サンクたちは宿屋に戻り、次の日はまた旅立った。「今日中に次の町にいくのは無理だわ。途中に宿屋があるみたいだからそこに泊まりましょう」サンクは地図を眺め、1日歩き続ければ次の町に着けないこともないといったが、フィリナにそれはいやだといわれた。「なんでだよ?」ときくと、フィリナは「……足が痛いから」と答えた。きのうは平気そうだったし、たいして歩かなかったのになんで?ときいたら、なんだっていいわ!と怒られた。サンクは訳がわからなかった。
2人は宿屋にいって泊まり、次の日の朝旅立った。サンクは、こんなふうに旅をする生活もすっかり板についてきて、ギルドで依頼を受け、その報酬で生活する方法もうまくいっていた。でもサンクはフィリナに対して少し申し訳なかった。これまでの依頼では明らかにフィリナのほうが活躍していて、自分といえば少し剣が使えるだけで他になんの力もなかったのだ。サンクはあることを考えていたが決意した。そして道中を歩くフィリナにいった。
「フィリナ!」
「え?」振り向くフィリナ。
「おれに超能力を教えてくれないか!?」
「超能力を教えるですって!?」
「ああ!」
「なんでまた?」
「おれ、これまでフィリナと一緒にいろんな依頼を受けたけど、あんまり役に立ってなかっただろ?だから力をつけてもっと強くなりたいんだ!」
「そんなこと……」
「頼む!」
フィリナはそんなサンクの目をじっと見つめた。サンクはフィリナからじっと見つめられ、妙にドキドキした。フィリナはちょっと困ったみたいだったが、「わかったわ……やってみましょう」そしてサンクはフィリナからエスプを教わることとなったのだった。
「本式の学校じゃないからあまりしっかりと教えられないかもしれないけど、文句はいわないように」
フィリナは、「それではまず簡単な技からやってみましょう。念力はどうかしら。この小石を宙に浮かべてみて、ほら、こんなふうに」と手をかざし、小石を宙に浮かべてみた。
「浮かべるって、どうやればいいんだよ?」
「心のなかで浮くように強く願うのよ」
サンクはいわれたように石に手をかざし、心のなかで浮くように強く願ってみた。だが、石はぴくりとも動かない。サンクは疲れてがっくりしてしまった。
フィリナは「う~ん」とうなり、「それじゃ次はライトアタックをやってみましょ、一番簡単な攻撃技よ。こうやるの」フィリナは手をかざし、光を放った。
「どうやるんだ?」
「自らのエスプを手に集めるのよ。たまると自然に放ちたくなるわ」
サンクはいわれたように手に力を集めようとがんばった。だが、なんの力も集まらない……。サンクはまたもぐったりして疲れてしまった。フィリナはそれを見て難しい顔をした。
「もしかして、おれじゃ無理……なのかな?」とサンク。
「訓練すれば身につけられるはずだけどもちろん程度の差はあるわ。あとね、サンクの目の色が……」
「え?」
「エスパーの才能の高い人は目の色が特殊な傾向があるの。茶色は一番力の低い色なのよ」とフィリナはいった。目の色は赤でも青でも黄色でもなんでもいいそうだが、平凡な茶色だけはあまりMPやエスプを持たないことが多いそうだ。サンクの目は濃い茶色だった。
「でも、鍛えれば少しは力がつくと思うし、まぁそうゆう傾向があるってだけで、もしかしたらサンクには当てはまらないかもしれないわ」
サンクはちょっと微妙な気持ちになったが、それからもエスパーの修行を続けてみることにした。
サンクたちは次の町へ着きまた宿屋へ泊まった。そして次にいく町を決めたりした。
「少し遠いけどラケルにいってみない?エスパーについての博物館があるそうよ」
「どのくらいかかるんだ?」
「う~ん……1日で着くのは無理そうね」
サンクは地図を見て、道筋を見てみた。なんだか荒野が多く、あまり建物はなさそうだ。
「まぁ、他にいきたいとこがあるわけじゃないし、そこでいいや」とサンクも賛成した。
そして次の町への道を歩くサンクたち。町を出るとやはり荒野が広がっていた。
2人はそろそろ昼食にすることにし、町で買った丸いパンのサンドイッチを食べた。
サンクは今日もエスプの修行をした。
「ライトアターック!」と叫び手を突き出す!が、相変わらず成果はなく、サンクはがっくりした。
「難しいな、フィリナはよくこんなのできるよな、一体どうやってできるようになったんだ?」
