何時の間にか無限航路   作:QOL

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~何時の間にか無限航路・第10話、エルメッツァ中央編~

■エルメッツァ編・第十章■

 

 

 じっ様を探してエーンやコーラと言う感じで戻ってまいりましたラッツィオ方面。

 ラッツィオよ、私は返ってきたっ!とかガトーさんに肖ったネタをやったら周りから変な目で見られたお(;^ω^)

 

 く、くやしい、でも感じ(ry

 

 まぁそんなバカなリアクションをやるのは何時もの事なんでブリッジクルーは平常運転である。唯一ついこの間加入することになったイネスだけは、この船に乗ってよかったんだろうかと頭を抱えていたが今更であろう。自分で乗ると決めてたんだから、イネスには災難だが、最後までお付き合い願おうか。 

 

 

 さて話を戻すが、俺達は再びラッツィオに戻ってきた。それはこの宙域にて放浪している一人の伝説的軍師を探し出し、紛争解決の為に協力してもらうためであるのはいうまでもない。その道筋は実に静かなモンであった。なにせ本来なら針路においては脅威となるはずの海賊を、その本拠地ごと潰してしまったので航路上は至って平和なのである。

 

 最もそこいらの海賊風情では返り討ちにしてしまえる程度の戦力は有しているので囲まれてしまわない限り、この宙域に出没していた海賊程度では脅威足り得ない。海賊の中には大海賊と称される人物もいるが、よほど悪運が無い限り辺境ほど近いこの宙域にて出会うことは稀であろう。

 

 なんせ航路上には俺達以外殆ど誰もいないといってもいいくらいにセンサーに反応が無い。この宙域の海賊団が解体されたのはごく最近であり、それまですき放題されてボロボロにされていた交易路が復活するまでにはまだまだ時間が掛かる。お陰で精々が勇気ある交易船とすれ違う程度であり、厄介ごとも何一つ無いとても平和な旅路であった。

 

 こんなラッツィオ宙域ではあるものの、いくら辺境とはいえ宇宙は広く、この宙域に浮かぶ居住可能惑星の数はそれなりに多い。そん中からレジェンドなジジイを一人探し出せと来たもんだ。おまけに本人は隠居してる身だから恐らくかなり地味で周囲に溶け込むような感じなのだろう。

 

 

 まるで塩に紛れ込んだ砂糖一粒を探しだすようなものだ。実際に舐めてみないと解らないように、一々惑星に下りて調べなければ見つけ出すのは困難だろう。探偵とか情報屋を使うのも手だが大体は一つの星で完結している連中が多く、星々を跨いで活躍しているような輩は総じて金額が高い上、小マゼランの辺境近くには存在していない。

 

 残された手は地道に星々を渡り歩いて地道に情報を集めていくしかない。なんというか…とてつもなく地味でつまらない作業である。刹那的でスリルと浪漫を追い求める0Gドッグのする事じゃない。というかディゴさん情報部所属なんだから軍の諜報網を使えよ!個人で探すよか簡単だろうが…!

 

 愚痴っても仕方が無いのだが、少しは愚痴りたくなってもしょうがないと思う。もっともよくよく考えれば隠居して放浪している老人がラッツィオ周辺にいたという足取りを掴めただけでも中央政府の諜報部の優秀さが伺える気がする。

 

 

 それで大変な作業になるかと思ったのだが、俺もまた面倒くさいことは嫌いであり、裏技を使って爺さんを探そうと試みた。原作知識の活用である。

 

 ただコレにも難点があり、無限航路というゲームはけっこうストーリーが長いゲームだった為、基本的に大筋くらいしか覚え切れてなかったのである。サイドミッションとかどこで誰が仲間になるだとかいうような横道は全然覚えていない。思い出せないのではなく覚える必要が無い些細な話だったから覚えていなかったのだ。

 

 なんせあのゲーム、メインはストーリーよりもペイロードいっぱいに貨物モジュールを組み込んで星系の端から端を疲労度というゲージが限界超えるまで往復するデスランニングを敢行し、名声値&資金を集めてついでに出る賊退治でクルーのレベルアップをしていくのが………あれ?今とあんまり変わんなくね?

 

  

 とにかく原作知識というのはコンソールコマンド並みに心強きアドバンテージであるが、大筋以外ほとんど覚えていないので、正直まったく活かせる気がしないのだ。なまじ今の状況はゲームの世界とはいえ現実と相違ない上に俺がちょくちょく主人公とは違う行動もとっているのでバタフライエフェクトが…。こういうののお約束で大体は大筋どおりに流れるであろうが、差異は如実に現れることだろう。

 

 ただ幸いな事に今回のこれはよっぽど面倒くさく感じたのか、普段戦闘とかフネの運営意外ではあまり使わない脳みそを酷使した結果、原作記憶をなんとか掘り起こして爺さんがいると思われる大体の位置を思い出せた。こういう時、原作知識もちの憑依ってのは便利だね。

 

 

 そういう訳で爺様がおおよそ何処にいるのかというのは見当がついていた。ただエルメッツァ中央につながるボイドゲートから若干離れた航路上に位置する星なので、来てすぐにそこを目指すというのは難しいだろう。なんでいきなりほかの星を無視してそこに向かうのかが説明出来ないからだ。

 

 もっとも俺の普段の行動を鑑みるに、勘だ!で押し通せる気がしないでもないが…実際外れたら恥ずかしいので、順当に星々を巡りながら、その惑星への航路を決定してやればいい。そうすれば、おのずとアルファロエンの元にたどり着けるだろう。

 

 とはいえ、気まぐれを起しやすい運命の女神様の悪戯が働いて、すでに伝説の爺さんはその惑星からいなくなっている可能性もある。いなかったら星系をグルグルまわる羽目になるので女神様にお願いしておかねばなるまいて…。

 

 

「なんで私の胸に手を合わせてるんだい?」

「すべてはおっぱお神の導きのままに!」

「………ユーリ、あんた疲れてるんだよ。医務室に行ってサド先生から人生の妙薬でも貰っといで」

「酒飲んで寝てろって事ッスね。ふひひ、さーせん」

「その笑い方やめな」

 

 さーせん。

 

「まぁ、おっぱお神はここにいるからいいとして、ホント今回面倒臭いッス」

「だから私の胸に手を合わせんな。拝むくらいなら金でも積みな…じゃなくてそこから離れよう。なんか頭いたい」

「あれれー、それじゃあ医務室行ってきたらいいッスよトスカさん」

「さっきとお互いの主張が入れ替わったね。そして無償にアンタを殴ったらすっきりしそうだよ…」

「わわ、暴力はんた―――」

「問答無用」

「ぎゃー!」

 

 

 ※しばらく、お待ちください。

 

 

「いてて、酷い目にあったッス」

「セクハラ男は嫌われるよ?」

「もう懲りたッス(おっぱおに付いては謝らない!)」

 

 だってトスカ姐さんってば。じーっと見つめ続けると少し赤くなるんだもの。そういう事に慣れていそうな人なのにそんな初々しい部分を見せつけられたら虜になっちゃうって。おっぱいも大きいしな。ここ重要。やめられない止まらない…。

 

 

「フフ、バカな男はもう一回矯正…いや去勢のほうがいいのかい?」

「ごめんなさい。男として終わるのは勘弁してください。というかトスカさんが魅力的過ぎるのが悪いんス。許してつかあさい」

 

 切られてはたまらないので大前転土下座を選択するぜ。とりあえず襟首つかまれての腹パン一つで許されたけど、トスカ姐さん、子坊が生意気とかナニやらぶつぶつ言ってた。よく聞こえなかったんだが顔を紅くして怒っていたので、俺は追及できなかったのだった。

 

 

「話を戻すけど、やっぱ面倒くさいッス」

「自分で決めたんだからウジウジ言わないのがいい男だよ」

「あう。気ィつけるッス」

 

 政府に嫌だといえない。小心者だと笑いたきゃ笑え。そのくらい慎重じゃないと俺たち程度の勢力だと簡単につぶされてしまう。一キロ越えの超戦艦保有していて何言ってんだとか言われそうだけど、戦いは数だよ兄貴。さすがに国一つ分の軍隊を相手取るには戦力がなさすぎるぜ。

 

 

「ま、輸送品で懐も潤うからそれの序でだと思えばいいじゃないか」

 

 いい事いうねトスカ姐さん。そう、俺達はエルメッツァ中央からこちら側へと戻ってくる際、向こうではそうでもないが此方では価値が出そうな品物を幾つかリストアップしてコンテナごと持って来てあったりする。内訳は精密機械だったり希少鉱石だったり雑貨だったりと色々だ。

 だが海賊騒ぎで交易が滞っていたコッチみたいな辺境だと確実に金になるモノでもある。ある意味海賊さまさまだ。こういうのなんていうんだっけ?マッシュアップ?梃入れ?それともマッチポンプかな?でも別に意図していないから全部はずれかも。

