プチファンタジー・ストーリー   作:クリステリアン

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第33話 エスパーの代償

 次の日は、町を出発し、またコンパスの示す北のほうへと向かっていった。町を出ると草原や、所々畑が広がっている。遠くには森や山が見える。

 一行は昼前次の町に到着した。

 昼食をとってからギルドにいって仕事を探す。受付へ依頼を聞きにいこうとすると、ある男が受付嬢と話をしていた。

「なぁ、頼むよ!紹介してくれないか!?」

「そういわれましても…この町のギルドではなかなか該当する人がいなくて…」

 なんだ?と4人はそれを見た。

「いまちょうどうちの診療所でケガ人がいて治療のできるものが必要なんだよ!うちの治癒師だけじゃ人手が足りない!」

 男はさも困っているというように必死にいった。

「こちらも探してみたのですが、いまは紹介できる人はいないのです」

 そういわれ、男はガッカリとしているようだ。それを聞いていた4人。ラファエロは、「あのぅ、もしかしてケガの治療ができる人を探しているんですか?」

 男は振り向いて、こちらを見た。

「ぼくは回復術が使えるのでケガ人の治療もできるのですが。ケガを治せる人が必要なんですよね?」

 男はバッとラファエロのほうへくると、「手伝ってくれるのか!?」と叫ぶ、「えっ、えぇ…お困りなようなので」

 男から話を聞いてみると、この男は診療所のものだそうだが、いま診療所の治癒師たちが出払っていて人手が足りないらしい。ケガ人も次々くるから困っているそうだ。

 受付嬢は男に頼まれてラファエロのことを調べると、ラファエロは診療所を手伝うに十分な能力を持っていることがわかった。

 男は喜びラファエロは正式にその依頼を受けることとなった。ラファエロは男といろいろ取り決めた。診療所の手伝いは1人いればだいじょうぶだそうだ。ラファエロはいまから、男と一緒に診療所へ向かうこととなった。

 

 残されたサンクたち3人は、自分たちも仕事を探さなければ、と思い、受付嬢になにか依頼はないかきいてみた。受付嬢は3人のことをプレートで調べ、いまちょうどお願いしたいクエストがあるといった。なんでも、この町の西のほうの谷で、最近強い悪魔が現れたと付近の村から討伐依頼があったらしい。

「あなたたちのほかにも一緒に討伐にいってもらうギルドメンバーが3人いて、いまちょうど待ってもらってるわ。馬車を呼んであるからいまから出発できるかしら」

「いまから?」3人は驚いたが、そのギルドメンバーたちのいるところまで案内された。

 

 そこには、鎧を着た背の高い男と、ポニーテールの女、ローブを着た小柄な男がいた。

 受付嬢は軽く全員のことを紹介し、鎧の男はこちらに、「よろしく…」といった。3人も、「こちらこそ」と挨拶した。

 

 みんなは馬車のほうに案内される。全員が乗り込むと馬車は出発する。依頼の場所にはあした着く予定だそうだ。

 

 

 

 馬車は街中を抜け、西へと進んでいき、やがて山道に入った。しばらく森や岩山の景色が続き、時間もどんどんすぎていき、空も少し薄暗くなりはじめた。

 

 馬車はそこでいったん休憩をとっていたが、御者がそれまで食べていた木の実の皮を後ろにポイッと投げ捨てた。すると、「ギャッ!」茂みから声がし、そこからヌッと現れたのは…「グルル…」2匹のクマの魔物だった!!

「うわっ!」みんなは驚くが、クマは、「グガァ~ッ!!」とこちらに襲いかかってきた!みんなたじろぐが、ユードーはそんなクマを倒そうと身構える!だが、クマは2匹だ。サンクとフィリナも戦うことにした!

「チビドラ!火を吐け!」「ガウッ!」チビドラは飛んでいって火を吐く!

「おりゃあ!」ユードーは魔物を殴る!

