ロクでなし魔術講師と死神の魔術師   作:灰ノ愚者

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皆さん、遅くなってすみません。

頑張って書きました。(_ _).。o○
読んでいただければありがたいです。



今回は自分なりに『ルミア』が見所です。



後、感想や評価もしくはお気に入りなど良ければ
よろしくお願いします。


魔術と魔術師の世界の意味

グレンの学院内における評判を地におとしめた

決闘騒動から三日が経った。

 

グレンの授業に対するやる気のなさは

相変わらずで、学院内の生徒達の評判は

すこぶる悪い。

 

だが、当のグレンはなんの負い目もないようだ。

のんべんだらりと日々をこなしていた。

 

 

(やっぱり……こうなったか…)

 

 

やがて生徒達はグレンの授業中に、自由に自習

をするようになる。元々学習意欲の高い者達

ばかりなので、グレンの授業で時間を無駄に

したくないのだ。

 

生徒達は皆、思い思いに魔術の教科書を広げ、

思い思いに勉強に励んでいる。

 

 

そんな生徒達の様子を見て、グレンも何一つ

文句は言わない。いつの間にかそれがグレンと

生徒達との間での暗黙の了解になっていた。

 

 

「はーい、授業始めまーす」

 

 

その日もグレンはいつものように大幅に授業に

遅刻してやって来た。そして、死んだ魚のような

目で、やる気のない授業を始める。

 

 

(いや…お前は授業すらしてないだろ⁉︎)

 

 

そんな中、生徒達はため息をついて、

教科書を開き、自習の準備に入る。

実にいつもの光景だが、

こんなやる気のない授業から、

まだ何かを学ぼうとする健気で

真面目な生徒がいたらしい。

 

 

「あ、あの……先生。 今の説明に対して質問が

あるんですけど……」

 

 

授業開始から三十分ほど経過した頃、

おずおずと手を上げる小柄な女学生がいた。

 

 

初日の授業でグレンに質問し、あっさり

あしらわれてしまった少女――リンだ。

 

 

「あー、なんだ? 言ってみ?」

 

 

「え、えっと……その……今、先生が触れた

呪文の訳がよくわからなくて……」

 

 

するとグレンは、面倒臭そうにため息をついて、

教卓の上に置いてあった本を一冊拾い上げた。

 

 

「これ、ルーン語辞書な」

 

 

「……え?」

 

 

「は?」

 

 

グレンがリンに対する態度があまりにも酷すぎる

為、ノワールも情け無い声を出していた。

 

 

「三級までのルーン語が音階順に並んでるぞ。

ちなみに音階順ってのは……」

 

 

グレンがルーン語辞書の引き方を解説し始めた時、

グレンに関してはもう無関心を決め込むつもり

だったシスティーナも流石に黙っていられなく

なり、立ち上がる。

 

 

「無駄よ、リン。

その男に何を聞いたって無駄だわ」

 

 

「あ、システィ」

 

 

質問をしたリンは、グレンとシスティーナに

挟まれて所在なさげにおろおろする。

 

 

「その男は魔術の崇高さを何一つ理解して

いないわ。むしろ馬鹿にしてる。そんな男に

教えてもらえることなんてない」

 

 

「で、でも……」

 

 

「大丈夫よ、私が教えてあげるから。一緒に

頑張りましょう? あんな男は放っておいて

いつか一緒に偉大なる魔術の深奥に至り

ましょう?」

 

 

システィーナがうろたえるリンを安心させる

ように、笑いかけたその時だ。

 

 

一体、何がその男の心の琴線に触れたのか。

 

 

 

「魔術って……そんなに偉大で崇高なもんかね?」

 

 

ぼそりと、グレンが誰へともなくこぼしていた。

 

 

それを聞き流せるシスティーナではない。

 

 

「ふん。 何を言うかと思えば。偉大で崇高な

ものに決まっているでしょう? もっとも、

貴方のような人には理解できないでしょうけど」

 

 

鼻で笑い、刺々しい物言いでばっさりと

システィーナは切り捨てた。

 

 

普段の怠惰で無気力なグレンならば、

「ふーん、そんなものかね?」などとぼやいて

この話は終ったはずだ。

 

 

だが――

 

 

「何が偉大でどこが崇高なんだ?」

 

 

その日はなぜか食い下がった。

 

 

「……え?」

 

 

想定外の反応にシスティーナも戸惑う。

 

 

(愚者…………)

 

 

「魔術ってのは何が偉大でどこが崇高なんだ?

