何時の間にか無限航路   作:QOL

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~何時の間にか無限航路・幕間1~

■ラッツィオ編~エルメッツァ中央編・幕間1■

 

 

 

 軍に協力し、この宙域を根城にしていた海賊。スカーバレル海賊団を倒してアバリスからユピテルという新造艦に乗り換えた俺達。これで終わるかと思いきや、なぜかオムス中佐に『ここに金はねぇからちょっと取りにいってね!』と、ちょっとコンビニ行って来てなノリでいわれたからさぁ大変。命張ってるんだから、お金は欲しいと俺たちもお隣の宙域に向かう事となった。

 

 ただ、新しくフネも手に入ったので、すぐに別の宙域に行くのはちょっと怖い。なのでもはや慣れ親しんだこの宙域にて、完熟航海を兼ねて、この宙域に留まることとなった。海賊を撃破したとはいえ、残党がまだいるので丁度いいっていう。しかしRPGがお使いゲーなのは、どのゲームでも変わらんね。

 

 

 さて、唐突で大変恐縮だが、前旗艦のアバリスは元々は大マゼラン製の大型戦艦に分類されるバゼルナイツという艦種で、大マゼランの国家であるアイルラーゼンにおいて以前から主力艦を張っている優秀艦でもある。前にも説明したとおり、簡単に言えばどんな状況にも対応できる優秀な器用貧乏って訳だ。

 

 そして今回、また秘密裏に建造し、みんなから冷たい目をされながらもめげない俺が新たに旗艦としたユピテル。前回説明した通り、元々は大マゼランの海賊団が保有している艦と同型艦である。その拡張性は非常に高く対艦戦闘も対空戦闘もこなせる大型戦闘空母なのである。

 

 ちなみにこいつは原作ゲームにおいて、プレイヤーが手に入るフネの中では最強だった。何せ武装スロットがSサイズからLLサイズまで全てそろっており、装甲も分厚くて多少の攻撃ではびくともしない。

 おまけに戦闘空母というだけあって、艦載機が積める内部構造の広さもあり、モジュール組み換えで輸送船にしたり、研究室積んで科学艦にしたり、保養施設積んでリゾート艦にしたり、ひたすら防御装備を取り付けて艦隊の盾にしたりと、どの方面でも活躍できる万能艦だった。

 

 原作ゲームでの自軍艦隊数は最大5隻だったのだが、5隻ともズィガーゴ級戦闘空母で固めた艦隊を作った時は俺tueeeee!!!状態だったのはいうまでも無い。

 

 

 ここまででお気づきになった人もいると思うが、ユピテルは戦闘空母という名前が付加されている。戦闘空母、そう…本来ズィガーゴ級は空母なのである。俺としては戦闘空母と聞くと、某蒼い顔をした総統を思い浮かべるんだが…。

 

 

 デ○ラー総統∩( ・ω・)∩バンジャーイ!デ○ラー総統∩( ・ω・)∩バンジャーイ!

 

 

 

……………ハッ!?いま次元を超えた電波を受信したような?気のせいか?

 

 と、とにかう何が言いたいのかというと。ユピテルは航空母艦でもあると言う事である。

 まぁそんな訳で――――

 

 

「航空母艦なんだから、艦載機の一つでも欲しいよねぇ」

 

 

―――と、ついブリッジで漏らしたのが全ての始まりであった。

 

 

***

 

 

「で、こうなる訳か…」

「ん?どうしたのユーリ?」

「ううん、何でも無いよチェルシー」

 

 俺は目の前で繰り広げられ様としているイベント見る。

 

『それでは第一回ユピテル搭載機のトライアルを開催しまーす!』

 

――――つまりはそう言う事だ。

 

 今日はフネに乗せる艦載機のトライアルが行われるのである。場所はいろいろやっても影響が出ないけど、そこそこ軌道ステーションに近い宙域で、そこの映像をステーションの会場ホールに転送しモニターに映して貰っている。

 そこそこ大規模なイベントだが、申請を事前にステーション側に出したので問題は無い。この間の海賊との戦闘から生き抜きをしたかったから、良いレクリエーションになる。

 ちなみに第何回とか言っているが、今後何度もトライアルをする予定は今のところない。金無いのが切実に辛いし。

 

『いやー、僅か三日で4機もの艦載機候補を作り上げるとか、ウチの技術者連中は化物かって声が上がっていますね』

 

 あ、それ俺だ。だってマジで三日でやりやがったんだもんアイツら。

 

『それと今日は何と科学班の班長、サナダさんが解説に来てくださっております』

『よろしく頼む』

 

 解説役として我等が科学班班長が堂々と…って、何してんだあんたは?

 いやまぁ、ケセイヤに継いで我が艦でマシンに精通してる人は貴方ですけど。

 

『今回のトライアルでは、整備班の人達がそれぞれチームで機体を製作したらしいですね』

『うむ。こういう場合必要とされているのは機能は勿論だが、整備性やコスト、何度使用しても壊れにくい耐久性も考慮されるだろう』

『彼ら製作サイドの腕の見せ所ですね。ではそろそろ、各グループの機体の紹介をさせていただきます』

 

 進行役がそう言うと大型スクリーンに映像が映る。

 そこに現れたのは鋭角なシルエットを持つ人型。

 そして、ロボゲー好きならば、なんかすごく見た事ある形状である。

 

『幾つになっても男は子供!?夢とロマンを忘れない!最初の機体は何と人型です!!』

『人型タイプには、人間と似たような動作をさせられると言う利点がある。フネの作業機械の代わりも出来るだろう』

『そう言う訳でエントリー№1、開発コード・ホワイトです!』

 

 スクリーンに投影されたのは、白色が美しいヒトガタ。まんまACfAのホワイト・グリ○トです、本当に有難うございました!誓っておくが“こいつ”に関しては俺はなにも言っていない。トライアルに参加出来たチームの内、俺もパトロンとして口出ししたチームもいるが、そうでないチームも存在する、そんなチームが偶然であるが作り上げ、このトライアル用に開発した機体なのだアレは……。

 一応艦長なんで、このイベントが開始される直前に、参加する機体の資料を渡されてはいたのだが、それを見た時に『ウチにはアス○ナ機関の研究者でもいたんかい!?』 と叫んだのはいい思い出である。叫んだ時にトスカ姐さんに変な目で見られたのはいつもの事。泣けるぜ。

 

『何でも艦載機としては異例のデフレクターとAPFシールドを搭載した機体だとか』

『それだけでは無く、脳と機体の統合制御体と直結させる事で、恐ろしいほどの性能を得たらしい。インフラトン機関の小型化が大変だったそうだ』

 

 ACに似ているが中身に関しては流石に別物。この無限航路世界の技術がベースとなっている。なのでコジマ粒子は搭載していない。粒子自体が存在していないのだからしょうがないけど、コジマは…やばい…。

 つーか、もしもそんなんが付いてたら危なっかしくてフネに乗せられん。

 

