これでも転生者でトレーナーで『弟』です。   作:白野蒼

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展開が亀のように鈍いです。
やっとサブマスまで辿り着きました。
次の話までがプロローグなイメージです。

今回も少しでも楽しんで頂ければ幸いです。


ライモン中央駅とギアステーション②

「ポケモン泥棒?」

 

「泥棒ちゅーか連れ去りちゅーか……。まあ、どちらにしろ泥棒には間違いあらへんな。人のものを取ったら泥棒やろ?」

 

トトメスさんの後を引き継いだクラウドさんの言葉に俺は眉根を寄せ腕の中のピチューを見下ろした。

 

「人のものを――。って事はもしかして、ピチューを?」

 

「おう、そもそもこのピチューな、二、三ヶ月ぐらい前からギアステーションに住み着き出したポケモンなんや。怪我なくてほんまよかったわ、すぐに助けれんくってすまんかったなピチュー」

 

「ピチュ、チュピ!」

 

俺の腕の中に視線を落としたクラウドさんがその小さな黄色い頭をぐりぐりと撫でればピチューが気にしないで、というように首をぶんぶんと振る。

そのまま撫でられた事が嬉ししかったのかクラウドさんに向かってピチュピチュと声をあげるピチューに小さく笑みが溢れる。

 

「よくなついてるんだ。でも、住み着いたって言ってもイッシュに野生のピチューは……。」

 

「ウン。ダカラ、オレ達モ最初ハパートナートハグレタポケモンジャナイカッテ、ポケモンセンターヤ関係機関二連絡シタンダ。モチロンカミツレサンニモ聞イテ見タヨ。ライモンシティデ電気タイプノポケモンッテ言ッタラ、彼女ダカラ。デモ、ソウイウ届ケハ何処ニモ出テナクテ、カミツレサン二モ心当タリガナイッテ言ワレテ。」

 

「それでどないしよかって言っとったんやけど、ピチュー自身がギアステをえらい気に入ったんか黒ボス白ボスや俺らになつきだしてな。それでどこから来たんか、どういう経緯で来たんかも分からんけど、保護って形で俺らで面倒見とるんや。それを、今日バトルサブウェイに挑戦しにきとったあいつがな。」

 

険の宿った瞳で男を見遣るクラウドさんの視線を追う形でトトメスさんに腕を引き上げられ立ち上がった男へ視線を向ける。

男の顔は床に叩き付けられた時にぶつけたんだのか額と鼻と唇が赤くなってはいたが、どうやら鼻血とか出すまでには至らなかったらしい。

 

かなり痛かったとは思うけど。

 

「ギアステーションでピチューを見た途端、モンスターボールを投げつけ、ピチューがそれをかわすとミルホッグの《くろいまなざし》を使い、ピチューを逃げれなくして連れ去ったんだ。」

 

「ソレヲ事情ヲ知ッテルバトルサブウェイノ常連サン達ガ見テテ、オレ達二知ラセテクレタンダ。ソレデ追イカケテタッテ訳。ツムギガ今日ライモン二帰ッテ来テクレテテ良カッタ。オ陰デ助カッタヨ。」

 

「ううん。少しでも役に立てたなら良かった。あのさ、ところで――」

 

「チクショウ!! 離せ!!」

 

ぽんぽんと頭を撫でてくるキャメロンさんに答えながら、ふと代わる代わるされた三人の説明に引っ掛かりを感じ、尋ねようとしたそれが男の怒声によってかき消された。

 

「大人しくして下さい。すみませんが、貴方はこのまま駅員室に我々と一緒に来てもらいます。よろしいですね?」

 

丁寧な口調でありながらも有無を言わせない強さで言い切り、男の腕を掴む手に力を込めたトトメスさんに男の顔が歪む。

 

「ってぇ、なぁ!! 何でだよ!! バトルサブウェイではポケモンを捕まえるのも許可がいるのかよ!! 野生のポケモンは捕まえたもん勝ちだろうが!!」

 

「……それこそヤグルマの森とか自然の中でポケモンと会った時はそれでいいけど、バトルサブウェイみたいな特殊な場所に野生のポケモンがいたら何らかの事情があるかもしれないからまず鉄道員さん達に聞くと思うんだけど……。」

 

「ワウ。」

 

あまりに身勝手な発言に呆れれば、隣に立つルカリオが俺に同意するように頷いた。

 

「それに……」

 

「――うるせぇ!!」

 

カッと怒りで顔を赤く染めた男の怒鳴り声が再び俺の言葉を掻き消した。

 

トトメスさんの腕を力づくで振り払った男がモンスターボールを取り出し、宙に放つ。

 

「出てこい!! ミルホッグ!!」

 

その怒りに満ちた声に反応するようにパカリ、と言う音がその場に響き、反射ベストを着ているかのような黄色い模様がある焦げ茶色の体に、一見リスのような顔。赤と黒と黄色で構成されている何よりも特徴的な瞳を持つポケモン――けいかいポケモン・ミルホッグが白い光と共に飛び出した。

 

「ミルホッグ!! やっちまえ! ≪どくどく≫!」

 

