何時の間にか無限航路   作:QOL

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~何時の間にか無限航路・第8話、ラッツィオ放浪編~

■ラッツィオ編・第八章■

「どうスか?エコーさん」

「――――大丈夫~。空間ソナーにもレーダーにも反応はないわ~」

「しっかしよく気が付いたッスねぇ?エコーさん」

「えへへ、私だってぇー偶には凄いのだ~!」

 えっへんと胸を張るエコーさん。ま、今回の件は彼女のお手柄だもんな。ほんの一時間程前だったか、彼女が進路上の航路に海賊船の反応を探知した。どうも商船を狙う海賊が航路に網を張って待ち伏せしていたらしい。今回は広いレーダー範囲を持つこっちが先に気が付いたので、微妙に軌道変更して迂回路を通る事が出来たのである。

 まぁそれはいいとしてだ。

 

「そうッスねぇ。エコーさんも頑張ったけど、広い探知範囲を設定できるセンサー類を強化してくれたサナダさんのお陰でもあるッスけどね~」

「あ~う~、折角お姉さん頑張ったのに~」

「じゃれあいも良いがユーリ、もうすぐラッツィオ軍基地に付くぞ?」

「あの中佐とご対面ッスか?」

「乗り気じゃなさそうだけど、そう決めたのはあんただよ?これも仕事だと割り切りな。あんたは艦長なんだからね」

 

そうは言うが、やっぱり乗り気にはなれないよなぁ。

 清濁合わせて飲み込めるのが大人の指導者だというがやり切れんね。

 

***

―――現在位置・ラッツィオ軍基地士官宿舎

「待っていたよユーリ君」

「どうも、ご無沙汰です中佐。さっそくですけどコレどうぞ」

 俺はデータチップをオムス中佐に手渡した。どうでもいいが場所が場所だから 一応は民間人に相当する0Gドッグである俺は目立つので、この場所からさっさとおさらばしたい気持ちで一杯である。

 そんなこっちの気持ちなんぞ察してくれないというか、察しても多分無視しているであろう中佐は、俺達から受け取ったチップを控えていた部下に渡して分析にいかせると、再び此方へと向きなおった。

「確かに受け取った。報酬を受け取ってくれ」

「はァ、どうも」

 報酬の一つ、大金が詰まったマネーカードを受け取った俺はそそくさとこの場所…士官宿舎から出ようと踵を返した。場所が場所だけに落ち着かなかったのだ。だが、その時。

「ああ、待ちたまえ。実はまた仕事を頼みたいのだが?」

 オムス中佐に呼び止められた事で部屋から出ようとしていた俺は機先を遮られてしまう。なぁ~んか、ヤナ予感というべきものを感じていたが、政府軍に協力した身の上である以上、ここで無視したりすることは難しい。内心面倒くさい事にならなきゃいいが…と吐き捨てながら振り向いた。

 

「何でしょうか?中佐殿」

「実はな?この付近を縄張りにしているスカーバレル海賊団の討伐に君達も参加してほしいのだ」

「海賊団の討伐?」

「最終的には敵本拠地まで撃滅したい。これを見てくれ」

 

 そういってデスクのコンソールに触れた中佐のすぐ眼の前に空間パネルが出現する。説明用に投影したようだが、どうやらこの中佐殿は俺達をとことん使おうというハラらしい。さすが軍人!汚い!軍人汚い!ここで引くのが大人の醍醐味では?!

 そういう事を口に出したり出来ないのが元日本人の証…いやな証もあったもんだ。だがそれでも迂遠に反対意見の一つくらいは言える度胸が俺にはあった。

 

「中佐、オムス中佐。そりゃ色々とお世話になった間柄ですがね。新進気鋭とは名ばかりな新人の我々を、いきなり危険な激戦地にでも送り込む気ですか?流石にそれは…」

「いや、そう言う訳ではない。ただ単に我が方の戦力が不足しているから、数合わせも兼ねた増援として依頼したいだけだ」

 そう言うと中佐は再び空間パネルに触れる。青白く半透明な光で出来たパネルにタブが追加され新たなウィンドウが投影される。そこにはなんかのグラフやら数字が羅列されていた。だが生憎、こっちは正規軍とは違うのでこれがいったい何を示しているのかは、これだけじゃ理解できない。

 一通り眺めた後、これはなんですと眼で訴える。そこらへんは中佐殿も理解しているのか、頷きながら口を開いた。

 

「これは今日まで我が軍が戦った海賊達との交戦データを元に統計したものでね。簡単に言うとこのデータは海賊団と我々との戦力比データなのだ」

「……そういうのは普通機密なんじゃ」

「別にこういったのは機密ではないよ。少しばかり見せる者は限られるが、調べれば解るデータでもあるからね」

「僅差ですけど海賊団の方が多いですねェ。なるほどねェ…」

 海賊退治自体は別段普段からしているのでソレほど苦でもないし、軍人さんの頼みを聞けば、まぁこの宙域での行き来は覚えが良くなる。今のところデメリットらしいデメリットはないのもポイントだろう。あるとすれば野心家な軍人に目を付けられた事だが…まぁそれはまだ大丈夫だろう。

 それにしても以外なのは、このグラフで示されたのは軍の内情であろう。性能は高めだが数が少ない中央派遣軍。性能は全体的に低めだが数が多い海賊団。性能で多数を何とか押さえ込んでいるが、無駄に数が多い海賊を前にして性能だけではカバーし切れずに被害額が増加している。

 色んな意味でそろそろ限界なのがこのデータからうかがえる。そんな状態での此方への海賊討伐への参加要請…要するに少しでも頭数を揃えたいというのが本音にあるのだろう。だがどうにもそういう頼みに対して忌避感を覚える。0Gドッグだからお上に反発したがるのだろうか?

「勿論私はキミ達の事を捨て駒の様に扱う積もりは毛頭ない。頼めるか?」

「うーん、仲間と相談してから決めたいので少し時間をください」

「ああ、構わない。どちらにしろデータチップの解析が終わってからでないと出撃はできん」

 とにかく、この場ではすぐには決められない。そう告げて俺はこの場を後にした。俺が勝手に全部決めても俺の艦隊なので問題はない。ないのだが、俺の気質というべきか、こういうのはみんなで決めたいという、ある種日本人の考えを捨てきれない。良いのか悪いのかどちらとも言えんが…、まぁみんなと相談しよう。

 

 外に出た俺は待たされていた皆と合流する。オムス中佐からの話をブリッジクルー+αを呼んで伝え、そのまま会議と相成った。

「なお、会議場所は0Gドッグ御用達の酒場です」

「どうしたのユーリ?」

「ああいや、なんかこうしないとダメって言う電波が囁いたッス」

「ああ何時ものあれね。それはいいからオムスに何言われたのかさっさと話しな」

 話の続きを促すトスカ姐さん。つーか何時ものあれって結構俺変な奴として認識されてる? …ま、まぁいい。それよりも今は会議をしなくてはならないな。

 とりあえず、中佐と話した内容をココでばらした。カクカクシカジカ四角いなんちゃらってな感じ。

 以下、各々の反応―――――

 副長 トスカ   「これまた面倒臭い事になりそうだねぇ」

 オペ子ミドリ   「艦長の判断にお任せします…」

 操舵班リーフ   「俺は金と飯と寝る場所さえあれば何にも言わん」

 機関室トクガワ  「ココは慎重に考えた方がいいじゃろう」

 生活班アコー   「軍に使われてるねぇ」

 レーダー班エコー 「アコー姉ぇの~言う事に賛成~」

 砲雷班ストール  「海賊相手なら撃ち損じることはねぇな」

 科学班サナダ   「性能差ではこちらが勝ってはいるが、数の暴力と言うものは侮れん」

 保安部トーロ   「ふむ!よくわからん!」

 義妹チェルシー  「出来れば荒事はやめた方が」

――――もろ手を挙げて反対もいなければ賛成もいない。

 いや、どちらかと言えば反対寄りなのかな?見た感じ全員があんまりいい顔は皆してない。ソレもその筈で彼らにしてみれば自由を束縛される感じに抵抗を感じているからだ。これは0Gドッグなるならず者共特有の反応と言ってもいい。