『―――っと、ココで速報ですが!ホワイトは棄権するそうです!』

『通常操作はともかく、神経に直接繋いでコントロールする行為が出来るパイロットがいないらしい。最後までネックだったんだが、やはりというべきか』

『機体はあっても本来の操縦法で動かせる人間がいなければ話になりませんしねぇ』

 

 システムはあっても、最後までパイロットになるやつが出なかったもんな。さすがの技術陣も自分の身体に電極を埋め込むのは躊躇したか。ま、それがいい。変なモン過ぎると採用するにも採用できないしな。

 

『では、気を取り直して!艦載機?それはやっぱりこの形!飛行機型の登場だ!』

 

 ある種ロマン機体だったホワイトは、結局お披露目だけでお蔵入りになってしまった。浪漫なのに…。続いてスクリーンに映ったのはオーソドックスな戦闘機の形。シルエットはかつて俺がいた世界で使われていたF/A-18ホーネットに似ている気がするが…アレは俺もパトロンとして口出ししたから知ってる機体だ。

 

『全てにおいてオーソドックス!エントリー№2コードネームは宇宙の虎!』

『ちなみに原型はエルメッツァ中央軍が売りだしている戦闘機のビトンだ』

 

 ようはエルメッツァで販売されているベストセラー戦闘機の再設計機な訳だが、中身はもはや別物というか、マジで別物なんだ。もちろん外見は名前のとおりである。

 もともとの機体がスホーイとかロシア系な美しいフォルムだったといえば、どれだけ外見が変わってしまったのかが理解できよう。つーか変えすぎでしょうよ。

 そんな思いが伝わるわけもなく、次の機体が画面に映る。

 

『続いては、人型?戦闘機?ゴメンどっちも欲しかった!一機で二機分美味しい!』

「あ、変形してくよユーリ!人型になっちゃった」

「う、うん。そだね」

 

 まさかの変形する機体が登場したことで、俺の隣にすわっていチェルシーもびっくりしたらしく、ポフポフと俺の肩を叩いた。ごめんよ。俺は実は最初から知ってるんだ、アレ。

 

『エントリー№3、コードネームはヴァリアブルファイター0の登場だ!』

『原型はビトンのアーパーバージョンのフィオリアだ』

 

 はい、やっちまいました。マク○スです。俺が口出しした機体であり見た目も完璧VF-0。本当にありがとうございました! だって可変機は浪漫だったんだもん。おいちゃんそういうのほしい。ちなみにVF-0フェニックスさんは原作では大気圏しか飛べない機体だったが、こっちだと普通に航宙機用エンジンがあるから宇宙を飛べたりする。

 それにしても…変形して人型になるとロマンだよねー、の一言で着想を得てわずか三日で作り上げるとか、未来の技術はどうなってんだか…不思議!

 

『そして最後のエントリー! 小さなボディは機能美あふれる人型! エンジンが無い!? エネルギーは母艦から送信!』

 

 そして最後の機体が画面に登場する。鈍いメタルな光沢を放つ灰色の巨人が立っている様に画面に映りこんだ。しかしアップなので大きく見えるが、あれで実は戦闘機よりもはるかに小さい、とくれば搭載数が増やせそうな予感。

 

『エントリー№4、コードネームはお花の名前を貰いプロト・エステバリスの登場だぁぁぁ!』

『エンジンを外すと言う大胆な発想によって、コストとダウンサイズを計った吃驚設計の機体だ』

 

 そう、エステバリスである。某花の名前の戦艦の艦載機がそこに映っていた。ちなみにこの機体もトライアル参加の書類を見た時に知ったので、ホワイトと同じくアレについては一切関知していない。

 実際、エステバリスはエンジンを載せないのでサイズや整備面でのコストが優秀であるなどコンセプトは良いけど、その設計思想上どうしても母艦に帯同するのが常となるから直衛みたいな近接対空防衛にしか使えない。汎用性は限りなく低いのだ。

 

 宇宙みたいに広大な空間の中で紐付きの護衛何ぞ意味が無いぞと言われそうだが、俺はそれでもトライアル参加の許可を出した。だってロマンだもん。いずれロマンで身を滅ぼされそうだが、それはそれでアリだ。

 

 

 ともかく、見た目もそうだが実際機能の方も原作準拠であり、エネルギー供給の手段もデフレクターの重力フィールドジェネレーターを応用した重力波送信システムをでっち上げているので、ひも付きなのも相変わらずな良い機体である。このシステムがキチンと搭載されているのを知った時、ホワイトの時と同じく、ウチにはネルガル重工の研究者がry! と叫び、トスカ姐さんにry、泣けた。

 

 ただ、エステバリス系統の機体の大きな特徴ともいえる特殊な操縦法。IFS(イメージ・フィードバック・システム)はなんと付いていない。理由はすこぶる簡単で脳内に補助脳を形成できるナノマシンを三日で作るのは無理だった。ただそれだけ。

 

 変わりに付いているのは、従来のコックピットシステムに補助として脳波スキャニングを利用した簡易シンクロシステムだけらしい。だが、それはある意味で原作超えたシステムだろうよ。脳波を察知するとかZのバイオセンサーが近いんじゃないか?

 俺から言えるのは、なぜそれをホワイト開発の連中にリークしてやらんかったんや。開発中はライバルとはいえ敵に塩を送るということわざくらい覚えておけっての。浪漫率が減少するだろうが、まったく。

 

***

 

 さて一応参加機体がすべて出揃い、しばらくしてトライアルがスタートした。まずは空間戦闘機において重要な機動性と運動性のテスト。試す方法はいたってシンプルで、障害物のあるコースを各機でレースして貰うだけだ。

 

 ただそれだけでは性能の価値が解りづらいので、人為的なアクシデントとして、隕石接近を模したカラーボールの群れとの遭遇や模擬弾の銃撃が道中どこかで行われる手はずになっている。パイロットの腕もいるが、何より機体の性能が試されているという事でもある。

 

 尚今回のトライアルでは募集を掛けた中でも平均的な腕前を持つやつらがテストパイロットを勤めている。一人のエースが扱う高性能機ってのもロマンだが、俺はドズル・ザビの言ったあの名言も支持しているのだ。つまり真の高性能とは唯の人をエースに、もしくは生き残れるレベルに持ち上げられるマシンの事。

 

 それが量産できれば安心だ。戦いは数なのは、過去の歴史が証明しているのだ。だから普通のパイロットを使うように指示を出したのだ。アホなパイロットが扱っても生還出来るのは、かなり高性能である証であるのだから。

 

『各機体位置について―――よぉい、ドン!っと言ったら始めてくださいね?』

『今の君のジョークの所為で全機フライングしたな』

 

 かっ飛ぶように飛び出したのに、今ので所在無さげに戻ってくる試作機たち、その背に何処か哀愁が纏わりついているように見えたのは気の所為じゃないだろう。それにしても、この司会進行役とサナダさんの二人、ノリノリである。