それを聞いている」

 

 

 

「そ、それは……」

 

 

 

即答できない自分にシスティーナは苛立った。

確かに魔術は偉大だ崇高だとは周りを取り巻く

人間がそう連呼するから、そういうものだと

認識していた節もある。

 

 

 

「ほら。知ってるなら教えてくれ」

 

 

 

だが、決してそれだけでもない。呼吸を置いて

言葉をまとめ、自信をもって返答する。

 

 

「魔術はこの世界の真理を追究する学問よ」

 

 

「……ほう?」

 

 

「この世界の起源、この世界の構造、この世界

を支配する法則。魔術はそれらを解き明かし、

自分と世界がなんのために存在する のかという

永遠の疑問に答えを導き出し、そして、人がより

高次元の存在へと到る道を探す手段なの。

それは、言わば神に近づく行為。だからこそ、

魔術は偉大で崇高な物なのよ」

 

 

自分では改心の返答だとシスティーナは

思っていた。だから、返ってきたグレンの言葉は

不意討ちだった。

 

 

「……なんの役に立つんだ? それ」

 

 

「え?」

 

 

「いや、だから。世界の秘密を解き明かした所

でそれが一体なんの役に立つんだ?」

 

 

「だ、だから言っているでしょう⁉︎

より高次元の人間に近づくために……」

 

 

「より高次元の人間ってなんなんだよ? 

神様か?」

 

 

 

「……それは」

 

 

(何故だろう? 分からないが、今日に限って

かなりとてもなく嫌な予感がする……)

 

 

ノワールはそんな不安の中システィーナは

顔を真っ赤にして即答できない悔しさに打ち

震えていた。そんなシスティーナに、グレンは

つまらなさそうに追い討ちをかける。

 

 

「そもそも、魔術って人にどんな恩恵を

もたらすんだ? 例えば医術は病から人を救う

よな? 冶金技術は人に鉄をもたらした。

農耕技術がなけりゃ人は飢えて死んでいただろう

し、建築術のおかげで人は快適に暮らせる。

この世界で術と名付けられた物は大体人の役に立つ

が、魔術だけはなんの役にも立ってないのは

俺の気のせいか?」

 

 

グレンの言うことはある意味真実だ。

魔術を使うことができ、魔術の恩恵を受けられる

のは魔術師だけだ。魔術師でない者は魔術を

使えないし、魔術の恩恵は受けられない。

まるで当たり前のことだが、魔術が人の役に

立てない最大の理由だ。魔術は冶金技術や

農耕技術のように、その行使が直接的に広く

人の益となる性質の技術ではないのである。

 

そもそも、魔術は秘匿されるべきものだと

いう思想が、大多数の魔術師達の共通認識で

あり、魔術の研究成果が一般人に還元される

ことを頑として妨げている。

 

 

ゆえに今でも魔術は多くの人々にとっては不気味で

恐ろしい悪魔の力であり、普通に生きていく分には

見ることも触れることもない代物だ。

 

 

そう、事実として魔術は人々に直接役に立っている

とは言えない。魔術を一般人の俗物極まりない視点

で切り捨てた意見ではあるが、それは厳然たる事実

だった。

 

 

 

「魔術は……人の役に立つとか、立たないとか

そんな次元の低い話じゃないわ。人と世界の本当

の意味を探し求める……」

 

 

 

「でも、なんの役にも立たないなら実際、

ただの趣味だろ。苦にならない徒労、他者に

還元できない自己満足。魔術ってのは要するに

単なる娯楽の一種ってわけだ。違うか?」

 

 

システィーナは歯噛みするしかなかった。

どうしてこの程度の俗物的な意見すら切り返せない

のか。圧倒的に言い負かされてしまっているのか。

誇り高きフィーベル家の次期当主として、魔術に

全てを捧げてきたこれまでの人生を真っ向から否定

されているというのに、何をどうやってもこの

グレンという男の言を崩せそうにない。

 

 

一応、この男は一つの堅い事実の上に論陣を

張っているからだ。

 

 