 だが、同じ釜の飯を食べ、ホームとも呼べるフネで生活している俺達の絆は結構太い。故にこの集団の旗手とも言える俺の考えに同調してくれようともしている。なんともありがたい事である。

 しかし、それでも俺はこの後のおよそ3時間ちかく酒場に居座って、この件に関する協議を取り行った。34時間営業(この星の一日の自転周期は34時間)の酒場とはいえ、流石に従業員にジト目で見られたが大事な会議なので仕方がない事なのだ。

 途中で酒が入ってどんちゃん騒ぎに発展してしまったとしても、会議は会議なのである。第一こちらはコーヒー一杯で半日居座るような真似はしていないのだ。ちゃんと合間合間に飲み物…トスカ姐さんは毎回酒だが…もオーダーしてるしそんな目で見なくてもいいじゃないか。

 んで、協議を重ねた結果。こんな結論にたどり着いた。

 

「やばくなったら逃げればよくね?」

 考えて見ればあくまでも向こうは俺達に“協力”を要請したのだ。強制されているわけでもないので、こちとら状況が最悪になったなら、作戦行動中の正規軍を見捨てて、すぐさまスタコラサッサが出来るのである。たとえそれで怨まれても宇宙島を二つ三つ越えておけば直接手は出してこないだろうし、そうならないように逃げ出せば尚良い。

 

 しかもしかも、この協力要請が結構ハイリスクな点は変わりないが、最終的に行き着く先は海賊の本拠地である。当然海賊本拠地を占拠すれば、そこで得たお宝の一つや二つ位貰える権利は有るだろう。上手くすれば儲かるし、例え逃げる事になっても俺達は自由に宇宙を行き来できる点は変わらない。

「―――――と言うのはどうだろう?」

「「「「「「意義な~し」」」」」」

 

 そんな訳で行動方針が決定した。それは“やばくなったらスタコラサッサ”である。協力要請は受けるが、危なくなったら逃げても良いという許可を得ておく。文句は言われそうだが、そこは正規軍が奮闘してくれれば俺達も逃げなくてすむので奮闘を願います!とでも善意たっぷりで言っておけばいいだろう。うん、そうしよう。

 

「うんうん、最初の子坊の時に比べたら随分たくましくなったねぇ。コレもアタシの教育の成果か」

「時折腹黒いよな、ユーリって」

「ユーリ、変わったね。色んな意味で」

 若干名、酷い事言われた気がするが協議の結果、条件付きでの海賊討伐に参加となった。

早速オムス中佐に連絡をとってアポを取り後日訪問。この条件を納得して貰うのには少しばかり苦い顔をされたものの了承はして貰えた。中佐殿は野心あるが良識もまだ持っているのが幸いであった。

 あちらさんとしても、戦力の出し惜しみで貴重な戦列艦を撃沈されるよりかは、民間からでも戦力をかき集めて置いたほうが安い物だと納得しているらしい。要するに狙われる的を増やせばいいって訳なんですねわかります。

 まぁもっとも、俺達は名声値は低くないものの目だった活動はそれほどしていない弱小勢力なので、提示できる金額が安いっていうのもある。轟くような名声がないからこそ、最悪逃げてもいいという要望が聞き入れられたんだろうと思う。どちらにしろこれに参加すれば報酬はもらえるから、あとは自分達が出来る事に専念することにしよう。

 

―――そう言う訳で、海賊討伐及び海賊島制圧作戦が始動する運びとなったのだった。

 

***

 

 

 討伐作戦参加を決定し、オムス中佐に伝えたその夜。俺は一人ステーションの造船ドックに赴いていた。実は一人で考えた結果、なんかやっぱり保険がほしくなったというのがある。石橋は叩いて渡れって訳じゃないが、やらないよりやるほうがいいのは確かだろう。

 今回の交渉の結果なんとか搾り取れた前金。それとコレまで海賊狩りで稼いできたのを貯蓄した金。さらにはこれ迄特筆はしていなかったが、さりげなく惑星間移動の時に運んだ物資輸送の代金を合計すると…あら不思議、何とか目的のブツを製造できる範疇だった。

 俺がここに来ている段階で何を作るのかは言わずもわかるだろう。しかし俺はその事を誰にも言わず、あえて深夜にフネを抜け出してここにやって来た。別に話してもいいが、なんとなくこういった事がバレるのは何か面白くないという悪戯心が鎌首をもたげたのである。

 

 建造はこれで数度経験しているので造船所のコンソール操作も慣れたもの。ポンポンとコマンド入力を終えていく。だが大きいフネになればなるほどその製造には時間が掛かるようだ。準備に時間が掛かる為、後は全部機械に任せてその場を後にした。

 

 これを見せ付けた時、クルー達の驚く顔が眼に浮かぶようで、俺は帰り道自然と笑みを作りるんたったと足取りも軽かった。その所為で不審人物として怖面の警備の方が迫ってきた時はちびりそうになったのは俺だけの秘密。

 

 

***

 

 さて、それから一週間が経過し、ようやくオムス中佐から連絡があった。意外と準備期間が長かったが、各方面の巡回に回っていた正規軍の艦隊を呼び寄せて召集するのと、俺達が入手して手渡したデータチップの解析に少し手間取ったかららしい。そんな理由で遅れていた準備がようやく終わったので作戦に参加しろとのお達しがきた。

 ならず者故に身が軽い0Gドッグとは違い、流石は正規軍というかなんというか、強大な組織だけにフットワークが苦手なのが弱点である。こちとらとっくのとうに準備は終わっていたが、連絡がないと大々的に星系間移動が出来なかったので、そろそろダレて来ていた所だ。

 そんな訳で指定された座標にフネを進める。そこでオムス中佐が用意していた艦隊と合流し、いよいよ待ちに待った海賊討伐作戦が開始された。エルメッツァ中央政府軍の海賊討伐艦隊は全方位菱形陣形をとって、いかにも艦隊といった風体で航路を突き進んでいく。非常に目立つことこの上ないが平然と行っているあたり、彼らは大国の肩書きを背負っている艦隊なので、これくらいのデモンストレーションは日常茶飯事なのかもしれない。

 

 

 んで、一方の俺達はソレの横にポツンと単艦で進んでいた。別にはぶられたとかボッチにされたとかじゃないんだからね!ホントなんだからね!