 

『では、改めまして…ようい』

 

 仕切りなおし。画面の向こうでは宇宙空間に設置された信号が徐々に青へ近づいていく。各機は一斉にエンジンをふかしてスタートに備えた。

 

 そして―――『ドンッ!!』

 

 合図と共にライトが全てグリーンに変わると、一斉にスタート地点から飛びだした試作機たち。それぞれが宇宙にスラスターの青く煌く排炎を線の様に引きながら、デッドヒートを繰り広げ始めた。

 

 一機が前に出れば、他の二機が追い上げて並び、その二機が攻防を始めると漁夫の利とばかりにもう一機が前に出る。お互いに牽制しあって定められたコースをくるくるくるくると絡み合うようにロールしてチェックポイントを消化していく。

 差異はあれども性能が拮抗しているのか一進一退のレースに会場が盛り上がる。

 

「さぁさぁレースの勝者は誰かのトトカルチョだよ。締め切る前に賭けてきなー」

 

 そしてレースそっちのけでクルー相手に俺の後ろでトトカルチョ始める副長。姐さんらしいね。ちらりと見ればトスカ姐さんの手にたくさんの札が握られている。結構な人が賭けに参加しているようだ。

 

「お?ユーリも参加するかい?艦長公認ってのもアリだと私は思うんだ」

「生憎タバコと賭け事はするなってばあちゃんの遺言なんス」

「つまんないねぇ。男ならバーンと賭けちまいな。まあいいか。ところで賭けなしにユーリはどいつがいけそうだと思う?」

「うーん…そうっスねぇ」

 

 どれもこれもいい機体といったらいい機体なんだよなぁ。人型機、可変機、戦闘機、三者全てが出揃っているレースだ。俺の好み的には全部OKなんだけど。

 

「宇宙の虎ッスかね。機動性的な意味で」

「ま、確かに速度はあるね。んじゃユーリは宇宙の虎を一枚っと」

「ちょっま!?……行っちゃったよ。賭けてないのに」

「トスカさん、強引ね」

 

 唐突な姐さんの行動にユーリびっくり。だから優しいチェルシーも、たまには顔を顰めちゃうんだ。もっとも、あの人と一緒にここまで来たからある意味慣れっこではあるけど。ホント自由人なんだよなぁ。良く仲間で居てくれるもんだわホント。

 

『さぁ各機一斉にスタートして熾烈なデットヒートを繰り広げている訳ですが、まもなく彼らはこの先に待ち構えている魔のカラーボール地帯に突入です!解説のサナダさん。どう見ますか?』

『直線的な機動力という点で見れば宇宙の虎が一番だろう。だが敏捷性と言う意味では他の人型のエステに利点があると言える。両者の中間がVF-0だ』

『つまり?』

『どうなるかは解らんということだ。この先の擬似デブリ帯で証明されるだろう』

 

 上も下もない空間を駆け抜けた先にあるのはデブリ帯を模したカラーボールが浮遊するエリアだ。浮いているカラーボールに接触しないで動けるかが試されるエリアである。

 

 既に先行していた虎とファイターモードになった0の2機がエステを追い抜いていた。推力ノズルが後方へ集中する2機と違い、人型のエステ複雑な形状でバランスを保つためにスラスターが分散配置されているので直線ではやはり分が悪いようである。

 

―――だがそんな虎と0もデブリ帯を前に速度を落とした。

 

『おおっと、流石に全速はキツイと判断したか?二機ともスピードを落としています』

『どちらもそれなりに大きい。あの大きさで突っ込むのは無理だろうな』

 

 まぁそりゃそうだろうなぁ。OSの補助とか機体性能が高くても運転してるの人間だから怖くもなるわ。でもせっかくのいい機体なのにもったいないねェ。そうこうしている内に追い付いたプロトエステが減速した二機を追い抜いていく。

 だがこいつだけは他の2機と違い減速せずに加速した!まさか最高速度のままカラーボール帯の中に突っ込む気か!?

 

『どうしたのかプロト・エステ!いきなり暴走か!?』

 

 思わず解説役の人まで驚愕の声を張り上げる。エステはカラーボールの密集した場所に飛び込み、無様に塗料に染まる……事は無かった。

 

『なんと!数百は浮かぶカラーボールの群れから生還したぁーっ!?なんという軽やかな運動性能だぁぁー!!』

 

 カラーボールの群れの中、エステは機体をカラーボールの隙間に捻り込み、ぶつかりそうな時は機体の手足を小刻みに動かし、実にアクロバティックな動きで避けている。

 あ、あれはまさか某機動戦士で有名な―――っ!

 

『あれは能動的質量移動姿勢制御だな』

『な、なんです?その舌噛みそうな名前?』

『言葉通りの意味だ。手足を動かす事で質量を操作し、姿勢制御をおこなう』

『はぁ、それが何か意味あるんですか?』

『姿勢制御用のスラスター推進剤の消費を抑えられる。人間型の利点と言うヤツだ』

 

 サナダさんに先言われた(´・ω・`)

 まぁ最初から知ってたけどね。とにかくエステプロトのアンバック機動を見たからかVF-0も変形する。だれもがエステに習い人型になるのかと思いきや。

 

『うわぁ、何と言っていいやら…飛行機と人型の中間――と、資料が届きました』

『アレは人型と戦闘機型との中間形態だったな確か』

『はいそのとおりです。戦闘機の機動性と人型の運動性を併せ持つ形態だそうです。中間形態に移行したことでマニピュレーターが展開され、能動的…えーと』

『能動的質量移動姿勢制御。言い辛かったら略称のアンバックと言えばいい』

『捕捉ありがとうございます。これによりフェニックスはアンバックも扱えるようになりました』

 

 なぜかVF-0は腰を折り曲げたようなガウォークモードになった。やつらのことだし人型になるのはエステの二番煎じにみられるからいやだったんじゃないかな。班長のケセイヤがそういう奴だし、それに従う奴らも同じ穴の狢だろうしね。

 それは兎も角として、ヴァリアブルファイターの十八番である三段変形機構もしっかり作られているらしい。エクセレントだ整備班!なんでそういう設計が出来たのかはしらないけど、大宇宙の意思という毒電波でも受信できたんだろう。デムパゆんゆん。

 

 こうして順位は逆転し、一番がプロトエステバリス、二番VF-0、三番宇宙の虎と続いた。虎は他の2機と違い純粋な戦闘機型なので速度を落とさざるを得なかったのだろう。

 各機とも接戦のまま、ついに折り返し地点に到達する。はじめこそカラーボール地帯で他の2機を引き離したエステプロトだったが、やはり直線での機動力は他の2機に劣るようでこの時点で追い付かれ優位性は皆無となってしまっていた。

 しかも問題はそれだけではなかった。

 