 フィリナは力をため、やがて、「ポアーサイケ!」と両手を広げた。丸い波動が広がり、それがクマのところへいき、それを食らったクマは、「…☆」頭が混乱し、そしてなにがなんだかわからなくなり、お互いを殴りはじめた。

 フィリナは、「いまのうちに早く!」あっけにとられているみんなを連れ出し、そして馬車を出発させるよういった。

 

 馬車は走りだし、サンクは先ほどの技のことをフィリナにきいてみた。

「さっき、なにをしたんだ?」

「ポアーサイケよ。敵を混乱させる技なの」

「それで、お互い殴り始めたのかー…」と先ほどのことを思い浮かべる。ポアーサイケというのは女性のほうが習得しやすい技であった。

 

 馬車はそのまま走り続け、やがてあたりが暗くなったことで止まり、そこで野営することになった。みんなはお腹もすいていたので食事の用意をした。ほかの同行者は自分で持ち込んだ食事をそのまま食べていたが、3人は食材を簡単に調理してから食べた(それしかなかったので)。

 食後は後片付けをしたり、テントを張って野営の準備をした。森で一夜を越すにあたり、火の番や見張りはどうするかという話になったが、サンクは見張りなら自分の魔物がいるからだいじょうぶだといった。が、話し合った結果、結局それに加えて鎧の男やユードー、ローブの男なんかが交代で見張りをすることに決まった。あすは日が昇り次第出発しようということになり、みんなは早々とテントのなかに入り、眠った。

 

 

 

 そして朝。みんなは同行者の起きろという声に叩き起こされ、まだ眠そうな目を擦り、出発の準備を始めた。食事をとり、さっそく出発する。

 馬車はまた森の中を走り続け、そして1時間ほどして依頼の村に到着した。

 

 同行者たちについて依頼主の村長のもとまで向かう。村長は討伐してもらいたい悪魔のことを話した。

「これが悪魔だ」とイラストを見せる。悪魔は巨大な怪鳥の姿をしていて、この村の谷の奥に住み着いているらしい。この前谷に出かけた何人かの村人がその悪魔の犠牲になってしまったとか…。

 みんなは悪魔のことがわかるとさっそくこれからその谷に出かけようということになった。地図を貰い、村で昼食の調達をすると谷へ続く岩山を登っていく。

「とりあえず悪魔がいたというスポットを探してみようぜ」鎧の男がいい、みんなもそれについていった。

 

 岩山を登ったところにあったのは高い崖であり、悪魔はここで目撃されたらしい。岩だらけの山道を登ってきてくたくたになってしまった。

「すごい崖だなぁ…」

「落ちたら大変だ」

 サンクとユードーは下を見て息を飲んだ。

 鎧の男はあたりを眺めまわし、「どうもこの場所にはいねぇな…。ほかを探してみるか」今度は地図に書いてある別のスポットへと歩いていった。そこも、高い崖の断面であり、みんなはゴクッと冷や汗を垂らした。

 

「こっちにも悪魔の姿はなしか…」

 みな途方に暮れるが、「もう少し待ってれば出てくるんじゃない?」とサンク。

「そうだな。もうそろそろ腹が減ったからこの辺で昼メシでも食おーぜ!」ユードーもいい、みなは昼食にすることにした。ちょうど平らな場所を見つけて、座り込む。サンクたちはジャムを塗ったパンなどで簡単に食事をすませ、その後はのんびり話でもしながらくつろいでいた。すると……

 突然崖のほうからぶわっと風が吹き、大きな羽ばたき音と「ギィィ~ッ!」という声が聞こえた。みんながそちらを振り向くと、そこには大きな鳥が飛んでいた!さっき見たイラストにそっくりだ!これが噂に聞く村から討伐依頼の出ている怪鳥にちがいない!

「あの鳥は…!!」

「依頼の悪魔だわっ!!」

 怪鳥は崖に立って見ていたこちらに気づくと、「ギィィ~ッ!」と向かってきた!

「わあっ!!」みな慌ててよけると、鳥の足がローブの男の頭をかすめ、飛び去っていった。しかし、またこちらにもどってきて足でつかもうと狙ってきた!

「おのれ!」ユードーが向かっていってそんな鳥の足を殴る!「ギャア!」鳥は叫びをあげ、向こうに弾き飛ばされた。

 

 バサバサと羽ばたき、崖からこちらを伺う怪鳥。鎧の男とポニーテールの女は持っていた剣を取り出した。鳥は翼をさらに羽ばたかせ、こちらに風を巻き起こした!!