 俺たちは数が少ないというか前線での戦闘に耐えられそうなフネがアバリス一隻しかいない。更に事前に交わした協定により、自由裁量権もある程度与えられていた事で指揮権がはっきりしなかった事もあり、オムス中佐の艦隊に組み込むわけにも行かなかったのだ。

 だからこそ、俺たちに与えられた役割は遊撃と奇襲。敵が待ち構えている防衛線を大きく迂回して、敵の背後から急襲を仕掛ける事だった。結構危険な立ち回りだが、愚鈍なエルメッツァ中央政府軍と違い此方は軽いフットワークの望める単艦だ。

 

 高性能戦艦ゆえの重装甲重火力足の速さをもってして、敵を撹乱してやるというのは、直接的な指揮に組み込まれていない俺達0Gドッグにはうってつけの役割であった。大マゼランが設計元の高性能戦艦であるからこその策だと言える。最悪逃げても良いし、俺達はこの奇襲作戦を結構気楽な雰囲気で臨むことにした。

 気楽に挑む…その筈だったんだけど、人生ってのはあれだね。こんな風じゃなかった事ばかりだね。

「エコーさん、マジッスか?」

 

 迂回航路を推進中、レーダーを凝視していたエコーさんからの報告に俺はこうかえしていた。

 

「うん~マジマジ~。サナダさんが作ったこの新型空間ソナーで調べたら~、この先の小惑星帯の中に多数のインフラトン機関の反応を検知したわぁ~」

「配置的に待ち伏せだね。恐らくこちらの情報が漏れてたんだろう。軍の中にも海賊のスパイがいたんじゃないかい?」

 

 どうやら何某の艦隊が、このルートを通ることは海賊側にも予めバレていたらしい。敵の布陣がどうみても待ち伏せにうってつけな状態だったからだ。回避したいが、今から迂回しようにも今からの航路設定は難しい。しかもどう動かそうが減速が足りず、針路上小惑星帯を突っ切る形になってしまうからである。

 更に言えば、敵の規模を考えると何とかできなくもないというのが不味い。危ないと思って逃げることは簡単だった。事前に危なかったら逃げてもいいという確約をしてもらっている。だがそれはあくまで危なかったらという話であり、自力で何とか出来そうな場合、この約束は有効にならない。

 

「ココは下手に回避するよりも、全速で突っ切ってしまった方が被害が少ないだろう」

「全く、逃げられない上にアンラッキーッスね」

「大丈夫だ。このフネの装備はこの間の整備の時に一新させてもらったから、そう簡単には落ちないさ」

「科学班や整備班の腕、信頼してるッス」

 

 それがこのフネ唯一のほかより優れているところだとは言わない。それだと俺がまるで無能みたいじゃないか。それはさて置いて、どうにも面倒臭い事態になりそうである。待ち伏せされているならそれを逆手にとって、敵を誘き出して殲滅できればいいのだが、生憎今俺達は単艦。敵を吊り上げる奴がいない。

 うーん、性能差でゴリ押しすれば何とかなるとは思うが…。万が一に備えておくのも艦長だよな。うん。

「アバリス」

 

 トスカ姐さんが所用で二段構えブリッジの艦長席がある上段から降りていったのを見計らい、俺は密かに本艦のAIを呼び出した。一応は俺も艦の命令系統においては最上級。すぐに眼の前の空間にサウンドオンリー表示の空間ウィンドウが投影された。

 

【はい、艦長】

「隠しフォルダのコード881の開示を許可する。その中の命令の実行してくれッス」

 非常に端的な命令に対し、AIは文句も言わず了解を示すとウィンドウを閉じた。コレで最悪撃沈は回避できるだろう。ちなみにコード881なんてご大層なネーミングであるが、隠しフォルダは一つだけしか存在しない。じゃあなんで881?何となく気分です。

 なにはともあれ、この命令が実行されれば敵味方共にとても面白い事になるだろう。それを考えると何となく楽しくなったので思わず笑みがこぼれた。

 

「まぁーた何か悪い顔してる。今度は何を企んでるんだい?」

 

 それを所用を終えて戻ってきたトスカ姐さんに目撃され質問されるが、明確な答えは提示せず、ただ愛想笑いのように唇を吊り上げて告げた。

 

「なに、ちょっとした援軍を頼んだんですよ」

 だからソレを言えとスリーパーホールドを掛けられたのは余談。首が痛い…。

 

……………………

………………

…………

 それから数時間後、小惑星帯の入り口付近で待ち構えていた敵の第一波を完全に補足。敵も此方と接触した事に気がつき、俺達は交戦状態に突入した。

 

「各区画気密の確認は終了。戦闘班はすべて所定の位置に付きました」

「射撃諸元の測定完了、ビーム射撃の散布界パターン入力、主砲及び副砲、1番から4番までインターバル0で全力斉射開始!強制冷却機作動開始する!――先制攻撃だ。ポチッとな」 

 どこか気の抜ける砲雷班長ストールの掛け声の下、主砲が発射された。此方の方が射程が長い事で可能となった先制攻撃により、主砲および副砲から放たれた幾条もの光線が真っ暗な宇宙を突き進んでいく。

 眼の前にある恐らくは敵の囮であろう小艦隊を掠めて、その装甲を溶かすなりシールドをかなり減衰させるなどしてダメージを与えつつ、本来ならそのまま外れ弾となるべき砲撃は直進し続け、周囲にある小惑星を幾つか巻き込んでいた。鉄といった金属質で出来ている小惑星であるにも関わらず、それらをものともせずに高出力のレーザーはそれらを貫き、穿ち、融解させていく。

 第一射により敵艦隊へ与えたダメージを観測したデータがコンソールに上がるのとほぼ同時に、別の敵を索敵していたオペレーターのミドリさんが声を上げた。

 

「小惑星のいくつかが爆散、その中でインフラトン反応の拡散を感知」

【計測中…敵巡洋艦クラス1隻、駆逐艦クラス3隻規模のインフラトン・エネルギー反応と思われます】

 

 どうもこちらの第一射が小惑星ごと敵艦を貫いたらしい。待ち伏せされていたので多分いるだろうなとも思っていたが、正確な位置はわからなかったので結構適当な照準だった筈だが以外や以外ビンゴだったようである。

 そりゃまぁ、隠れている小惑星が爆散したあげく、その破片を至近距離で浴びれば結構ダメージ食らうとは思っていたけど、ついでに直撃してたらそりゃ撃沈するわな。微妙に幸先が良い出だしとなったようだが、敵さんもバカじゃなかったらしく、待ち伏せが失敗したことを悟った途端、まるでネズミのようにワラワラと小惑星帯から飛び出してきた。

 

 おお、スゲェ数。敵を表すグリッドで戦域モニターがどんどん埋まっていくぜ。流石に海賊の本拠地だけはある。こりゃただ突っ切るのはムズかしいだろう。とにかく此方から息をつかせぬ連続砲撃で黙らさないといけない。

【敵から対艦ミサイル来ます。数30、着弾まで約150秒】

「あわてず騒がず回避運動を実行。スラスター出力最大。ついでに電子妨害開始ッス」

「アイサー、回避開始、ジャミングを行います」

 

 各部スラスターが炎を吐き出し、暗い宇宙にその残照を散らせていく。だが、こちとら1000m級戦艦。そのサイズは言うに及ばず、連中の巡洋艦や駆逐艦からしてみれば当てやすい標的であろう。科学班の研究と回収を行った整備班の手によって、スラスターなどの足回りも以前より改良されているので、前ほど鈍亀じゃない。

 それでもこれ程の大きなフネを動かすのは容易では無い。三次元軌道による立体的な回避運動を試みるものの、敵さんもそこらへんは予想していたらしい。

「ミサイル、扇形に展開。予想必中弾は10、回避できません」

「アバリスはミサイルの予想進路を計算!リーフはそれを見ながら回避運動ッス!」

【了解】「アイサー!」

 散布界を広げる事で攻撃の命中率を上げたようだった。こういった対艦ミサイル等の実体弾というのはレーザー等のエネルギー系に比べれば格段に遅い。なので遠距離なら回避運動をとったり、ECMなどの電子兵装を使えば命中率をかなり下げられる。

 