『おっと、ここでエステプロトの速度がガクンと低下!トラブルか?』

『ふむ、おそらく重力波でのエネルギー供給がうまくいっていないのだろう。障害物に遮られると重力エネルギー波は極端に効率が低下する』

『たぶん道中のカラーボール空間の所為ですね』

『運用次第だろうが、これで母艦から離れては戦えないことが証明されたともいえるな』

 

 エステプロトがここにきて急激なパワーダウンを起こしたのである。スラスターから光は失われ、エネルギー保持のために各部エネルギー消費を省エネモードにしたことで運動性も一気に低下してしまっていた。

 あーあ、こうなると、どれを落すのか決定してしまったぜ。動けない兵器に意味は無いんだから、その分自立でエネルギーを持っている2機はマシだろう。

 俺は浪漫を取りたい派なのだが…。

 

『おーと!折り返し地点にてエステが止まりました!これはトラブルか!?』

『いや、機能停止している所を見ると、内蔵バッテリーが切れた様だ』

 

 そして折り返し、内蔵バッテリーが切れてしまったエステプロトはココでリタイア。継戦能力の脆弱さを露呈する形となる。うーむ、浪漫をとるべきか現実と戦うべきか悩むところだ。俺が軍人なら浪漫よりも実を取るのだろうが、ほら俺って0Gドッグっていう民間組織所属だからね。別に浪漫を追求してもいい訳だ。乗る奴には悪いけど。

 

 ともあれ、バッテリー切れで身動き取れなくなったエステを尻目にトップレースを繰り広げる残りの2機は、すでに別のルートでスタート地点へと帰還しつつあった。抜いたり抜かれたり、まるでワルツを踊るかの如くに機体を反転させて螺旋運動を繰り返す両機。最後のデッドヒートに観客席は大いに賑わっていた。特にこの2機のいずれかに賭けていた連中の声援が五月蝿いほどである。

 

 一進一退の攻防を繰り広げる両機の性能は拮抗しているようだが、同じ戦闘機タイプでも直線での加速能力と巡航能力は宇宙の虎の方に部があるらしく、じりじりと0を引き離し始めていた。このままいけば宇宙の虎が華々しい勝利を飾ることは明白。だが、ここで終わらないのが俺たちクオリティ。

 

『さぁココでアクシデントその一!デブリストームの来週だぁぁぁ!』

『来週では無く、来秋だ』

 

――――いいえ、正確には来襲です。

 

 言葉遊びはともかく、隕石を模した衛星に取り付けられたランチャーから、次々とデブリに似せて作られたカラーボールが発射される。ケセイヤ印であろうメカは自重という字が落丁している事もあり、容赦の無いデブリカラーボールの嵐となって駆け抜ける2機の進行ルート上を横切っていく。デッドヒートを繰り広げる彼らもこれにはたまらず回避機動を余儀なくされた。

 一応、このアクシデントイベントは実際にデブリに巻き込まれた時の突発的事態への対応を図るものらしい。だが、それって主にパイロットの技量によるんじゃね? という無粋な事は俺の胸の奥にしまっておくことにしておこう。

 

『『『うぉぉぉぉぉぉ!!!絶対に負けんなー!!』』』

 

 会場の賑わいに水を差すのも無粋だろうしね。

 さてデブリの嵐であるがこの2機はすぐに突破した。どちらも航宙機として設計されており、この手の障害物回避性能は俺のいた時代の比ではない。これがホーミングミサイルなら話は別だろうが、あいにくデブリ設定されているカラーボールに追尾機能は無い。

 基本性能が高いであろう試作機たちが避けられない道理はなかった。

 

『あやや、存外簡単に避けられてしまいました』

『まぁ宇宙では隕石なんて日常茶飯事だ。アレくらい避けられなくては意味が無い』

『しかしサナダさん、それではお茶の間の皆さんが面白く無いですよ?』

 

 それにしてもこの司会はいろんな意味でノリノリである。

 

『では、そういう訳ですので、アクシデント第二弾!銃撃戦をかいくぐれスタート!!』

 

 なにがそういうわけなんだろうと疑問に思う前にスクリーンに新たな動きが…、デブリの嵐を乗り切った直後の2機に今度はルート上にて待機していた戦艦アバリスが立ちふさがる。そのアバリスの上甲板に鎮座していらっしゃるガトリングレーザー砲に光が灯ったように見えた直後、演習レベルに出力設定された擬似レーザーが、雨霰となって2機に襲い掛かった!

 

 吐き出される光弾の嵐はインフラトン粒子の特徴的な蒼さをもって空間を染め上げる。まさしく弾“幕”と呼ぶにふさわしい美しくも花火の如く刹那な光景。並みの戦闘機では数瞬もせぬうちに落されるのは目に見えるキルゾーン。

 しかしトライアルに参加した2機は共に臆することなくゴールを目指し直進する。前へ前へと歩みを止めることはない。迫る光弾を宇宙の虎は舞い落ちる葉っぱの如くにかわし、一方のVF-0も変形機構を余すことなく使い、やや強引ながらアクロバティックに確実に被弾率を下げている。

 

 疑似的な戦場をかいくぐった2機は、そのままスタート地点へと滑りこんだ!

 

結果は―――

 

 

『結果は―――同着!同着です!何と言う事でしょう!』

『コレでトトカルチョは親の総取りと言ったところか』

 

 トスカ姐さんの大もうけだな、おい。

 それはともかくとしてレースの結果、この2機が最有力候補となった。どちらも一長一短あり、わずか数日で考案された挙句に組まれたとは思えないほど素晴らしい性能である。事実、これは原作にはないイベントであり、現時点で手に入る既製品の機体よりも明らかに性能が上であろうことは明白。梃入れしてみた結果もあるものだ。

 おまけに今回のイベントで機械狂いを公言してやまないケセイヤさんたち以外にも、隠れマッドが何人も乗船している事が判明したわけだ。この先どんなことになることやら…。

 

「レース凄かったねユーリ。私まだドキドキしてる」

「俺もここまで白熱するとは思わなかったッスよ。手に汗握るってのはああいうのをいうんだろうなァ」

 

 実際、最後のほうは俺も身を乗り出して声を上げて応援していた。どっちを? 当然両方だ。我が妹も普段のドンちゃん騒ぎとは別種のお祭り騒ぎの熱気に当てられたのか、とても楽しそうにしていらっしゃる。

 

「こういうのって楽しいね」

 

 そう言ってニコっと笑ってみせるもんだから、可愛く感じて思わず彼女の頭をナデナデしてやった。来たばかりの頃の彼女はどこか感情が不自然、いうなれば喜怒哀楽が“与えられた”のを使用している感じだった。だが、今は間違いなく心からの感情を表に出している。この顔を見れただけでも開催した甲斐があるというものだ。うりうり。

 

「――ッ…あう」

 

 撫でてたら今度はだんだんと顔が赤くなっていくチェルシー。恥ずかしいのかな? それにしては俺の手を振りほどこうとはしないし、むしろされるがままなのだが…。ええい、一々愛い奴め!もっと撫でてやる!一部から妙につよい殺気を感じるが、これも兄の特権なのさ。ふはははっ!