「うわっ!!」暴風が吹き付け、みんなはそれをこらえた。

 どうにか風が収まり、サンクはチビドラを向かわせ、フィリナは杖を取り出した。

「チビドラ!その鳥にファイアーボールだ!」チビドラは火球を吐き、それが悪魔に直撃する!

「ブライトボール!」フィリナの技も直撃し、悪魔は悲鳴をあげた。

 鳥はまた羽ばたいて風を起こす!みんなはそれに耐え、隙を見てまたサンクとフィリナは攻撃をした。

 鳥は崖の向こうにいるので遠距離攻撃のできないユードーはなすすべがない…。鎧の男も重戦士、ポニーテールの女は軽戦士であり、さらに話を聞いたところローブの男はエスパーではなく道具使い、道具を使ってサポートや攻撃をする職業だそうだ。

 ローブの男はある道具を投げ、それが鳥の周りに弾け飛び、なにか不思議な環が鳥を囲んだ。

「これであの悪魔を足止めしました!さぁ!いまのうちに攻撃をしてください!」

 サンクとフィリナはうなずき、サンクはさらにアカザカナを取り出し、水鉄砲で攻撃した!フィリナはブライトボールやホワイトブラスターで攻撃!遠いので、飛び道具を持たないほかのギルドメンバーはただ見ているだけだった。

 

「シャインストーム!ブライトボール!」

 フィリナが放った攻撃により、ついに悪魔は、「グゲッ…」ポンッと魔石になった。それを念力で引き寄せ手にしたフィリナは、「これで クエストクリアーね」といった。

 フィリナは杖をしまいサンクもアカザカナをケースにもどす。ユードーは、「いやー、今回はすっかりフィリナやサンクに手柄を取られちまったなー」と笑っていた。が、後ろにいたギルドメンバーたちは気に入らなそうな顔をし、「そりゃあ、超能力が使えるんじゃ倒せて当たり前だよなー」「そうね、わたしたちとはちがうもの」

 フィリナとサンクはそれに気づいて振り向いた。

「でも、さっきの技、エスパーってのはあんなのが出せるんだな、ちょっと異常だぜ」

 ……たまに、エスパーを嫌い、わざと怖がったり悪口をいうものがいた。やっかみ、偏見、嫉妬etc……

 この世界の人間はだれでも超能力は大なり小なり持っているが鍛えたって限界があるし、その力は自分では気がつかないほど小さなものだったりする。エスパーはたいてい高給取りだ。練習してもできない人もいる。できない人から見たら謎の力だ。

「そういえば念力で人を操ったり眠らせたりできるらしいわね」

「じゃあ、その気になればおれたちをこの崖から突き落としたりできるんじゃねーの?」

 実際にはエスプを使えば残るのでエスプで犯罪などできない。フィリナは冷たい目で前を見据えた。

 サンクが、「フィリナがそんなことするわけないだろ!」と怒って叫んだ。

 2人はフンと身を引き、

「あんな力があるなんてなにされるかわかんないわ」

「近づかないほうがいい。いこうぜ」

 さっと離れていってしまった。

 

 ゆっくりと、フィリナは木々の向こうへ歩いていき、たたずんでいた。それを追ってきたサンクが、「フィリナ、あいつらきっとエスパーのことをよく知らないんだ。あんなやつらのいうこと気にするなよ」心配そうに声をかけた。

「別に気にしていないわ」とフィリナ。

 サンクは横に立ち、フィリナを見る。フィリナは相変わらずの凛とした顔で前を見つめていた。気高い、深い青の目で…。

「あの、おれは前、練習してみてできなかったけど、いまでもフィリナの力はうらやましいと思う…」とサンク。フィリナは黙ってたたずんでいる。

「おれはフィリナの力に何度も助けられてるし、それにほかにもエスパーのおかげでいろんな人が助けられてると思うんだ。だから、エスパーのよさだってわかってる」

 それでもなにもいわないフィリナにサンクはさらにいう。

「それにフィリナといると不思議な世界がいっぱい見れて、感動して、おもしろくて…それから…」

 サンクは、フィリナにこんなことをいうのは恥ずかしかったが、でも、元気になってもらいたかったのだ。

 フィリナは振り返り、「わかってるわ、そんなの」サンクのヘタななぐさめに少しつんとして顔を赤らめていった。

 サンクはそんなフィリナの手をとり、向かい合う。フィリナの顔はまた少し赤くなった。

 