 だが宇宙空間を進む対艦ミサイルというのは、当然相対速度の関係でそれなりの速度を持っており、ECMで追尾力を低下させても、直進してくる事がある。所謂無誘導ロケット状態なのであるが、その運動エネルギーはかなりのものがある。当たってしまえばその威力は半端なものではない。場合によっては弾頭が反物質弾という可能性もあるのだ。実体弾とはいえ油断できない。

 しかもだ。ミサイルなどの実体を持つ攻撃に対し、ビームなどの指向性エネルギーを減衰させるAPFシールドでは防ぐ事が出来ない。通常専用の装備がない場合、実体弾に対する防御は自艦の装甲板と耐久力が頼りとなってしまう。なので普通は攻撃の遅さを考慮して回避したりするのが常道なのだが。

 

「防御兵装稼動!デフレクター出力最大ッス!」

 

―――それは普通のフネの場合である。

 俺の指示が下ると新たに積み込んだモジュールが稼動する。APFシールドのプロジェクターに併設された別のプロジェクターが燐光を発した途端、アバリスを楕円状に包み込むようにして周辺の空間が歪んでいく。やがて空間の歪みが収束し、アバリスの周囲は膜状のバリアーで覆われた。

 それはデフレクターと呼ばれる防御システムである。重力井戸の技術から派生した技術で強力な重力場によって周辺の空間を歪ませ、ある種の壁を形成する事により、あらゆる物理的な手段を軽減させる事が出来る防御兵装となるのだ。くぅ~!重力場のシールドなんて、エクセレント!浪漫たっぷりじゃないか!

 ちなみにコレを何処で手にいれたのかというと、以前ロウズに居た最初の頃に0Gドッグの登録と併せて名声値ランキングに登録した事を覚えているだろうか? このランキングに必要な名声値という謎の数値があるのだが、それは敵を倒したり何か功績を挙げると上昇する。原理は知らないが敵を倒せば上昇するのである。

 

 んで、俺がモブとはいえかなりの数の海賊を大量に狩ったのは知っているだろう。その殆どが無名海賊であり所謂雑魚。だから、いくら倒したところで手に入る名声値は雀の涙であった。だが大量に来る日も来る日も倒し続けた結果、ちりも積もれば山となるのイデオロギーの元、俺の名声値は無駄に溜まっていたのである。こうして名声値を得た事で上に居た4000人以上のランカー達を短期間で蹴落として、上位ランキングに食い込むことに成功していた。

 

 そして上位ランキングに入ると、なんと管理局からボーナスをもらえるのである。つまり、そのボーナスの一つがAIアバリスが付いているコントロールユニット。そしてデフレクター発生ユニットだったのである。ズっこいとか言わない。だってゲームだと序盤、無周回プレイの時では、そういうのを利用しないと即撃沈がざらだったのだから。

 

 何はともあれ防御兵装を捻り込んであるアバリスは鉄壁!素敵!大喝采!である!

【ミサイル、デフレクターの効果範囲まであと20秒】

『総員、耐ショック防御、何かにつかまって下さい』

 

 オペレーターのミドリさんの声がアナウンスを通じて艦内に流れる。実を言うと、実戦でこの防御装備を使うのは今回が最初なので少しばかり緊張が走っている。戦術モニターに眼をやると、俺達を表す戦艦型グリッド目掛けてミサイルを表す細長い棒状グリッドが殺到してくるのが見て取れて、無駄に緊張感が煽られる。

「ゴク」

 そして、グリッドがアバリスの防御スクリーンに後僅かと迫り、それに接触した瞬間、ミサイルの軌道がデフレクターを沿うようにして流れた。思わず生唾を飲み込んだ次の瞬間、モニターが一瞬ブラックアウトするほどの強い閃光が走った。

 それとほぼ同時にデフレクター発振元のアバリスを揺らす程の強い衝撃波が、フネ全体に襲い掛かった。あまりの衝撃にたまらず俺はコンソールにしがみついた。やべぇ、思ってたよりも対艦ミサイルの威力が高い。

「ぐぅ!…損害報告!」

「デフレクター出力。瞬間的に60%台にまで落ち込みましたが、既に充填されて現在80%台まで回復。ジェネレーターとも正常稼動中」

『こちらダメコン室。衝撃波の影響で多少キールにゆがみが出たが許容範囲内だぜ』

【装甲板にも傷ひとつありません】

「約4名、頭を打って医務室に運ばれましたが各部署異常無し」

 ふぃー、さすがは重力防御装置、物理的な力にめっぽう強いじゃないのさ。金稼ぎと平行して海賊を倒してランキングを上げた甲斐があったというものだ。状況は、こちらの損害は軽微、だがデフレクターごとフネを揺らす衝撃波だけでも中の人間にとっては致命的になる事もあるので油断は禁物だ。

「アバリス!艦内の余剰区画閉鎖!その分のエネルギーを兵装に回すッス!」

【了解】

「ストール!回したエネルギーで各砲ミサイルを迎撃!それと収納してあるガトリングレーザー砲の使用を許可するッス!全力で叩き返せ!」

「アイサー!久々の制圧砲撃!腕が鳴るぜい!ポチっとな!!」

 大中小の各種高出力レーザー砲。両舷のリフレクションレーザーカノンが光る。俺というパトロンが付いたからか、前まで配線むき出しだったのに何時の間にか外装が付いて完成してしまったガトリングレーザー砲が上部甲板格納庫からせり出し、広域にレーザー散布を開始した。単艦だが強力な火力、それによる弾幕は艦隊相手に引けを取らない。

 反撃の広範囲砲撃は7割が外れる。散布界を広く取るという事はそれだけ無駄弾も多く消費されるという事でもある。だが全体を見ればそれを補って余りある効果を挙げた。

「エネルギーブレット、敵1番から5番艦に命中、全大破」

 

 まぁいうなれば、戦艦が巨大なガトリング砲で撃ちまくったようなもんだからなぁ。逃げる奴は海賊だ!逃げない奴は良く訓練された海賊だ!ふぅーははは!ホント航路は地獄だぜい!!

 だが当然コレだけ撃ち続ければ、いかに高性能なコンデンサーやジェネレーターを持っていてもすぐに枯渇するわけでして。僅か十数秒でこれ迄チャージしてあったエネルギーの殆どを使い果たし、再チャージされるまで使用できない状況になる。

 別にピンチではない。そうなる事も折込済みなので、此方は攻撃系統とは別の系統で確保してあるエネルギーを効率的に使い、回避運動を継続するだけである。蝶の様に舞い~、蜂の様に刺し~、ゴキブリの様に逃げるのだァ!