 

「――ん?」

「……どうしたの?」

「あ、いや。ちょっとメールが来ただけッス」

 

 差出人は……ユピテルから?なんじゃろうか?

 チェルシーを撫でる手を片手に変えながら、携帯端末に届いた文章を流し読みする。そこに書かれた内容を見た俺は、すこし口角を吊り上げた。

 

「ん、おk。全然許可ッス…返信、ぽちっとな」

 

 さて、これで面白くなるだろうな。

 いまだ沸き立つ会場の片隅で、俺は密かにそう思ったのだった。

 

 

***

 

『えー、まさかの同着なので、どちらも採用枠に入ったのですが…、イベント運営から連絡がありまして、どうせならナンバーワンを決めようということで採用トライアルからどちらが強いかを競うトライアルへと進みます』

『やる事はとても簡単だ、この2機で模擬戦をして貰う』

『両機とも、基本の装備のみでの闘いです』

 

 さて、相も変らず、とても可愛い反応を見せるチェルシーをいとおしく感じ、頭を抱え込むようにしてわしゃわしゃと撫でるちょっと上級者向けのスキンシップをしていると、帰還した2機が模擬戦するこことになった事が会場にしらされる。確かに同着だからってこのまま終わるのはなんだか尻すぼみというか尻切れトンボというか、ちょいとあっけない幕切れだったから、追加のイベントとしては申し分ないだろう。

 確か昨日見た資料によれば…虎はパルスレーザーとミサイル各種を装備していた。対するVF-0は銃にもなるバルカンポットとマイクロミサイルと頭部レーザー機銃だったな。装備的には虎は中~遠距離に対応し、VF-0は近~中距離がベストっぽい。コレは射角に自由度が効くフェニックスの方が有利かな? 

 

―――そんな事を考えていると司会とサナダさんが再び口を開いた。

 

『…ところでデータ上のスペックはほぼ互角なんですが、これをやる意味は?』

『きまっている。科学班の手がけた機体と整備班の手がけた機体の勝負なのだ。それに…』

『それに?』

『トスカ副長がもっと賭けしたいから続行させろと…』

 

 トスカ姐さんェ…。

 

『それ口にしたらやばくないですか?と、ともあれ両機が指定されたエリアに入り次第、模擬戦は始まります』

『特殊装備はどちらも積んでいない。パイロットも同程度で装備も総合的には似たり寄ったりだ』

『はたしてどちらが模擬戦の勝者となるのでしょうか? 勝利の女神が微笑むのは宇宙の虎か、フェニックスか――ソレではレディー、ゴー!!』

 

 両機がエリアに入った途端、切って落とされる火ぶた。一気にトップスピードまで加速した飛翔体が宇宙空間を翔けて行く。

 

『どちらも早いですが、若干虎の方が早いみたいですね』

『速度は機動戦ではかなりの武器となる。好きなポジションに移動しやすいからだ』

 

 最初にバックをとったのは虎。振り切ろうとする0を、己の持つ高速を生かして振り切らせようとしない。右に逃げれば右に、左に逃げれば左にと、まるで影の如く追いすがる。

 

『おおっと!さっそく0が背後を取られたァァァ!!』

『ミサイルは模擬弾でも誘導対空ミサイルだから、避ける事は困難だろう』

 

 そして虎が翼下のパイロンに付けられたミサイルを発射する。時間差を置いて2発発射されたミサイルは、獲物を狩る猟犬の如く0に迫った。0も回避運動を取るが、どこに回避しても振り切れない。

 

『おおっと、ここで0が止まった!コレはどうした事かぁ!?』

『トラブル…と言う訳でもなさそうだ』

 

 すると突然に0が停止した。まるで諦めたかのように止まったので、場内でトスカ姐さんとか賭け事をしているやつらからブーイングコールが鳴り響いて五月蝿いくらいだ。VF-0はギリギリまでミサイルが迫った瞬間、飛び出すようにひたすら直線に加速していった。ミサイルの燃料切れでも待っているのだろうか?

 

 しかしミサイルは徐々に0に追い付いていく。このままでは燃料切れを起す前に、ミサイルが当たってしまうだろう。何が目的なのかは不明であったが、その理由はすぐに明らかになった。なんと0はミサイルがギリギリまで近づいた途端、いきなり急旋回を行ったのだ。

 重力バランサーがギリギリ中和出来るくらいの急旋回。大きな機体は悲鳴を上げつつも、まるで鷹のように旋回する。かなり急な角度でグルグルとミサイルを引き連れての旋回…というかパイロット大丈夫かな? 幾ら重力バランサーで中和できるって言っても限度があると思うんだが、よくまぁ出来るもんだと思い切りの良さに感心してしまう。0Gドッグだから思い切りがいいのかもしれない。

 

 当然ながらミサイルもロックオンしているVF-0を追った。VF-0もそれが解っているのか旋回をやめない。しかしミサイルのほうが加速性能がたかく初速もあいまりまもなく命中するところまで接近した。これはもうダメか!そう思われた時。

 

「えー!?ユーリあれ!」

「なんなんスか!?」

 

 思わず声を上げて驚いてしまった。接近したミサイルだが、突然見えない何かに鯖折りされたかのように、くの字に折れ曲がって機能停止してしまった。うーん?なにがおきたのん?

 

『こ、コレは一体何故ミサイルが破壊されたのでしょうか?解説のサナダさん』

『恐らく遠心力を利用したのだろう。宇宙の虎に搭載されていたのは標準的な対空ミサイルだ。長く敵を追尾できる様に燃料の都合上、全体が細長く作られている、だから急旋回に発生する横へのGに、ミサイルの本体が耐えきれなかったのだ。ミサイルには重力バランサーもないからな』

『おお!あの直線的な回避行動は戦術的な判断だったと言う訳ですか!――っと!気がつけば今度は0が虎の背後を取った!コレは面白くなってきたぁぁぁ!』

 

 映像には振り切ろうとする虎を元気よく追いかける0の姿がっ!直線では虎の方が早いようだが、空間運動能力では0に軍配が上がる様である。0が虎を追いかけ、軌道に乗った瞬間、ミサイルポッドからマイクロミサイルを全弾発射した。

 

『VF-0も模擬マイクロミサイルを全弾発射!まるで弾幕の様だ!』

『片方5発で全弾発射したから、計10発のミサイルだな』

 

 小周りの効く小型ミサイルが計10発、虎の背後を蛇の如く迫る。

 

「うわっスゴイッスね。……まるで板野サーカスだ(ボソッ」

「どうしたのユーリ」

 

 思わず零した言葉にチェルシーが反応したが、なんでもないと返す。後半は聞こえないくらい小さく呟いたのは言うまでも無い。

 さて虎もさるもので、ミサイルというミサイルを高速のバレルロールで紙一重でかわしている。幾えものミサイルの軌跡が空間に白い帯を残し逃げる虎に追いすがる。

 しかし一発も被弾しないとは、どれだけ高性能なのだろうか?