 

 

「そうッスね。お金はいくらあっても良い」

「そうそう」

「特にウチの場合、開発費関係無しに作る技術陣がいるから…うぅ、もう支出と収入の計算とかやだぁ」

「たしかにね…(パトロンやめればいいと思うとかいうのは言わないでおいてやろう)」

 

 思わずため息をつきたくはなる。あいつ等は稀にこちらに開発始めた云々の報告を出す前に開発してたりする事があるのだ。勿論、その際に発生する金は後で決算する訳だが、報告が事後報告だったり、最悪無かったりするので事務作業がかなり大変なのだ。

 そりゃね?ケセイヤやサナダさんあたりが口にしている『こんな事もあろうかと』っていうのはロマンだからある程度理解もするし憧れるのもわかるよ?けど現実問題としてそういう事のために使われた費用は詳細目録込でちゃんと報告してほしいのだ。使われた材料費と実際にかかった費用を見比べて、逆算し、横領とか不正が行われなかったかを調べたりする決算をさせられているのでホント切実なのである。

 

 

「ユピがいなかったら過労死していたかもしれないッスね」

「計算は得意中の得意だろうからね。コントロールユニットモジュールを入れたあんたの選択は正しいと思うよ」

 

 コントロールユニットという高性能CPU、そしてそれのインターフェイスとして存在しているユピのAIコアが持つ演算能力は伊達ではない。本来フネを動かすのに必要とされる人員を補う目的で開発されたCU、物理的に人の手がいらないところを自動化し自立稼働させるそれは、艦内の各区画にある様々なシステムを並列処理している。

 インターフェイスではあるがある意味CUその物ともいえるAIユピもまた、膨大な計算能力と並列処理能力を誇っているのだ。それは余剰パワーとはいえ、まるで感情があるかのように振る舞い、さらには成長していける点から見ても明らかにずば抜けている。というか下手したら人間いらないんじゃね?とも思えてしまう程に優秀だ。

 おかげで助かってますだ。ホント俺にはもったいない程優秀なAIに感謝感謝。

 

 

「そうッスか?いやー褒められると照れるッスー」

「実際、計算能力はユーリよりも遥かに上だもんね」

【きょ、恐縮です!】

「それはともかく、AIまで動員しないと決算が追い付かないとか他じゃ見られない光景だよホント」

「それにトスカさんが事務処理のコツを教えてくれなかったらもっとヒーコラ言ってたッス。本当にありがとうございます」

「ふふ、私はフネを預かる人間なら誰だっていつかは習得する事を教えただけさ。それに今はユピっていう優秀な秘書もいる。私の教えなんて基本的な事でしかないよ」

「だとしても、俺がそのお蔭で助かったのは事実ッスよ。抱きしめたい程感謝していますですハイ」

 

 そう言って俺は姐さんをジッと見つめた。抱きしめたい云々は冗談だけどそれ以外は本音であるという意味を込めて。実際抱きついたら殴られるからねぇー。きっと。

 

 

「……ほう?それじゃあ、感謝の気持ちを表してもらっても構わないよ?」

「え?」

「ほら、遠慮しないで、そういうの嫌いじゃないだろ?」

「あ、いや…あれはその…あ、アウゥ」

 

 なのに、なぜかマジレスで返された。言っておくが俺は生まれた年齢イコール彼女いない歴である。こういう返しは予想しておらず、どうすればいいのか全く見当もつかん。うろたえる俺をしり目にトスカ姐さんはゆっくりと副長席を立ちあがり、俺のすぐ隣にしゃがむと顔を近づけてきた。普段はあまり気にしたことはなかったが、彼女から感じる女性の甘い匂いが脳髄を殴りつけてきた。

 エマージェンシー、エマージェンシー。心臓が早鐘を打ち顔が熱くなっていく。体験した事がなかったそれに俺はアウアウと狼狽えることしかできなかった。そうだよ俺はDTなんだよ!だからごめんなさいもういじるのはゆるしてくだしゃい。

 

 

「あうあうあう」

「―――冗談さ。子坊が色めきだつってのはまだ早いよ。このエロ坊主」

「あて」

 

 息がかかる程近づいたあたりで目を瞑ってしまった直後、デコピンが俺の額を襲った。かなり力がこもったデコピンの威力に涙目になりながら目を開いた時には、すでにトスカ姐さんは自分の席に…かなわねぇなぁ。

 

 

「とにかくさァ、マッド連中のもたらす利もかなりのものなんだろう?」

 

 こういう絡みは懲りたのでしばらくは封印だと心に決めたところで、姐さんが違う話題を振ってきた。まだドキドキしているので俺も話題変更に乗っかる事にする。

 

 

「ういッス。放し飼い状態が効いたのか、フネ自体の研究が他とは比べ物にならないくらい強力になっているス」

「そういえば、この間アンタが事務処理で忙しくしている時に連中アバリスにも手をだしたらしいよ?」

「え?その話kwsk」

 

 トスカ姐さんはコンソールを操作して俺の方へとモニターを飛ばしてきた。空間タッチパネルで引き寄せて投影したところ、そこにはアバリスの全体像と詳細が語られている文面が入っていた。それによると我が艦隊の旗艦であったアバリスはマッド共の所為で大きくその姿を変えようだ。

 

 人員不足によりアバリスは現在コントロールユニットにより半ば無人艦と化していたのだが、人が乗らないからデッドスペースと化していた居住用モジュール等を完全一掃。空いたスペースに製造機器をブチ込んだようだ。

 これが駆逐艦や巡洋艦クラスならそれほどではないが、アバリスは腐っても大型戦艦であり、本来なら何千人単位で生活できる居住モジュールだったところを撤去した事により、空きスペースは非常に広いものとなっていたのだ。

 

 よって、そこに新たに設けられた製造設備は下手な工場よりも規模が大きいらしく、材料さえ揃えられればさまざまな物を製造可能になっていた。VF-0が妙にすぐに組みあがるのにはこういうカラクリがあったようだ。外観も少し変化しており、現在アバリスの船体後部には小さなカタパルトが増設されている。資料によればそこからは工作艇が発進可能であり、サルベージや小惑星からの資源回収に役立てるとのこと。

 

 さらには両舷から大きなアームも突き出しており、艦の修繕やサルベージ時の固定など多目的用途に使えるように配慮されている。

 

 

「仕様を見た感じ、アバリスが戦艦から工作母艦と化してるッスね」

「どちらかと言えばファクトリーベースだろうね。艦載機もアソコで組み立てているし」

 

 尚、工作母艦の癖にガトリングレーザーキャノンはそのまま装備されているので単艦における戦闘能力は健在であるようだ。おまけに人が居ない事で周囲の迷惑というものを考慮しなくて良くなった事で、船内の装備品のいくつかを自重しない研究の末に作り上げた試作品に換装しているらしい。

 

 マッドがいつから他人の迷惑について考慮していたかについては言いたい事が多々あるが彼らも彼らなりに一応は考慮していたというアピールだろうか?ともあれアバリスは爆発したり怪しい効果が出るかもしれない試作装備の塊らしい。

 マッド共よ、試してみたいという欲求は理解できるが、少しは自重しろよ。アバリスはあれでも前の旗艦だったんだぞ?情に熱い船乗りだったら号泣モンだぞアレ。

 

 

「詳細は量が多すぎて把握するまで時間かかるけど、とにかくアバリスは連中が好き勝手した所為でもはや別のフネだね」

「……なんか書類が急激に増えて艦長室から出られなくなった日があったのはその所為ッスか」

「秘儀、書類輪廻の法、責任者は書類に埋まる――とかほざいてたね。シメておいたよ」

「トスカさん…ありがとう、ありがとうッ」

 

 下手人はケがついてヤで終わる人と、サがついてダで終わる人なのは言うまでもない。そしてそれを粛清してくれた彼女の好意に思わず目じりに涙が溜まる。さりげなくフォローしてくれる貴女は素敵です。愛してます。

 

 

「しっかし、何でこんなに優秀な人達がこんな辺境に埋もれてたんでしょうね?」

「埋もれてたんじゃ無くて単に活躍できる場所が無かったのさ」

「まぁウチでなら余程の事が無い限り、開発費をケチらないッスからね」

 

 お陰でウチのフネは部分的に現在の科学力を凌駕している。どこの未来からきたフネだよオイ。この分なら将来訪れる宇宙規模の脅威にも……対抗できたらいいなぁ。

 

 

【艦長、そろそろ訓練に行かれる時間では?】

「……あ、そうッスね。教えてくれて感謝ッス!ユピ」

「それじゃいつも通りに私が指揮を引き継ぐよ?」

「頼むッスよ」

 

 

 

***

 

 

 