 ちょっとかっこ悪いかもしれんが、勝てば官軍なので気にしない。

 

「次弾のエネルギーチャージが終わるまで回避機動を崩すな!止まれば幾らシールドがあっても穴だらけだよ!」

【敵残存艦がミサイルを発射。敵増援を確認しました。数は10】

「キリが無いね。ストール!こっちの方が射程が長いヤツがあるんだから、敵がこちらを射程に収める前に沈めるんだ!」

「アイサー、両舷リフレクションカノンの照準は増援に向ける」

 艦が再び回避機動を取り始めるのを横目に俺は再びコンソールのほうに目を向ける。それなりに落とした筈だが、いまだ戦術モニターには多数の敵艦が表示されていた。待ち伏せされていたあたり、結構な数が潜んでいる事は予想できたが、馬鹿に敵艦が多いような気がする。

 もしかしたら俺達がこちらの航路を通る事も事前に知られていた? そうだとしたらそりゃあ一杯来るわなァ。こちとらどれだけ海賊を食らった事か…恨まれてる事は確実だモン。

「ガトリングレーザー砲の蓄熱量が限界値に入ります。冷却の為に作動を停止します」

「冷却が終わるまで各砲自由射撃に移行。ただし牽制だけに留め、ジェネレーターの充填を優先するッス」

「砲雷班アイサー!」

 エネルギーが尽きてはチャージし、チャージした分を使いきれば攻撃する。このサイクルを繰り返し迎撃を続けるが、敵の数があまりにも多過ぎて決定打にかけてしまう状態になった。標的が多過ぎると逆に当らんもんである。各個撃破で応戦すればいいんだろうが、生憎単艦なので必然的に多対一の戦闘となるので集中しての撃破が難しかった。

 

 あるときは後退し、あるときは進撃するを繰り返す。新調したり研究が進んだことで改造を加えた装甲。それら新兵装があったから良かったものの前のままならもう蒼い火球となっていただろう。ホント技術班さま様々やで。

そのまま待ち伏せ艦隊を消化して敵の本体に近付いた俺達は与えられていた職務を開始する。そして会戦から5時間あまりが過ぎ、クルー達に若干の疲労が見え始めていた。

『各クルーは第3班と交代してください。繰り返します――――』

 即時対応可能範囲の敵性勢力はすでにその殆どの殲滅を完了していた。だが敵は次々と戦力の逐次投入を行い増援に継ぐ増援で俺達の体力と精神をすり減らしていった。もしまだ増援があるとするなら、これまでの戦闘の経験上、約1時間程で再び表れるだろう。

 

 AIのサポートがあるとはいえ、ソレを扱うのは人間だ。基本的には人間がフネを動かしている以上、マンパワーが低下すれば、その分戦力も落ちてしまう。この空いた時間を利用しない手はない、なので各戦闘部署では人員を三班に分けてサイクルを組んで対応させた。戦闘をしていたクルー達を交代させておくのである。交代したクルー達にはしばらくタンクベッドに入ってもらい強制的に休憩しておいて貰おう。

 タンクベッドは夢をみないで短時間で肉体的な疲労を除去できる素晴らしい装置である。問題は夢をみない分、精神の方に疲労が蓄積されてしまう事であるが、肉体がある程度元気になれば、それに引き摺られて何とかなる。それでも限界はあるが、やらないよりはマシといったところだった。

「まったく敵さんもこりないねぇ」

「トスカさん、疲労は少しは取れたッスか?」

 

 ブリッジクルーも例外なく、それぞれに交代していた。ただ通常のクルーと違い、ブリッジクルーはそれぞれの部署が一人ずつ交代し、また交代するのはAIとである。ブリッジクルーには換えが効かないし、下手に部下に任せるよりも高性能なAIに任せたほうが楽なのだ。なら全部AI任せという考えも出そうだが、AIでもストレスは溜まるし、何よりそれだと面白くない。

 とにかく、ブリッジクルーも細々と交代し、先ほどまでトスカ姐さんが休んでいた。

 

「ああ、少しだるいけどね。ユーリ、敵が来るまで少しある。今の内に休んでおきな」

「ういッス…ココは任せるッス」

「ああ、まかされたよ。しっかり休んどきな」

 トスカ姐さんも戻ってきたので、彼女に指揮を任せて俺も少しばかり休ませてもらう事にした。しっかし、もう少し楽に突破できると思っていたが、これほどまで長丁場になるとは予想だにせんかった。中央政府軍の奴ら、海賊の戦力を侮っていたのかな?

「ミドリさん、エルメッツァ政府軍の戦況は?」

「通信状況が少し悪いのであまり情報はありませんが、どうやら向こうもこう着状態みたいですね」

「ふむ、こちらとおんなじッスか」

 どうやら予想外に海賊たちは奮戦しているようだ。

 政府軍と互角に戦っている。こうなると不利なのは――――

「数が少ない分、政府軍の連中の方が不利だねぇ」

「やっぱりトスカさんもそう思うッスか?」

「ああ、全体的に戦力が同じなら、数が少ない方が持久力が無いのは明白だからね」

 こちらもアバリス並みの戦艦が後一隻あればいいが、そんなフネを持っているヤツはウチを除いてはこの宙域には存在しないだろう。大海賊と呼ばれるヴァランタインとかいう男なら知らんけどね。助けにはこないだろう。だって海賊だから政府軍と仲良い訳ないし、そいつ原作じゃ序盤敵だしな。

 逆にこの場に現れてしまったら死亡フラグがやって来たと思い早々に離脱すべき事態になってしまうのでいただけませぬ。それはいいとして、俺も休む事にしよう。

 

「んじゃ、俺すこし休むッス」

「ああ、よ~く寝な。その間に終わらせちまうからさ」

「いいッスねぇ、それじゃトスカさんに全部お願いします」

「任せときな」

 俺はフラフラしながら艦長席を立つ。実を言うとズッと緊張状態を維持してたから腰が痛いくらい疲労が溜まっていた。席を立つついでにトスカ姐さんの軽いジョークに返事して、ブリッジを出ようとした、その瞬間―――――

「敵増援、第6波確認~!」

「どうやら、おちおちと寝かせてもらえない見たいッスね」

「ちっ、しつこい男は嫌われるよ」

 再び増援が表れた。どうも予想していたよりも到達が早いので俺は出鼻を挫かれた感じで艦長席に戻る。戦闘が再開されたら艦内のエアロックが再び閉鎖されるので行き来できなくなるのだから、艦長席に居たほうがまだマシなのだ。

 それにしても敵の増援…。原作ゲームよか多過ぎでしょう?何この叩いても叩いても湧いてくる感じ?雲蚊の如く大軍って事ですかい?

「アバリス」

【はい、艦長】

「アレは、まだ?」

【もうこの宙域に入りました】

 よし、それなら勝つる。俺はある事をアバリスに確認し、コンソールのある艦長席に舞い戻る。ガトリングレーザー砲は戦闘で使ってまだ冷却中だから、通常兵装達で勝負するしかないな。

「各砲門開け!迎撃準備!リフレクションレーザー砲で先手を―――」

「へうっ!?こ、後方よりアンノウン反応~!1000m級です~!!」

「「「な、なにぃ!?」」」

 

 再度迎撃の号令を下そうとした時、レーダーを見ていたエコーの焦った声がブリッジ内に木霊した。それを聞きブリッジクルー達にも動揺が広がる。突如背後に現れた正体不明の1000m級のフネ、しかも戦闘中であり周り一体が敵だらけの状況で表れたヤツだ。敵であってもおかしくは無いと考えられるだろう。普通ならな。

「くっ!海賊どもがそんな艦を持っているなんて聞いて無い!」

「政府の奴らめっ!情報を小出しにしてやがったか!」

「落ち着くッス!第一あれは―――」

「アンノウン、インフラトン反応上昇中。砲撃を行うようです。所謂ピンチですね」

「「「な、なんだってー!!」」」

「ちょっ!アバリス!?」

 

 俺が喋っているのを遮り、ミドリさんが背後のソレの動向を伝えたもんだからさぁ大変。余計に混乱するクルー達、あーもう。

「アンノウンからエネルギーブレッドが発射されました!!」

「い、いかん!デフレクター嫌さAPFシールドを出力最大に!!」

「それよりもかいひ~!!」

「だいこんらんです!だいこんらんです!」

「リ、リーフが壊れたぁぁ!!」

「うわぁ、なんつーかウチもまだまだ想定外には弱いんスねぇ」

「な、何でユーリはそんなに落ち着いているんだい?」

 トスカ姐さんも若干混乱しているようだ。

 いや、だってねぇ?

