何時の間にか無限航路   作:QOL

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次回もけっこうかかると言ったな。ありゃ嘘だ。


~何時の間にか無限航路・第14 話、エルメッツァ中央編~

■エルメッツァ編・第十四章■

 

 

 さて、ストールたちの世間話から耳を離した後、再び艦長席からモニターで外を眺める作業に入った。何せ移動中っていうのは休憩には長く、持ち場を離れるには短い。索敵網さえ構築してしまえば、あとはレーダー班と我が艦であるユピが見つけてくれるから暇なのである。

 

 長距離の惑星がビデオの早送りのように後方にかっ飛んでいく映像をモニター越しに眺め(ちなみに至近距離のはスパゲッティ伸ばした見たいな棒に見える。ハイパースペー○的な感じ?)、そのうちに喉が渇いたので、手元のコンソールを操作してドリンクを選んだ。

 

 するとコンソール台の脇にある小さなシャッターが開き、そこから飲み物の入ったボトルを持ったアームがこちらへと延びてくる。そのボトルをうまくキャッチし、ドリンクホルダーに置いた。

 

 このギミックはケセイヤさんが設置したもので、ブリッジクルーが好きな時に好きな物を食べたり飲んだり出来るようにしてくれるのである。ニートや引き籠りなら垂涎物な全自動軽食サーバーとかいうものらしい。

 

 俺を含め、ブリッジクルーはなんだかんだで職務中は艦橋から離れられないのだが、それではストレスがマッハなので、俺たちが禿げないためにもストレス軽減の為に設置してもらったのだ。

 

 ケセイヤ謹製という事もあり、戦闘の事も考えて、吸わないと中身が出てこない逆流防止弁付きストローがデフォルトで付いているボトルが出てくる超高性能という、とても素敵な便利アイテムでもある。

 

 これのお陰で当直の時でも飲み物が飲める上、サンドイッチとかのような簡単な軽食もボタン一つで食すことができる。非番でブリッジに詰めている時などに使わせてもらっているというわけだ。

 

 

「ファズ・マティに接近。到着まであと5分」

 

「敵人工惑星のー、衛星軌道に艦隊が展開中ですー」

 

「捕捉しました。モニターに映ります」

 

「お、見えてきた見えてきた」

 

 

 そんなこんなで適当な飲み物で喉を潤していたところ、こちらの光学機器が敵さんの艦隊を捉えた。ユピが自動補正を加えた上でモニターにピックアップした映像に眼をやると、人工惑星ファズ・マティを後方に置いて防衛艦隊が布陣をしているのが見て取れる。

 

 しかし空間モニターに映る映像にはファズ・マティの防衛艦隊が映し出されているが、不思議なことに展開している艦隊にスカーバレルの主な艦隊構成艦である水雷艇などの艦種が見当たらない。あれほど後先考えずに水雷艇でブッコミ掛けてくるような連中なのに、これはある意味異変だ。

 

 

「うーん、なんでだろう? 海賊が安くて足が速い水雷艇を出さないなんて」

 

「多分だが……私らを相手にすると、ただの水雷艇じゃ力不足だから下げたんじゃないかい?」

 

「たしかに水雷艇なら何艇いても落とされる心配はないッス」

 

「だろ? 水雷艇が駆逐艦一隻に比べれば安いとはいえ、作るにしても金はかかるからね」

 

「無駄にしたくないって事ッスね。うわっ貧乏くさ」

 

「ウチが戦えば間違いなく鹵獲とかするから、ある意味ただしい判断かもね」

 

 

 うーむ、まぁそういう事なのかも……。

 

 さて、そういう理由だからか、先の艦隊に比べかなり数を減らしている海賊艦隊であるが、艦隊を構成している艦種をみると、どうも巡洋艦が多いようだ。

 

 巡洋艦は駆逐艦戦艦以下、駆逐艦以上の火力装甲速力を持つ、いわゆる性能が高い艦種である。このままガチでやり合うと損傷度合的には中破状態な俺たちとしては厳しい戦いになりそうだぜ。

 

 

「とりあえず艦載機だしといたほうがいいんじゃないかい?」

 

「そっスねー。損害は出来るだけ減らしたいし。てなわけでユピ、お願いッス」

 

【アイアイサー】

 

 

 まあ、そうなってしまう前に対策を取ればいいのだ。そんな訳でトスカ姐さんが言ったように、俺は艦載機を操るユピに号令をかける。非常にあいまいな指示を下したが、そこは俺がいた時代よりも遥かに未来のAI。ニュアンスだけで何をしてほしいのかを理解してくれたらしい。

 

 とりあえず艦載機はこちらの艦隊と捕捉した敵艦隊との中間点にて待機させるように指示をだしてターンエンドだ。対するあちらさんは、相も変わらずこちらとの距離を詰めようと必死だ。

 

 選択としては正しい。敵さんの艦隊を構成している艦は巡洋艦が多くいる。巡洋艦は運動性や瞬発力では駆逐艦に一歩劣るが、最大速度では駆逐艦よりも秀でている。おまけに耐久力も戦艦には及ばずだが高めなので、艦載機の攻撃なら多少の被弾を覚悟すれば突き進むことも確かに可能である。

 

 おそらくは落伍艦は出るが、それを無視してでも早くこちらを有効射程に捉えたいのだろう。互いの有効射程を考えればそれは当たり前だった。なんせこっちは戦艦なのだ。大口径砲なら有効射程はあちらよりも長いので、移動し続けないと一方的に弄られる痛さと怖さを教えてやろうか?状態になってしまう。

 

 その分、やはり有効射程内での殴り合い砲撃戦なら、まだあちらにも陽の目があると、向こうの指揮官は考えているんじゃないかねェ。たぶん。

 

 

 それはさて置き、お互いまだ距離があるので攻撃が無駄に終わることを懸念し、様子見の段階なのだが……俺はコンソール端っこの小さく開いた空間ウィンドウのタブに眼をやった。

 

 そこには幾つかの数字が並び、時間経過で数字が減るタイマーが表示されていた。タイマーの残り時間はもうすぐゼロになるのを確認した俺は、再び外部モニターに眼を移す。モニターの向こうで海賊の防衛艦隊が大量のデブリがある空間を航行していた。

 

 それらの中には、つい先ほどの戦闘で破壊された海賊艦隊に所属していた艦のデブリも浮かんでいる。むろんそれよりも遥かに古いものもあるあたり、どうやらあの辺で戦うと微妙な重力の干渉でここいらまで流されるようだ。海賊だろうが大統領だろうが宇宙で死ねば皆等しくダークマターになるのは世の理である。

 

 普通の船乗りはこういったデブリを前にすると、サルベージとか色々する前に敬意を払いあまり無下には扱わない。呪われるとかオカルトを信じるわけではないが、それが船乗りとしてのマナーだと昔から決まっているらしいのだ。俺たちもEVAでジャンクを集めるが遺体を発見した時はちゃんと葬式してやっている。ジンクスは大事なのだ。

 

 

 だが、海賊は宇宙に浮かぶ亡骸たちを気にも留めず、むしろデブリだからワザとぶつかって弾いたりして進んでいた。流石は海賊、金目の物にならない亡骸相手に敬意を払うそぶりがない。死者を敬うよりも今を楽しむ、それが海賊なのだろう。死んだ奴は興味すら抱かないのだ。

 

 しかし、それが彼らの命取りになるのだ。

 

 こちらとの距離をどんどん詰めてくる海賊の艦隊。その艦隊が、とあるフネの近くを通過した時であった。突如、浮遊していた残骸から小規模な爆発が起こり、その周囲に粉塵と煙をまき散らした。

 

 それは経験豊富な船乗りから見れば、近くを通過したフネの推進器から発せられる放射熱に、フネの残骸から漏れ出した軌道修正アポジモーター用の推進剤が反応し、爆発してしまったかと思うだろう。

 

 事実、緊急回避などに用いられるアポジモーターはキック力を求められる為、推進剤は非常に反応しやすい物が使われる傾向がある。特に旧式のフネの場合は旧式の熱核ロケットモーターを使っている場合もあり、別途推進剤が必要だったりもする。その推進剤が漏れ出して爆発が起こったように確かに見えた。

 

 だから海賊達も気にせず突き進んでいた。宇宙空間を高速で飛び回る以上、その程度の爆発で生じたデブリシャワーでは大した損害は出ない。俺が生きていた時代から考えたら、信じられない事であるが事実である。かがくのちからって すっげー!

 

 だが、彼らのフネの装甲板を叩く破片が、ただの金属の欠片などではなく、実は爆発物でありミサイルであったとすれば? しかも、それが敵の直前で幾重にも分裂し、何百にも分かれた子弾となって、艦隊の真横からばら撒かれればどうなるだろう?

 

 当然、酷いことになるのだが、これはイフの話ではない。なんせ今まさに海賊艦の無防備な横っ腹に、分裂して子弾を放出したミサイルが食い込んでいたのだから。

 

 周辺へ撒かれた子弾が爆発の連鎖を誘発している。それらが幾つも発生して複数の火球が海賊船を飲み込み、宇宙に綺麗な華を咲かせていた。

 

 

「トイボックスの起動を確認。損害計測はインフラトン反応が沈静化するまでお待ちください」

 

「見事に引っかかったな。たーまやーってとこッスか」

 

 

 やったぜ! そう、これまたウォル君の策を元に、ケセイヤ達マッドな仲間が一時間でやらかしてくれたトラップが発動したのだ! 

 

 トラップの仕組みは非常に簡単。さっき交戦した敵の艦艇の内、原型は留めているけどジャンクとしても売れそうにないゴミの中に、いくつものミサイルポッドを忍ばせただけである。そのトラップ入りのプレゼントをファズ・マティ方向へと飛ばしたのだ。

 

 もっとも到達できるかは半ば賭けだったけどね。宇宙は広大なので飛ばすときの軌道がわずか数ミリでもズレると思ったポイントに流されなくなるし、何かしらの原因で軌道変更されてしまう危険性もあった。

 

 どうやらほぼ思惑通りになってくれたようだが、流した数から考えると非常に少ない。一応大小合わせて結構な数をファズ・マティ方面に押し流したが、到達できたのは目の前で海賊に損害を出している一個だけのようだ。なのでそれを見ていたトスカ姐さんがこう溢した。

 

 

「ま、費用的には、ちょっとなんどもやれないね」

 

「うっ……たしかにそうなんスよね」

 

 

 うう、痛いところがあるとすればそれなんだよな。ユピの制御リソースまで高性能演算装置にまわして軌道計算を行い、そこから導き出された解答から、ラバーキン達を使ってデブリを軌道に乗せたのに、あろう事かほとんどが明後日の方角に向かって流れてしまったのだ。

 

 タイマーによってミサイルポッドが起動し、周辺の情報から海賊船がいたらミサイルが全弾発射される。ね?簡単でしょう?――では済まない。ミサイル自体はいい、ユピテルが戦闘空母なので艦載機用に各種ミサイルを搭載する必要があり、空間通商管理局の軌道ステーションでの補給項目に入っているのでタダで補充が出来るからだ。

 

 問題は発射台であるミサイルポッドの方で、ガワであるトイボックス自体はゴミからの流用なので無料だが、ポッドは工廠艦アバリスで自作したものだ。装備の喪失は宇宙で旅する以上よくあるので宇宙港で補給してもらえるのだが、それはあくまで通商管理局の規格品に限られるので、自作品は補充リストにアップして貰えないのだ。

 

 ポッドを制作するのに、ジャンク品やその他各種鉱石などの物資を加工したりするので、その分にかかる費用とか、こうして敵に届くまでのラグとかの費用効果を考えると、赤字じゃないけど思っていたより使えないわコレ。

 

