次の日、彼らはまた旅立った。

「この町から西といっていたな。ひとまずこの町あたりを目指そう」

 地図を指差し次にいく町を決めて西へ歩きだした。途中には小さな村がいくつかあり、それらの村のギルドでもクエストを引き受けこなした。そんななかで、とある村人の話を聞き、「ここだよ」占い師がどこにいるかを教えてもらうことができた。4人は正確な場所がわかり、ますます張り切って先を進んでいったのだった。

 

 

 

 そして、その途中にある町へと立ち寄った4人。町をいろいろ見て回った。

「少しのどが渇いたわ」

「ここで休憩しよう」

 休憩がてら喫茶店に入ることにした。カララン、とベルがなり、ドアが開くとちょうど出ようとしていた男女と鉢合わせた。男の人は立ち止まり、ポカンとし、顔を赤らめフィリナの姿を見ていた。女の人はそれに気づき、フィリナの姿を眺めると、「ふんっ」と男の人を引っ張り出ていった。またベルが激しく音を立ててドアが閉まった。

「なにを怒ってるのかしら?」フィリナは不思議そうにいった。「フィリナ、座ろう」サンクがフィリナを席に連れていった。そしてケーキやお茶などを頼み、しゃべったり、食べているうちにみんなは笑顔になっていった。

 

 店を出て、歩いていくとギルドを見つけた。4人はまた依頼を受けにいくことにした。ギルドに入ると、1人の青年がギルドマスターと思わしき男と話してるのが目に入った。

「ギルドマスター、と、いうわけで人手が欲しいのです」

「わかった。で、どこの山だっけ?」

「南にある雲の台座です」

「おい、あそこは最近大型の悪魔が現れだしたと噂がある山だぞ!」

 サンクたちは、なんだろうとその話を聞いていた。ギルドマスターはギルド内の人々に向かって、「これから遭難者を捜索するため雲の台座までいってくれるものを求めている!だれかいないか!?」みなを見回した。あたりにいた人たちは、「雲の台座だって?」「あそこは最近強い悪魔が出るって噂が……」ざわざわと騒ぎ出した。サンクたちもその話に興味を持った。ほかのギルドメンバーたちは、雇用時間や報酬などについてギルドマスターにきいていたが、答えを聞いて去っていく人もちらほらいた。サンクたちは、目と目でお互いの顔を見やり、そしてうなずいた。ギルドマスターに申し込みにいった。結局、サンクのパーティをいれて計8人がその依頼を引き受けることになった。4人はその依頼が面白そうだったから引き受けたのである。

 

「もう少しで馬車の用意ができる。そしたらみな山へ向かうように」とギルドマスター。「たしか、山で遭難者を見つけるんでしたね?」とラファエロ、「そうだ、こちらのエリアスさんが依頼者で、うちのギルドに頼みにきたのだ。なんでもきのうから行方不明なんだって?」「ハイ、彼女は友人たちと山登りに出かけたのです。ついさっき彼女の友人たちが帰ってきて彼女が山から戻らないと知らせてきたのです」「よし!なんとしても見つかるよう、うちのギルドの力を尽くしますよ!」とギルドマスターはいった。うん!とみんなもうなずく。

「みなさん!山に、ぼくも連れていってください!」と青年。「ええっ?でも危険ですよ!?」ギルドマスターは驚くが、「かまいません、ぼくも捜索に加わって彼女を救いたい」そしてエリアスは顔を赤らめ、「恋人、なんです……」といった。

(恋人!!)そのフレーズにフィリナは胸を高鳴らせた。

 あれが噂の恋!!昔読んだ絵本や、小説を読んでいるとその言葉がたまに出てきたので、言葉だけは知っていた。でも、その気持ちはフィリナにはよくわからなかった。

 フィリナは、人の気持ちを敏感に察することができたが、なぜか恋愛については鈍感だった。自身がだれに好かれていようと、だれがだれを好きであろうとまるで気づかないタイプであった。自分の周りに同世代の女の子が集まらない理由にも気づいていなかった。