あまりもの悔しさにシスティーナが顔を真っ赤

にして唇を震わせていると……

 

 

「悪かった、嘘だよ。

魔術は立派に人の役に立っているさ」

 

 

「……え?」

 

 

グレンの突然の意趣返しにシスティーナは

もちろん、固唾を呑んで二人の様子を見守って

いたクラスの生徒一同も目を丸くする。

 

 

 

だがノワールだけはグレンが今から生徒に

『言いたい事』、そして『やろうとしている事』

を一瞬で理解できた。

 

 

 

 

(あの馬鹿……まさか‼︎)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、魔術は凄ぇ役に立つさ…『人殺し』にな」

 

 

 

 

 

 

 

酷薄に細められたその暗い瞳、薄ら寒く歪め

られた口から紡がれたその言葉は、クラス中の

ノワール以外の生徒達は心胆から凍てつかせた。

 

 

その姿は……普段の怠惰なグレンとはまるで

別人のようだった。

 

 

 

「実際、魔術ほど人殺しに優れた術は他にない

んだぜ? 剣術が人を一人殺している間に魔術は

何十人も殺せる。戦術で統率された一個師団を

魔導士の一個小隊は戦術ごと焼き尽くす。ほら、

立派に役に立つだろ?」

 

 

「ふざけないでッ!」

 

 

流石に看過できなかった。魔術を無価値と

断じられるならまだしも、外道におとしめられる

のは我慢ならない。

 

 

「魔術はそんなんじゃない! 魔術は――」

 

 

「お前、この国の現状を見ろよ。魔導大国なんて

呼ばれちゃいるが、他国から見てそれはどういう

意味だ? 帝国宮廷魔導士団なんていう物騒な

連中に毎年、莫大な国家予算が突っ込まれている

のはなぜだ?」

 

 

「そ、それは――」

 

 

「お前の大好きな決闘に ルールができたのは

なんのためだ? お前らが手習う汎用の初等魔術

の多くがなぜか攻性系の魔術だった意味は

なんだ?」

 

 

「――それは」

 

 

「お前らの大好きな魔術が、二百年前の

『魔導大戦』、四十年前の『奉神戦争』で

一体、何をやらかした? 近年、この帝国で

外道魔術師達が魔術を使って起こす凶悪犯罪の

年間件数と、そのおぞましい内容を知ってるか?」

 

「――っ!」

 

 

「ほら、見ろ。今も昔も魔術と人殺しは切っても

切れない腐れ縁だ。なぜかって? 他でもない魔術

が人を殺すことで進化・発展してきたロクでもない

技術だからだ!」

 

 

 

(ここまで来ると……全く笑えないぞ…

それに子供相手に大人気ないぞ…愚者……

まぁ、お前が魔術をそんなにも憎む理由は

分からなくないが……)

 

 

 

ノワールの言う通り、流石にここまで来ると

グレンの言は極論だった。確かに魔術には人を

傷つける一面が数多く存在するが、決してそれだけ

ではないのだ。だが、普段すっとぼけた顔のグレン

が、この時だけは何かを憎むような形相でまくし

立てていた。その勢いに圧倒された生徒達は何一つ

反論できなかった。

 

 

 

(まあ、でも……愚者の言い分にも一理

あるか……)

 

 

 

グレンの言う通り魔術の歴史の中で魔術程

の人殺しに進化して発展し過ぎて他者から

恐れられる代物は他に無いからだ。更に

暗殺や戦争にまで魔術が用いられる始末だ。

 

 

 

(だがな……愚者よ……)

 

 

「まったく俺はお前らの気が知れねーよ。

こんな人殺し以外、なんの役にも立たん術を

せこせこ勉強するなんてな。こんな下らんこと

に人生費やすなら他にもっとマシな――」

 

 

 

 

ぱぁん、と乾いた音が響いた。歩み寄った

システィーナが、グレンの頬を掌で叩いた音だ。

 

 

 

「いっ……てめっ⁉︎」

 

 

 

グレンは非難めいた目でシスティーナを見て、

言葉を失った。

 

 

「違う……もの……魔術は……

そんなんじゃ……ない…もの……」

 

 

気付けば、システィーナはいつの間にか目元に

涙を浮かべ、泣いていた。

 

 

「なんで……そんなに……ひどいことばっかり

言うの……? 大嫌い、貴方なんか」

 