 海賊狩りで結構稼いでいるんだからケチケチしすぎとか言われそうであるが、ウチには開発にかけては自粛も自重もしないマッド連中が集まっている。彼らの所為で幾ら資金や資材を貯めてもドンドン減っていくんだ、これが…。

 

 まぁとにかく、敵の出鼻をくじけたのは僥倖だろう。そう思おう。うん。

 

 

「インフラトン反応沈静化によりセンサーに感あり、敵残存戦力は撃沈が駆逐艦2隻。大破以下は合わせて12隻、無傷の艦は6隻です」

【トイボックス、全弾発射完了しました。自爆コードを送信しておきます】

 

 ユピの解析結果が空間モニターに映像と音声の両方で提示される。うーん、命中率を高める為に拡散タイプにしたからか、拡散ポイントに近かった艦隊以外への影響が少ないようだ。

 

 先の戦いで使用した反陽子弾頭を使えば、範囲内にいる海賊は即全滅ルートにいけたのであろうが、残念な事にコピーの反陽子弾頭はあれひとつしかないらしい。オリジナルを使うにしても入手した旧式弾はその昔エルメッツァ政府軍が使用していた独自の物であり、小マゼランの通商空間管理局では補充して貰えない虎の子だ。

 

 いちおう反陽子制御の技術は、この時代において使い古された技術なのでケセイヤ達の手に掛かればコピーする事も出来なくもない。むしろネックになるのは、専用の保管庫や反陽子生成設備にかかる投資だろう。

 

 要するに反陽子弾は今の俺たちが扱うには威力があっても面倒くさいのだ。そんなものを扱うくらいなら普通にフネを購入して艦隊の数を増やした方が効率もいいし何よりもコストが安い。

 

 大マゼラン銀河なら反陽子装備を売っている造船所もあるから、空間通商管理局のステーションでも補充して貰えるだろうけど、とにかく威力がある兵器なので小マゼランでは軍以外扱ってないので補充して貰えないから扱いが難しい。

 

 こまった兵器ちゃんだよな。ホント。

 

 

「無人VF隊、敵艦隊と接触、交戦に入ります。アバリス、敵の動きにオートリアクション、砲撃を開始します」

 

【敵残存艦隊からミサイルが射出されました】

 

「無人VF隊がミサイルに反応して自動迎撃をします。反撃はいかがなさいます?」

 

「ストール。君に決めた」(気分は某モンスターを従えるトレーナー)

 

「おっし!任せろ!全部撃ち落としてやるぜ」

 

 

 敵艦が放ったミサイルに直掩の無人VF数機が即座に反応する。半機半人のガウォークモードで両腕にバルカンポッドを携えた彼らはユピテルの装甲に沿って即座に移動し、ミサイルが来るであろう方向にポッドを向けて火力を集中させた。

 

 彼ら直掩機は自在に動き回る近接防御火器だ。いわばCIWSのような役割を持たせている機体達で、ミサイルはRAMに相当するマイクロミサイルのみ残し、余ったパイロンにはバルカンポッド用の追加弾倉を積んだ機体達だ。その制御は他のVFもそうだが統合統括AIであるユピが一括して管理している。

 

 ただでさえ超弩級宇宙戦闘空母を管理しているAIなのに、そのリソースを少し借りている無人機の迎撃能力はかなり高いらしく、命中確実のミサイルを瞬時に識別してマークして確実に迎撃している。というか、横に薙ぎ払うようにしてバルカンポッドを斉射して何で当たるんだよ……。

 

 

 ともかく無駄に高度な迎撃能力を発揮してカモ撃ちと言わんばかりにミサイルを落としている間に、我らが砲術長のストールがFCSを操り艦隊に照準を合わせていた。すぐさま発射された光線がミサイルを撃ってきた敵艦に直撃する。

 

 初撃で命中弾って実はすこぶる難しいらしいが、なぜかかなりの確率でストールは命中させたりできる。こいつには人力TASさんでも搭載されているんだろうか? 予測射撃の精度がもはや予知レベルに達しているんですけど。

 

 

【1~5番艦までのインフラトン反応消失。撃沈です】

 

「機関出力最大!今の内に突破する!」

 

 

 まぁ攻撃が当たるのと当たらないのでは、当然当たる方が良いに決まっている。敵の防衛ラインと思われる艦隊が崩れたので、この隙に俺達は最終防衛ラインを強引に突破した。

 

 突破するドサクサにまぎれて自動操縦のアバリスに搭載されているガトリングレーザー砲を平行戦に入る瞬間、艦隊と俺たちがすれ違う瞬間に撃ちまくり、更に敵を混乱させる事に成功した。

 

 拡散レーザーが多いとはいえ、至近距離で浴びせれば装甲は兎も角センサー類は壊滅的な状態になる。これでさらに時間を稼ぐことが出来る。その隙に俺たちはファズ・マティの軌道エレベーターにある宇宙港へと進路を向け、ステーションに強引に接舷した。

 

 

***

 

 

 さて、この宇宙、というか小マゼラン星雲を旅する宇宙航海者たちはバイオハザードみたいな余程特別な理由がない限り、地上から延びる軌道ステーションに付属した宇宙港に攻撃を仕掛ける様な事は基本有り得ない。

 

インフラトン機関を持つフネはI³(アイキューブ)・エクシード航法が可能なので巡航速度が非常に早い。つまり目的地が解っているのであれば、光速の二百倍という速度で素早く到着できるということでもある。

 

 したがって現在のフネには基本的に移民船のような閉鎖型循環式環境プラントを搭載していない。そんな場所とる物置かなくてもセクターを移動するだけなら数日かからないからだ。一番小さな120mクラスの宇宙船でも非常食まで含めれば半年は動ける事を考えればプラントを入れるだけ無駄なのである。

 

 

 とはいえ、別に補給しなくていいというわけではない。あくまでも非常食は非常食。決して日常で食べたいと思える代物ではなく、また嗜好品がないと人間色々と駄目になっていく事を考慮すると、必ず何処かの惑星に補給に下りなければ中身が干上がってしまう。

 

 そういった意味で宇宙港は惑星と宇宙を結ぶ唯一の玄関口、そこを使いモノにならなくしたら、うまい飯も嗜好品もならなくなる訳で……基本的に自分の嗜好に忠実な連中が多い0Gドッグが酒場から締め出されて平気なわけもない。大気圏に降下できるフネで無い限り惑星に降りる事もままならなくなるのは致命的なのだ。

 

 だからこそ宇宙航海者は宇宙港付近での、特に空間通商管理局が保有する宇宙港での戦闘を好まない。誰だって無補給のミイラにはなりたくないもんな。

 

 

【ステーションの湾口ドッグエアロックを確認。マークします】

 

「ストール?」

 

「おk、まかせろ―――ぽちっとな」

 

 

 伸びる光線。ズガン。哀れステーションの湾口エアロックは爆発四散!

 

 そんなマッポーめいた光景が展開されるなか、アバリスをしんがりにユピテルが砲撃で開かれたステーションの湾口ドッグ内に侵入する。後ろに付いたアバリスはその場で反転。リフレクションレーザー砲で長距離砲撃を行いつつ、それでも接近してきたフネは片っ端からガトリングレーザー砲で叩き落とす。そんな布陣だ。

 

 入港すればこっちのもんだ。向こうはステーションに被害を出したくないから攻撃が弱くなる。逆に港を背にしたから手加減する必要が無くなったので、射程内に入ってくる敵だけを撃ち放題だった。敵にしてみれば住処を人質に取られたようなもんだ……今思うとえげつねぇな俺。

 

 

 一方、湾口ドッグに侵入したユピテルは、そのまま強制接舷を行うために壁際にフネを寄せていく。その時、本来なら停船したフネを接岸する固定用のガントリーアームが行く手を妨害しようとしたのか浮き上がった。ガントリーアームがユピテルに向かって伸ばされ、船体を固定しようとする。

 

 だが、その程度の細腕で捕まえられる彼女じゃないぞ? 無粋にもユピテルの船体を押さえつけて、伸びきったガントリーアームであったが、こちらが身じろぎするかの如く軽く吹かした瞬間、関節部から火花を挙げて軽く拉げてしまった。こちとら技術力が高い大マゼラン製だい、馬力が違うわな。

 

 無重力空間に無様に漂うアームの破片を蹴飛ばして、そのまま旗艦ユピテルはステーションに横付けした。通常の接岸なら移動用チューブがこちらのエアロックに延びてくるのだが、あいにく今回は招かれざる客だ。むこうからチューブが伸びてくる事はない。

 

 これでは接岸できないが、なに上陸の仕方は一つじゃない。

 

 

「強制接舷開始!ロケットアンカー射出!」

 

「アイアイサー、アンカー射出します」

 

 

 ユピテルの左舷、横腹からロケット付きのアンカーが射出される。二本ずつそろって射出されたアンカーは湾口ドッグの外壁に突き刺さり、壁の内部で取っ掛かりが起き上がって、ユピテルとステーションは固定された。

 

 その二本のアンカーから延びるワイヤーに沿って、蛇腹になったチューブが伸びていく。ステーションの外壁に取り付いたチューブは炸薬を用いてドッグ外壁を吹き飛ばした。

 

 本来は白兵戦を仕掛ける際、敵のフネに打ち込む為の装備だが、使い方次第ではこういった事も出来るのだ。

 

 

「突入後、保安員は直ちに軌道エレベーターの出入り口と管制室を確保ッス! それから降下し基部周辺の施設を制圧しろ! トーロ! 頼むッス!」

 

『任せときな!』

 

 

 内線の空間ウィンドウの向こうに映りこんだ装甲宇宙服に身を包んだ保安部員とトーロ達は、各々手に武器を携えて敵が待ち受けているであろう湾口ドッグに突撃した。 

 

 白兵戦を得意とする勇者たちは、目についた強制接舷に驚いて呆然と立ち尽くしていた海賊の一人を、手にした両手剣タイプのスークリフブレードで血祭にあげる。

 

 それを皮切りに軌道ステーションにいた海賊達との熾烈な戦闘が始まった。本拠地だけはあり敵の数は多いが、こちらとて厳しい訓練を日々続けてきて実戦経験もある保安部員の猛者たちが決死の覚悟で血路を確保。

 

 幾人かの犠牲は出たが湾口ドッグを制圧。その後、ユピがステーションのシステムをクラックし、各所のエアロックを人力以外では開けられないようにした。そこへ白兵戦のプロである保安部員たちを率いたトーロが、クラッキングで得た情報を元に、ステーションの軌道エレベーター管制室に乗り込んでいった。

 

 

 この管制室を確保しないと軌道エレベーターを止められてしまう上、破壊されると安全装置が働いて地上に降りれなくなる。戦闘には細心の注意が必要とされたが保安部員とトーロはやり遂げた。

 

 その間にも手すきのクルーもそれぞれの獲物を手に、軌道ステーションの各ブロックにいる海賊達を蹴散らしていく。この時もユピとサナダのクラッキングが役に立ち、各ブロックに集結しようとしていた海賊達の居所を正確に突き止め、最低限の人員で迅速に排除していった。

 

 

「ステーション制圧度、23パーセント」

 

「思ったよりも遅いッスね。トーロ達けっこう強いのに……」

 

 

 それでも海賊も白兵戦では艦隊戦の時よりもしぶとく粘り、必死の抵抗を見せていた。その所為でこちら側も負傷者が増えていく。死者は少ないが白兵戦はやはり海賊の十八番なのだろう。さて、どうしてものか……ん?