「ちょっと良いかい?二人で話がしたいんだ」

 

 ブリッジから出る為ブラストドアを潜ろうとした時、イネスが声をかけてきた。

 

「ん、なんスか?」

「いや、今まで君の艦長ぶりを見させてもらってたんだが…」

「ふむ」

「君は、本当に自分が艦長にふさわしいと思っているのか?」

「いや何なんスかいきなり?」

 

 

 意味が分からん。この艦隊を指揮しているのは俺だぞ?あまりに唐突過ぎて正直なんて答えてやるか悩むぜ。というか何なんだろうかね?艦長批判なのバカなの死ぬの?喧嘩打ってるなら受けて立つよ?主にコブシで。

 シュッシュとシャドーを始めた俺を無視してイネスはさらに追及の手を向ける。

 

 

「早く答えてくれ、どっちなんだ?」

「う~ん、確かに色々俺には足りないッスけど、ふさわしく有ろうとはしてるッスよ?」

 

 妙に真剣な眼を向けてくるもんだから怒気が抜けて普通に答えてしまう。しかし艦長として…か。一応ふさわしく有ろうとしてるが、実質好き勝手してるよな。だって楽しく無かったら意味がねぇんだもん。

 

 

「僕の考えは違う」

「何がッスか?」

「僕はいつか自分のフネを持とうと学んでいるんだ。その目から言わせてもらえば―――」

「トスカさん辺りが艦長にふさわしいと言いたいんスね?」

 

 言いよどむイネス。まぁ解からんでもない。能力面でもあの人は俺よりもはるかに有能だ。俺も憑依した先がユーリという主人公君だったお蔭かある種チートじみた性能があるが、彼女のような熟練した技術、経験という何物にも代えがたいスキルを持っているトスカ姐さんが俺よか優秀なのは仕方ない事なのだ。

 逆にこの世界にきて一年も経っていない俺が十何年も前から0Gしてる彼女を追い越していたら不自然な訳だし、これはこれでいいのだ。

 

 

「なぁに自分でも解ってるッス。こんな俺が艦長でいいのかとかね。だけど、トスカさんもクルーの皆も、俺が艦長でいいって言ってくれたッス。なら男ならその期待に応えなくちゃと思うのは不自然な事ッスか?」

「その解は少々合理性に欠けているが、たしかに…」

「それに元々このフネを最初に組織したのは俺ッス。俺が立てた旗のもとに、みんな集まってくれたッス。皆信念の様なものを持ってるッスけど、ソレと俺の立てた旗の下が偶々皆にとって居心地がよかっただけ何スよ」

 

 旗の下云々は某有名な宇宙海賊様を肖った。好きなんだよね。ああいうアウトローな人。

 もっとも海賊に身を落とす気はさらさらないが…だって人様の物資を強奪するなんて悪い事なんだよ。

 

 え?海賊船を丸ごと拿捕するのはいいのかって?あーあー、聞こえなーい。

 

 こういう俺の返事に対し、イネスは納得したのかそうでないのか分からん表情を浮かべ俺から離れていった。それにしても新人からこんな意見が飛んでくるとは俺ってそんなにたよりないかね?…かもしれないorz

 

 俺の事を多少なりとも知っている創設以来の連中なら、俺はこんなやつだと理解してくれているが、後から来た連中からしてみれば俺ってただの変人にしか見えないんだろうなぁ。

 

 

「よし!シミュレーターがんばるぞー!」

 

 コレは早く強くならなくてはと思いシミュレーターへと急ぐ俺。しかし、有能な艦長と戦闘機に乗って強いのとでは、主旨というか方向性がまったく違うという事に気付いたのはずっと後でした。気が付いたその時はマジで俺ってバカだと思って、リアルで自室でorzしたのは言うまでもない。

 

 俺って、ホント馬鹿。

 

 

……………………

 

 

………………

 

 

………… 

 

 

――惑星レーン―――

 

 惑星レーン。小マゼランにおいて中期位にテラフォーミングされ、人が住めるようになった星。大きさは基本的なガイア級であり、人類居住可能の標準クラスである。元々は大気の無い惑星であったのだが、人工的に大気を作りだすことによって20年位でテラフォーミングが完了した。特産品は特には無い。現在の人口はおよそ814500万人。もうチョイ解りやすく書くと81億4千5百万人ということになる。

 

 

―――と、手元の資料を調べたらこんなのが出て来た。

 

 

 さて、伝説のじっさまを探して航路を進めた現在。我々は辺境惑星レーンに到達していた。星図の端から攻めて行こうぜって順番に星々を巡り、この星系では星図の端、あるいみで辺境であるここまでやって来たのだ。

 原作知識に基づいた記憶が正しければ、この星に目的の人物が居るはずなのである。そんな訳で何時ものようにステーションにユピテルをドッキングさせた。今回は割かしすぐに出港する事になるかも知れないので人員は情報収集を行う最低限の人数しか降り無い。つまり代表の俺と補佐役のトスカ姐さんと一応の護衛役でトーロだけを連れて、下界へと降りて行った。

 

 ただ降りると言っても行く場所は最初から決まっている。0Gドッグ酒場しか無い。適当にVF-0で惑星上を見て回っても良いんだが、惑星を管理している行政府から惑星内領空飛行許可を得るのが面倒くさい。どれほど面倒くさいかというと税金関連で市役所で書類書かされるレベルといえば分るだろうか?つまりたらい回し。

 また事前にこの惑星の星間通信ネットワークにアクセスし、あらかた調べてみたが、人探しなどの探偵や興信所はこの惑星レーンには非常に少なく、簡単に利用できる酒場以上に部外者が情報を得られる場所は無かったのである、それに惑星の上陸したらとりあえずココから調べるのがセオリーなのだ。

 

 

―――そういう訳で、俺達は酒場に来ている訳なんだが…。

 

 

「なぁ、アタシの目の錯覚かな?カウンターに爺さんが一人いる気がするんだが?」

「トスカさんもッスか?俺もそう思ってたッス」

「というか、明らかにアレが目的の爺さんじゃねぇか?」

「だけどトーロ、人違いの可能性もあると思います」

「いや、こういった酒場を利用できるのは0Gくらいだから案外当たりかも知れない」

 

 原作通りこの酒場にルーはいた。灰色に近い色をした…ローブっていうんだろうか?某フォ○スを感じる方々の茶色い上着によく似ていらっしゃる物を身にまとい、バーカウンターに腰かけている。一見するとただの旅の客に見えなくもない。うまい具合に周囲に溶け込んでいらっしゃる。最初から探そうと注視していなければ見過ごしてしまう程の見事な地味具合であった。

 

 それにしても本当にいるとは…ありがとう原作知識、これで他の星系を回らなくて済んだから行幸だ。フネとて使えば少なからず消耗するので、星系を駆け巡るような事態にならなくて良かったぜ。

 

 

「それで誰が行くッスか?」

「決まってんだろう?」

「いう必要もないだろう?」

「……やっぱり俺ッスか?」

「「おう」」

 

 くっ、トスカ姐さんもトーロも異口同音で返事しやがった。お前らいつの間にそんなに連携うまくなったんよ?おいちゃんさみしい…、まぁおふざけは良いとして、どうせ何言っても行かされそうなのですごすごと席を立つと、老人が座っている席へと近づいた。

 

 ちかくまで行くと老人の目がこちらに向いた。薄く細められた目は意図を持って近寄ってきた俺という珍客を見て、ちょっと判断に迷っているようだ。そりゃこんな若造が近寄ってきたら変にも思うだろう。思わずにっこりと笑顔にしてみたら警戒が高まったのは余談である。だが俺は気にしないで突っ込むぜ!突貫~!