木陰で座って休憩してたフィリナは、「そうね、わたしの場合は小さいときに自然に技が出ることに気づいたのよ。もちろんそこから練習をしてきていまのように戦闘に使えるほどになったんだけどね」実際にはフィリナは父親から厳しくエスプを鍛えられた。
フィリナは置いてあったサンクの剣を取り、「サンクは剣で戦ってるわね」
「あぁ、うちに武器といえばそのくらいしかなかったから」
「でも、剣で相手を切るなんて少し怖いわ」とフィリナはふるえてみせた。
「それは切れないんだ。特殊な加工がしてあって相手を切ったときのダメージを打撃のダメージに変えて相手に与えるんだってさ」
フィリナはそれを聞き安心した表情に戻り、「とても都合がいいわ!」サンクの見よう見まねで剣の素振りをしてみた。
「そうだ」とサンク。「フィリナはテレポートできただろ?それも教えてくれよ」
フィリナは、「テレポートは簡単じゃないわ。サンクにはまだ無理よ」
「でも見本だけ!どうやるのか見たいんだ!近いところでいいからさ!」
「しょうがないわね」フィリナは、「それではこちらにきて」フィリナはサンクの手をとり向かい合い両手をつないだ。そしてからだから発せられたパワーで2人を包み込む。一瞬光があふれ、気づくと2人は少しずれた場所に移動していた。「はぁ……すごいな」とサンクはため息。改めて、それまで無縁だったエスプというものに身近で触れられて、驚きの連続だった。
「いきたい場所のイメージを詳細に思い浮かべるのがコツよ」とフィリナ。
「場所が移動できるならもしかして、タイムスリップなんかもできるのか?あっ!そうだ!もしかして過去に戻れるなら悪魔に襲われたときに戻って悪魔をやっつければ……!」とサンクは思いつく。
「時操作術のことね。とても高位のエスパーがまれにできるだけと聞くわ」
「フィリナはできないのか?」
「できるわけがないわ」
「そうか~、でもきっとそのうちあの悪魔を見つけてやっつけてやる!」サンクは旅の目的を思い出し、決意を新たにした。
2人はふたたび荒野を歩いていった。すると、目の前になにかイグアナのようなものが現れた。その生き物はこちらに牙を向き、うなった。「うわっ!なんだ!?魔物か!?」とサンク、フィリナはじっとその生き物を見、「いいえ、心がない、悪魔だわ!」と叫ぶ。悪魔は口をあけ、2人に火を吐いてきた。「あちちっ!!」2人はあわてて退いた。悪魔は2人のところに向かい、再び襲おうとしてきた。ポロが飛びかかり、噛みついた。「戦うのか?」とサンク、「依頼されたわけじゃないけど、倒さなきゃこちらがやられるわ!やるわよ!」「よぅし!」
フィリナは手を出し、技を放った!サンクも剣で切りかかる!「ギャアァ」と悲鳴をあげる悪魔!そしてまた火を吐いてきた!「わあっ!」フィリナは「ライトバリアー!」と自分たちを不思議な光で包んだ。「これは?」「火のダメージを和らげるバリアよ!これであまりダメージは受けないはず!」「ほんとか!?」フィリナはまた技を放ち、サンクは「ポロ!そいつに体当たりだーっ!」といい、悪魔はその攻撃を受け倒れて消えた。ホッとするサンクたち。「あまり強くない悪魔で助かったわ」「おれも超能力が使えたら、もっと役に立てたんだろうけどな」「気にすることはないわ」サンクは、フィリナの力を見て、改めてすごさを感じ、またエスパーの修行をがんばろうと思った。
そしてまた休憩する2人。サンクはふたたびエスパー技を教えてくれとフィリナにせがんだ。今度は念力の手本を見せてくれといった。フィリナは近くの石を浮かべて見せた。サンクもやってみたが、やはりまったく動かせない。
サンクは念力の練習をしながらフィリナにきいてみた。「念力っていうのはどのくらいの重さを持ち上げられるんだ?」
フィリナは少し考え、「う~ん。対象の超能力に対する防御力にもよるけど、わたしの場合はあの岩くらいまでならいけるわ」とフィリナは2立方メートルくらいの岩を指差した。
「じゃあ、念力はどのくらいはなれたものまで動かせるんだ?」
「そうね、だいたい500m先くらいまでかしらね」
それが限界であり、これはあまり個人差はなく、鍛えても変わらないそうだ。
「遠くはなれるほどねらいがつけにくくなってしまうの」
「へ~。そうなんだ~」
「他にはどんな技があるんだ?」
「そうね、たとえばダークインパクトとか。こうやるのよ」フィリナは手を構え、黒い霧のような固まりを放った。
「ライトアタックは光属性だけど、この技は闇属性なのよ」
「属性?」