 

「なんだか後ろを取ったり取られたりで忙しそう」

「ああいうのをドッグファイトって言うんスよ、チェルシー」

「ドッグ?なんで犬なの?」

「ああやってグルグルとお互いの周りを回るのが、犬のケンカみたいだろ?」

 

 今も両機とも、お互いを撃墜しようとグルグル回り続けている。喉笛を噛み切ろうとしている犬のようとはまたしかり。虎が0からの銃撃を横転しながらかわし、0が背後に来た途端、宙返りの頂点で背面姿勢から横転しインメルマンターンを決める。

 さらには追いきれなかった0を追いかける様に、スプリット・Sで追撃する。宇宙空間で空戦機動を見ることになるなんておもわなんだなぁ。対するVF-0も負けて折らず、背後を取られてもすぐに可変機能を用いた強引なベクタード・スラストで宇宙虎の放つ機銃の射線から逃れた。

 そしてそのまま虎を追いかけ、バルカンポッドを掃射する。虎は進行方向を変えずに機首を上げ、いわゆるコブラの機動を取り、そのラグを利用し射線を回避した。だが執拗に続く銃撃にコブラからそのまま後方に機首を変えるクルビットに移行する。

 

『ハイレベルのマニューバが繰り広げられており!司会が口を挟むことが出来ない状況が続いております!』

 

 再びクルビットを行い背後を取った虎は、そのままパルスレーザー機銃を掃射した。VF-0は可変せずにロールとピッチアップを同時に行うバレルロールで銃撃を躱していくが全弾かわしきれず、翼に数発喰らってしまっていた。

 

『おーっと!ここで0が被弾!』

『だが宇宙空間において翼はあくまでもパイロンを取り付けるための担架だ。姿勢制御スラスターが残っているなら飛べる』

 

 サナダさんの解説どおり、VF-0はまだ飛び続けていた。模擬戦のシステムが被弾箇所のダメージを計算してまだ飛べると判断したからだろう。被弾した0は突然バレルロールを止めて今度は垂直に上昇。持ち前の可変機能を駆使し、真横に反転する無理やりのストールターンを行う。

 そして転進してきた虎とヘッドオン!すれ違う瞬間に0が勝負に出た!

 

『VF-0がここで人型に変わったァァァ!そのまま虎に掴みかかるッ!』

『ドッグファイトからインファイトとは、その発想はなかった』

 

 ヘッドオンでお互い倒しきれないとなった途端、VF-0がバトロイドに可変して虎に掴みかかった。衝撃でバルカンポッドが飛ばされたが、そんなの関係無しに頭部レーザー機銃で攻撃。手足というアドバンテージを生かし、虎の翼を掴みながら推進器にパンチを入れた。

 通常宇宙空間でパンチをしても作用反作用の原理でお互いに吹き飛ぶだけだが、VF-0が虎をマニピュレーターで掴んでいるので吹き飛ばされることはなく、パンチの威力がダイレクトに伝わっていく。虎も機体を激しく振り、何とかして振りほどこうと必死だ。その姿はまるでロデオのようであり、飛び乗っているVF-0も限界ギリギリである。だが勝負は付いたな。これは。

 

『システムから虎のダメージが限界値に到達したことで戦闘不能と判断!勝ったのはVF-0です!』

 

 まぁ掴まれた状態で一方的に攻撃されればこうなるわな。こうして模擬戦は終わった。俺にしてみれば新しい有用な手札を得、部下たちには一時の娯楽を提供し、トスカ姐さんは大もうけできて大満足といったところか…。

 

「ユピもお疲れッス。あの機動戦、マジで凄かったッス!」

【おほめにあずかり至極光栄です。艦長】

 

 さて、トライアルも終わり随時解散となったところで、俺は携帯端末でユピテルに声をかけた。実は最後の模擬戦に限り、あの二機を操作していたのは、AIのユピテルだったのである。

 ユピテルからこっそりと聞いた話だと、本来はレーストライアルの時のパイロット達が模擬戦もやる予定だったみたいなのだが、先のレースで思っていたよりも消耗していたらしく互いに参加を拒否したらしいのだ。

 別にそれだけなら良かったのだが、彼ら以外に同レベルの腕前を持つパイロットがいなかったのである。仕方が無いのでこの模擬戦が機体の性能を見るだけと言う事もあり、恒星間用のIP通信システムを用いて、機体に搭載されていた本来なら着艦アシストに使われる自動航法システムを利用し、ラグがゼロの遠隔操縦を今回に限りユピテルが担当したのである。

 俺がそれを知らされたのは先ほどのメールである。ユピがトライアルの運営たちから頼まれたのを俺に知らせ、許可を求めてきたのだ。当然おkした。だって面白そうだったんだもん。

 

「それにしてもユピテル。いったい何処であんな高度なハイマニューバを覚えたんスか?」

【色々な資料を集めまして、基本的戦闘機動から曲芸まで幅広く入れました。あとは…】

「あとは?」

【…フライト・シューティングゲームとかのプログラムです】

「わぁお」

 

 どうやら、未来のゲームは殆どシミュレーターと変わらないようだ。そして模擬戦で見せた様々な機動は自力で参考資料を集めたと…。最初に比べたら随分成長したなぁ。俺は嬉しいぜ。成長するAIは浪漫なのだから、これからもドンドン成長して欲しいね。あ、でも機械の反乱とかはNGな? 重機に押しつぶされる趣味は無いのだ。

 

 それにしてもイベントとしてもトライアルとしても今回のは有意義な時間であった。これで微妙な新機体だったら普通に諦めて市販を購入していたが、その心配は杞憂に終った。コスト面で考えると彼らがカスタム設計した機体達は、通常の市販品と比べてちょっとお値段が張ってしまうけれど、そこは設計を少し見直させて市販品からもパーツが流用できるように調整してもらえばいいだろう。

 

 僅か数日である意味新規設計や人型機動兵器まで考え付くようなマッドどもだ。多少の設計変更くらいなら朝飯前にしてくれるだろう。

 しっかし戦闘空母に乗せる初めての戦闘機が、まさかVF-0とはね。可変機とかすさまじくロマンだぜ!どうせだから俺専用機作って貰おうっと!勿論、劇中にあった特攻仕様、別名ぶっこみ仕様でな!

 

 戦闘シミュレーター位、ウチの連中なら普通に作れそうだな。ソフトはサナダ、ハードはケセイヤだったらすさまじくリアルなヤツが出来そうだ。くぅ~!息抜きの楽しみが増えたってモンだぜ!…艦長は航宙機で出撃しない? いいの!ロマンだから!