 

 

「ミドリさん、ミドリさん。さっきクラッキングしたこのステーションの見取り図を出してくれッス。ユピはそこに今味方がいるのを重ねてくれ」

 

「はい艦長」【わかりました】

 

 

 俺のコンソールに新しく空間ウィンドウが展開され、そこにステーションの見取り図と味方の位置が光点で表示される。やっぱり味方がいるのは軌道エレベーターの管制室を除くと、ほぼ湾口ドッグ周辺に限定されているのか、なるほど。

 

 

「これ、別に重要な区画でもないところに、いちいち人員割く必要ないッスよね?」

 

「まぁそうだねぇ。ウチも人数に限りあるし……で、なにか思いついたのかい?」

 

「うぃッス。トスカさん。なに、殺る事は簡単ッスよ。ステーションを爆破する」

 

 

 そう呟くようにして言うと、トスカ姐さんは目を見開いて俺を見た。

 

 

「ユーリ、あんた何時酒を飲んだんだい?」

 

「いやトスカさんじゃあるまいし平時には飲まないッスよ?」

 

「私は飲んでも素面で通せるから問題ないよ」

 

「いやいやいや! 問題あるッスよソレ!?まさか今も飲んでるとかないよね?」

 

「おいしい水しか飲んでないよ」

 

「じゃあなんで明後日の方向に顔向けてるのか説明してほしいッス。言わないと禁酒……ごめんなさい、業務に支障がないならもう何も言わないッス。だから人殺すような眼でこっちみないで……」

 

 

 どんだけ酒好きなんだよ!? そりゃたしかに浴びる程飲まないとこの人酔わないけどさ!?

 

 

「はぁ~。とにかく、こちらの損害を減らすにはこれが良いと思うッス」

 

「あんまりアンタの考えを否定したくはないけど、ステーション吹っ飛ばしたらこっちまで吹き飛ぶだろ」

 

「いや、別に全部吹っ飛ばせってわけじゃないンスけど…」

 

 

トスカ姐さんがどこか引いた眼で俺を見てくるが、爆破するなんて突然言い出したら俺の正気を疑うだろうな。

 

 俺が言いたかったのは、敵がいるであろうステーションのブロックを閉鎖した上で、ステーションの外に陣取っているアバリスの砲撃でステーションに穴開けちまおうって話だ。どうせ使わないブロックなのだから、敵が集中しているところを狙えば、外に吸い出されて一網打尽に出来るだろ。

 

 

 そう皆に説明したが、案の定ドン引きされた。いや、まぁ、なんていうか。自分でいうのもなんだがヒデェよな。でもこれが一番こっちの損害を減らせる方法だと思う。数で少ないこちらは向こうが本気で援軍を出して来たら数で抑え込まれてしまうのだから、その混乱を長引かせるにはこうするしかない。

 

 俺にとって大事なのはクルー達なのだ。そりゃロマンを追い求め無茶もするが、無駄にクルーの命を散らせる事もあるまい。クルーを大事にしない艦長なんて艦長じゃないだろう。そのためなら、俺は非情な判断だって下してみせるぜ。

 

 

「アンタ、時々ホントに鬼畜だね。敵に回したくないよ」

 

「ヒデェ!?」

 

 

 俺はタダ皆の被害を減らしたいから無い頭絞っただけなのに!!

 

 まぁいい、とにかくこの案は少し形を変えて実行される事になった。変更されたのはレーザーで風穴を開けるって部分だ。流石に戦艦級のレーザー砲だと、小口径でもステーションの深部まで到達してしまいかねず、最悪バイタルエリアにあるリアクターとかを貫いて内部から爆発が起きる可能性を捨てきれなかったからだ。

 

 それに今アバリスはもしかしたらまだ居るかもしれない敵の残存艦隊への警戒の為、湾口ドッグのエアロック付近から動かせない。その代わりに爆装させたVFを数機、ステーションの外壁に配置させる事になった。

 

 外で待機させたVF達はステーション内部で戦闘を行っている連中が激しい抵抗を受けたポイントに向かって対艦ミサイルを撃ち込む。対艦ミサイルは戦闘艦の装甲を打ち破る為に貫通力があるモノが多い為、それが例え頑強なステーションの外壁であっても例外ではなく、深部にいない限りは結構な深さまで損害を被らせる事が出来た。

 

 デブリ対策で装甲化はされていたが、対艦ミサイルが数発当たればそんなもん軽く吹き飛ぶので、そこにあいた穴にさらに打ち込めば倍率ドン、てな具合。

 

 そうやって抵抗のあるところはほとんど制圧したが、海賊もさるものでミサイルが届かない深部に陣取った連中が周囲の生き残りを集結させて最後の抵抗をしてきた。いつの間にやら通路にバリケードを築き、それを盾にしているらしい。

 

 あまりステーション制圧に時間を掛けたくなかった俺は、とりあえず困ったときのマッドサイエンティストに頼んでみることにした。

 

 

「サナダさん、どうにかならんスか?」

 

「やってみよう。すこしユピを借りるぞ艦長」

 

 

 そういってサナダさんは一時的にユピの持つ情報処理能力を拝借。拝借したのはVFコントロールに使われていた部分でごく僅かだがVFの挙動が止まった。その間に真田さんがピポパってな具合にステーションのメインフレームにアクセス。

 

そして――

 

 

「これでよし。ユピ、ありがとう」

 

【いえいえ。あ、艦長これで海賊は全滅です】

 

「え? いまコンソールピポパってやっただけッスよね?」

 

「エア抜きをした。見たいか?」

 

 

 あ、遠慮しておきます。なんとサナダさん、ステーションのメインフレームから空調のシステムを掌握して海賊がいるエリアの空気減圧しやがった。なんて恐ろしい事を……。

 

 何が怖いかって、人間は一気圧の気圧の中で生活しているわけだが、急激に空気圧が下がると血に溶け込んでいる空気がガス化して血管をふさいだりするんだって、昔よんだプラネテ○に書いてあった。減圧症とかいうらしいのだが下手すると死ぬんだそうだ。

 

 送り込んでいる仲間はみんな宇宙服を装備しているので、海賊と対面している連中は今頃いそいで装面してい――

 

 

『死ぬかと思ったぞ! だれだエア抜きしたやつはぁぁぁッ!!』

 

 

――ああ、やっぱり怒るよなぁ。回線に前線で戦ってたクルーの一人が怒り心頭って感じで映ってるし……あとでボーナスでもなんでも出して補償しとかないと暴動おこされそうだ。空気抜き、ダメ、絶対だ。

 

 そんな感じで要所は抑え、それ以外は大穴を開けたり減圧するなどして、ステーションの橋頭堡である軌道エレベーターを確保した俺たち。ファズ・マティに下りるエレベーターを確保した保安部員や武装クルー達に、そのまま下界へ向かうように指示を出した。

 

 ただそのまま突撃させたのでは被害が増えるので、先にVFを地上に降ろした。ファズ・マティは人工惑星なので惑星全体が大気圏の代わりのドームに覆われている。そのドームは強固な装甲でもあり、生半可な攻撃では表面は兎も角内部に被害を出すことは難しくなっていた。

 

 だけど、ステーションとファズ・マティを結ぶ軌道エレベーターがある場所には、アースポートから垂直に宇宙に延びるコアケーブルと、それに沿って昇降する新幹線みたいな形状をしたオービタルトラムが通る為のスペースがある。

 

 ドームの壁にトンネルが開いており、そこを通ってオービタルトラムが行き来するのであるが、当然ながらトラムが通らない時はシャッターが下りている。周囲のドーム外壁と比べればシャッターは脆い上にオービタルトラムが近づくと自動で開く仕組みになっていると来たもんだ。

 

 なので残存VFをすべてシャッターのまわりに集結させた。ファズ・マティ周辺の索敵網が狭まり、敵残存艦が襲撃してくるかもしれないが、そこは湾口ドッグ出入口で仁王立ちしてらっしゃる戦闘工廠艦アバリスに頑張ってもらうと割り切ったのだ。

 

 まぁ艦隊の主戦力は戦況を見る限りもう出てきそうにないけどな。これだけ暴れてるのにアバリスのレーダーには何の反応もない。慢心するわけじゃないが、これはもう敵さんのフネはほとんど落としたのかもしれんな。

 

 

「艦長、VF各機ファズ・マティ内部に侵入しました。内部スキャン情報が上がってきます」

 

【情報を元にナビマップを構築します、おまちください】

 

 

 さて、特に何も指示しなくとも状況は進行した。オービタルトラムが通る場所をふさぐシャッターはトラムが近づくと自動で開くことを利用し、トラムを近づけたうえで停止させ、その隙間から十数機のVFが内部に侵入した。

 

 敵さん、トラムの出入口から戦闘機が侵入してくることは想定外だったらしい。確かに内部スキャン情報を見る限り、翼を広げた形状をした戦闘機が通るのはギリギリの幅しかない。場所によっては翼が掠るところもある。エスコン名物のトンネル潜りハードエディションといった感じだった。

 

 でもな、航宙機だとギリギリの幅だけどよ。VFだと問題ないんだよなぁ。なんでかっていうと、VFは可変機だからだ。可変して人型になればトンネルの中を歩いて通れるんだもん。高速でぶっ飛ばすわけじゃないから普通に通過できるんだよね。悪いな海賊、卑怯くさいがこれはあくまでVFの特性なんだ。

 

 そんなこんなで味方を乗せたトラムよりも先にアースポート周辺に降り立ったVF達は適当に破壊活動を開始した。アースポートは破壊すると後が面倒なので、周辺にある酒場とか大人のお店とか、まぁ壊しても問題なかろうな施設を優先して破壊させた。

 

 バトロイド形態で地上を攻撃させているので、敵さんからしてみれば、金属の巨人が降ってきて大砲の弾をバルカンで連射してくるという悪夢染みた光景になっている。VFの数が少なすぎて効果的な攻撃とは言えないが、敵を混乱させるには十分だった。

 

 その混乱に乗じてトラムをポートに強行発着させ、ポートも内部から制圧。ポートに敵が来たことに気が付いた海賊が、ポートに向かおうとするのをVFで留めつつ、トラムをピストン輸送させて地上に戦力を集中させていった。なお、人手不足のあおりを受けてブリッジメンバーや俺やトスカ姐さんも地上に降りることになった。

 

 とはいえ、アースポートは既に占領していた。だから下りてきた俺たちが何かする必要はなかった為、俺は兎に角、部下に発破をかけてアルゴン・ナラバタスカの捜索を急がせた。

 

 この時、ケセイヤ謹製のトリモチ弾を含めた非殺傷兵器が多数使われたのだが、これにより大量に捕まった海賊団員から情報を引き出すことに成功する。聞き出した方法は、宇宙に放り出されるのと黙って情報渡して酒飲んで寝てるのとどっちがいい? と嗤いながら聞いたら顔真っ青にして教えてくれました。

 

 このちょっと外道な方法で複数人から入手した情報を統合すると、ボスのアルゴンは軌道エレベーター基部から割かし近い位置にある総合センタービルにいるらしい。素直に教えてくれた海賊達には約束通り酒瓶を渡して適当な場所に放り込んでおいた。

 

 約束は守る男ですよ俺は。まぁ放り込んだ場所が各宙域から誘拐した人達を拘留する場所なので、今頃酒瓶奪われて袋叩きにされているだろうけど。誘拐された人達を開放しない理由は、ウチは人手不足で要所要所を制圧するのが精一杯なので本拠地進入により敵が浮き足立っている間にボスを倒したいからだ。

 

 ここで人質解放すると、こんどは彼らを守る為に余計な人員を割くことになってしまう。幸い人質拘留設備は周りの施設よりも強固にできているから、ファズ・マティが爆発しない限りは大丈夫だろう……フラグじゃないよ!? 絶対にフラグじゃねぇからな!!