「エスパーは光属性と闇属性の攻撃ができるの。その属性が敵の弱点だった場合大きなダメージが与えられるのよ。たとえばさっきの悪魔、火を吐いてたでしょ?ああゆう敵はたいてい氷や水に弱いのよ」
「じゃあそれをやればよかったんじゃないか?」
「エスパーには光と闇以外の属性攻撃はできないの。火とか氷とか電気とかね」
フィリナの話によれば、光属性は自らのパワーを強い気持ちで打てば強力な攻撃ができ、エスパーの攻撃というものは指定しなければ光属性になるのだそうだ。
「じゃあ、闇属性はどうやって出すんだ?」
「わかりやすくいうと対象を呪う気持ちで出すのよ」とフィリナ。
「呪うって……(汗)」
火や氷などは気持ちの持ちようで作り出せるものではないから、エスパーには無理なのだそうだ。
「でも、よく心のなかで光と闇の切り替えができるな。おれだったらバトルのたびにうまく切り替えれるかわからないなー」
「それは知能指数(知性)のステータスによるわ。知能指数が高い人ほど技を出すときに不純な気持ちが混じらずに技に集中することができるの。不純な気持ちが混ざると技も弱くなるわ」
知能指数と聞き、フィリナにはそのつもりはなかったが、遠まわしにいやみをいわれているようで、サンクはちょっぴり劣等感を感じた。
「テレポートも一緒で、心のなかのイメージが弱いと発動しないわ」
サンクはフィリナからエスプの話をいろいろと聞き、難しそうだと思った。
2人はまた歩きそのうちにあたりは暗くなってきた。しかし、まわりは相変わらず荒野で、宿屋などまったく見つからなかった。
「このあたりは宿屋なんかないみたいだぜ、このままだと今晩は泊まるとこがないかもしれないぞ」
「仕方がないわね。今夜は野宿することになりそうだわ」フィリナはあたりを見回し、「あのあたりはどうかしら?川も近くてちょうどよさそうよ」
そしてフィリナはバッグを探り、「ちゃんとテントを買っておいたわ」とテントを広げた。手のひらサイズだったテントは自動的に広がり、立派なテントになった。サンクはテントの外やなかを眺めた。
2人はお腹がすいたということで夕食にすることにした。だが、昼は買っておいたパンで済ませたのでよかったが、夜は自炊しなければならなかった。2人は買ってあった食材を並べてみた。「なにを作ろう?」と考える。「この材料ならスープができそうだわ」とスープを作ることにした2人。材料を切り、鍋に水を入れ、煮ようとする。だが火がないことに気づいた。
「火をつける道具を持ってないの?」
「そんなの買ってないよ!これまで必要なかったからな!」
困る2人。
「さっきの悪魔からいただいておくべきだったわ!」などとフィリナがいい、「そんな無茶な……」とサンクは困り笑い。だがサンクもどうすればいいかと考えた。するとサンクは下を見てハタと思いついた。
「フィリナ!」と声をかける。
「エスパーは火の技ができないっていってたけど、もしかしたらできるかもしれないぜ!」
「え?」
サンクは両手に拾った木を持っていた。
「どういうこと?」
「たしか木をこすると火が起こせるんだ。フィリナ、念力でこの木とこの木をこすり合わせてみろよ」と得意げにいうサンク。
「本当?」
フィリナはサンクから木片を受け取り、目の前に木を浮かべ両手をかざしてこすり合わせてみた。
「こうかしら?」木は小刻みに動く。
「そうそう、そのまま続けてみろよ」
1分後
「ほんとにこんなので起こせるの?火なんてつかないわ」
「もっと続けてみろよ」
3分後
「まだ?疲れてきたわ……」
「もっともっと!」
そのうちに木から煙が出てきた。
「やった!もう少しだぞ!」
そして木からポッと火がついた。
「やった!これでスープが作れるぞ!」
サンクはよろこんで火を大きくした。フィリナはぐったりしていた。
「フィリナ!よくやった!ちゃんと火の技ができたじゃないか!」
「でもこれじゃ、とても疲れるし時間がかかりすぎるし、しかも火が小さすぎてとても戦闘には使えないわ」
2人はスープを食べ、その夜はテントで眠った。
朝、2人はまた自炊して食事をし、次の町まで歩いた。サンクはその合間にエスプの訓練をしていた。やがて町に着き、2人はいろいろ町を観光した。フィリナのいっていたエスパーの博物館にもいった。そこには昔の偉大なエスパーの肖像画とか、エスプに関連した道具などが展示してあり、フィリナはサンクにエスプのことをいろいろ教えた。フィリナは興味深そうに見ていたが、サンクにはよくわからないものばかりであった。そしてそのあと2人は宿屋にいった。