 

 

 サンクたちはその後下山し、ふもとの村にもどった。御者に魔石を見せ、依頼の悪魔を倒したことを報告した。みんなは馬車で町までもどることになったが、3人はテレポートで町にもどると御者にいった。

 3人はきのうの朝出てきた町に着き、そこからまた徒歩で町まで歩きやがてギルドに到着した。もうあたりは暗くなりかけており、そこにはすでに診療所での仕事を終えたラファエロが待っていて、「遅かったですね」といわれてしまった。一緒に依頼にいった他のメンバーはまだギルドにもどってきてないみたいだった。

 魔石を渡し報酬を貰うと4人は今夜泊まる宿屋にいった。でも、今回の宿屋は4人部屋が空いておらず4人は2人部屋に分かれて泊まることとなった。部屋へ向かうサンクとフィリナをユードーは疑わしげな顔で見送った。

 

 

 

 次の日はまた町を出て北東へと向かっていった。だが次に目指す町は遠く、夕方になってもたどり着くことはできず4人は街道沿いの林で野宿することとなった。

 だが、テントを張り寝る準備をしようとしたとき──ポツ…と雨が降り、やがてそれはすぐ本降りになっていった。

「雨だ!」

 4人は急いで雨具を羽織る。テントは、一応防水加工はしてあるが、あまり強い雨には対応できない。サンクたちは急いでテントを片付けた。

「どこかもっと雨の当たらないとこを見つけなきゃな…」

 ここにくる途中にいくつか雨の当たらなさそうな場所はあった。4人はきた道を引き返していった。

 その途中、「あっ、あれ」フィリナは近くの木々の奥に、なにか黒く大きな建物を見つけた。

「ん?」3人も眺めてみる。

「あんなところに建物なんかあったっけ」

「なんだろう」

 さっき通ったときには気づかなかった。4人はちょっとその建物に近づいて見てみた。すると、それは横に長い大きく古い館であり、なかは真っ暗だった。

「立派だけど随分古そうな屋敷だなぁ」とさらに近づき眺める4人。

 その間にも雨は降り続け、4人のからだは少しずつ濡れ、不快感が増していった。

「……この屋敷、空き家なんじゃないか?」とユードーはいいだした。

 えっ?と3人は振り向く。

「明かりはついてないし、窓もひび割れてる。きっと空き家だ」

 3人もそれを聞いて納得した。そして、空き家ならば入ってもいいだろう…と4人は今夜はこのなかで泊まることにした。ガラスのない窓の鍵をあけ、そこからなかに侵入する。

「うわっ」「暗いなー」

 ランタンを取り出し照らす。すると、なかはほこりがかぶっており、クモの巣も張っていて、やはり空き家だ、と4人は思ったのだった。

 そのままランタンを手にほかの部屋へと移動する4人。そしてある部屋が、ちょうど広くて、寝心地のよさそうなソファもいくつかあり、4人はその部屋に腰を落ち着けることにした。暖炉もあったのでからだを温めようと火をつけてみる。4人はそのまわりに集まり「おー、あったかい」「それにしても突然雨に降られるなんてな」などといまの状況を会話したりした。

 

 それからそろそろ寝ようとソファのほこりを払ったりして掃除をし、明かりを消す。今夜は雨風をしのげる場所が見つかってよかった……そう思いながら4人は就寝した。

 

 

 

 ──暗闇のなか、あたりは静まり返り、雨音だけが響く……。

 ちょうど寝つき出し、意識が離れていったころ……

 ぼんやりと、暗闇のなかに白いものが浮かんだ気がして、フィリナはうっすら目を開けた。するとそこには白く光る顔のようなものがフィリナを覗き込んでいたのだ。

「キャアーッ!!」驚いてフィリナは悲鳴をあげた。

 

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