 

 

 おっと、バカなことをやっている暇はない。すぐさま人員を集結させて総合センタービル周辺を制圧させた。先発隊を率いていたトーロが疲れを見せず精力的に働いてくれるのでこちらとしては楽である。普段は艦隊戦とかで出番がないから、今回のこれは良い鬱憤晴らしなのかもしれん。

 

 それは兎も角、トーロ達と合流した後、手勢を引き連れて俺は建物へと入った。本拠地の中心部と呼べるビルなので、当然ながら大量の海賊達が武器を片手に犇めき合って、フロントロビーと思われる広い空間にバリケードを築いて待ち伏せていた。

 

 そしてビルのロビーで激しい戦闘に突入する。防衛側になる海賊はその辺の物で築いた簡素ながらも硬さだけはあるゴミの山、否、バリケードを盾に徹底抗戦の構えを見せ、対する攻撃側のこちらはトーロ達保安部員を筆頭に血の気の多い船員がバリケードを突き崩そうとライフルを乱射する。

 

 ただ、ビルという構造物の内部という地形上、ビルに攻め込むこちらが若干振りだった。いうなれば敵さんの要塞に攻め入るようなものなのだ。宇宙での戦いは敵の船に乗り込む白兵戦もあるので、それなりの装備を持ってはいたがバリケードで守られた陣地とも呼べる場所を攻めるには火力不足だった。

 

 

 如何してくれようか考えていたら、後続でやってきた部下がケセイヤ印の試作武器を持ってきてくれたじゃあーりませんか。しかもご丁寧に随分ゴッツイ、ぶっとい大砲ときたもんだ。複数あったのでそのうちの一つを手にしたところ……あらやだ、すごく馴染むじゃないの。

 

 

「ターゲットはバリケードッスから、大体30パーセントで……」

 

 

 肩に担いだその大砲、試作バズーカEタイプ、別名エネルギーバズーカを構えて、物陰から敵のバリケードの一つを狙う。ただ成る丈、見える範囲で人が死ぬのは見たくなかったので、Eバズーカの出力は抑え目に設定した。

 

 

「ふむ……」

 

 

 だけど、ふと思った。ただ引き金を引いて撃つだけでは物足りない。

 よし、何かを肖ろう。何がいいか………これに決めた。

 

 

「ベクターキャノンモードに移行、エネルギーライン全段直結――ちょっと省略して、ライフリング回転開始、撃てます! 発射ッ!」

 

 撃つ時思った。ユピにこのシーケンス教えとけばよかったorz

 

 内心後悔を覚えつつも、片手にもったこのEバズ……どんどん省略されてくなコレ。まぁいい、Eバズを投射したところ、いかにもエネルギーの塊ですと言わんばかりの青い火の玉がボシュっと飛び出し、バリケードに直撃した。

 

 チャージしたエネルギーは三割程度だったが、着弾した瞬間に弾頭から解放されたエネルギーの衝撃波でバリケードが紙のように吹き飛ばされていた。バリケードの向こうでは豆鉄砲喰らった鳩の如く、口をあんぐり開けている海賊共が見える。

 

 なんとなくEバズの砲口を向けながら、笑って(嗤って?)降伏勧告を行うと、とたん抵抗が減少した。やっぱり至近距離で喰らうバズは怖いよな。

 

 でも多分それよりも怖いのは――――

 

 

「ははははは! 通路が直線だから撃てば当るねェッ!」

 

「どうしたどうした! 俺の心の臓はここだぞ! 海賊風情の弾が当るものかよ!」

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」

 

「ガトチュ! エロスタイル!」

 

「フタエノキワミ! アッー!」

 

 

 無駄にテンションが高いこいつらかもしれない。後ろから見ていたんだが、どうにも前衛で戦う部下の一部の士気が異常に高く、濃ゆい連中ばかりが奮闘していた。艦長である俺が見ても若干引くレベルの連中で、しかも腕が立つ。

 

 彼等の奮闘のお陰で現れる海賊たちは抗うすべもなく制圧されていった。だが後半部分の連中、いったいどこでその戦い方を習った!? どうりで戦っている最中に若干変な掛け声が混じっていたと思ったよ。

 

 

「うおっ!艦長!右の通路からまた来た!」

 

「おっし!任せろッス!――コレが俺の全力全壊!」

 

「それなんか字面がおかしい気が……」

 

「「「うわー! ぐわー! ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」」」

 

「おし、殲滅ッス。悪は滅びた」

 

「おーい艦長。まだいっぱいいるよー」

 

 

 着弾の衝撃波で車田落ちしていく海賊共を尻目に決め台詞。なんかクルーがつっこみをしてきたけど、それをあえてスルーするのはお約束だ。そのせいでクルーは呆れた顔で立ち去ったお(;^ω^)

 

 

「おーいユーリ。一階の制圧、完了したよ」

 

「奥の方には上階行きのエレベーターがあった。ミィヤさんについてはまだ発見出来ていない。多分上にいるんじゃないかな?」

 

「なら先に進むしかないッスね。トスカさんとイネスは付いて来てくれッス。トーロは殿を頼むッスよ?」

 

「「「了解」」」

 

 

 こうして統合センタービルの一階を制圧した。そのまま勇み足で二階に直行するが、何故か二階には人が見当たらない。二階の人員を一階に回して応戦していたのか……。

 

 仕方ないのでもぬけの空である二階はスルーし、そのまま三階へのエレベーターを探した。この手の施設は敵が侵入するとエレベーター等が一方通行化して一々階層を跨がねばならない仕掛けになっている。

 

 侵入者を疲労させる目的兼、上にいる人間の脱出までの時間稼ぎというのが憎い仕掛けである。完全に閉鎖しないのはもしもの時に味方まで出入りできなくなると困るからだろう。

 

 一応上空にはVFを待機させてあるので、脱出ポッドやらロケットを使っても追跡は可能であるが、その前に捕まえる事に越した事はない。

 

 

「三階、紳士服売り場でございます。海賊のバラ売りセール中でーす」

 

「うわっ、いらねえ!」

 

 

 さて、チーンッと小気味良い鈴音を鳴らして、エレベーターが三階に到着した。ここもほぼ無人で散発的な戦闘がある以外は、一階のような大規模な待ち伏せはなかった。とりあえず道なりに進んでいたら道中で電子マネーカードを入手。

 

 手持ちの携帯端末でカード残高を調べてみると大体300G程度入っていた。非常にショボイ金額である。いやまァ、一応は地上に住む一般家庭の年収より少し高めの金であるが、フネの運営をしている感覚からするとこの程度はした金である。

 

 部下にこの階をさらに捜索させるものの、他にはなにも見つからず四階へのエレベーターを発見した。乗るしか、ないやろ…!

 

 

……………………

 

 

…………………………………

 

 

………………………………………………

 

 

 

「うおーい、そこのしょうね~ん!」

 

「ん?だれだ?」

 

 

 さて、ダミーのエレベーターに騙されたりして微妙に上下していた所為で、現在の正確な階層が不明だったが、大体十数階を過ぎたあたりである。何処からともなく、俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

 それは偶々通路をふさいでいる海賊が根強い抵抗を見せており、本職である保安部たちに任せて少し道を引き返した時のことだった。ヤダ、幽霊かしらと思ったが、恨みつらみはともかく常に人が出入りしていたであろうビルに心霊現象は考えにくいので、普通に誰かいるようだ。

 

 だが周囲を見回してもそれらしき人影は見えない。海賊なら問答無用で言葉無く、正確にはシネヨヤーと悪態をついて銃を連射したりスークリフブレードで切りかかってくるはずなので、海賊の線は低いだろう。

 

 しかし俺を呼ぶ声、逃げ遅れた人質か誰かだろうか? それにしてはあまり必死さが感じられないし、罠か? でもすぐ近くに海賊がバリケードを張っているのに、そんば場所で誘き寄せる罠を張るとは思えない。というか海賊の知能レベルで罠張れる人材ってかなり少ないからな。可能性は、無くは無いが低い。

 

 そう判断した俺はもう一度俺を呼ぶ声を思い出す。件の声を聴く限りは敵意はないっぽい。それと、どうやら女性の声らしいが、さらわれたミィヤ嬢の声ではない。もっとこう、年上の女性の声である。

 

 

「………貴様! 見ているな!」

 

「そこの君、きょろきょろとしている少年。ああ、そうそう君の事だよ。ひょろひょろとしたもやし―――」

 

「あ゛あ゛!?」

 

 

 ネタに走って肖っていたら、久しぶりに聞いたNGワードの所為で、俺の眉間に青筋を浮かんだ。こう見えてもそれなりに特訓したりして鍛えてるんだい! 筋肉つかないけどorz

 

 

「な、なぜ落ち込んでいる?――まァいい。そこなヒョロッと……いやさ、線が細い美少年くんよ。どうか私を助けてはくれないか?」

 

 

 キレて落ち込むという急転直下な感情の落差に困惑したのか、若干疑問符が混じった声が通路に響く。悪気があっての言葉じゃなさそうだし女性の声なので、とりあえず深呼吸してテンションを平常に戻しつつも声の主を探した。

 

 

「助けたいのは山々なんスが、一体全体声の主さんは何処に居るッスか?」

 

「君の真上だよ少年。すこしずれている天板をはずしてくれないか?」

 

「上?しかも天井の板って―――へえぁっ!?」

 

 

 思わず変な声が漏れた。というのも言うとおりに天井の板で隙間が出来ている部分が見えた訳だが、その隙間からこちらを伺う目玉と眼があっちゃったのだ。一瞬お化けと思ったのは俺だけの秘密である。

 

 んで、そのズレていた天板をバズーカの砲身でズラして見たところ、そこにはなんと一人の女性がいたのである。一体何がどうなればこうなるのかは解らないんだが、天井の中を走るケーブルとかの配線の束があり、そこに白衣を来た女性が絡まっているというある意味ホラー映画みたいな光景が広がっていた。

 

 

「あー、その」

 

「ふっ、笑ってくれても良いぞ少年。言いたいことは解る。なんでそんなところに綺麗なお姉さんが蠱惑的な感じで絡まっているのか、だろ?」

 

「いや、笑う前に怖いッス。ていうか、聞きたいことは大体あってるんスけど余計な装飾語が多いッス。んで、貴女はどなたさんですか?」

 

「私はナージャ、ナージャ・ミユという。

 惑星アルデスタの大学に勤めている研究者なのだが、偶々大学に帰る際に乗っていたフネが海賊に捕まってしまったのだ。科学者なんだから違法なドラッグの生成に手を貸せとか言われたのは良いが、私の専門はレアメタルでな?

 何もできないとバレると犯されて殺されると思い、適当に研究に手を貸すフリをしていた。

 そして先ほど君達が戦闘を開始したので、私はチャンスだと思い逃げだした訳だ。

 どうだ?解ったか?」

 

「スゲェ肺活量だって事は解りました、あと説明乙」

 

 

 ナージャ・ミユさんねぇ? 