 

【あ、それと艦長。次は旗艦に試験搭載した新兵器のお披露目をするとケセイヤさんから連絡です。ユピテルに帰還してください】

「了解ッス。チェルシーはどうする?」

「んー、今の内にステーションで日用品を買いに行って来る。補給品のも悪くないんだけど、自分で選んだ方が使い心地がいいってトスカさんに教えてもらったの。それにまたすぐに航海に出るから長くてもいいように買い貯めとかないと」

【――現在、ステーションの商店エリアにおいてタイムセール中みたいです】 

「ホント?! ユーリ! 私行ってくる!」

「はは…頑張ってくれッス。それじゃあね」

「ええ!それじゃあまた後でね!」

 

 そういうが早いか、チェルシーは会場から出て行った。しっかしタイムセール? 随分とまぁ、人間味が出てきたっつーか、所帯染みてきたっつーか…。

 

 ともあれ俺はステーションでチェルシーと別れてユピテルへと足を運ぶ。お次は新造兵器のテストを兼ねたお披露目式らしい。一体今度はどんなのを作ったのだろうか、既に俺はワクテカなんだが…そんな事を思いつつ、ユピテルのブリッジへと急ぐ俺だった。

 

 

***

 

■旗艦ユピテル・ブリッジ■

 

「自動標準システム、オールリンク」

【システム、オールグリーン、エラーは認められず】

「重力制御装置…出力50%で安定…重力レンズ形成開始」

「チャンバー内圧力上昇、コンデンサーからエネルギー出力」

 

 各シーケンスが完了する毎にブリッジ内にどこか緊張した空気が漂い始める。新しい旗艦に装備された新兵器、その戦闘システムがエネルギーという血液を送られて鼓動するように起動し、その役割を全うするべく稼動している。

 事前説明によれば新概念に基づいた戦闘システムであり、口頭では詳細は理解できなかったものの、その基幹にはグラビティ・ウェル…重力井戸が深く関わっている。その為、重力システムを担当しているミューズさんが、間違いが無いように現れるチェック項目を慎重に確認していった。

 

「ハード上に問題は見られず、目標前方岩塊群、発射準備よろし」

【兵装、全システムオンライン。発射10秒前、カウント開始します】

 

 ユピテルの電子音声によるアナウンスがカウントダウンを開始した。俺はそれを艦長席にて静かに聞く。となりでは副官のトスカ姐さんが、同じく緊張した顔で、事の顛末を見守っていた。

 

【10、9、8、7、6、5】

 

 モニターにはカウントダウンの数字が表示され、外部モニターに映し出されたユピテルの新兵装へと光りが集結しつつあった。

 

【4、3、2、1――】

 

 そして、ついにカウントがゼロに変わるその時。

 

「ホーミングレーザー・シェキナ…発射!」

 

 ストールがコンソールから発射命令を下す。緊張したユピテル艦内に装甲板を伝わって冷却機の音が微かに木霊した。直後、外部モニターの映像が変化を向かえる。船体側面に取り付けられた発振機から、いくつものレーザーが虚空へと放たれたのだ。

 そのレーザーは光学兵器であり、その名に恥じず直線する―――かに思われた。

 

「第一重力レンズに到達…歪曲開始」

 

 光が……曲がった。直進する筈の凝集光はまるで見えないチューブを通るように、何も無いはずの空間の中を“く”の字に折れ曲がった。それは一つではない。丸い船体の側面に沿って配置された発振機から同時に照射された凝集光は、全て虚空の中で曲射していた。

 曲射したのはユピテルの艦首前方。照射されたレーザーが横にした漏斗の中を通過するようにある一点目掛けて飛来していく。大体ユピテルの進行方向を軸にした真芯の延長線にあるポイントに迫った凝集光の群れは、まるで巨大な飛行生物が広げた翼を思わせた。

 

「第二重力レンズ…収束、確認」

 

 殺到した凝集光、そこで互いに互いを喰い散らかすのかと思いきや、交叉する空間に歪みが発生し、飛び込んだレーザーというレーザーが束を形作っていく。瞬間的であったが最初は無数、刹那には一つの束となったレーザーは、当初の大きさを超えて巨大な光となって軸線上の前方空間へと収束したまま照射された。

 光の束が突き進むその先。そこには仮想敵と設定した岩塊が浮遊していた。左右から飛来し、一点で凝縮されて巨大なうねりとなって迫る凝集光。なんの推進器もない天然の岩塊が躱せる筈もない。岩塊はあっけなく光のうねりへと飲み込まれ、その膨大な熱量に影だけを一瞬残した後、素粒子へと戻されてしまった。

 

「岩塊の破壊を確認、連続テスト、模擬戦用ドローン射出します」

 

 その事に感想を述べる時間はなく、オペレーターのミドリさんの声と共に無人機達が次々と射出されていく。射出の慣性により飛ばされたドローンはすぐさまシステムを起動して編隊を組んでいった。

 そして幾つかの編隊に分かれたドローンたちは、ユピテルを取り囲むように展開。魚の群れのように綺麗な編隊機動を保ちつつ、対艦攻撃する戦闘機の機動を取り始めたのだった。

 対艦戦闘のセオリー通り、ユピテルの艦橋直上方向からの強襲戦闘を行おうとする模擬戦用ドローン編隊。本来なら艦ごと砲門をそちらに向けなければ迎撃できないのだが、ドローンの速度は速く、回頭は間に合わない。このままでは艦橋部を中心に致命的損傷、中破ないし大破判定が下される筈。

 

「試験兵装システム、収束モードから拡散モードにシフト…重力レンズ形成、完了」

「出力問題無し、蓄熱量冷却許容限界内で安定、再発射準備よし」

「インターバル1で斉射開始」

 

 しかし、直後ユピテルの船体側面が再び光を帯びる。先ほどより幾分か出力を抑えられた細いレーザーが照射されると、それらは再び“く”の字を描いて今度は直上方向へと折れ曲がった。それだけではなく、空間の歪みがブレ、折れ曲がったレーザーが幾つもの細かなレーザーへと変化を遂げている。

 それはアバリスに搭載されているガトリングレーザー砲の輝きと酷似していた。即ち面を埋めるような弾幕。勿論それは本家ガトリングレーザー砲が生み出す弾幕カーテンよりもか細く、APFを搭載している艦艇なら防ぎ切れてしまうようなもの。

 

「全標的の撃破を確認」

 

 されど、APFを搭載していない機体なら、地獄の壁となって立ちふさがるもの。

 真上から飛来していた模擬戦用ドローンたちは分厚い光弾の壁を突破できず、その全てが細かな凝集光により穴だらけになった後、爆散したのだった。

 

【FCSエラー、認められず。システムオールグリーン】

「発振体の故障も認められず、耐久性もクリア」

「命中率69%、拡散分を差し引けば76%、誘導なら90%」

「APFS及びデフレクター問題無し、波長干渉値も許容範囲内」

「ユーリ。これで新装備のテストは完了だ。どうだい?」

 