 

 

「あのう、もしかして貴方はルスファン・アルファロエンさんでは?」

「ほう、まさしくその通りじゃが、お前さん何処でその名を?」

「実は――――」

 

 色々とてんやわんやしている軍から頼まれて探していた事。紛争解決の為に力貸してくれないかと言う事を説明した。老体は髭を撫でながらこちらの話を聞き思考の海に入っている姿を見て、うわさ通り伝説の軍政家というのは嘘ではないのだと感じた。

 

 あまりにも様になりすぎているのだ。隠しようもない知性と策謀の空気をその佇まいから醸し出している。というかぶっちゃけすごいオーラのおじいちゃんである。伝説の軍師ってよりも伝説の老兵って雰囲気が似合いそうだ。怖ぇぇ。

 

 

「ふむ…ベクサ星系はいつかそうなると思っておったが…、政府軍も動きが取れず、苦しいところじゃな」

「なんとかなりませんかね?」

「しかし、何故この老骨に?ワシは軍を引退した身じゃぞ?」

「軍が無能…いえ、安全に宇宙を航海するには貴方の力が必要なんです。戦略を見る力がね」

 

 前半に思わず本音が出かけたが後半については嘘ではない。俺を含めてクルーの中に長期的広義的に物事を判断できる戦略家という存在はいない。戦術レベルの場当たり的な活動なら、ましてやそれが荒事ならば問題なく遂行できる能力を有しているが、今回のような戦略規模で動ける人間はいないのが現状だった。

 

 もっとも目の前の老人に仲間になってもらうという選択肢は今のところない。だって伝説の爺さんだから、下手に仲間に加えちゃったら政府からのホットラインがひっきりなしに鳴り響きそうだ。それにそういった事態に陥るのは目の前の老人としても歓迎できる事ではない。お互いに益なしなのでやらないのは長生きの秘訣である。

 

 ま、今の役目はメッセンジャーと送迎タクシーなのである意味目的の一つは達成している。ここで御老体が渋ってみせたとしよう。送迎タクシーの役目は果たせそうにないが、軍の諜報機関でも発見できなかった人物の居場所を特定できたのだ。後はそれをディゴさんあたりにリークしてやれば…。

 

 

「……あ」

「どうかしたかね?」

「あ、あはは。いやぁ何でもないんです。ちょ~っと紛争がどうなるか心配でして」

「ほう、それはそれは…見たところ若いのに気苦労が絶えなさそうだ」

「ははは」

 

 乾いた笑いを返す。ふと気が付いたのだが軍の諜報部でも発見できなかった人物を発見できたって、原作知識があったからとはいえ運良すぎだよな?原作とは違って現実なのだからして、この惑星にはいなかったかもしれない、というか実際発見できなくても問題なかったんじゃないかと思った。

 

 軍が発見できなかったのだ、それなのに短期間で見つけてしまう民間人の俺たち。これでは諜報部や情報部が無能だと宣伝してしまったようなものなのだ。これって下手したらディゴさんたちから睨まれる原因になるのではという考えにいたり、戦慄したのである。

 

 うーむむむ、実際運が良かったって事で通す他に考えがうかばねぇな。それで貫くしかない。俺は幸運な艦長なのだという事にしといてくだしゃあ。

 

 

「ふーむ……若者にそこまで言われたなら老人が腰を上げない訳にもいくまい。お前さんがたに同行する事にしよう」

 

 熟考から復帰したルーは片目を開き、その眼で俺を見抜きながら呟くようにして答えた。え? そんな簡単に決めちゃっていいのか? そんな俺の疑問も見抜いていたのか、苦笑を浮かべたアルファロエン。

 

 

「能力なき者が奔走しておる時、能力を持つ者が見ているだけなのは、責任の放棄と同じ事だとは思わんかね? 実際のところ、この老骨がどこまで役に立てるかは運しだい。されど老いた軍師に呼び出しをするほどなのだからして、前にも後ろにも引けない状況なのだろう。わしに出来るのは口出しをする事。頼られたからには全力をもって口出しを行うのじゃ」

 

 責任の放棄、か。言い換えれば力在る者には責任があるからともいえる。俺みたいに好奇心で首を突っ込むのとは違う、必定だから動くという、それに対する覚悟、これが歴戦の軍師ッ。どうあがいても…そのあり方は…まさに…軍師ッ!

 

 

「顔を強張らせておるがどうかしたのかの? まぁ表向きな理由はそれなんじゃが、実際はのう、わしのプライベートコードにひっきりなしに連絡通知が届いておってな? そろそろ鬱陶しいのだ。後、こやつのためでもある」

 

 アルファロエンが向けた視線の先には布の塊が一つ。いやさよく見ればそれはアルファロエンと同じローブをすっぽりと被った少年がすぐ隣に座っていた。

 

 ある意味この酒場において非常に目立つ存在なのだが、生来の地味さが滲み出ている為、今の今まで全く気が付かなかった。これが噂の空気人間というものか…、初対面の相手に対し、あまりにも失礼な感想だが、第一印象がそうなのだからしょうがない。

 

 

「ウォル・ハガーシェ。わしの最後の弟子じゃ」

「ハ、ハガーシェです」

「あ、どうも」

 

 おずおずではあったが握手を求められたので握手した。奥ゆかしさには奥ゆかしく返すのが日本人である。べ、べつにいきなり握手を求められて素で返したってわけじゃないんだからね!

 

 

「ツンデレ乙ッス」

「は?ナニ言ってんだいユーリ」

「一人突っ込みッス」

「この子は母星の消失で生じた難民孤児でな。わしが旅の途中で拾ったのじゃ」

「スルーしてくれたのはいいけど、すげぇさり気なく重たい話題をありがとうございます」

「あー後ワシの事はルー・スー・ファーで通しておるから、エルメッツァ軍人との接触はお断りじゃぞ?」

「了解、紛争さえ解決してくれるんなら此方は問題無いッス」

「うむ!それじゃお前さんのフネに行くことにしよう。行くぞウォル」

「は、はい」

 

 ユクゾの掛け声と共に伝説の軍師Gが立ち上がると、今の今まで影が薄過ぎて全然気がつかれなかったウォル少年も一緒に立ち上がった。目的の人物を無事に迎え入れた事に安堵しつつ、酒場を出た俺たちは一路、軌道エレベーターの中枢、オービタルトラムへと向かう。

 

 地上側発着点(アース・ポート)から宇宙へと垂直に伸びるコアケーブルに沿って設置された大型運搬設備であるオービタルトラム。いくつもの運搬機が連なる様はエレベーターってよりは垂直に伸びる新幹線みたいに見えるから不思議だ。

 このトラムは複数設置されているが必ずどこかのトラムと対になっているらしい。どちらかが上がれば片方は下がるという太古の昔から人類が利用してきた梃子の原理を使用している為である。この地上から十数キロの宇宙と空の境目まで上る事ができる夢のような上昇システムは、惑星の重要な交易品搬入口として常ににぎわっていた。

  

 喧騒が渦巻き、交易の為にそれなりに混み合うアース・ポートのトラムステーションの中を逸れないように全員で移動した筈…だったのだが、なぜかウォル少年が途中で人波に浚われて逸れたのは余談である。もっとも無駄に体力が付いたトーロが人込みの一団をかき分けて追いかけてくれたので、若干涙目になった少年を無事確保できた。

 そんな軽いトラブルはあったものの、あとは平穏無事にトラムに乗り込めた俺たちは、取りとめのない会話をしつつ、トラムに乗って軌道ステーションにあるドックエリアへ戻ってきたのだった。

 

 

「さて、どれがお前さんのフネかな?アソコにあるガラーナ級かの?」

「いいえ、あんな大きさじゃ無いッスよ」

 

 駆逐艦のガラーナ級、悪い船ではないが、さすがに政府の依頼を受けた連中がアレでココまで来るとなると結構勇気が居ると思うんだべ。

 

 あ、ちなみに俺のしゃべり方は敬語から普段のしゃべり方に戻っている。一応要人でありお歳も召した方なので非常に気を付けないとできない敬語を無理やりに使っていたのだが、先方からこれから厄介になるのだから普段通りでいいと言われたので戻したのだ。

 

 いやー、助かったよ。なんか敬語とかしゃべろうとすると凄くストレスが出るんだよねー。普段の下っ端めいたこの喋り口もどうかとも思うけど、まぁ慣れているしゃべり方が一番ってことで。

 

 

「ほう…では、そこにあるフランコ級かの?」

「いいえ違うッス」

「それではこのボイエン級かの?」

「いやいやいや、それこそまさかッスよ」

 

 アルファロエン、いやルーさんが停泊しているフネを指さしていくのを苦笑しながら答えていた。いや確かに近隣の海賊団は壊滅してるけど、いまだ残党が残る宙域に輸送船単身で乗り込んで来るバカはいないだろう。いたらそれは自殺志願者だと思います。俺は違います。俺は石橋はアイソトープ検査してから渡る派です。つまりビビり。

 

 

「では…あのオル・ドーネ級かの? 少々派手じゃが…」

 

 そんな中でルーさんが指さしたフネを苦笑の内に応えようと思い視線を向けた俺は一瞬固まった。そこには…カラフルなデジタル彩色に彩られた…たぶんアニメのキャラクターによってデコレートされてしまった哀れな巡洋艦の姿があった。

 

 ああいうのってすっごい見たことあるよ、主に前世で…。

 

 

「あんな痛船で航海する勇気ないっス――オル・ドーネ級は性能いいけど、若干航続距離が短いッスからね。あれでもないッス」

「では一体どれがお前さんのフネなのかな?もうこのドックには他にフネは無いじゃろう」

「そりゃ…まぁここにはないもんで」

 

 ここは大きさで言えば小型から中規模クラスの艦艇が停泊するドックだ。俺たちのフネはさらにこの奥の方にある大型用のドックに係留されている。つまり最初からこのドックには俺たちのフネはない。

 

 では何でここに来たのかといえば別にいじわるとかではなく、ただ単にドックは手前から小型中型大型といった具合に繋がっているので、通り道であったからである。

 

 

「俺らのフネはこの小ドックの先ッス」

「しかしココから先は大型クラスのドックじゃよ」

「ええ、そうスけど?」

「…こっちのドックが一杯じゃったから使わせてもらったのかのう?」

 

 何をあたりまえの事をというと、なんか急に憐憫の眼を向けてきた。

 おまけに呟いた言葉がひどい、一体全体何を言ってるんだこのじっ様は? 