 この出で立ちは研究者であっていると見て良いだろうな。白衣だし。

 なんか研究者っぽい。それより気になるのは―――

 

 

「ところで何で天井の配線に絡まってるんスか?」

 

「ふむ、それには海よりも深く、空よりも高い理由があってだな?」

 

「大方通風口かと思って入ったら、配線の点検ハッチで、辺りに海賊がバリケード張ったからソコから出られなくなって、それでも無理に移動しようとしたらそうなったってとこッスかねぇ?」

 

「ほう、良く解ったな少年」

 

「マジッスか。マジなんスか」

 

 

 見た目はピッとしたお姉さんなのに、実は結構ドジっ娘だったという謎ギャップ。ときめきはしないが、なんか可愛い。この態度や様子から察するに海賊の仲間という可能性は低そうである。

 

 とりあえず敵ではなさそうだし、困っているっポイので助けてあげる事にした。脳内会議の末、俺一人では救出するのは無理と思ったので、他のクルーを何人か連れてくることで、何とか助け出すことに成功した。

 

いやはや大変だった。思ったよりも絡みつき度が高く、おまけに絡まっていたケーブルのいくつかが、重要な電気配線だったのだ。助ける時に配線を切った所為で、このフロア全域が停電した為、窓がないビルだけにしばらく真っ暗になったが、すぐ非常用電源切り替わったけど気にしない。

 

 

「ふむ、少年よ。助かった」

 

「ソレは良かったッスね。それじゃやることがあるんで俺はコレで」

 

「ああ、後で会おう」

 

 

 そう言うと彼女はつかつかと廊下を歩き消えて行った。一体彼女は何だったのだろうか? 人質だったっぽいが、良く解らないな。そんな事よりも先を急ぐことにした。

 

 

***

 

 

 ちゃくちゃくとボスタワーの攻略は進み、各フロアを制圧してから直ぐに最上階へのエレベーターに乗りこむ。ちなみにトスカ姐さんやイネスも一緒である。トーロは既に先陣を切っている。まぁ念のためね。 

 

 

「そういやさっき変な女の人に会ったス」

 

「へんな?どんなの?」

 

「なんか白衣着て配線に絡まってたッス」

 

「地味にハードなプレイだね」

 

「なんでそっち方面にいくんスか? それよりも人手不足で戦闘に借り出されたけど大丈夫なんスか? イネス」

 

「え? なに? 聞いてなかったよ」

 

 

 トスカ姐さんにさっきあった奇妙体験を報告したら、なんか話の道筋が怪しくなりそうだったのでイネスに話題を振った。なのにコイツときたら聞いてやがらねェと来たもんだ。

 

 

「―――くっ、あなた達くらいですよ。この私をここまでコケにしたお馬鹿さんたちは」

 

「え?艦長?」

 

「じわじわと弄り殺しにしてくれる!」

 

「いじり殺しって新ジャンルを作るなっ!」

 

≪ぽーん≫

 

「あ、五階に着いた」

 

 

 某龍玉の冷たい名前の方を肖って遊んでいるウチにエレベーターは最上階に到着した。敵さんが待ち構えていたようだが、既にトーロの手により殲滅済み。アイツどんだけ強くなったんだ?

 

 ともかく、まだ下に居る連中をエレベーターでピストン輸送して戦力を整えた後。時たま襲ってくる海賊は返り討ちにし、付近を各部屋ごと制圧前進しながら順路を進み、どう考えてもボスの部屋ッポイ扉の前に到着した。

 

 

「さてと、開幕はドカンと一発!」

 

 

 そのまま俺は周りに指示もださないで入口を蹴り破ると、照準なしで部屋の中にバズーカを連射した。あまりの速さにアルゴンと配下の海賊たちも反応する事が出来ず、部屋の調度品もろとも吹き飛んで、そのまま壁にのめり込んでしまった。

 

 これには後ろで見ていた他の人たちも苦笑いもといドン引き。俺はいい仕事したー。と汗を拭うしぐさをとった。動けない敵の中からアルゴンと思わしき男を探し出す。見分けるのは意外と簡単で、手配書の写真を見れば一発だった。

 

 んで俺は動けないアルゴンの首に、腰に付けたスークリフブレードを抜いて当てる。殺すつもりは一切ない。だってトスカ姐さんから貰い受けたスークリフブレードが汚れちまうし、スプラッタはまだ怖いのん。

 

 

「ホヒィ-! ま、参った! 降参だよー! い、いや停戦だ!もうお互いてをださないことにしようじゃない」

 

 

 首に刃を向けられて動けない老人は、自分の立場というのを解っていない。

 

 

「おいィ、何勝手に交渉しようとしてる訳?」

 

「ほひ?」

 

 

 ギンと鋭い眼光で命乞いをしようとするアルゴンを黙らせた。そういえばウチは敵を丸裸にする事で有名だった事を思い出し、いい笑顔を浮かべてアルゴンにこう言い放つ。

 

 

「俺達に負けた金ヅルが、対等な立場だと本気で考えてるんスか?」

 

「ホ、ホヒィィィィ!? 外道がおるぅぅぅ!! そ、そんな!! ワシは余生はのんびりと静かに――」

 

「あきらめな。ココまで暴れておまけにウチのクルーを誘拐したんだ」

 

「クルーは仲間であり、家族。それに手を出したお前らを俺は許すことなんてしないッスよ。さぁ祈りの時間をくれてやる。今お前に出来ることはそれだけだ」

 

「しょ、しょんな! し、知らなかった! 部下たちが勝手に――」

 

「配下の不始末は上司がつける。どんな社会でも当たり前の事ッスよ?」

 

「ど、土下座でも何でもするっ! どうか命だけは!!」

 

 

 壁に嵌って動けないのに、何とかして逃れようと身体をよじるアルゴン。そのあまりにも滑稽で情けなさすぎる姿に内心嘆息した。コレで本当に海賊の長かよ? これが中央政府軍も相手取る大規模な海賊団の首領なのかよ。

 

 でも案外こういう臆病さのお陰でここまでなりあがったのか?

 ま、俺には関係ないが……さて。

 

 

「んー。それじゃ、とある質問に答えてくれたら、考えてやるッス」

 

「な、何でもする!早く質問を!!」

 

「あんたはそうやって命乞いをした相手を許したことはあるんスか?」

 

「ホァッ!?」

 

 

 悪役に対して一度は言ってみたいセリフ第三位を言えた事に満足する。というかそのやり取りを見ていた周りのクルーの目が痛い! なにそのご愁傷さまな的な目をアルゴンに向けてやがるんですか!? 俺に味方はいないのかー! 

 

 まぁとにかく、スカーバレル海賊団の長であるアルゴンは捕まえた。頭を押さえたから、これでこのファズ・マティに巣食う海賊共も組織的な抵抗は出来なくなるだろう。しかしミィヤはどこに居るんだ? うーむ、こいつに聞けばいいか。

 

 

「おい」

 

「ホヒィッ!? なんじゃ??」

 

「良いかクソッたれの口先だけしか能のないクソ虫。お前はタダ俺の質問に答えればいいッス。じゃないと今手にしている太くてぶっとくて強そうなコレで、男のシンボルを撃ち抜くッスよ?」

 

「ひぃ、ひぃぃぃぃぃいいいい!?」

 

 

 あ、汚ね!? こいつ漏らしやがった!? どんだけ度胸無いんだよ?!

 

 

「いいか、ゴッゾで捕まえた女はどこに収監したッスか?」

 

「ゴッゾ? ああ、それならこの隣の部屋で宴の出し物予定で―――」

 

「はい情報御苦労さん。気絶してて」

 

「ごぱん!?」

 

 

 俺はこの目の前の男の醜態をこれ以上みたくなかったので、手にしたEバズの砲身でぶんなぐり気絶させた。白目向いて舌までだして痙攣している。だけどギャグキャラっぽいから死なんだろう。

 

 

「ふぅ、良い仕事したッスー!」

 

 

 コレで大将倒したから、後はこのファズ・マティに居る海賊連中に降伏勧告でもすれば良いだろう。ああ、疲れた。

 

 

「ユーリ、アンタ相変わらず酷いねぇ」

 

「僕は君の身内で良かったと心底思うよ」

 

「俺もだぜ、絶対敵対したくないなオイ」

 

 

 うるせぇ! 悪人には人権無しなんだよ! つーか相手が女性ならともかく、こんな小者臭漂う爺ぃ相手に情けなんてかけねぇゼ! まさに外道? 上等じゃい!

 

 

「さてと、ミィヤの居場所も特定できたし、あとは残党の掃討を急ぐッス! 降伏した海賊たちは分散して拘束しておいて、その後は恒例のお宝探しでもしに行くッスよー! 早い者勝ちじゃー!」

 

「「「「あ!艦長ズリィー!」」」」

 

 

 そして俺はエレベーターへと駆けて行く。残党を掃討してしまえばこっちのモノ。それにコレだけの人工惑星何だから、なにか面白いモノの一つや二つあるかもしらんね! 後ろから聞こえるずるいだの待ちやがれ等の声をBGMに、俺はお宝探しへと向かったのであった。

 

 

「ところで、コイツはどうするんだろうね?」

 

 

 ちなみにアルゴンは気絶したまますっかり忘れらさられていた。その事に俺が気がついたのは、数日後だった為、栄養不足とショックで認知症を発症し、そのまま近くのボイドゲートにいたメディックのフネに引き渡されたのであった。

 

 

***

 

 

 ファズ・マティでの戦闘により海賊首領アルゴン・ナラバタスカを捕縛し、その後も人工惑星に巣食う残党たちを骨の髄までしゃぶり取るようにして装備とか奪いながら殲滅して捕虜とし、政府軍にから数えておよそ三週間が経過した。

 

 宇宙を旅する俺達が、いま現在どこにいるかと言うと――――

 

 

『15番艦、竣工完了したぜ!』

 

「流石海賊の本拠地ッス。材料だけは腐るほどある」

 

 

 なんと、今だに人工惑星ファズ・マティに駐留していた。いやー、お宝があるとは思っていたけど、まさかこれほど大量に物資があるとはね。流石ここら一体に縄張りを張っていた海賊団だけあるってことだ。

 

 略奪された金目の物を名目上は元の場所に戻すということで全て売り払ったが、さらに俺達を喜ばせたのは、0Gドックにとっては垂涎物なお宝を発見したことだった。簡単に言えば、造船を行うのに十分な量な資材と設計図、それと造船ドッグである。

 

 アレだけの規模の艦隊に独自開発した巡洋艦まで保有していたアルゴンの海賊達。当然ながら専用の造船ドックがあったであろうし、メンテナンス用の資材とかも保有してあるだろうと予想していたら大当たり。本当に大量に溜めこんでいて、巡洋艦クラスでも軽く数十隻は造れそうな量の物資が保管されていたのである。

 

 

 むろん、その悉くが旗艦ユピテルや戦闘工廠艦アバリスの修復に当てられた。修復なら空間通商管理局のドッグに行けば出来るのに、せっかく見つけたのにもったいと思ったのだが、そうしないとメテオストームを突破できなくて帰れなかったのだ。

 

 今回も無理をさせたので、思っていたよりもダメージが深かったらしく、装甲は元よりシールドジェネレーターの負荷が高くて全交換。しかもここにはドッグはあるが管理局のモノではないので自力で修復という形となり、そのために必要な資材も手弁当。

 

 つまり、海賊のため込んだ資材を使うほかなかったのである。しかし、大型戦艦の修復に回したにも関わらず、それでもまだ巡洋艦とか駆逐艦を何隻か建造できる資材が捻出できたという報告を受けて、それは重畳とうなずいたのは余談である。

 

 だが喜ばしいのは当然のことながら、俺よりも狂喜乱舞した連中がいる。

 

 そう、ウチの愛すべきマッドな科学班と整備班たちである。彼らは倉庫に保管されていた資材を見てすぐに俺に計画書を立案したのだ。それこそ“空母を中心とした機動艦隊運用立案”である。

 

 簡単に言えば今のユピを旗艦にさらに大規模な艦隊を作り、他にもアバリスとかを中心とした工作艦隊、防空巡洋艦や駆逐艦のみで編成された突撃艦隊など、どこか男のロマンを擽るような艦隊を作ろうという、ある意味無茶である意味壮大な計画だった。

 

 計画書を持ち込んだマッド共と鋭い視線でやり取りを行い。計画書に眼を通した俺は連中の前で……むろん、OKサインを下した。男ならこのようなロマンあふれる計画を前に、ましてや資材を用いれば建造可能となれば、やらないわけにはいかないのである。

 

 馬鹿だと笑いたければ笑えばいい。だがそれが男だと、このプロジェクトを始動することを宴会の時に言い放った時、海賊からくすねた酒を浴びる程飲んでいたトスカ姐さんに滅茶苦茶に指を刺して爆笑された。その所為で落ち込んだのは言うまでもない。

 