「だってアレ、敵じゃないし」

「「「「はぁ!?」」」」

 ざ・わーるど☆そして時は動き出すんだぜ!

【エネルギーブレッド、本艦右舷を通過して敵艦隊に向かいます――敵艦撃沈】

「え?本当に敵じゃ無い?え?え?援軍?」

「どうなってんの?馬鹿なの?死ぬの?」

「おい、まさかとは思うが説明をお願いしてもらってもいいか?」

 そして全員の目が一斉に俺のほうを向いて…いや射抜いていた。

 なんせ俺には前科があるからなぁ、主にこのフネ関連で。

 

「やぁバーボンハウスにようこそ、このテキーラはサービスだから落ちついて欲しい」

 つまりはそう――――またなんだ。

 

 背後から現れた大型艦。それはお金が貯まっていたのともしもの時の保険として建造したズィガーゴ級戦艦である。全長1600m、全幅1200m、全高1300mのずんぐりむっくりとした形状をした大型艦で、アバリスよりも巨大なそのフネは、0Gドッグランキングで10位に入るともらえる設計図で作成できるフネである。

 元々大マゼラン方面で活躍している大海賊のフネの設計図であり、イメージは頭蓋骨に泥棒のほっかむりをつけたといった感じ。大マゼラン製であり、また分類が実は戦闘空母なんていう浪漫あふれる仕様な為か、艦載機とかペイロードが凄まじい高性能艦である。なんでランキングで手に入るのかと聞かれても分からんのだが、たぶんゲームの仕様です。

 そして、それを戦線に投入した俺、まさに外道!

 だけど当然それらは秘密だったので―――

「ユーリ!アンタまた秘密裏に戦艦作ったね?!」

「いえすおふこーす。こんな事もあろうかと、増援作っておいたッス!」

 トスカ姐さんに怒られちったい。

 だけど言ってやった。こんな事もあろうかとをな!ふはははは!!

 

「「「「艦長…アンタ…」」」」

 

 ………いやモチロン艦長が言うべきセリフでは無いのは解ります。

 だから皆そんな冷たい目で見ないでほしいお(^ω^;)

「と、とりあえず状況を打破する為にやっちゃおう?ね、ね?」

「ユーリ。アンタ後で折檻な?」

「うわーん!艦長の愉快なお茶目なのにー!理不尽ッスー!」

「アバリス!どうせアンタが操作してるんだろ?あのフネの操作は任せるよ!」

【了解しました】

 あれ?なぜかトスカ姐さんに仕切られたような…。ま、兎に角こうして、俺達は新造艦との共闘で戦闘を有利に進め、防衛線を突破する事が出来た。ちなみに新造艦だけど秘密裏に作ってたので乗組員は乗っておらず、現在ユピテルは無人艦として機能していたりする。

 人間が乗っていない無人艦なので咄嗟の事態に対応できない可能性はあるが、有人艦である本艦がいるので恐らくは大丈夫であろう。むしろコレだけの高性能艦なのに、ある意味で序盤であるここいらで沈んだら泣くぞオラ。

 

「さぁて、あとは副長に任せて俺も休憩「マテやコラ」しようかなぁ~って思ったんスよ。トスカ副長?」

「HAHAHA!とりあえず敵を殲滅して一段落したからこっちに来て色々と説明してもらおうか?とくにこれまでの資産を勝手に使い込んだ件についてね」

「え、ちょ?俺はただ皆の驚く顔が見たかっただけなんス~!お茶目な艦長の悪戯だったんスよぉ!」

「ギルティ!拷問だ!とにかく拷問に掛けろ!」

「Nooooo!あんまりだぁ~~!!」

 

 今日の教訓、やりすぎはいくない。色んな意味で。

***

 

 

 目が覚めたら、そこは海賊の本拠地でした。え?何コレ?

「おや?やっと目が覚めたのかい?」

「というか、何故にもう最終局面?」

「あん?アンタが気ぜ…眠っちまってた間に依頼を遂行しただけだよ?」

 あれ?俺いつのまに眠っちまったんだ?ユピテルが合流した後の記憶が不鮮明なんだけど?なんかあったような気がするんだが思い出せない。思い出せないって事はどうでもいい事なのかな?トスカ姐さんの方を見ても普段どおりだし…なんだろうこの感じ?うーむ。

 

 まぁいい。それはともかくとして現状確認だ。戦闘ログを確認したところ、俺が寝ている間に結構戦闘は進行し、待ち伏せ艦隊を撃破後に前進。エルメッツァ政府軍と遣り合っていた艦隊を背後から強襲し、政府軍と挟み撃ちする形で撃滅。その後、政府軍と共に敵本拠地へと乗り込み、現在周りの宙域を制圧しつつあるらしい。

 

 その戦果の立役者となったのは意外な事にユピテルだった。予想以上に秘密裏に建造したユピテルは強かったらしい。ログによれば無人艦という人材喪失の危険性がないメリットを最大限に用いた戦法をトスカ姐さんがやらせたようなのだ。

 

 その脅威の戦術とは!デフレクターとAPFSに頼って敵艦隊中央に吶喊させた!以上っ!

 いや単純に見えるが実際効果抜群だったようで、敵が総崩れになったそうな。残敵わずか、撃ち放題でウマウマだったんだそうな。ユピテルは正面から見るとドクロな形してるからなぁ。目玉のある部分に当たる空洞が戦闘時非常灯に切り替わるから赤く光るわけで…普通にそんなのが突っ込んできたら怖いわ。

 

 とにかくそんな感じで敵に突っ込ませた後、政府軍の連中と戦っていた海賊達を背後から強襲。同じくウマウマな状況になり、現在に至るっと。

「なんというゴリ押し。だがそれが良い」

 

 思わず、劇画調の顔つきに…。

 

「なんか言ったかい?ユーリ。それは置いといて、とりあえずスークリフブレード装備しな」

 え、なして?そう疑問に呟く前に、俺は尻を蹴られて自室に追いやられた。言われたとおり剣を携えて戻ってくると首根っこ引っつかまれて、昇降エアロックに連れて行かれる。おかしいな?艦長は俺なのに指揮を乗っ取られたような…。

 

 このままではいけないと自らの力で立ち上がろうとしたが、その前に昇降エアロックに放り込まれた俺は、そのまま何時の間にか強行接舷していた海賊本拠地の軌道ステーションに顔面から突っ込んだのだった。しかも顔を上げると敵前…おのれェ姐さん、絶対いつかヒィヒィいわせちゃる…、無理だろうけど、姉御肌だし。

***

 さて、なんか無理やり先陣を切らされて敵地に放り込まれた。流石にすぐ眼の前にバリケードがあって敵と目があったのには冷や汗かいたけど。奴さんらも突然放り出された俺を見てあっ気にとられてたから、すぐ物陰に隠れ、その間に俺の後から突入してきた保安部員達の戦闘をライブで見る羽目に…、身長低めで助かったぜい。

 

 ところで戦闘の方だが、俺達の方が押していた。軌道ステーションを守っていた敵は、お世辞にも強いとはいえなかったのだ。乗り込んだ保安部員たちの一斉射撃後、怯んだその隙に抜刀して突撃し、懐で切りまくられた事によりガタガタにされ、すぐに殲滅されてしまった。

 此方の死者ゼロ、負傷者は少数という予想を上回る戦果だが、その中でもトーロの動きが人一倍凄かった。重力5倍で鍛えたのは伊達じゃ無かったらしく、突撃した時に某無双シリーズみたいなことになっていた。何気に銃撃とか避けてたし、お前はどこの侍マスターだ?流星の剣でも持ってるんかい?と突っ込んだのは俺だけの秘密。