 

 

「んー、使わせてもらってるのは間違いないッスけど、そのドック本来の利用というか…まぁとにかく此方の“小さい”ドックじゃ入りきらないんスよ」

「なんと!という事はお前さん、その齢でバトルシップクラスのフネを持っておるのか!世界は広いものだのう」

「まぁそうッスね。(いや、がんばれば誰だって大型船は買えるだろう? …たぶん)」

 

 マジマジと俺を見つめてくるルーさん、へへ照れるぜ。だけど俺は爺専じゃないから暑い眼で見つめられ続けるとちょっと鳥肌が立ってくるから、少し視線をずらしてくれるとありがたいかな。

 

 

「それにしても若いのにグロスター級を所有しとるとはのう。よほど政府に顔が効くと見える。まぁだからこそ迎えに来られたとも取れるが―――」

「いや、グロスター級でも無いんスけど」

「……………すまん、長旅で耳が少し疲れとるようだ。グロスター級じゃない?」

「ういッス」

「……………わんもあ」

「ウチの、フネはァ、グロスター級じゃァ、無いんだよォッ!」

 

 解かった?耳の遠いおじいちゃん…等とは口が裂けても言わないが、それなりに大きい声で返事した。もっともそれも解からんではない。彼の言うグロスター級戦艦はエルメッツァ国内で唯一民間人、つまりは0Gドッグでも手に入れられる可能性があるバトルシップである。

 

 エルメッツァ中央政府軍を象徴する宇宙戦艦であり、音叉のように二重艦首があるU字型の船体をしたそのフネは、中央政府軍の高官が旗艦として運用することもある。純軍艦である為、通常の手段では手に入れられず、その入手には中央政府軍の許可が必要なのだ。

 

 そんでもって俺は建前では政府軍の要請でルーのじっさまを探しに来たのだから、これまでの情報と俺とのつながりを考慮した結果、俺のフネがグロスター級だと誤解してしまったのだろう。やれやれ、だぜ。これはもう見てもらった方が早い様な気がするよ。

 

 

「まぁとりあえずフネはこちらッス」

「まてまて、お前さんのフネは戦艦じゃろう?」

「そッスよ」

「生れはロウズでつい最近出て来たんじゃろう?」

「そッスよ。ついでに言うとエルメッツァ中央から先にはまだ進んでないッス」

「他の宙域にもおったのなら解かるが、そうでないならおかしい。第一エルメッツァで手に入れられる可能性がある戦艦はグロスター級だけじゃ。冗談も大きすぎるとさすがに笑えんぞ?」

「だから裏ワザというか……ああもう。兎に角これは見てもらった方が早いッス」

 

 いろんな意味が込められている視線を向けてくるじっさんに、だんだん面倒くさくなってきた。兎にも角にもフネに乗り込んでもらわねばならないので先導する意味合いもかねてズンズン先へと進む。ふと横を見ると俺の苦労を察してか笑いをこらえている姐さんとトーロに殺意が芽生えたのは俺だけの秘密。

 

 

***

 

 

――――大型艦船用ドック――――

 

 

「コレがウチの艦隊旗艦。戦闘空母ユピテルです」

 

 さぁ恐れおののくが良い!とばかりに演技派を気取って両手を広げて我が旗艦を紹介してみせた。後で恥ずかしさに悶絶したが後悔はしていない。

 

 

「な、何なんじゃこのフネは――」

「こんなフネみた事が無い…です」

 

 ∵…もとい何故ならば、驚きに目を見開いている客人二名の顔を拝むことができたからである。フネの全貌を見ることができるエアロックハッチ近くの展望室につれてこられたルーのじっ様は、ユピテルを見るなりそう漏らした。お供のウォル少年も口を半開きにしたまま一歩も動かない。

 

 ふふふ、驚いただろう驚いただろう。実際俺だって冷静に考えれば信じらんないんだから、事情を知らない彼らが驚愕で目を見開くのは宿命なのだ。なんせ最序盤で何の幸運か大マゼランの主力艦の設計図を手に入れた挙句、それを作る為に金稼ぎに没頭していたら名声値が上昇しまくってランキング上位の戦闘空母の設計図まで入手、すでに戦艦を手に入れていたからさらに金稼ぎの海賊狩りは捗り、空母も無事建造…。

 

 ここまで来たら幸運とかそういったのよりも作為的な何かまで感じるくらいである。ま、何でもいいさ。強ければ死の危険も格段に下がる筈だからな。なんせ通常の一週目だと油断したらすぐ死ぬ難易度だからなぁ無限航路は。なんせ大マゼランとの交易地では大マゼランで出没するレベルの海賊が出るから、小マゼランの装備だとすぐに沈められたし…それが原因でゲームを投げたやつも多いはず。

 

 

「まぁ元のフネから大分改造が加えられて、もはや原型が残って無いッス」

「なるほどのう。既存艦の改造したものかの」

「性能的にももはや別のフネと呼んだ方が正しいかもしれないッス」

 

 一応共通規格で組んでいるから部品は揃うんだけどね。ズィガ-コ級じゃなくてユピテル級って事で新造艦登録した方が良いかも知んない。手続きが面倒臭いんで登録する気はさらさら無いけどね。

 

 

「まぁこんなとこで突っ立てても意味が無いので、とりあえず我がフネへ」

「あ、ああ―――お前さん見かけによらず、恐ろしく凄いヤツじゃったんじゃのう」

「俺じゃなくて、俺のクルー達が凄いんスよ」

 

 常識を斜めぶっ飛んだ光景を見たからか、爺様もすこし驚きを隠せないご様子。フネの中を案内しながらクルー達の優秀さをルーのじっ様に語る。ウチのマッド連中はスゲェぞと、部分的に大マゼランすら超えるぞ、と。ソレを聞いていたじっ様はニコニコしており、ウォル少年は引いていた。ドン引きだった

 

 まぁ、マッドを囲った所為で半年累計してすでに一個艦隊分の予算が吹き飛んでいると聞けば、ドン引きするのも解からんでもない。俺も事務作業と決算の中、この事実に気が付いた時はさすがに連中を放逐すべきか悩んだものだ。

 だが、彼らはロマンの探究者でもある。ある意味同胞に近い彼らを放逐するのは、仲間を溝に放り捨てるのと大差ない。

 

 しかしながら自分で称するのも変な話だが、普通なら厄介者扱いされるマッドみたいな連中を立てるヤツはそうはいないだろう。マッドは周りが見えなくなるから、集団生活が必要なフネにはちょっと合わない事がある。ウチの場合は上手い事馴染んでいるというか、馴染み過ぎてるから問題無いんだけどな。

 

 

「ここがフネの中枢、ユピテルのブリッジッス」

「おお、この機器配置の感じはアイルラーゼン式の艦橋ですかな?」

「あ、解るッスか? ランキングボーナスで貰ったヤツ何スよ」

「むむむ! あれらはかなり上位ランキングに食い込まねば手に入らぬ物。ウォルよ、よく見ておきなさい。これが型にはまらぬ存在じゃ。軍師にとっては厄介なことこの上ない計算外もいいところな規格外というものじゃ」

「は、はい!」

「あれ? 褒められたッスよね? 俺、褒めたんスよね? あれ?」

 

 微妙に貶された評価があったような気がするが…まぁいいか。

 ちなみにアイルラーゼンとは言わずもがなお隣の銀河の大マゼランの国家である。その国家の艦船に使われている艦橋モジュールを使っているのだ。ただ、機能的にも十分すぎる程の性能がある筈なのだが、ケセイヤとサナダは何かが気に入らないのか艦橋モジュールに手を加えているという報告が上がっている。

  もしかしたら純正とはちょっと違う感じになっちゃってるかもしんねぇ。

 

 

「ウォルよ、コレが大マゼラン製のフネに良くある艦橋だ。いずれ乗るかもしれんから今の内にレイアウトを覚えておくがよい」

「ほわぁ~…」

「まぁ見るだけならタダッスから、幾らでも見れば良いッスよ?」

「……ブンブン」

 

 苦笑しつつ提案したら無言で首を横に振られてしまった。ふむ、ウォル少年は恥ずかしがり屋らしい。少年と言っているが実際は俺とほぼ同い年の青年だったりするけど…童顔だから少年でいいよな!むしろ美系で童顔ってどうなんよ?一応美形なのにどうあがいても残念な二枚目という評価しかもらえない俺へのあてつけなのか!?