 かくして、ロマンあふれるこの計画を、ファズ・マティの造船ドッグを用いて開始したのである。ちなみにウチの連中は紳士なので、ちゃんと女性側にも配慮し、自然公園モジュールやショップモジュールなどの娯楽系も充実させていたのは余談だ。

 

 そんな訳で、日々目を離した隙に数千単位で消費される各種資材の備蓄量にめまいを覚えつつ、ある程度の資材を残して修理用に回せるように書類と格闘していた俺であるが、そんな俺のところにとある人物が訪れていた。

 

 

「やあ、少年。書類仕事とは精が出るな。さっそくだが新しく造る艦隊へ使う装甲の改良案を持ってきたのだ。眼を通してほしい」

 

「ほいほい、他の計画書積んであるカラーボックスに積んでおいてくれッス。ところで突っ込んでも良いッスか?」

 

「何かな少年、こう見えて私は新たなる住処で新たなる研究の為に、まぁそれなりに忙しい」

 

「なんでミユさんファズ・マティに居るんスか? 捕まってた民間人たちはとっくの昔に近くの惑星に解放した筈なんスけど?」

 

 

 目の前の研究員めいた女史、ナージャ・ミユさんを見てそう言った。そう、この研究家肌というか、普通にマッドサイエンティストと会話できる明晰な頭脳の持ち主であるミユさん。なぜか他の人質たちと違ってファズ・マティに残っていた俺たちのところに居座り、気が付けばクルーとなっていた女史である。

 

 俺が気が付いたのは、物資があることをいいことにどんどん計画書を挙げてくるマッド共の計画書を持ってきてくれたのが彼女だったのだ。彼女のことは出会いが出会いなのでよく記憶していた為、この唐突な再開に驚いて呆然としてしまった。

 

 そのあと、急いで彼女がどうして仲間になったのかを知っていそうな人。有能な副官であるトスカ姐さんに連絡を取ったのだ。

 

 そしたらこんな風な答えが返ってきたのである。

 

 

「ト、トスカさん!?ちょっとっ!?」

 

『あー?なんだよ?今ちょうどイネスを♀化させる算段をだな―――』

 

「ソレは大いにやってかまわんスけど、なんか知らん間に人員が増えてるんスけどどういう事ッスか!?」 

 

 

 この時、彼女がどうしてユピテルに居るのか知る為、名簿も手元のコンソールで呼び出していたのだ。そしたら最大人員の数が何故か増えているじゃないですか。戦闘で減ったはずなのに増えているってどうなってるのと、俺は混乱していた。

 

 

『人員が増えてるぅ? そらアンタ、ウチは万年人手不足だから、毎回港に寄った時は人員募集してたじゃないか。もっともある程度マナーを守れる良識があって、どんなことでも動じない柔軟な意識の持ち主って採用基準だから、恐ろしく集まらないけどさ』

 

 

 おんなじように、今回捕まっていた人質で0Gドッグの資格持ちに仲間にならないかと尋ねてみたんだと……マジかよ。

 

 

『え? まさかアンタ知らなかった?』

 

 

 ええ、そりゃもう今初めて知りました。

 

 

『おかしいねぇ?私はちゃんと許可とったよ?』

 

「そりゃ何時の話ッスか?」

 

『んー?確かルーのじっさまが乗った後で、策略してたあの時だったかな?』

 

 

 それは確か、ルーのじっさまが策謀を巡らしている間、俺達が海賊狩りとかして時間つぶしてた時か? でも、あの時そんな許可だしたか?

 

 

「もしかして、イネスとかが仲間になる前、大宴会開いた時じゃないッスか?」

 

『ああ、確かその時だね』

 

 

 そう言えば丸ごと海賊船を拿捕して金が出来たから、クルー全員で大宴会を開いたっけな。飲めや歌えのどんちゃん騒ぎなんか目じゃなくて、飲めや歌えや脱げやブチ殺すぞヒューマンなくらいの騒ぎだったなぁ。

 

 ケセイヤさんが持ち込んだアルコール度数が96度もあるお酒を飲んだ奴が、何故か引火して口から火を噴いたのに全員無事だったのはいい思い出だ。

 

 

「覚えてねぇワケッスよ。俺そん時トスカさんに付きあって酔い潰されたじゃないッスか」

 

『あり? そうだったかね? まぁそん時に許可は貰ったよ』

 

 とぼけたように笑っているトスカ姐さんに少し怒りを覚えたが、この人の場合悪気とかなしで悪戯っぽいことを平気でやらかすからなァ。酔ってる時に出した許可なんて覚えてないけど、すでにずっと実行されていた採用枠の話を今更変更とかできん。

 

 大体、既に乗っちまったクルーになんて説明すりゃいい? 幸いなことにこの時から増えたクルーたちは、採用の判断基準が高いお陰か、全員が全員それなりの技能を有しているようだ。

 

 このフネのどんちゃん騒ぎに順応できる程柔軟な思考回路の持ち主たちだから、全員一癖も二癖もありそうだと、あの時は思った。そして現在、俺の目の前に居らっしゃる彼女もそういう類の人間であると再認識したのはいうまでもない。

 

 

「どうした少年?」

 

「計画書は、いい計画なんスが、もう少し待ってくれッス。まだ前の書類がおわんない」

 

「いいぞ、大いに仕事をして苦労したまえ。苦労とは若いモノの特権だ」

 

「うー、ミユさんも若いじゃないッスか」

 

 

 手元の資料には26歳ってあるが、それよりももっと若く見えるんだけど? そんな人に若いもん扱いされるのは、ちょっと受け付けられん。俺がそう言うと、彼女はいきなりチロリと舌を出して見せ、艶やかな笑みを浮かべたままで俺の方を向きなおる。

 

 

「おやおや? 君はまた随分と誑しこむのが好きなのだな? まぁ私は構わない。何なら夜にお相手をしてあげようか?」

 

「え、えんりょしとくッス」

 

「そうか? それは残念」

 

 

 一瞬垣間見えた女の顔にドキリとしたが、すぐに普段の飄々とした掴めない雰囲気に戻られるミユさん。どうやら俺は遊ばれただけらしい。ですよねー。俺みたいなガキに美人さんがそんな事仰る筈ないもんねー・・・自分でおもって悲しくなった。鬱だ死のう。

 

 

「ま、ソレはさて置き、装甲に使うレアメタル等を入手したいのだが?」

 

「もう適当にやってくれッス。資源が残るのなら何しても良い」

 

「言質はとったぞ。ではな少年、先ほどの話だが、ホントにしてほしいなら相手してやるぞ?」

 

「頼むから俺で遊ばないでくれッス」

 

「ふふ、それじゃあな」

 

 

 彼女は最後までごーいんぐまいうぇいだった。とりあえずその日は寝た、不貞寝ってヤツだ。 ストレスを感じたら眠るに限るわい。

 

 

***

 

 

 さて、それからさらに数日が経過し、そろそろファズ・マティから出港する事になった。別に急ぎの仕事とかはないんだけど、もうファズ・マティにはぺんぺん草もない。つまり物資が枯渇したのである。恐るべきは、俺達の浪費の早さか、それともマッド連中の暴走の末に行われた建造ラッシュか。

 

 もっとも、アレだけ湯水のごとく資材を使ってしまえば、遅かれ早かれそうなるのは目に見えていたので、俺は特には驚かなかった。むしろこの事態を想定して、修理用や非常財源に回せる物資だけは最低限確保させた俺は褒められてもいいだろう。誰もそんなことしてたのしらないから褒めてくれないけどさ。

 

 ともあれ、特に資材の消費が速かった原因はミユさんの所為である。ミユ女史の専攻が金属系であり、先の計画でレアメタルを使うコストが高そうな装甲材との入れ替えが行われたのだ。

 

 彼女の恐ろしいところは、ただレアメタル製装甲に切り替えただけではなく、その絶妙な配合で何と空間通商管理局での無料修理補修でも対応可能な成分で装甲材に使う特殊合金を形成したのだ。

 

 手製の武器とかは管理局では補填や補給をしてくれないのだが、ある程度のカスタムや装甲材の変更程度は無料の修理補修の枠内に含まれるらしい。これで耐久力や剛性が飛躍的に高まったので、俺としてはいうことはなかった。

 

 たとえ、その所為で金になるレアメタルのほとんどが浪費されたとしてもな。

 

 

「しっかし、これまた壮観だね」

 

「戦艦持つのは夢だったッスけど、まさかこれ程の艦隊になるとは」

 

 さて、いま俺はブリッジの艦長席において、トスカ姐さんと共に空間ウィンドウに映る映像を鑑賞している。映像にはようやく完成した俺の艦隊が映し出されていた。

 

 そう“艦隊”だ。船団とも言っていい。ファズ・マティに残されていた設計図を元に、溜め込まれていた資材を余す事無く造られた艦隊である。もっとも相変わらずの人手不足の為、ユピをコピーしたユピ´(ダッシュ)を搭載した半無人艦仕様だ。

 

 そして建造されたのは、以下の通りである。

 

・オル・ドーネKS級 汎用巡洋艦4隻

・ガラーナK級 突撃駆逐艦10隻

・ゼラーナS級 航宙駆逐艦10隻

 

 

 簡単な構成で表すと、駆逐艦が20隻と巡洋艦が4隻という、非常にアンバランスな構成となっている。これはマッド共が提出してきた計画案の内、吟味した上で有用だと思われた計画を優先し、その上で数をそろえた結果こうなってしまったのだ。

 

 ユピやアバリスの修復に費やされた資材が意外と多かったのも、この構成になってしまった原因だ。せめて戦艦に積めるサイズのシールドジェネレーターの全部入れ替えでなければ、もう4隻は巡洋艦を入れられたというのに……。

 

 

 愚痴ってもしょうがないし、いまはこれで満足なのでこのままでいい。ところで建造したフネにつけられたKやSはなんお意味なのか? これは設計図の改装に主にかかわった者のイニシャルがつけられたものだ。すなわちK級とはケセイヤのK、S級はサナダさんのSである。

 

 オル・ドーネ級巡洋艦についてはあの二人の共同開発なので、KSは共同開発の意味となるのだ。マッドと聞くとミユさんも関わってきそうだが、彼女は装甲材の配合率だけいじったのでこれを辞退している。

 

 

 つまり彼女達はマッドどもが改修を加えた外見同じ中身別物のフネなのである。オル・ドーネは防空戦もだが、対艦戦闘などでも活躍できるオールマイティに設計され、ガラーナはアバリスについて主に前衛を担えるような設計がなされ、ゼラーナはユピテルの近接防御を行って貰うという設計な為、中身の方が大分異なるのだ。

 

 これらの艦は機動力と防御力の上昇、武装の積み替えの他、ゲームでは出来なかった特権として、艦隊所属艦に搭載されたデフレクターの同調展開などの機能を有している。

 

 この同調展開とは、読んで字のごとく、複数のデフレクターを同調させる事で防御力を上げるというシステムだ。戦闘の時、彼女たちは矢面に晒される為、艦の防御力を上げるという発想が出たが、いかんせん駆逐艦では限界があった。

 

 その為、多少はレーザーも防げるデフレクターなどを防御力の足しにと搭載させてみたが、駆逐艦サイズに搭載できる程度の装置では出力が低くて、軽いデブリは兎も角、ミサイルは元より貫通性の高いレーザーなども防げない。

 

 通常の研究者ならば、ここら辺でデッドウエイトにしかならないデフレクターなんぞオミットし、アポジモーターの改良を行ってより軽い機動性と運動性を与え、当らなければどうということは無い仕様に変えるだろう。

 

 だが我らのマッド共がそんな程度であきらめる筈は無い。

 この時に考案されたのは、複数の艦が集結する際に発生するハウリングに近いフォースフィールドや重力場防御帯の干渉現象、それをあえて利用し、調整することで艦隊を包み込むサイズと分厚さと出力を備えた、大型艦クラスのそれに負けない防御フィールドを形成するというものだった。