「バズーカ!バズーカ!グレネードも持ってけッス!!」

「「「うわぁぁぁぁぁ!!」」」

 もっとも、俺は俺でケセイヤから渡された武器を片手に暴れまわっていた。何故か放り込まれた事で少しタガが外れたらしく、逃げる奴は海賊だぁ!みたいにトリガーハッピーしていたのである。

 腰にはトスカ姐さんのスークリフブレード、そして両手に持つは連射式バズーカで武装し、隔壁だろうが敵のバリケードだろうが、一撃で破壊できる爽快感で突き進んだ。

「ふははは!この世の春が来たぁぁぁ!!」

 思わずハイになって洒落にならない御方を肖ってしまったが、MSがないので安心だ。とにかく俺は味方の先頭に立って撃ちまくっていた。そんな俺の背後は両手でアサルトライフルを保持し片手打ちで無双するトスカ姐さんが守ってくれていた。

 いや流石は女一人で仕事してきただけはある。普通にこの人つよかったお。

「戦うと元気になるなぁー!」

「ユーリ!あんまり周囲をベタベタにするんじゃないよ!」

 ちなみにバズーカの弾頭は障害物破壊の時以外は非殺傷のトリ餅弾だったりする、スプラッタは嫌ズラ。ブラスターもパラライズモードとかいう非殺傷モードがあるんだけど。俺はロマンを優先したぜ!バズーカは漢のロマンです。

 こうして海賊をある時は吹き飛ばし、ある時は地面に貼り付けて奥へ奥へと向かっていく。当然、0Gドッグとして忘れてはならない事を俺は別動隊に指示しておいた。俺の意図を買ったというか、もともとそのつもりだった仲間は別行動してすぐに連絡を入れてくる。

 

『艦長!ありましたぜ!お宝の山だ!』

「デカしたッス!ルーイン!!」

 別働隊を率いる仲間が無事に海賊の本拠地にあるお宝を奪取できたようだ。これらは元々は民間から海賊行為を働いて奴等が保管していたシロモノであるが、俺達が手伝う条件としてそういった戦利品は懐に入れて良いと約束していた。それを寄越せ…全部だ。

 本来は操艦を任せるはずのAIドロイドも手足があるという事で総動員し、エルメッツァ正規軍の陸戦隊ががんばっている間に人海戦術で運び出させ、モチロン俺達本隊もキチンと望まれていた仕事をこなした。なので遠慮なく頂いていくように指示し、俺は更に本拠地奥へとすすんだ。

 

 尚、お宝と言ったものの、実際は金銀財宝などでは無く大抵がレアメタルなどの鉱石だ。報告の中には軍の試作パーツとかも含まれてるっぽいから、サナダさん辺りが狂喜乱舞だろう。おそらくケセイヤも一緒になって騒ぐに違いない。連中マッドサイエンティストだからなぁ、まぁ俺達に害がなければ問題ない。

『くっそ!だれかセクター12にある武器庫に増援をよこしてくれ!反撃が激しい』

 俺達が0Gドッグの本分を十全に発揮していたその時、先行して進んでいたクルーから通信が入った。敵さんの武器庫近辺で反撃が強いらしく苦戦しているらしい。本拠地の完全制圧をするためには敵の司令官がいる所へ向かわなければならない。

 

 だが、途中の端末から入手した内部図によると、先に進む為のルートは武器庫を越えた先にある。その為、どうしてもここを通過せにゃならなかった。迂回できそうなルートがないからだ。

 

 しかし、いざ到着してみると、他のところよりもはるかに堅牢なバリケード…いやもはや陣と呼ぶべき形で海賊達は待ち受けていた。これでは撃ち合ったところで弾とエネルギーの無駄である。何とかしなければ…。

「ふん♪ふん♪ふふふ~ん♪」

 んで何かブチ壊しに良いのねぇかなぁ?と探していると俺はとてもいいモノを見つけてしまった。

「ウホ、いい軽装甲車っ」

 そこにあったのは軍用の装甲車である。外見は俺のいた時代のと殆ど変わらないが小回りの事を配慮したのか非常にコンパクトであり、武装はレーザー機銃タレット一門といったところ。

 エルメッツァの識別マークがあるあたり鹵獲品のひとつらしい。敵の武器庫にこんなのがあるという事は鹵獲品の置かれた倉庫区画から持ってきて防衛に使う気だったのだろう。実際イグニッションキーが刺さったままである。もっとも、こっちの侵攻が予想以上に早かったようで、この場所に置き去りにしたようだった。ちなみに倉庫区画は武器庫のすぐ隣。

「よし、爆弾しかけてアクセル全力全開ッス!!」

 いやぁオートクルーズは便利です。そう言う訳で、バリケード突破の為に軽装甲車を武器庫目指して走らせた。もともと敵の鹵獲品を更に鹵獲した品なので、此方の懐が全然痛まないのがいいね。最高だ。

 んで、無人の軽装甲車は敵に撃たれながらもオートクルーズでバリケードへと突撃していく。途中で装甲が破られたのか炎を拭きだしたが、エンジンが無事なのか速度は落ちる事がない。敵さんも慌てて武器庫から対戦車装備を持ちだしたが時既に遅く、軽装甲車は小爆発を起こしながら武器庫の中に突入!

 そして乗せといた爆弾が爆発し、それなりの大きな爆発が武器庫の中で巻き起こり、そこを護っていた海賊達ごと吹き飛ばしてしまったのであった。海賊が何人か爆風に巻き込まれて頭上を吹き飛ばされてたけど、気が付かない事にした。

「よくやった、軽装甲車。お前の事は3秒は忘れないッス」

「バカやってないでいくよユーリ」

「あれ?最近、俺に対する突っ込みが来なくなったッス。俺は寂しいッスよ?」

「ふっ、一々突っ込み入れたら疲れるからねぇ。放っておくのが一番さ」

「対処法を学習された!?スルーは逆になんか痛いッス!!」

 尚、俺達がこんな風に各所を制圧していたのと同時刻、エルメッツァ正規軍の連中は敵の動力部の制圧に向かっていた。何気にこの海賊の本拠地は人工衛星というかコロニーみたいなもんらしい。追い詰めた海賊が自棄になって動力炉暴走させて自爆とかされたら厄介なので一足先に、という事らしい。

 ま、お陰で邪魔されずにネコババ…もとい戦利品の確認が出来るというものだ。この海賊団は何気に趣味が良いらしく、強奪品の中にビンテージのお酒とかが入ってた。当然頂く、戦利品!戦利品!お前の物は俺の物、俺の物は俺の物。ジャイアニズム万歳だ。

『ユーリ!こちらトーロ!敵の親玉を発見したぜ!』

 ビンテージコスモワイン片手にウハウハやってたらトーロからの通信が入る。親玉を発見したらしい。俺としては仲間に丸投げというか任せて置きたかったが、人手が足りないから戦利品集めを一度中断させて行かないといけないらしい。仕方なく俺はトーロに了解と言って、敵の親玉の元に向かった。

…………………………………

…………………………

………………

 他の皆と合流した俺は、海賊団の親玉の居る部屋の前に来ていた。なんか皆で突入しようとしてるけど、俺はそれに待ったをかける。入った途端撃たれたらかなわんし、ココは室内戦闘におけるセオリーに従って無力化してからにしないといけない。皆これまでの戦闘で気が高ぶっていたが一応理性は残っているので、俺の声掛けを聞いて少し落ち着いてくれたのはありがたかった。