 

 

「ま、ブリッジに入るのは自由ッス」

「ソレはありがたいの」

「お二方は一応客分ッスけど、フネの中に行けない場所は無いッスから」

「む? 艦長、ワシは部外者だからいうのも何だが、いささか不用心では?」

 

 じっ様は俺のあまりにフランクな対応に、少しばかり疑問を感じたようだ。

 まぁ普通部外者にフネの中を自由にしていいとかいうヤツは少ないしな。

 

 

「大丈夫ッスよ。お二方は既にフネに乗れた段階で問題は無いッス」

「何故そこまで信用がおけるのかの。考え無し…という訳でもないようだが?」

「さりげなく扱き下ろしてるッスね。まぁそれにはそれなりの理由があるんスよ。ズバリ!ウチのフネは生きているもんで…ユピ!」

【お呼びですか艦長】

 

 何処からともなく聞こえる声に驚くじっ様と少年。

 そして俺のすぐ横に現れた空間ウィンドウに気がついた。

 

 

「紹介するッス。ウチのフネの警備の一旦を担っている」

【CUモジュールユニットの統合統括AI《ユピテル》です。どうぞよしなに、それとようこそ我がフネへ】

「ほう、珍しい。AI搭載艦何ぞ、随分と昔に姿を消したと思っておったが」

「急激に成長した所為で、ウチはなにかと人員不足ッスからね。ユピの助けのお陰で随分楽何スよ」

【私はこのフネそのモノです。何か不都合があれば呼んでくださればサポートいたします】

「これはこれは、ご丁寧にどうも」

 

 驚きを隠せないウォル少年はともかく、じっ様の方はどうやらAI搭載艦をご存じの様だ。さすがは長生きしていることはある。歳の功というものだろうな。

 

 

「このフネはすぐにでも出港できるッスが、何かやり残した事はありますか?」

「放浪の旅の途中じゃったから、あの星に未練はないのぉ」

「わかったッス。どうするッス?出港する場面をブリッジで見るッスか?」

「いや、色々とあって老骨には応えた。休める場所を貸してほしい」

「それならお二人の部屋に案内させるッス。ユピ」

【はい、艦長】

「この二人を客分の部屋に案内してあげてくれッス」

【了解しました】

 

 とりあえずユピテルに二人を部屋に案内させる事にして出港する事にした。

 さてと、エルメッツァ中央に戻るかな。話しはソレからだ。

 

 

「出港準備!エルメッツァ中央に戻るっスよ!」

「「「アイサー艦長」」」

 

 こうしてユピテルは必要な人物を確保し、ステーションを後にした。

 

 

***

 

 

―――ブリッジから離れた師弟二人。

 

「師匠…彼らはいったい?」

 

「……わしも長い事、宇宙で暮らしてきたが、ここまで逝っちゃってるのは初めてだのう」

 

「へぅ、逝っちゃってる、ですか?」

 

「彼らの言い分が正しいのなら、あれだけの艦を得てからまだ一か月も経っていない。それどころか旗揚げしたのも一年とたっておらん。異常ではなくてなんだというのだ、とお前さんは思っとる、そんなところかの?」

 

「はい…、彼らは本当にただの0Gドッグなのでしょうか?」

 

「さぁてのう。おぬしならどう見る?」

 

「えと――――政府直轄の秘密部隊、とか」

 

「ほっほっほっ――若いのう。結構結構。ただそれはまずないの。彼らの物腰や艦内の雰囲気はどこにでも居る0Gドッグたちのそれじゃよ。それにエルメッツァ中央政府はよくもわるくも表裏は一体化しておる」

 

「と、おっしゃられますと?」

 

「秘密部隊はあるにはあるが、そういったものが必要ない程強い、大国の威光があるのだ。そういった国では秘密部隊などと称しても装備はたかが知れておる。何故なら秘密部隊が目立ってはならぬからだ。市井に紛れてこその秘密じゃよ」

 

「では、師匠はどう見るのですか?」

 

「ふむ………これは、正直なところ軍師としてはあり得ないのじゃが、長年の勘が察するに彼らの言い分はすべて本当の事しかいうておらんのではないじゃろうかと思っておる」

 

「でも、ありえません」

 

「じゃから異常なのじゃろう? 確かに海賊船を倒し続けたりすれば功績が称えられて、倒した数によって空間通商管理局のランキングに影響する。ランキング上位者に信じられない褒美が与えられるのも知られておる」

 

「大マゼランの代物だとか、定期的に変わるらしいですね」

 

「うむ。だがの通常そのレベルに至るには数百隻の艦艇を叩き、最低でも本拠地レベルを叩かねばならぬ。それだけの功績をあげるには彼らの出立した星系やその近辺で手に入る艦艇では到底不可能じゃ」

 

「彼らの出立地…ロウズ辺境宙域…手に入るのは輸送船改装型の特殊駆逐艦であるアルク級およびジュノー級…性能は並み以下」

 

「そう、輸送船に毛の生えた程度のフネじゃ。どうあがいても海賊相手に戦う場合、次の上位互換に切り替えるのにも苦労するじゃろう。だというのにどういう魔法を使ったのやら…だがウォルよ、よく覚えておきなさい。こういった信じられない規格外が現れるという事は良い事か悪い事かは解からぬが何か大きなうねりの前兆じゃ。そういう時にこそ冷静に構え――、心は熱くし――、情勢を見極めよ」

 

「はい、師匠」

 

「そういう訳での。聴きに徹してくれておってすまぬが、我ら師弟しばらく御厄介になるぞ?ユピテルくん。ところで少し小腹がすいたのじゃがどうすればいいかの?」

 

【あ、はい!わかりました。改めてよろしくです。それと、お腹が空いたのでしたら、食堂に向かわれるか、それかシップショップがありますが…】

 

「ふむ、あくまで小腹が空いただけじゃし、食堂は夕飯まで取っておく事にしようかの」

 

【それではシップショップにご案内します。こちらです】

 

―――とまぁ、俺のあずかり知らぬところでそんな会話があったそうな。

 

 

***

 

 

 さて、ルーのじっ様を我が艦に招いてからほぼ一日経過した。ECMといった電子妨害装置を使ってレーダーを惑わし、エネルギーも絞ってゆっくり進んでいるから敵との交戦も無い。おかげで長距離通信ができないのでルーのじっ様発見の報告もできないが、見つけろと言われただけで期限はないので問題ない。恨むなら協力要請の内容に期限を設けなかった中佐を恨むがいい。

  

 紛争解決に奔走しているであろうディゴさんが聞いたら、縊り殺されかねない事を考えつつも、俺を乗せたユピテルは宇宙の大海原をゆったり優雅に進んでいた。ただ、そうなると艦長の仕事がある意味で減るので少し暇だったが、その分を訓練したりして暇をつぶして過ごす。

 

 そうして過ごしている内に気が付けばラッツィオ側のボイドゲートまで来ており、俺たちはエルメッツァ中央への入り口に戻ってきた。特に問題もなくボイドゲートを無事に越えたので、一度これからの確認をかねてブリッジクルー達と話をしようと思い席を立とうとした。

 するとブリッジにルーのじっ様が入ってきたのが見えた。

 

 

「ちょっといいかの?」

「あ、ルーさん、よく休めたッスか?」

「うむ、おかげさまでの。それと紛争解決の策が纏まったのでな。ワシらをドゥンガへと送ってほしいのじゃ」

「……え? だって乗り込んだの昨日ッスよね? もう何か考え付いたんスか?」

「もとより紛争のニュースは知っておったからの。あらゆる事にシミュレートしたりするのは我らのサガというものじゃよ」

 

 ドヤ顔でそういわれても反応に困るんだが…。

 

「というか、エルメッツァの軍に合流とかしないんスか?」

「兵は拙速を聞くが、いまだ功久をみず。何事も成すには早い方がいいのじゃ。もっとも拙いやり方でやるようなヘマはせぬがのう」

「孫子ッスか」

「うむ、SONSIじゃ」

「ん?」

「んん?」

 

 なんか微妙に発音のニュアンスが違っていたような…気のせいか? でも勝手に行かれても困るんだけどなぁ。ディゴさんにお伺いしとかないといけないんじゃなかろうか? 俺たちが受けた依頼はアルファロエンの捜索だからな。このまま送り届けないで進路変更しちゃうと契約不履行とかになってしまう。

 はぁ――溜息が漏れる。自由な航海者0Gドックなんて嘘だったんや。一艦隊でしかない俺たちじゃ国家権力の政府に睨まれちゃうとなんもできへん。新進気鋭の俺たちだと、なんもできないのか…………なんか、そう思ったら腹立ってきた。

 

 