 

そう言い捨てて、システィーナは袖で涙を拭い

ながら荒々しく教室を出て行く。後に残された

のは圧倒的な気まずさと沈黙だった。

 

 

 

(幾ら何でもやり過ぎだ……しかし……)

 

 

 

「――ち」

 

 

グレンはガリガリと頭を かきながら舌打ちする。

 

 

「あー、なんかやる気出でねーから、

本日の授業は自習にするわ」

 

 

ため息をついてグレンは教室を後にした。

その日。グレンがそれ以降の授業に顔を出すこと

はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、静まりきった教室でノワールは

呆れながら無意識に笑っていた。

 

 

「ふっ……くだらない……あの二人は一体、

何やってんだか……」

 

 

「⁉︎」

 

 

ルミアはその言葉を聞いた瞬間、ルミアは

ノワールの今の行いを許せなかった。

 

 

「ノワール君、今の状態に『くだらない要素』は

全く一つもなかったと思うけど?それに先生と

システィの会話で笑う必要なんてなかったよね?」

 

 

 

ルミアも知らないうちに大きな声を出していた。

 

 

 

「あぁ〜 ごめん、ごめんだってさっきの話で

システィは変な意地張ってるし、グレン先生も

先生で大人気ないし、二人共かなり的はずれな

事を長々と言い合うだもん?」

 

 

 

「的はずれ…………?」

 

 

 

「うん、的はずれ。全くもっての的はずれだよ?」

 

 

 

「やれやれ、なにかと思えばシスティにしては

まだともかく一番の問題はグレン先生でしょ?

あれは魔術に対して かなりの以上なまでの

魔術嫌いだ。それに先生はこの世界の真理を

追究する学問の魔術を貶めてそして、それを

追究する僕達生徒や他の魔術師の全員を馬鹿に

して更に魔術を軽んじている男だよ?」

 

 

「俺もギイブルと同じ意見だ‼︎ システィーナが

言ってた通り魔術はこの世界の真理を追究する

素晴らしい学問だと思うぜ!だから、さっき

それを言ったシスティーナが的はずれな筈が

ねぇよ!」

 

 

ノワールの言葉に反応して反論したのは、眼鏡

を掛けた少年で本を片手に持っているガリ勉の

ギイブルといつも明るくて元気で前向きな少年

のカッシュだった。

 

 

 

「ギイブル君、カッシュ君………」

 

 

 

ルミアは今にも喧嘩が起こりそうな一触即発な

空気の中でとても不安そうな顔をしながら

ノワール達を見回していた。

 

 

「それは違うよ…全く…面倒くさい人達だな…」

 

 

ノワールはそう言うとノワールはクラス

全員を見て溜息をつきながら自分の考えを

淡々と冷静に機械のように話していく

 

 

 

「はあ……仕方ないなあ……さてと、

話しの議題は……『魔術』についてだよね?

じゃあ……そうだなぁ……まずは、みんなに

僕の考えを聞いてもらうとするね?」

 

 

 

「ふん、まぁ、せいぜい僕達の時間を無駄に

しないようにしなよ?」

 

 

 

 

「俺達にも、ちゃんと分かりやすく説明して

もらおうか?」

 

 

 

こうして、不安そうに見るルミアを見ながら

ノワールはギイブルとカッシュに自分の考え

を話していく

 

 

「確かにさっきのシスティの『魔術』の捉え方

と考えはとても正しいと思うよ」

 

 

「「「「「……は?」」」」」

 

 

ノワールが全員の前で言うとカッシュ以外の

クラスのみんなの頭の上には『?』が立っていた。

 

 

「なら、問題ないじゃねぇか?」

 

 

 

カッシュがノワールに頭を傾げながら

質問すると

 

 

「まぁ、それは僕の100%中の50%くらいの

答えかなぁ?」

 

 

「「「「なぁ…⁉︎」」」」

 

 

ノワールが答えるとクラスの全員が一斉に声を

上げて驚いた。

 

 

「じゃあ、ノワール君のあと半分の答えは

分かるの?」

 

 

「うん。まぁね……」

 

 

ノワールがルミアに返答を返してクラスの

みんなに視線を向けた。

 

 

 

 