 

 開発には困難を極めたらしいが、もともとホーミングレーザー砲シェキナなどの重力井戸を利用した独特の装置開発などで空間作用系のノウハウがあったことが、このバカみたいにな防御方法を現実のモノとした。

 

 この防御方法で鉄壁とはいかないまでも、強力な防御を行える艦隊が旗艦たるアバリスを守るのだ。勿論問題点もあり、今のところ駆逐艦たちだけではこの防御を行えない。なぜならシールドの同調の計算にはすごくマシンパワーを取られる為、現状ではアバリスやユピテルクラスのCPUが無いと展開できないのである。

 

 だが、逆に言えばそれを込みでこの二隻とも同調可能な為、艦隊規模で防御に徹するとそれはもう恐ろしいことになるのだ。亀の如く引き籠れるという意味でな。

 

 

 ところでサナダさんが手がけたゼラーナS級であるが、なんと元となった駆逐艦は、この艦種としては珍しく艦載機を搭載できる駆逐艦であるのは知られているだろう。この機能は当然ながらS級にも受け継がれており、駆逐艦ながらも艦載機を発進させる事が可能となっていた。

 

 そして、この不思議な駆逐艦の艦載機に選ばれたのは、以前トライアルで落ちた試作の人型機動兵器プロト・エステの量産型、エステバリスであった。なんでトライアルで落とされた機体を乗せたのかというと、ただの趣味だ。

 

 あー、まぁ真面目な理由として、アレはエネルギー外部補充型という、所謂紐付きというヤツさえ考えなければ、恐ろしく汎用性の高い機動兵器なのである。原作にそっくりというか、そのマンマな機能を持つエステは、アサルトピットと機体を入れ替えるだけで、どんな戦況にも対応可能なのだ。

 

 おまけに脳波スキャニングシンクロシステムによる制御方法。どんなバカでも考えただけで運転できるのが凄い。反射神経に優れたヤツを乗せたなら、それだけで迎撃能力が上昇する事は間違い無しである……というのが表向きの理由なのだ。

 

 ホントの理由は俺がエステの活躍を見たかったから。整備性とかこの間のファズ・マティ攻略戦で活躍した直掩機仕様のVFと被るとか言われそうだが、こまけぇこたぁいいんだよ。自己満足の何が悪いってんだ。それによって生じた責任はちゃんと取るから、問題はなんらないのだ。

 

 あと補足だがS級本体にはエステバリスへのエネルギー供給の為の重力波照射ユニットを搭載。武装面は対空火器しかないが、基本的に対空防衛をする艦なので、対艦に無理やり参加させる必要がない。

 

 本来の設計では最大9機までの戦闘機しか搭載できなかったペイロードを、若干胴長にする事で解消。艦載機の搭載数は14機、それよりも小さいエステバリスは16機搭載できたらしい。

 

 

 そして、こうして完成を見せた全ての艦には、ナージャ・ミユというレアメタル研究が専攻の研究者が加わった事で、装甲板の強度も元のソレと比べ物にならない程の軽さと強度と柔軟性を与えられているという。

 

 被弾した際も、普通なら真っ二つに折れて爆沈してしまう様な攻撃を受けても、中破で済むそうな。どれだけ改造したのかは、あまりに専門的すぎて俺には解らん。

 

 

 まぁそう言う訳で、現在我々はアバリスやユピテルを含め、総数26隻という、個人が持てる規模で考えると、かなり大きな大艦隊になれた訳だ。凄く目立つので色々国家とかに目をつけられそうだが、国家の目がある所で犯罪はしてないから大丈夫。

それに犯罪も精々盗掘した程度だしね。だれでもしてるのだから、それほど罪にはならん筈だ。

 

 

「それじゃ、出港しますかね」

 

「あいよ“提督”さん」

 

「・・・・何スかそれ?」

 

「艦隊規模の頂点に居るんだろう?アバリスの艦長はトーロがする訳だし、もう艦長じゃないさ。位的にはそれがだとうだと私は思うが?」

 

 

 いやまぁ、そうなんですが、俺はユピテルの艦長な訳でして、そんな提督とかの様な大層な名前で呼ばれる様な男じゃないですよ?

 

 

「はぁ、アンタ。自分を卑下してたのしいかい?」

 

「いいえ、全然。だけど自分は“まだ”艦長がにあってるッス」

 

「ん~、じゃそれでいいんじゃないかい?艦長兼提督って役職になるだろうけどさ。略して艦長のままって事で」

 

 

 まぁそれでもいいか。

 

 そんなこんなあって、俺達はファズ・マティの宇宙港を発進。海賊団を殲滅した事をオムス中佐に報告する為、針路を一路ツィーズロンドへ取った。

 

 本音を言うとあの野心が見え隠れする人のところへはあまり行きたくは無い。だが、短期間の間にこれだけの大艦隊になってしまった事は報告しておかないと、ここいらを見張る政府に眼をつけられる事は確実。

 

 せっかくできた中央政府軍とのコネだ。この際有効に使わせてもらい、俺達の事を認めて貰わんと今後の活動に支障が出ると考えたんだ。あーでもまた厄介な仕事回されそうな予感がぷんぷんするぜ。

 

 

「はぁ」

 

【艦長、どう為されました?】

 

「いや、人生ままならねぇなって思って」

 

【世界は何時だってこんな事じゃ無い事ばかりです】

 

 

 おま、何処でそんな言葉覚えた? 

 そして大きくなった俺の艦隊は宇宙を進んでいった。

 

 

***

 

 

 ファズ・マティのある宙域からツィーズロンドまでは、どんな最短ルートでも1週間はかかる。途中にあるメテオストームはまだ沈静化していない為、そこを迂回せなならんからだ。といっても沈静化するのは何十年という周期だから待つつもりもない。

 

 

「ふん♪フン♪ふふ~ん♪」

 

 

 まぁ当然のことながら、この周辺の最大勢力であったスカーバレル海賊団を駆逐した我らは、敵に襲われる事なく悠々と静かな宇宙を航行している訳だ。

 

 そしてコレも何度目だか解らんがぶっちゃけ俺暇である。いや、実際は暇では無く、色々とすることはあるんだが、そんなのずーっとやってたら死んでしまうので息抜きに遊びに出ているって訳なのだ。

 

 

「ん?」

 

【振動を感知、場所はマッドの巣です】

 

「まーたあいつ等なんかしたな?」

 

【一応人的被害は出ていませんが?】

 

「放っておくッス。どうせ止めても聞かないし、下手に制限かけるほうが危険んだからさ。でも放置は癪だから、修理費は給料から差し引いといて」

 

【了解です艦長】

 

 

 相変わらずマッド達は得体のしれない研究にいそしんでいる。新たな仲間で女性のミユ女史の登場で、連中は楽しそうだが下手に近づくと何されるかわからんので近寄らない。君子危うしに近づからずってヤツである。字、合ってるよな?

 

 

「ハァ!ハァ!ハァ!――――か、艦長!た、たすけて」

 

 

 ん?なんだ?この苦しそうな息使い。声からするとイネスだな。

 なんだろうと思って後ろを向いた俺は彼の姿に硬直する。

 

 

「お、お願いだ!た、助けてくれ!なんかトスカさんたちが僕をボクをぉ!」

 

 

 そこには、再びまたどこぞの瀟洒なメイドの様な姿をさせられたイネスの姿があった。こいつ、またもやトスカ姐さんのおもちゃにされたようである。あの人ぜんぜん懲りてないのか。彼女の暴走を止めてやりたいが、彼女バックにはユピテルの全女性クルー陣の筆頭が居るから俺ではどうしようもない。

 

 問題は、だ。性転換メカは厳重に封印処置されているので、コイツの性別は男である筈ということだ。それなのに恐ろしく似合ってるんだが? よく見れば、おいおい銀髪のエクステンションとPADか? コレは冗談抜きに某瀟洒なメイドに異常に似ているぞオイ。

 

 おk、落ちつけ俺、コイツは男だから、問題無い、だから高なるな心臓! というか何故コイツはココまで女装が似合うんだよ!

 

 

「頼む艦長!かくまってくれ!ボクは、ボクはこんなの耐えられないよ!」

 

「頼むから涙目でこっち来るなッス!」

 

「なんでさ艦長!僕を助けるとおもってよォ!」

 

「だから! ひっつくなッス! やめろぉ!」

 

「そんな殺生な! ここであったが百年目! 離さないぞ! 絶対に!」

 

 

 あろうことかこのバカは、公共の場で俺に抱きついてきた。第三者の目線から見れば、俺は今現在可愛いメイドに抱きつかれているリア充に見える事だろう。コレが女性だったなら、俺はもう狂喜乱舞したが、残念ながら男なのだコイツは……クソが。

 

 

「わ、わかった! 一時的にかくまうから! だから離れろッス!」

 

「ほ、本当だな!?助けてくれるんだな!?」

 

「ん? あ、トスカさん」

 

「え!?っていないじゃないか……あ!艦長!」

 

 

 俺がフッと漏らした一言で後方に飛び退くバカ一人。その隙に俺は自分の部屋へと駆けだした。とりあえず俺の部屋には、艦長権限でしか開けられない様にセキュリティが強化されている。だからそこに逃げ込めば、コイツを振り切ることも可能って訳だ!

 

 

「つきあってられっかよ! 俺はヤロウに興味は無いんス!」

 

「ナニ訳解らない事叫んでるんだ! ええいマテー!」

 

「な! おま! こっちくんなッス!」

 

「いやだよ! 艦長じゃないとアノ人達を止められないだろう!?」

 

「古来から団結して暴走した女性陣をとどめるのは、男には無理ッスー!! だからあきらめろ! 俺の平穏の為にこっちくんな!!」

 

 

 ギャース!とケンカしながら通路をひた走る俺達。

 そして曲がり角を同時に曲がろうとして、ソレは起きた。

 

 

「あ、ユーリ――え!?」

 

「チェルシーどいてー!!」 「うわっ! ぶつかる!」

 

 

 こんな漫画みたいな事が起こるだなんて誰が想像できようか?

 

 ・チェルシーが曲がり角から現れる。

 ・僕等はほぼ並行して走っていた。

 ・走っている人間は急に止まれない。

 

 さて、三行の要素が重なった…あとは解るな?

 

 

「あいたた、ユーリ、イネス、大丈・・・夫?」

 

≪ずきゅぅぅぅん!≫

 

「「!!??」」

 

 

 この時の前後は全く覚えていない。ただ、絶対に思い出してはいけないと本能が警鐘を鳴らしまくっている。只一つ覚えているのは、膨大な量の瘴気に包まれたこと。それとチェルシーは絶対に怒らせてはいけないという記憶くらいだった。

 

 

***

 

 

 さーて、今日はどこに行こうかな? え? イネス? チェルシー? 何のことですか?

 

 ぼ く は な に も お ぼ え て い ま せ ん よ ? 

 

 イネスのバカはゴミ箱に放り込んでおいたけど、ぼくはなにもおぼえてません。いいね?