 どこか肌を撫でるようなピリピリとした緊張感が残るブリッジの中、背後に控えていたトスカ姐さんが俺にそう尋ねてきた。手の指を顔の前で束ね、ひじをコンソールに乗せている俺は態勢を崩さずにトスカ姐さんの方へ意識を向け。

 

「ふっ、勝ったな。コレは」

 

 思わず某新世紀のグラ髭司令を肖ってこう言ってしまった。直後、背後から聞こえる噴出す音。似合わないと小声で呟くのもセットである。そうだね、黒歴史確定だね。

 

「なにはともあれ…凄いモンができたッスね!」

 

 気恥ずかしくなり、腕組みを解いて立ち上がった俺は、なんとも緊張感の無い声色でブリッジにいたメンバーにそう告げた。あまりのエアブレイカー力に漂っていた緊張感すら霧散する。

 ただの御披露目であったが、新機軸の兵装であった事もあり、それなりに皆緊張していたのだ。かく言う俺も手には汗が溜まっていたので、適当にズボンのポケットに突っ込んで拭った。

 

「ふっふっふ!威力は見たとおり調整が効いて、重力偏向レンズ形成によって射角に関しては言わずもがな!全方位をほぼカバーできる!射程も重力レンズの形成次第ではかなり遠くまで飛ばせる!!まさにパーフェクトッ!さすがは俺!いいモン造ったぜいッ!!」

「これ商品登録したら儲かりそうッスね?」

 

 力説しているケセイヤを尻目に、俺はこの新機軸の兵装を装備するのも勿論だが、商品化すれば売れるのではないかと考えていた。どこかの兵器工場が量産してくれれば整備が楽になるだろうと思ったのである。何せ既製品じゃないからな。壊れた時は根性で直せとしか言いようがないのだ。

 話がそれたが、だからどっかの兵器企業にでも売り込めんかなーと口にしたのだが…。

 

「無理だな」

 

 ナイスなそのアイディアは速攻で却下されたお(^ω^;)

 

「え?何でッスかサナダさん」

「このホーミングレーザーシステムを扱うには、高性能なデフレクター・ジェネレーターが複数必要だ。またソレを搭載できる規模の拡張性となると大型艦艇に限られる。さらには複数の火線を操作する火器管制には通常よりも演算機能が高いスパコンが必要となってくるだろう。それだけのシステムを賄えるエネルギーを得られる高出力機関も当然いる。商品化しても大型艦専用装備になるだろうから小~中艦艇が中心の小マゼランでは一般には売れん。売れるとしたら軍関係になるだろうな。パテントは持っていかれるだろうな」

 

 納得。なら商品化は諦めよう。幸い新機軸と言ってもその実、枯れた技術である既存システムのちょとした応用だからな。何とかなるだろう。

 

 しっかしSFで夢見たホーミングレーザー砲が作れたなんてな。ホーミングと言ってもミサイルの如く追いすがるんじゃなくて射線を変える程度だけど、それでもかなり凄い技術と言わざるを得ない。

 だから、俺はこの言葉を彼等に送ろう――。

 

「ケセイヤさん、おめでとう、この装備頂きッス」

「ヨッシャッ!ソレでこそ作った甲斐があるってモンだぜ!」

 

 テストの為、ブリッジに詰めていたケセイヤさんを含めた整備班の連中は歓声を上げた。その姿は、まるで良い事があった子供の姿そのモノ。ブリッジクルー達も、どこか微笑ましい目で彼らを見ている。

 

「しかし、随分と改造されたッスね」

「外見も若干変化したからな、元がズィガ-コ級だと解らんだろう」

「元々ズィガーゴ級なんて知っている0Gドッグなんぞ、小マゼランにどれくらいいるかだけどね」

「「ちがいない」ッス」

 

 トスカ姐さんの呟きに一同も納得顔である。もともとズィガ-コ級戦闘空母は大マゼランの海賊が設計したフネだから一般では知られていない艦種なのだ。知っていたら逆にすごい戦艦オタクって事になるだろう。

 んで、件のユピテルだが、元々のデザインでは正面から見ると骸骨みたいな面構えだったんだけど、ウチのマッド連中の素敵改造によって大部分が改装されてしまったので大分原型からは異なっている。

 

 まず頭蓋骨を思わせる眼孔や鼻腔のような無駄な穴は塞がれ、骨骨しいというか角ばった感じだった部分も被弾時の耐久性と整備製を考えて滑らかな装甲に代わり、お陰で全体的にもシャープな印象となった。両舷側面にはデフレクターとホーミングレーザーも設置されセンサー類も軒並み増設。それに伴い防御や通信機能、管制機能も向上している。

 

 なんだろう? この“ぼくのかんがえた最強のフネ”を作ったぜ!的な感じは? 既に小マゼランじゃ暴力でしか無いだろう、このフネ。

 

「お陰で溜めこんでたお金は殆どパーッスけどね」

「嫌まさかここまで改造する事になろうとは、自分が時たま恐ろしくなる」

「ホントっすよ。湯水の如く開発費を請求された時にゃどうしようかと…」

「艦長よ。金は貯めるためにあるんじゃない。使う為にあるんだ」

「俺達が星間国家の経済を潤してるんだZE☆」

 

 ZE☆じゃねぇよ。ZE☆じゃ…。

 お前らが事後請求でやってくれるモンだから、ギリギリ自転車操業。貯蓄を喰いきることでギリギリで、もう決算の書類に埋もれるのは勘弁じゃ。そう言う訳で現在所持金の備蓄が殆ど無い。だからこれからバンバン、この装備を酷使して頑張って貰わないとね。0Gが借金で首回らないとか…夢がねぇよ。

 

「ステーションに戻ってクルーを搭乗する時にモジュールを変更してアバリスは貨物船化処理しておこう…。移動するだけで金になるッス」

「運送もやるのか?ならばより高速化させる案があるんだが?」

「う~っ!しばらくは改造禁止ッス!お金が貯まるまで我慢してくれッス!」

「そうか(・ω・`)」

 

 そ、そんな顔でショボーンってすんなよサナダさん。

 

「それじゃ、一度ステーションに戻るッス。トスカさん、後頼むッス」

「あいよ」

 

 こうしてユピテルの改造は終わった。ステーションで降りていたクルー達を回収したら、補給した後新たな航海に出る。次はたしかエルメッツァ中央か…はて? なんか色々と事件があったような…? なんか忘れているが、思い出せないならまぁいいか。

 

 こうして馬鹿みたいに強くなった艦隊はステーションへと針路を取った。

 そして俺はこう思う…マッドってスゲェな。

 

 




QOLです。長らく開きましたが何とか復帰したので徐々にやってまいります。
夏の間の仕事と暑さと熱中症と体調不良のコンボで倒れかけましたが…。
モチベーションの低下って怖いね(´・ω・`)

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