「俺たちの依頼はアルファロエンを見つけ出してきてほしいって事なんス。だから勝手におろしたりはできないんスよ。中央軍に睨まれちまう」

「なんと――見込み違いじゃったかのう」

 

 じっ様はそういうと落胆したかのように肩を落として、脱出ポッドに乗って降りるかのう…とか呟きだした。あ、冗談とかじゃなくマジな眼だ。

 

 

「話は最後まで聞くッス。俺たちが見つけ出せって言われたのは『アルファロエン』なんスよ『ルー・スー・ファー』さん」

「ほほう、なるほどなるほど――詭弁とは、狡賢いな艦長」

「ま、誰にでも考え付く事なんスけどね」

 

 そう、見つけてほしいと言われたのは紛争を解決できる伝説の軍師『ルスファン・アルファロエン』であり、惑星レーンで見つけた『ルー・スー・ファー』なる老人ではない。なんか体よく利用されている現状に少し腹が立ってきた俺は、利用できると考えているあの政府連中に対して意趣返ししてやろうと思ったのだ。

 それはそれで契約不履行で睨まれそうだが、紛争さえ解決しちゃえばいろいろと有耶無耶にできるから、ディゴさんにわたりを付けようが、そのまま紛争解決に向かってもらおうがどっちでも良かった。

 

 むしろルーのじっ様が自ら紛争を解決しに立ち上がってくれるならディゴさんたちにとっても悪い話じゃない。強制されたのと自ら進んで協力するのとでは、明らかに後者の方がメリットが大きいからだ。

 俺たちはアルファロエンを探していたが見つからず、気が付けば紛争が終わっており、そちらの方を見に行ったらなぜかそこにアルファロエンを見つけたが、すでに紛争は解決していたからつれてくる必要がなかった。

 

 そう締めくくれば、どこにも角が立たないはずである。ディゴさんたちにとってはあくまでもアルファロエンは見つかればいいなレベルの話である筈だからだ。それにしては切羽詰まっていたけど、一番に解決したいのはやはり紛争問題なのだからして、解決さえしてしまえば問題はない…はず。

 

 

「じゃあ惑星ドゥンガッスね? そこに送るだけでいいんスか?」

「ああ、ワシらだけでいい。策を為すには相手に悟られない事も重要じゃからな」

「大所帯で押しかけたらバレるッスもんね」

「そういう訳じゃ――頼むぞ?」

 

 試されている。ルーのじっさまの視線にはそんな言葉が含まれている気がした。ならば俺が返す言葉はこれだけだ。

 

 

「アイアイ、それじゃドゥンガ到着まで休んでいてくださいッス」

「お言葉に甘えさせて貰うわい」

 

 じっ様はそう言いつつ、ブリッジを後にした。おそらく彼らは彼らの役目を全うする。ならば、俺たちも俺たちなりに役割を全うしてやろう。

 

 

「ユピ」

【ブリッジクルーには召集をかけました。全員がそろうまで推定時間20分です】

「……俺なんも言ってないんだけど?」

【ちがうのですか?】

 

 う、なんだ? なんか小首を傾げる少女の幻影が見えた気が…疲れてるのかな? ユピは対人用インターフェイスであるが人型のモデルは存在せず受け答えだけのサウンドオンリーである。だから少女の姿なんて見えるはずないのに…。

 

 

「ま、まぁ実際そうして貰うつもりだったからいいんスけど」

【合ってましたか!…よかった】

 

 今度は両手を叩いて小さく飛び跳ねながら喜ぶ少女の幻影が………拝啓、お世話になったいろんな皆様。うちのAIかわいいッス。もうそれでいい気がしてきた。そして後で医務室に行こうと心に決めた。

 

 

***

 

 

 しばらくしてブリッジクルー+αが集まった。艦橋は本来はフネの命令系統の中枢部に位置するものであり、決して会議室などではないのだが、現在我が艦隊に所属しているどの艦にも会議室モジュールがおかれていないのだ。なので非常時にはブラストドアで電波まで遮蔽できる艦橋というのは、ある意味で傍聴対策バッチリだったりする。

 もっとも政治的にも重要度が限りなく低いウチのフネにスパイがいる可能性は限りなく低い上、今回話す事は聞かれても全然痛くもかゆくもない話である。というか俺らの役職上、いつもの場所でやる方がリラックスしてできるってのが本音なんだよね。

 

 

「ユーリ、全員来たよ」

「ういッス、トスカさん。さぁーて皆聞いてくれッス。突然のことで大変恐縮なんだが、いろいろあって今度は惑星ドゥンガへと針路を取ることになったッス。理由はルーのじっさまがなんか思いついたからなんスが、ここまでで何か質問があるヤツは居るッスか?」

「「「………おいまてや」」」

「なんスか?」

「なんで――」

「そういう大事な話を――」

「事前に相談せず――」

「「「すでに行くことになってるんでしょうかねェー?!」」」

 

 イネスやトーロ、それとリーフとかが実にいいコンビネーションで問い詰めてくる。あまりの連携の良さに思わずおうふと変な声が出ちまったぜ。まぁそれはいいとして。

 

 

「はいはーい。テンプレな反応どうもッス~。天丼は外せないよねー」

「「だな」」

「え?ええぇぇーーー!?」

「イネス…騒々しい。青い」

「んー、驚きのリアクションが普通すぎる。0.5点かな?」

「まァ、この展開に驚くのは来てから日が浅い未熟者なイネスさんなら当然でしょう。早く慣れろという言葉を送ります。この未熟者」

「なんでトーロ達は驚いて見せたのさ!それとその他の方々からは酷評!?ナンデ!?酷評なんで!?」

 

 トーロ達が突然手のひら返しの如くに態度を軟化させた事にイネスは付いていけずに困惑の表情を浮かべて叫んだ。それに騒がしいのが苦手なミューズさんが黙れと言わんばかりにぼそりと呟き、見ているだけだったストールがリアクションに点数をつけ、ミドリさんがさりげなくイネスを貶した事で、イネスくんはどこかネオシティめいた大声を上げていた。

 

 相変わらずいい連携である。矛先が自分に向かない限りは良いぞもっとやれ。未熟者と言われたイネスくんが一筋の光を眼から零して艦橋の隅で三角座りしながら“の”の字を書き始めたのを尻目に、話を進める事にした。

 

 

「よろしい、では航路についてなんだけど」

「ボクの事はスルーなのか!?」

「意外と復活早かったッスね。うんうん、ちゃんと適応してるね!」

「………いやだぁ。ボクは普通なんだぁ。なんなのさぁこの混沌。だれか助けて」

 

 肩を落とすイネス。そんな彼の肩にトクガワ機関長が慰めるように手を置いた。そして耳元で何かを呟いた瞬間、イネスは真っ白に…いやさ灰となって崩れ去った。

 機関長がなんて呟いたかは遠かったので声は聞こえなかった。だが通信教育で手を出した『微生物でも解かる読唇学習』とやらをやっていた俺は一味違った。トクガワさんはイネスに【慣れるしかないのじゃよ、ようこそ我が艦隊へ】と呟いていたのを俺は読み取ったのだ!……だからどうしたといわれるとそれまでだけどな。

 

 

「うぅ、とにかくボクがリーフと一緒に目的地までのルートを考えれば良いんだね?」

「そういう事ッスね。なるべく早くつける様に考えて航路を設定してくれッス。兵は拙速を尊ぶらしいんでね。初仕事期待してるッスよ」

「わかった。最短ルートを選択してやる。ボクの実力を見るがいい」

「イネ坊がやる気だから俺はほどほど…おいおいジョークだから睨むなよ。とりあえず俺はどのくらいの速力で運航すればいいか計算すればいいんだな?」

 

 早速相談を始める航海班班長と航路担当ナビゲーターのイネス。ぼそぼそ聞こえるがそれを無視して話を続けよう、まだ終わっていないのだから。

 

 

「さて、いろいろあって俺たちはこれから紛争状態の地域に行くわけッス」

「さっきのを掘り返して悪いけど、なんでそんな面倒な事をするんだい?私らの当初の予定ではディゴんとこに爺さんを輸送するだけの簡単なお仕事だったはずだろ?」

「ちょいと腹が立ったんで…ちょっとした意趣返しって奴ッス。もともと紛争解決に協力しろって言われてたんだし、連中のメンツも潰せると思えば腹の虫もおさまるってもんで」

「その代り睨まれるよ?メンツをつぶされた軍人ってのはしつこいしね」

 

 トスカ姐さんの懸念は理解できた。その事は俺も考えなかった訳じゃない。でもこれが露見すれば確実に軍には睨まれる。そうなればエルメッツァでは活動しにくくなるであろう事は明白だった。

 だが幸いな事にアルファロエン発見の報告はまだエルメッツァに伝えていないのだ。見つけていないから物見遊山で紛争地帯を身に立ち寄った惑星に“たまたま”アルファロエンがいて紛争解決の策を弄していたのだと報告すればいい。先ほどルーのじっ様との会話の中で考え付いたそれを俺はトスカ姐さんに包み隠さず伝えた。

 

 

「なーるほど。私らはルーを乗せただけだし、ルーとアルファロエンが同一人物だという証拠はルーたちが否定する以上どこにもない。あるいは言及されてもアルファロエン発見の報告は上げていないから私らに害が及ぶことはほぼない」

「しかも仕返しにもなる。みんな満足ってもんス」

「いいねぇ、いけ好かない役人に目にものみせるいい考えだ。さすがはユーリだ。その小賢しさには感心するよ」

「わははー、もっと褒めてー」

【(…それはきっと褒められてないと思いますよ、艦長)】

 

ん? ユピのつっこみが聞こえたような気がしたが気のせいか?