 

 

「そう言えば、人工自然公園みたいなモジュール積んであったっけ?」

 

 

 気を取り直して、今日は新しく入れた福祉厚生モジュールの自然公園に向かう事にした。人間と言うのは、大地とは切っても切れない関係であると言っていい。フネに重力を発生させ、昼と夜の時間帯を設けるのもそれだ。

 

 そして自然公園モジュールは、地上にある自然をパッキングして宇宙に運びだした様なモノである。ここには壮大なビオトープみたいになっており、人工ながらも生態系が管理されているエリアである。乗員はここで過ごしたり遊んだりして、閉鎖空間でのストレスを緩和させるのだ。

 

 

「ユピ、自然公園モジュールってどこにあるッスか?」

 

【艦長、先ほどチェルシーさんは一体―――?】

 

「ユピ、自然公園モジュールってどこにあるッスか?」

 

【いえあの】

 

「ユピよ。俺の中でその話題については思い出してはいけないと警鐘が鳴っているッス。だから話題にするな。いやしないでくださいお願いします」

 

【解りました。えっと、この先のマッドの巣の先です】

 

「おお! 了解、それじゃいくかね」

 

 

 さてと、とっとと行きますかねぇ。

 

 

 (イネス!何処に逃げた! って案外すぐに見つかったねぇ? ほらおきなよお姫様、ヒヒヒ)

 

 (うーん、げ!トスカさん!? それとそのほか大勢!?)

 

 (さぁイネスちゃん?もっと可愛らしくしましょうか?)

 

 (ひぃぃぃぃ!や、止めろぉぉぉぉ!!)

 

 (所で、なんでチェルシーさんがココで気絶しているのかしら?)

 

 

 なんか後ろの曲がり角の向こうから歪みネェ会話が聞こえたけど。

 俺は関係ないな、うん。

 

 

……………………

 

 

………………

 

 

…………

 

 

 マッドの巣とは何か? 簡単に言えば通称みたいなモノだ。整備班、技術班、科学班、その他開発関係を全部ひとまとめにして、一ブロックに押し込んだだけって事。

 

 

「っておいおい、どうなってるんスか?」

 

【今朝の爆発の名残でしょう】

 

 

 俺はここに到達するまで、そう言えばマッドの巣でなんか爆発みたいなことが起こっていたと言う事をてんで忘れていた。目の前には所々に黒煤が付着し、亀裂の走った壁が目立つ空間が広がっている。

 

 下手すると幽霊船みたいな感じに見えなくもない。と言うか何をどうすればココまでの被害を起せるのだろうか? しかもこれ程すさまじい爆発があったのに人的損失がゼロとか、世界にケンカ売ってるとしか思えん。

 

 ともかく、この区画を抜けないと目的の場所には辿りつけない為、俺は区画の中に入った。既にこう言った事態には慣れたのか、整備員達と整備ドロイド達が頑張って修復している。俺はすれ違う時には挨拶を交わしつつ、慎ましく奥へと進んでいった。

 

 

「ケセイヤさん、どうしたんスか?その真っ白に燃え尽きたボクサーみたいに白くなっちゃって」

 

「ぽうあー」

 

 

 何故か通路の隅にうずくまり、もうほんと灰になっちゃったんじゃないかって言うくらいに落ち込んで口から煙を吐き出しているケセイヤさんと、それを眺めるその他マッドの方々と遭遇した。

 

 とりあえずマッド二号のサナダさんに、何があったのか訪ねてみた。

 

 

「なに、簡単なことだ。ケセイヤが落ち込んでいるのは」

 

「先の爆発で、試作パーツが全部オシャカになったからさ。少年」

 

「あ、マッド三号のミユさん」

 

「だれがマッド三号だ。薬品調合して飲ませるぞ」

 

「あれ?ミユさん専門って希少金属じゃなかったッスか?」

 

「趣味で調合もしているのだ。まぁいい。とにかく落ち込んでいるからそっとしといてやれ」

 

 

 そうミユさんに言われた。お世話になっている人物を放置するのも、心苦しいものがあると言えばあるのだがしかたないか、当分こっちに戻って来そうに無いしな。

 

 

「しかしこの惨状、何が起こったんスか?」

 

「なんでも完全に人間に近い人型アンドロイドの製作に失敗したんだそうな」

 

「人型アンドロイド?そんなの通商管理局が使ってるじゃないッスか」

 

「違う違う、もっと複雑で色々と高性能なヤツを作ろうとしたらしい」

 

 

 それはそれは、なんとも浪漫あふれる話じゃないか。

 

 

「で、エネルギー源になるレアメタルについては私が助言したのだが」

 

「我々が居る時に起動実験をすると言うのをすっぽかし、勝手に起動させてこの体たらくだ」

 

 

 本当にマッドのすることは、時々理解できないぜ。その心意気は買うけどな!

 

 

「コレでまた修繕費はケセイヤさんからさっ引くとして」

 

【これで修繕費累計額がタダ働きで20年働いてもらわないと返せない額になりました】

 

「修繕費の方が、収入を上回るのは何時頃かなぁ」

 

【このペースですと概算で3年後でしょうか?】

 

「知りたくなかったッスそんな情報!」

 

 

 とりあえず何度目かになるかは解らないため息を吐き、俺はこの場を後にした。

 流石は俺のフネ、毎日色んなことが起こりやがる。

 

 

【むぅ】

 

「ん? どうしたッスかユピ? 急に黙って?」

【いえ、なんでも……身体かァ】

 

「ぬゥ???」

 

 

 なんかぼそりって言った様な気がするけど、気のせいかな?

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「おお、すげぇ。池まである」

 

 

 さて、なんだかんだあったが、いま俺は自然公園モジュールにいる。

 

 広さはおおよそ300m四方に広がる球状のドームだ。真ん中で板張りの様に仕切りされており、上半分のドームは春のドーム。仕切りされて逆さま状態の下のドームが冬のドームとなっている。下のドームは逆さまだが、そこは重力制御が出来る宇宙船なので普通に歩けるようになっていた。

 

 とりあえず春のドームの中に入ったんだが、これは確かに凄いと言わざるを得なかった。まず入口から入った途端空気が違った。艦内の空気と違い、ちゃんとした植物が造り出す空気って感じ。木林浴に丁度良いかもしれない。

 

 人工的に造られたとはいえ、緑が見えると言うのは人を安心させてくれる。長い航海においてこのモジュールは、結構貴重な癒し空間になる事だろうな。こりゃ、酒でも持ってくるんだった。と思ったのは後の祭りだ。

 

 

「んー」

 

 

 背筋を伸ばしてあくびをしながら、のんびりとドームに作られた池の周辺を歩いてみる。池の中には生物が放たれてある種の生態系を再現しているらしく、何度か魚が飛び跳ねるのを見た、ついでに巨大な蝦蟇蛙みたいなのも居た気がするが、気にしないでおこう。きっとこの自然ドームのヌシ(?)に違いないだ。

 

 

「おろ? あそこにあるのはリンゴの木か?」

 

 

 さてさて、春の陽気に設定された環境を大いに満喫していると、ふと視界に入る赤い実のなる木。良く見れば他にも実のなる木や、どう見ても畑って感じの個所がいくつか見える。赤い実に近づいて良く見てみたが、どう見てもリンゴです。本当に有難う(ry

 

 

「自然公園ってよりかは、こりゃ畑だな」

 

 

 僅か数十m四方であるが、仄々とした田園風景が広がっている。自給自足の生活でもしようってのかね?規模は家庭菜園より上だけど畑よりかは下といったところだから、大方誰かの趣味か何かかネェ。

 

 しかし、このリンゴ、上手そうに実ってるなぁ。

 

 

「一個くらい、食べちゃダメッスかねェ?」

 

 

 瑞々しく、私を食べてーと言いたげな赤い果実を前に思わずそう呟いた。

 

 

「食べても良いですよ「おわっと!」どうしました艦長?」

 

 

 その時、突然背後から声をかけられて、俺は驚きのあまりビクンと身体を震わせながら振り向いた。そこに居たのは。

 

 

「ふえ? タ、タムラさん!?」

 

「はい、料理長のタムラですよ」

 

 

 我が艦隊の胃袋を支える料理の鉄人。タムラ料理長が立っていた。お、驚いたじゃねぇか! いきなり話しかけんなよ! 心臓バクバクじゃないか。

 

 

「いやはや驚かせたなら申し訳ありません。なにせ艦長が始めて私の果樹園においでに為されたのでお声をお掛けしておこうと思った次第でして」

 

 

 話を聞くと、どうやらこの畑は、タムラ料理長が作った畑だったらしい。 忙しい料理長だが、普段はドロイドを数体借りて畑を耕し、たまの休みに訪れて、こうやって手入れをしているらしい。てことは、もしかしてモジュール内にある他の畑もか?

 

 

「ええ、私が造りました。もともとは部屋でプランターを使ってた趣味でしたがね」

 

「俺、何も言ってないッスけど、顔に出てました?」

 

 

 思いっきり頷かれた。俺は顔に出やすいらしい。

 

 でもプランターで育ててたにしては、随分と大きな実がなっているのもあるぞ? それとこのモジュールが組まれたのは三週間くらい前で、本格的に生態系が機能しだしたのはつい一週間前だった筈だ。

それにしては、随分と成長していると言うか量が多い様な、はて?

 

 

「元々空き部屋で育てていた野菜たちですが、自然公園モジュールが入ってくれて本当によかった」

 

 

 あーそう言えば、まだまだ人手不足で空き部屋はあるもんな。

 でもリンゴの木なんてどうやって育ててたんだ?わからん。

 しかし空き部屋を使って育ててたのかー、俺に断りなく。

 

 

「はぁ、まぁ良いッス」

 

「艦長?」

 

「一個貰うッスよ」

 

「どうぞどうぞ」

 

 

 なんかもう結構みんな好き勝手してるなぁと思いつつ。重力制御室で鍛え上げた身体能力でリンゴの木をスルスルっと登り、枝からリンゴをもぎ取ってみた。紅玉見たいな種類なのか、ホントルビーみたいに赤い。ほのかに漂うリンゴの甘い香りが食欲を誘う。

 

 

「んが」

 

 俺は大口あけて、リンゴにかぶりついてみた。シャクっという小気味いい音と共に、 良く熟したリンゴ特有の甘さと程良い酸味、そして芳醇な香りが口の中いっぱいに広がって行く。

 

 その甘さは後に残る事はなく、さりげなく上品に引いていく。なんというかリンゴの中でもエリートなリンゴって感じかなぁ。コイツは抜群だぞ。かなり美味しいリンゴで、あっという間に一個食べ終えてしまった。

 

 俺のいた世界でもこんな美味いリンゴはそうそう食べられないな。スーパーで通常の三倍の値段がしそうな感じだった、なんだかもう一個食べたくなるような味だった。

 

 

「うまいッスね。このリンゴ」

 

 

 万感の思いを込めて、そう呟くように感想を述べる。

 

 

「はは、品種はテレンス産のリンゴと同じ品種ですからな」

 

 

 それを聞き苦笑しながらも、すこし恥ずかしそうに、それでいて嬉しそうにタムラさんは答えた。やはり自分の手で育てた物をおいしく食べてもらえるのは嬉しいんだろう。この人はそういう人だ。

 

 リンゴの品種、テレンス産とは聞いたことがないが、恐らく小マゼランにおけるリンゴの名産地なのだろう。しっかし美味しかった。これでパイとか食べてみたい。

 

 

「しかしちゃんと育って良かった。科学班の薬のお陰ですなぁ」

 

 

 だが、この美味しかったリンゴに抱いた感動もタムラ料理長の漏らした一言で霧散した。おい! まさかここにある植物の成長が早いのって!!??

 

 

「ミユ殿から頂いた薬を撒いたところ10倍は成長が早いですね。美味しさもそのままだから料理に使えますな」

 

「あー、一応しばらく様子見てからの方が良いと思うッスよォ?」

 

 

 なんか薬を使って成長を早めたとか。途端ヤバそうな感じがするぜ。

 だけど楽しそうに収穫しているタムラさんを見て俺は何も言う事が出来なかった。

 

 

 

 

 その日以来、稀にタムラさん特製、自家製野菜のサラダやらスープやらデザートがメニューに上がるようになった。

 

 

 もっとも今の所身体に変調は来ていない所を見ると、特に問題のある薬では無かったらしい。

 

 

 なので時折、自家製野菜のデザートを注文するようになったのは余談である。

 


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