「じゃあ、君のその50%の答えを聞かせて

もらおうじゃないか‼︎」

 

 

 

 

ギイブルはノワールに答えを聞くとノワールは

その50%の答えを答えた。

 

 

「残り50%の答えはさっきグレン先生が言ってた

魔術ほど人殺しに優れた術であり、人殺しに特化

した人の命を簡単に奪える代物と言う考えと

捉え方かな?」

 

 

「「「「なッ…⁉︎」」」」

 

 

 

ルミア以外の生徒は驚いた。同じ歳のノワール

がグレンと同じ事を考えているとは予想が

出来なかったのだ。

 

 

「ふざけないでくださいまし‼︎」

 

 

「何がかな? えーと、ウェンディさん?」

 

 

「魔術は人殺しの術だなんて違いますわ‼︎

魔術は万物の真理を追い求める崇拝で偉大な

由緒正しい聖なる学問でしてよ‼︎」

 

 

 

ノワールはウェンディの『崇拝で偉大な術』

もしくは『聖なる学問』と言う言葉を聞いて

徐々に苛立っていった。

 

 

(……そんなに素晴らしい物なら何でイルシア

が死んだんだよ……何も知らないくせに……)

 

 

 

そんな事を考えながらもノワールは顔に出さない

ようにある例えをギイブル、ウェンディ、カッシュ

に問い掛けた。

 

 

「じゃあ例を出そう。例えば君達の一番大事な

人間が外道魔術師に捕まってしまいその外道魔術師

を殺さないと君達の大事な人間を救えないという

立場だとしたら君達はどうする?」

 

 

 

「そ、それは……」

 

 

「あ、あぁ……」

 

 

「クッ……‼︎」

 

 

 

「答えろ……

 

ギイブル=ウイズダン

 

カッシュ=ウィンガー

 

ウェンディ=ナーブレス」

 

 

 

『それでも君達は魔術を使えるか? そして君達

の大切な人のために人を殺せるか?』

 

 

 

「「「「「………………」」」」」

 

 

 

(やっぱり、こいつ等……)

 

 

ノワールには分かっていたのだ。此処にいる

クラスの生徒は魔術の表しか知らず魔術の裏側、

つまり魔術の深き闇を知らないつまり表の人間

ばかりなのだ。だから現実を見ないでそんな

甘い理想に浸かることしか出来ない連中だ。

 

 

 

「確かに魔術はこの街では崇拝で偉大だと

言われたいるだが、その魔術も使い方や道を

間違ってしまえば人の命を奪ってしまう。

それは剣や銃と同じ様に人の命を奪えて

しまう代物だと言う事さ、あの凡庸魔術の

【ショック・ボルト】でも使い方を間違えれば

死ぬ事だってあるんだからさ?」

 

 

ノワールの正論な話しでクラスのみんなが

黙っている中で一人だけノワールの話しを真面目

に聞いている人物がいた。

 

 

(やっぱり、そうだと思ってた……

あいつも真剣に聞いてるなぁ……)

 

 

その相手は『ルミア』だった。彼女は昔、

外道魔術師達にあの月の夜に拐われそうに

なったあの事件があるからだろう魔術の深き

闇を知っている 彼女だからこそ彼女は真剣に

ノワールの言葉を誰よりも聞いているのだろう

 

 

「君達の考えが間違いだとは思わないよ?

確かにシスティの魔術の意見は正しいよ。

でもそれは裏を返せばグレン先生の魔術の意見

も正しいのも事実なんだよ? だからこそ魔術を

真に理解して僕達は魔術という強すぎる力を

誰かが間違って使って道を踏み外しまわない様

にする為にこれらも魔術を戒めなくてはいけないし

恐ろしさを忘れてはいけないんだ。」

 

 

 

ノワールがクラスの全員に自分の考えを伝えると

クラスのみんなはノワールの言葉を理解したのか

クラス全員は意見を出し合ったりして話していた。

 

 

(まあ、これで大丈夫だろう……)

 

 

とノワールが安心するとノワールの背後から

視線を感じた。だが、それは差別や偏見などの

視線ではなく尊敬の眼差しの視線であった。

 

 

( ッ ‼︎ この視線は……まさか…)

 

 

ノワールが背後を振り返るとルミアは目を

輝かせてまるで尻尾を振る甘え上手な子犬の

ようであった。

 