 

 

「それでこの先はさらに警戒を厳にすべき何スよ」

「たしかに様々な艦船が集結中らしいからねぇ」

「海賊連中も参加するらしいぜ。何でも今どちらかの陣営に味方すると、そちら側で行った海賊行為の放免及び減刑が約束された挙句、多額の報奨金が出るんだとか」

「つまり紛争宙域に近づけば近づくほど、放免や報奨金目当てで私掠船と化した海賊艦隊との遭遇が予想されるって訳だね」

「寄せ集めの海賊艦隊なら怖くないっスけど、それに混じっているであろう正規軍との交戦はなるべく避けたいところッスね」

 

 どちらの陣営にも所属していないということは、どちらの陣営からも攻撃を受ける可能性があるということだ。海賊の私掠艦隊と派手な交戦を行うと、それに釣られて正規軍が顔を出す可能性がある。唯でさえ泥沼なのに更にヘドロを放り込んだら本末転倒だ。

 

 

「こ、これは責任重大ね~!頑張るのー!」

「ウス、頼むッスよエコーさん。ウチの目と耳はエコーさん何スから」

「お? なら俺たちが造ったアレが役に立つな」

「うん~、ケセイヤさんの早期警戒機の監視網も使えるね~」

「ファントムの御披露目だな。腕がなるぜい」

 

 そういって腕まくりをするケセイヤに俺たちは苦笑する。彼の男は自他問わずのマッドアーキテクチャであり、そんな自分が作り上げた機器が無事に動いて役に立つことがうれしいのだろう。科学班のサナダさんもまた技術面で協力していたので、彼もまたうれしそうだ。技術者や科学者冥利に尽きるって事なのかね?

 

 ちなみに以前は名前が無かった早期警戒機にはその後RVF-0(P)の形式番号が与えられた。(P)はPhantom(ファントム)のPである。武装を全撤去した代わりに浮いたペイロードを利用して複合センサーを集約させたレドームを搭載した完全なる偵察仕様の早期警戒機である。

 高レベルジャマーや特殊塗装によりステルス機能を大幅に引き上げられているので、敵艦隊に近づいても敵に見つかるリスクを最小限に出来る上、コックピットモジュールが取り外し可能な機構により、無人機としても有人機としても機能できる機体となっている。

 

 これを利用すれば、原作でもうんざりするほど多かった遭遇戦を劇的に減らせる…筈。さすがに完全には無理だろうが、やらないよりはずっといいだろう。さて、今のところはこんなもんかね。

 

 

「あとは、なにかこの場で言いたいヤツはいるッスか?」

「艦長、ついでに報告したんだがいいか?」

「あいさ、なんスか?サナダさん」

 

 指名を受けて立ち上がったサナダさんは自分の席のコンソールを操作して、ブリッジメンバー全員が見られるサイズの空間ウィンドウを展開してみせた。映し出されたのはスケルトン化されたユピテルとアバリスの図面であり、機関部やそれに連なるモジュール設備が表示される。

 

 

「科学班からの報告だが、新しく重力井戸を強化する事に成功した。ついては同じく重力井戸を利用する重力子防御帯のデフレクターも強化完了だ。それに伴いホーミングレーザーの重力レンズ生成機構もグレードアップされた」

「わかったッスサナダさん」

「あ、艦長、さっきサナダさんがいったホーミングレーザーに合わせて火器管制制御機構も改良しといたぜ。俺とユピとでやっておいた」

「そうスかストール。わかったッス。――他はなにかあるッスか?」

 

 見渡すが全員口を閉じたままである。

 沈黙は肯定と受け取ることにした。

 

 

「よし、ならコレで解散ッスね。おつかれっス~」

 

 うぃ~ッスと気が抜ける返事がブリッジに響き、主要メンバー協議が終了した。後はシフトが残っている奴は仕事に戻り、それ以外の奴らは思い思いに時間を食べるのだろう。

 俺もまた協議が終わるのと同時に今日の仕事が終了したのを受けて、ちょっとした開放感を味わっていた。そんな時、近くに来たトスカ姐さんが俺にこんな問いかけをした。

 

 

「この後は今日もシミュレーターかい?」

「いんや、今日は重力調整した訓練室で軽く汗かいたあと妹との触れ合いでも楽しもうかと」

「ふれあいー?…ブーッ!」

 

 そして、ありのままに今起こったことを話すぜ? 何気ない会話をしていたらブリッジを出ようと近くを通りかかったエコーさんが突然顔を真っ赤にして鼻血を吹いた。何を言っているのかわかんねぇと思うが俺にも訳がわからなかった。ちょろりとかいうちゃちなレベルじゃ断じてない、鼻血の恐ろしさを味わったぜ。

 

 な、なにがどうしたんだ?病気なのか?!この大事な時に索敵の長が病気!?真横で起きた惨劇にびっくり仰天していた俺を尻目に、すたすたとやってきたオペレーターのミドリさん。(鼻)血の海に崩れ落ちたエコーさんを慣れた手つきで起こすと―――

 

 

「はいエコー、ティッシュよ?それとトントン」

「あうあうー」

 

 ミドリさんにティッシュを渡されて、それを鼻の穴に詰め込むという、ちょっと乙女への幻想をぶち壊すような姿をさらしたエコーさん。そんな彼女の首の後ろをトントンされている。あれ?首の後ろを叩くのは民間療法で効果が無いんじゃなかったか?

 

 

「だ、大丈夫ッスかエコーさん」

 

 恐る恐る声を掛けてみると、何故かサムズアップで返してきた。喋れないほどなのだが、そんな反応を示したので意外と大丈夫っぽい。というか普通ならば血溜まりが出来るような血を噴出したら動揺が広がりそうなものだが周囲は割りと気にしていない。それどころか平然とブリッジを退室する者もいるあたり、意外と頻繁に起きていた?

 うーむ、今の今までこんな事起こらなかったから、なんかエコーさんの知らない一面を知ってしまったようで、うれしいやらうれしくないやら複雑だ。言えるのはしばらくエコーさんには鼻血女の称号が脳内付与されることだろう。

 

 

「いやぁ、相変わらず派手だねぇ。しかしエコーは何を想像したんだか…」

「きっと…淑女が考えては…いけない方面…ナニな事。ウフフ」

「うう~、副長もミューズもそういう事いわないでよー」

 

 トスカ姐さんまで何か知っているようだ。というかエコーさんへの女性陣の対応が、なんか異様に手慣れてるなぁ、聞いてみたいが何か聞いてはいけないと直感が告げているような気がする。

 

 

「エコーさん大丈夫ッポイんで俺は上がるッスね」

「あいよ、指揮を受け継いだ」

「それじゃお疲れッス~!」

 

 なので直感に従い逃げるようにその場を立ち去ったのだった。 

 

 

 

 

――――さて、俺が出て行ったあと。

 

「全く、アンタはあの会話から何を妄想すればそんなに鼻血が出せるのさ?」

「なんかネー? 美形兄妹がくんずほぐれつを想像したらー、予想外に凄くて~」

「まぁ艦長は動かなければ美系ですからね。ホント、あの情けない垂れた目じりさえなければ…惜しいです」

 

「あれでも時折見せる真剣な所はいい感じなんだけどネェ」

「普段が普段ですから、どうにもそちらのイメージが先行しちゃいますね」

「私らもアレとの触れ合いが長いからね。相手の事を知るのは一長一短のいい見本だよホント」

 

「ふれあい~…ブべッ!」

「はい、ティッシュ。それとトントン」

 

 ブリッジでは女性陣のこんな話しがあったらしいが俺は知らなかった。




今年最後の更新!間に合ったァァァ!!

どうも、QOLです。今年は色々ありました。
仕事のストレスと疲れで生活リズムが狂わされて昼夜ほぼ逆転しましたが、私はまだ終りませんとも。
せめて少年編を終らせるまでは!
それでは皆様、良いお年を。ではでは
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