 ギルドマスターは、「そうですよね……まぁ、ギルドメンバーと一緒ならだいじょうぶでしょう!」サンクやユードーたちも口々に、「そうですよ!」「あんたも自分の恋人が心配だろうし、一緒に探そうや」といった。「ありがとう!よろしくお願いします!」エリアスは真剣な様子で頼み込んだ。「えぇ!任せて!」とフィリナも答える。フィリナにも、先ほどからのエリアスの様子を見て、エリアスがとてもその女性のことを大切に思っていることが伝わっていた。それで、フィリナはその恋人(女性)はきっとエリアスにとってとても仲のいい友達なんだろうと解釈した。たしかに、自分も一緒にパーティを組んでいる仲間が危険な目にあえば、同じように心配するだろう。

 

 そうこうしているうちに馬車の用意ができて、ギルドメンバーたちはそれで山まで向かった。雲の台座という山まではだいたい1時間ほどで着いた。

 

 一緒にきたギルドの職員が、「これが見つけなければいけない女性のリーズさんだ」と写真を渡してくれた。「それから、これも」とペンダントも渡された。五芒星の真ん中に石が埋め込まれたペンダントだ。「なんですか?コレ」「このペンダントを持つもの同士で声を伝え合うことができるんだ。これで連絡を取り合ってくれ」

 ギルド職員はエリアスから話を聞き、だいたいリーズがどのあたりを山登りしていたかを聞いた。

 職員のうしろにいつのまにか鳥型の魔物が4匹いた。「それは?」サンクは不思議そうにきく。「この魔物たちに空から遭難者を探させるのさ。4匹しか集められなかったけどな」魔物たちはあまり人から離れないよう気をつけなければほかの魔物に食べられるかもしれないし、残念ながら限られた人のいうことしか聞かないらしい。ギルドメンバーたちは職員からいろいろ注意事項などを聞き、さっそく探しに出かけた。

 捜索は、二手に別れてすることになった。サンクたちは徒歩だが、ほかのギルドメンバーのなかには大きな魔物に乗って捜索に出かけるものもいた。それを見てサンクが、「ああっ!いいなー!あれ!」と騒いでいた。エリアスはこちらのパーティに加わり、一緒に山を捜索することになった。

 

 山を歩く。「おーい!リーズさーん!」「我々はギルドの捜索隊でーす!」ときたまあたりに声をあげてみたが、なんの返事もない。エリアスはふうっとうつむいた。ユードーは、「あんたも辛いな、恋人が山で行方不明なんて」「はい、一刻も早くリーズが見つかって欲しいですよ」ユードーはフィリナとラファエロのほうを振り向き、「フィリナ、ラファエロ、お前ら超能力で場所がわからないのか?」ときいた。「ええっ?それは……」ラファエロは困り、フィリナは、「これだけ広い山から人1人を見つける能力なんて持ってないわ」といった。「ちっ、なんだよ、使えねーな」というユードーに、またフィリナはムカッとして顔をゆがめた(ギャグ顔で)。

 

 山のなかではたまに魔物に出くわして、サンクたちは魔物にリーズの居所を知らないかきいてみたりしたが、反応はなかった。たまに襲ってくる魔物もいたので追い払わねばならないこともあった。エリアスはますますリーズが心配そうだった。何時間かたつと、首にかけていたペンダントが震え、声が聞こえた。だがそれは、この方面を探したけどいなかったというギルドメンバーからの連絡であった。

 

 

 

 山道を歩き回り、サンクたちはくたくたになってしまった。あたりもすっかり暗くなっていた。

 サンクとフィリナは座り込み、「ふぅ、疲れたー、お腹もすいたよー」「もう暗いもの、当たり前だわ」すでに元気もなくなり、あまり歩かなくなっていたが、エリアスはいまだ精力的に歩き回り、リーズの名を呼んでいた。エリアスはユードーとは違って体力に特に優れているわけでもなく、疲れているはずなのに。サンクたちはそれを驚いた気持ちで見つめていた。

「リーズ!」エリアスはあたりに呼びかけていたが、『助けて!!』そのとき、そんな声がした。エリアスはハッとして立ち止まった。「リーズ……」

 サンクたちはそんなエリアスに気づき、「?」「どうかしたんですか?」ときいた。

「いま、リーズが助けを求める声がしませんでしたか?」

 4人は顔を見合わせ、「聞こえたか?」「ううん」と首を横に振った。

「いや、たしかにリーズの声が聞こえた!こっちです!」ダッと走り出すエリアス、4人は驚き、ユードーと、続いてラファエロも後を追った。座っていた2人もあわてて立ち上がり、「ひいっ、待ってー」と疲れていた足を無理やり走らせ後を追った。

 

 しばらく走ると、木々の間になにか大きなものが動いているのが見えた。さらに走り近づくと、それがなんなのかわかり、みんなはあっと驚いた。恐竜だ!翼こそ持たないがドラゴンだ!