 そしてむやみやたらな突入を止めさせた俺は、ケセイヤさん特製、閃光音響手榴弾(非殺傷はーと)をおもむろに懐から取り出して、ちょっとだけ開けたドアの隙間から5個程投げ入れた後、すぐにドアを閉めた。

 直後、風船を割った時の音を千倍にしたような大きな破裂音がドアの向こうから響いた。炸裂した瞬間を見計らって、チキンな俺は無茶な突入をせずに、そうっと扉を開けて中を覗いた。手榴弾の炸裂で若干煙が漂っているので見にくいが、動く影が見えないあたり、どうやら無力化に成功したようだ。

 これまた慎重に部屋に踏み込んでみたが、思っていたよりもボスの居た部屋はそれ程広くは無かったらしい。精々が10畳くらいの部屋だろうか?逃げ場も殆ど無く、抜け道もまったくない。そんなところに投げ込まれた複数の閃光音響弾とか軽く死ねるレベルであろう。

 まぁ、兎に角そんな訳で、強烈な閃光とデカイ音のお陰で見事気絶した馬鹿を、こちらはほぼ無傷で捕獲する事が出来た。んで恒例の物色タイムである。予想通りボスの部屋には隠し金庫が複数発見され、そこから貴金属やマネーカード、そして何故かラム酒を発見した。海賊だからラム酒って感じなんだろうかね?

 

 こうしてエルメッツァ軍に依頼された海賊本拠地の制圧はこれで終了する事になった。後これは蛇足なのだが、ボスの部屋にてボスと共に気絶していたルードで出会った軍人さんも回収した。場所が場所だけに二重スパイであったのだろうと思われるが、発見時には意識も混濁しており、どうも原因が手榴弾だけではなさそうだったので、そのまま医務室に収容したのだった。

 

 ともあれ、海賊本拠地を襲撃した結果、結構な稼ぎになったのは言うまでもない。ローリスクハイリターンが一番いい。こっちは戦利品でウマウマである。後処理は政府軍に任せタ後、俺達は大量の戦利品と共に海賊の本拠地を後にした。

 

***

 ところで、今回の闘いでは戦利品だけでもウマウマだが、軍からの報酬も頂かんといけない。で一応頑張った手前、貰える物は頂いておかないと勿体無いってワケ。

 そんな訳でラッツィオ軍基地に来たんだが―――――

「はぁ?報酬は払えない?」

「ソレは正確では無いな。君たちに見合う報酬がココでは用意できないのだ」

 金がないとかふざけてんの?とか思ってにらみつけたのだが、オムス中佐は涼しい顔で俺の睨みつけを流すと、そうのたまった。約束が違うといいたいところだったが、考えてみればココは辺境の基地みたいなもん。だからしょうがないね。

「そう言う訳で、一度エルメッツァ中央にあるツィーズロンドに来てほしい。そこで報酬を渡そう」

「はぁ、了解です」

 どうやらお隣の宇宙島へいかなければならない様だ。元々次の目的地はエルメッツァ中央だったから、丁度良いっちゃ丁度良い。どちらにしろ本拠地を潰した以上、しばらくこの宇宙島で海賊狩りは出来なさそうだしな。

「まぁ後、私個人から頑張ってくれた君へと報酬を渡しておこう」

「いや、頑張ったのはクルーです」

「ふむ、確かに優秀なクルー達のお陰でもある。だがそれを指揮した君も素晴らしい。だから遠慮する必要はない!さぁ受け取りたまえ」

 彼の手から渡されたのは、ちいさなデータチップであった。何ぞコレ?

「君は若い、そして可能性がある。その可能性を引き出してもらいたいと私は思ったのでね。そのデータチップの中には艦隊指揮に付いての指南書みたいなモノが入っている」

「まぁ良いでしょう。ありがたく受け取っておきます」

 俺はデータチップを懐に納めた。

 

「それじゃ、次会う時はツィーズロンドで」

「ああ、また会おう」

 こうして俺は隊舎を後にした。長居してもしょうがないのだ。

 

***

 

 

 軍基地から戻ってようやく一息つけた。だけど、ただ休憩するというわけではなく、俺は艦隊を編成し直して、旗艦をアバリスからユピテルへと変更する事にした。アバリスもいいフネであるが、司令塔である旗艦をより強力なフネへと乗り換えるのは無限航路の醍醐味と言える。その為の引越しに追われたのである。というか折角新造したんだし、そっち使わなきゃ損損ってヤツだ。

 

 尚、艦隊編成であるが、これまでの旗艦であったアバリスは戦列艦として、敵の矢面にたつことになるがユピテルの前衛を任せることになった。ガトリングレーザー砲が近中距離で強力な火力なのでこういう編成となったのだ。コレに加え戦闘には参加しないが、駆逐艦クルクスが工作艦として追随するのはユピテル導入前と変わらない。

 またこれに伴い、それなりに色々とやることがあった。まずユピテルへのクルーの移動。やっぱり人手不足な我が艦隊、今回も人員の補給が間に合わなかった。俺としてはアバリスも愛着があるがユピテルも捨てがたく、十全に機能できるようにしてやりたいと考えた。

 なのでクルー達は現旗艦ユピテルに移乗させ、旧旗艦のアバリスは改装してコントロールユニットと直結させた無人艦として機能させる運びとなった。無人艦というがブリッジ周りはそのままであるし、人間さえいれば普通に有人艦として機能する。今は人がいないので人間代わりのAIドロイド任せとなるが、しばらくはしょうがないだろう。

 そして、すでに乗組員の一員ぽい感じになってきたアバリスのコントロールユニットの統合管理AI君を、そのコントロールユニットの基盤ごとユピテルに移動させた。コイツも今では立派なクルーの一員だし、AIアバリスの持つマトリクスは、もはやコピー出来ないくらい成長を遂げていたので、基盤ごとのお引っ越しとなったのである。

 ちなみに随伴艦となるアバリスとの混同を防ぐ為、新しい名前を艦内で募集する運びとなり現在審査中である。結果は後々伝えることにする。

 ソレと収容した軍人さんの引き渡しを行った。あの海賊の本拠地で収容したあの軍人さんは、トーロの幼馴染であるティータ嬢の兄のザッカスさんだった。情報はこのヒトから漏れていたらしい。医務室のサド先生の診察では、強力な麻薬とナノマシンで操られていたとの事。今は眠らせているが本格的な治療はこのフネでは出来ないので、軍の方で治療して貰う為に引き渡したのであった。

 そんな訳で、現在我がユピテルは軌道ステーションで足止め中。しかも本拠地で手に入れた軍の試作パーツの所為で、ウチのマッド2名が燃え上がっており、フネの改造を行っちゃってくれているので、出港には更に時間がかかると思われる。一体どんな風に改造するんだろうか?まさか、某異星人の技術を利用したフネみたく、フネがロボットに変形とかは無いよな?いや、アレもロマンですけど、今のフネだとちょっとキツイからなぁ。

 まぁそんなこんなで、みんなが頑張るので、おいらも書類の決算をがんばるのだ。だけど過労死は簡便なんで、今日もまた新しくなった旗艦の中を散歩しているのであった。

 

 

 ところで、重要な事なんだが……俺の部屋はどこだっけかな?

「おーい……えっと、ユピテル~!ヘルプ~!!」

【ハイ艦長】

 

 

――――別に新しくなったから迷った訳ではないと述べておく。艦長の威厳の為に。




一応、今回はここまで。

続きは以前投稿していた方にまだあります。

近日には此方に移転しますが…夏休みないからなぁ。俺の仕事。

それではノシ
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