「ミルホッグ!」

 

「――なっ!?」

 

男の行動に全員の反応が一瞬遅れ、男に応えたミルホッグがトトメスさんに向かって≪どくどく≫を放つ。

 

「トトメスッ!」

 

「ワウッ!!」

 

その刹那、≪しんそく≫を発動させたルカリオがミルホッグとトトメスさんの間に飛び込んだ。

 

「ルカリオ!!」

 

「ピチュッ!!」

 

真っ正面から≪どくどく≫を受けたルカリオに俺とピチューの声が重なる。

 

次の瞬間、クラウドさんが俺の肩をぐいっと引き、キャメロンさんと共に一歩前へ踏み出した。

 

「クラウドさん、キャメロンさん!?」

 

二人の背に庇われるような体勢に思わず緑色の制服に包まれた背中に叫べば、二人が肩越しに振り返った。

 

「下がっとれ、ツムギ。絶対俺らより前に出るなや。ピチューの事、頼むで。」

 

「ソウソウ。モシツムギニ怪我デモサセタラ、オレ達ノ方ガ危ナイカラ。」

 

「っ、でも!!」

 

「……ソレニ」

 

さらに言い募ろうとすればキャメロンさんにパチンとウインクをされる。

 

「ルカリオナラ大丈夫、デショ?」

 

「――――うん。」

 

その言葉に小さく頷きトトメスさんとルカリオの方を見れば、≪どくどく≫を受けたにも関わらずケロリとしているルカリオがトトメスさんを背に庇い立っていた。

 

「すまない、ルカリオ。助かった。」

 

「ワウ。」

 

気にするなと告げるルカリオに男が驚愕で目をまん丸に見開く。

 

「なっ!? 何で……≪どくどく≫は直撃したはずだ!!」

 

「どうやら奴さんは知らんかったようやなあ。まあ、イッシュではルカリオは珍しいポケモンやからしゃーないわ。」

 

「オレ達モ、ツムギ以外デルカリオヲ連レテルトレーナーニハアマリ会ッタ事ナイモンネ。」

 

「ピチュ?」

 

男の焦燥に満ちた声に答えるクラウドさんとキャメロンさんにピチューもまた不思議そうに首を傾げている。

 

「ルカリオは、かくとうタイプとはがねタイプ、この二つのタイプを併せ持ってるポケモンなんだ。はがねタイプのポケモンにどくタイプのわざは効果が無効になる。つまり、ルカリオにどくタイプのわざは効かないんだよ。」

 

ピチューにそう説明し最後に男へと向き直れば、男の顔がさらに怒りで歪んでいく。

 

「さらに言えば、かくとうタイプのわざはノーマルタイプのミルホッグには効果抜群や。――まあ、それだけやないけどな。」

 

クラウドさんの声に応えるようにそれぞれの腰のホルダーからモンスターボールを取り出し、鉄道員三人が構えた。

 

瞬間ざわりと変わったその場の空気に思わず息を飲む。

 

「――全く、バトルサブウェイのトレイン内ならまだしも。ここはバトルフィールドでもなんでもないっちゅーんじゃ。」

 

「――人ニ≪どくどく≫ヲ使ウ事ニモ躊躇ナカッタシネ。コレハ、常習犯ト見テ間違イナイヨネ。」

 

「――これ以上わざを使われては厄介だ。一気に取り押さえる。」

 

ビリビリと感じるプレッシャーにやはりこの人達はあの(・・)バトルサブウェイの鉄道員なのだと実感する。

 

「……っ!! うるせえええええ!! ミルホッグ! もう一度≪どくど……」

 

すでに引っ込みがつかなくなっている男がやけっぱちに叫ぶ。

 

――コツ……ッ。

 

瞬間、聞き覚えのある靴音がすぐ後ろから聞こえ、そして。

 

「――シャンデラ、ミルホッグに≪サイコキネシス≫です!」

 

「シャッラアアア!!」

 

「ミッ……!!??」

 

後方から宙を滑るように飛び込んできた、左右の腕に二つずつ、頭部に大きなものを一つ、計五つの紫色の炎を灯したシャンデリアの形をしたポケモン――いなざいポケモン・シャンデラがミルホッグと対峙した瞬間に≪サイコキネシス≫を発動し、その動きを封じ込めた。

 

「…………シャンデラ。」

 

「……ピチュ。」

 

見覚えがあり過ぎるその綺麗な炎を灯すシャンデラを見上げ呟けば、ぽんっと両肩に温かい重みが加わった。

そのまま背中を反らせ上を見上げると、俺を覗き込むようにして見下ろした二対の温かな光を灯した星のような銀灰色の瞳と目が合った。

 

「――お久し振りで御座います。ツムギ。」

 

「――二ヶ月ぶりだね。久しぶり、ツムギ。」

 

低いけどよく通る落ち着いた声と、それより少し高い爽やかな声が俺の名前を呼ぶ。

 

「……ノボリさん、クダリさん。」

 

いつの間に来たのか。

そこには、ライモンシティの地下鉄の守護者であるサブウェイマスターの二人が立っていた。

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