「だれか、助けて!」恐竜の向こうから女の震えるような声が聞こえた。

「リーズ!」エリアスは叫んだ。

「エリアス!」リーズもそれに気づき、こちらを見た。エリアスはあわてて駆け寄った。恐竜はそれに気づき、ギロリとした目で振り向いた。いこうとするエリアスの腕をユードーはあわててつかんだ。「危ないな、むやみに近づくもんじゃない!」「でもっ、リーズがっ……!」なおもいきたそうなエリアスに、「あれは悪魔だわ、人に危害を加えることを戸惑わない、ケガじゃすまないかもしれないわよ!」とフィリナ。

「おれが助けに向かうから!」ユードーは勢いよく飛び上がり、「ハアアッ!」思い切り飛び蹴りした!しかし、大きな恐竜の悪魔の硬い皮膚にはあまりダメージを与えていないようだ。「グアアッ!」悪魔は手を伸ばし、ユードーを潰そうとする!「うわっ!」ユードーは素早く飛び避けたが、ドォォンと大きな音を立てて手が振り下ろされた。あたりの木々が少し揺れている。「……すごい力だな、こりゃ一撃でも食らえば命が危ないぞ……」サンクたちも息を飲む。

 悪魔は雄たけびをあげ、「グァア!」とこちらにやってきた!「うわあっ!!」みんなは後ろに逃げ出した。おかげでリーズと悪魔との距離ができ、リーズは少し安全になったが、またドシンと悪魔は腕を振り下ろす!!「こっちだ!」ユードーはエリアスの腕を引っ張り、みんなはあわてて離れた。リーズは心配そうに見ている。

「くっ」ユードーは構え、フィリナとラファエロも杖を取り出した。「タアァ!」ユードーは敵の動きに気をつけながら攻撃をはじめ、フィリナとラファエロも技を出し始めた!「ハイスピード!」ラファエロはユードーに杖を向ける。「おっ?」ユードーは自分の動きが素早くなったことに気づいた。おかげで、めったなことでは敵の攻撃を食らわないようになった。

 サンクは、あんな大きな悪魔に自分の魔物を向かわせることを躊躇していた。「あっ!ほかのメンバーにこのことを知らせないと!」サンクは気づいて首にかかる通信機を手に取り、「あのー、すみません!聞こえますか!?」と声をかけた。フィリナが、「サンク、その真ん中の石を押して声を伝えるのよ!」と教えた。「えっ?あぁ!」サンクは真ん中の石を押し、呼びかけてみた。フィリナは再び戦いだした。

「聞こえますか!?あっ、おれたちさっき探してたリーズさんを見つけたんです!」

『なに!?本当か!?』

「ハイ!でも大きな悪魔も一緒にいていま大変なんです!」

『大きな悪魔だって!?』

「だからいますぐここにきて力を貸して欲しいんです!」

『わかった。いまそっちへ向かう!』

「場所は……」

 サンクはどう説明しようか迷った。

『それはわかるからいい。このペンダントがつながってるから』ガチャ、と通信は途絶えた。エスプを込められたペンダント同士は反応しあうことでどこにあるかがわかるのだ。

 ユードーたちは攻撃を続けていたが、まだあまり悪魔が弱っている様子はない。

「ギャッギャッ」チビドラはサンクを見上げ、悪魔を指差した。「チビドラ、いきたいのか?」うなずくチビドラ、「う~ん……まぁ、チビドラは空を飛べるからだいじょうぶかな?よおし!チビドラ!いけっ!気をつけろよ!」「ギャッ!」悪魔に向かい飛んでいくチビドラ、「ワウッ!」ポロも向かおうとするが、「ポロは危ないからダメだ!踏み潰されるかもしれないんだぞ!」と止めた。「クゥ~ッ」残念そうなポロ。

 ユードーは悪魔のからだにパンチやキックを出し続け、フィリナとラファエロも攻撃とサポートをした。チビドラも技をかけてもらい速さが増していた。サンクも、「チビドラ!右だ!いまだ!火を吐け!」いろいろと指示を出し攻撃させた。「ギャアァ!」悪魔は顔にチビドラの火を受け叫び、苦し紛れにドシンドシンと走り出した。

「わっ!!」そちらにはエリアスがいた!ハッと振り向くみんな。エリアスは恐れ、逃げ出そうとしたが足がうまく動かない。「ダメッ!」そのとき、その声とともにリーズが後ろから恐竜悪魔の尻尾に飛びつき必死で止めようとしていた。4人はその行動に驚いた。悪魔はそれに気づき、ブンッ!と尻尾を振った。「キャアッ!」「リーズ!」思いっきり飛ばされたリーズだが、「念力!」地面に叩きつけられる寸前でフィリナはリーズのからだを受け止めた。ユードーは、「2人とも!もっと離れて!」と悪魔から遠ざけ、また攻撃を始めた。

 そのうちに、もう1組のギルドメンバーたちがやってきた。悪魔を見上げ、「こいつが近頃この山に出るっていう悪魔か……」「よぅし!やるぞ!みんな!」彼らは剣を取り出し攻撃したり、なにか銃のようなものを取り出し、技を放ったりしていた。悪魔はすでにたくさん攻撃を受け、もうだいぶ弱ってきていた。「みな!離れよ!」エスパーと思わしきロッドを持ったじいさんが叫んだ。みんなはその声に気おされて悪魔から離れた。

「テンペスト!」悪魔の頭上に渦が巻き起こり、続いてすごい風がからだを駆け巡った。「グァァ……」風の音のなかに小さくうなり声が聞こえ……シュウッと悪魔は姿を消した、いや、特大の魔石に姿を変えた。悪魔は風属性最強技によって倒されたのだ。嵐が収まり、みんなはホッとした。

 

 エリアスは、向こうにいるリーズのところまで走った。

「リーズ!」

「エリアス!」

 エリアスも、リーズの元まで走り出す。そして、抱き合った2人。エリアスはリーズのことを両手でしっかり包み、リーズはそんなエリアスの胸に顔をうずめ安心したようにからだを預けている。みんなはそんな2人に、よかった……という思いで見守ったのだった。

「……」

 涙を流すリーズに、エリアスはそれを指ですくい、優しい目で見つめていた。……フィリナは、そんな2人にただただあっけに取られたように眺めていた。その2人の様子……友達とはなにか違うような、それだけではないなにか不思議なものを感じた……。フィリナは思わず惹きつけられてしまった。

 そんな空気を打ち破るようにギルド職員が、「いやー!みなさん!遭難者の発見のみならず、悪魔の討伐までどうもお疲れ様でした!その分の特別ボーナスもしっかり出ますからね!」とニコニコしながらいった。みんなはワアッと喜び、お互いの顔を見合わせた。

 リーズがやってきて、「今回はわたしがうっかりと山道を離れてしまって遭難してしまったのです、ご迷惑かけました」と申し訳なさそうに頭を下げた。「あっ、いえいえ、気にしないで。あなたのおかげで悪魔も見つけられたことですし」と手を振る職員、「あの悪魔はうちのギルドでも近々倒そうと思ってたんですよー、さて、あれは……」職員は先ほど悪魔がいた場所を見にいった。そしてしばらくすると、「うほっ!こっ……これは……!この大きさ……!マッマスターに……!!」魔石を持ち、なにやら興奮していた。

 

 もう時刻は遅く、馬車を呼ぶのは無理だった。みんなは、山小屋があったのでそこで泊まっていくことにした。ギルド職員はどこかこそこそして、ギルドメンバーから話しかけられても適当な返事しかしなかった。エリアスは、リーズの肩を抱き、小屋まで連れていった。フィリナはまだ先ほどの2人のことが頭を占め、ぼんやりとそれを見ていた。サンクが、「? フィリナ、いこーぜ!」といった。「あっ、うん!」気づいてついていくフィリナ。

 ……先ほど──エリアスはリーズが助けを求める声が聞こえるといった。当然あの距離だ、本物の声である可能性は低い。でも、エスパーであるフィリナにはそんなものは伝わらなかった。

「わたしにも聞こえなかったのに……」フィリナはポツリとつぶやいた。

テレパシー

 目の色こそ水色だったが、エリアスは別にエスパーではなかった。にもかかわらず先ほどはエスプを発揮したのだ。おそらく、リーズを思う、恋という気持ちが──。フィリナはきょう恋とはどういうものなのかちょっとだけわかった。

 

 

 

 後に、テレパシーというのは愛し合うものほど伝わりやすいのだ、ということをフィリナは知る。

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