 

「あ、あの……ノワール君」

 

 

 

「ど、どうしたルミア?」

 

 

「さ、さっきはごめんね……ノワール君が

システィやグレン先生の事を考えていてくれた

のに私が自分勝手に早とちりして……私……

自分が恥ずかしいよ……」

 

 

ルミアは顔が赤面して真っ赤になった頬を手で

隠しながら今にも泣きそうな顔でノワールに

話していた。

 

 

 

「い、良いよルミア‼︎ 僕も言い方が悪かったし‼︎」

 

 

「で、でも……」

 

 

ルミアはノワールの言葉にどうやら納得出来ない

様だった。

 

 

「ルミアがそのままだと僕は自分自身を

責めなくちゃいけなくなるよ……?」

 

 

「そ、それは……」

 

 

「だから これでいいから、ね?」

 

 

「……うん‼︎ 分かった、ありがとう‼︎」

 

 

ルミアは顔を隠していた手を外して花が咲き

開いたかのような笑顔でノワールにお礼の言葉を

伝えた。

 

 

「良いよ‼︎ 良いよ‼︎ 僕は構わないから

それに、ルミアは笑顔が一番似合うから」

 

 

ノワールがルミアの頭を撫でるとルミアは

ノワールの言葉と頭撫でが恥ずかしいかった

みたいだった。でも、それと同時に嬉しかった

みたいだ

 

 

「あ、あぅぅ……あ、ありがとう」

 

 

 

「あ、あぁ …… ルミアが喜んでくれて

良かったよ」

 

 

ノワールはルミアにそう言い残しその後、

自分の席に座って居眠りを始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。黄昏の色が目に優しい。

その日の授業を全てボイコットしたグレンは

システィーナとの一件以来、ずっと学院東館の

屋上バルコニーにいた。何をするわけでもない。

ただ、ぼんやりと無作為に、その日一日を

つぶした。

 

 

「……向いてないのかね、やっぱ」

 

 

屋上を囲う鉄柵に脱力した身体をだらしなく

寄りかからせ、遠くをぼうっと眺めながら

グレンはそんなことをつぶやいた。

 

この五階建ての豪華な校舎の屋上から見渡せる

学院敷地内の光景は、昔とほとんど変わって

いない。複雑に絡み合う敷石の歩道、空中庭園、

古城のような別校舎、薬草農園、迷いの森、

古代遺跡、そして転送塔――人工物と自然が

入り乱れる不思議な光景。そして、空には

お決まりの、幻影の城。

 

 

「ま、向いているわけねーわな。魔術が大嫌い

なくせに魔術講師とかどんなギャグだ」

 

 

グレンはふと、着任以来やたら自分に絡んできた

あの銀髪の少女を思い出す。そう言えばまだ、

その少女の名前すら知らないことに今さら、

気づいた。

 

 

「ったく、あの白髪女め、思いっきり叩き

やがって……ったく、ホント初日から生意気な

奴だったな……」思えば十字路で衝突しかかった

のが出会いだったか。

 

 

「……なにが魔術は偉大だ、だよ。アホか」

 

 

たった十日間ほど見ていただけだが、あの銀髪

の少女が本当に魔術に真剣で、 魔術を極める

ために日々、 なんの迷いもなく切磋琢磨している

ことだけはわかった。

 

魔術の暗黒面や危険性には見て見ぬ振りをし、

魔術の華々しい側面だけに憧れ、世界真理など

と言う耳に心地良いことだけを追い求める……

子供だ。だが、あの少女が子供だと言うなら、

その子供に噛みついた自分はなんなのか。

 

 

「……ガキか、俺も」

 

 

ひょっとしたら、自分はあの銀髪の少女が

羨ましかったのかもしれない。魔術が素晴らしい

ものだとなんの疑いもなく信じ、それを極めること

に全ての情熱を捧げることができるあの少女が

羨ましかった――自分は何に対してもさっぱり

情熱を持てないがゆえに。

 

 

「やっぱ、俺、ここにいるべき

じゃねーな……」

 

 

正直、あの少女を前にして今後もあのような

ひどいことを言わない自信がなかった。グレンの

魔術嫌いは根が深く徹底的だからだ。

 

別に自分がどうなろうと構わないが、

目標を持って頑張る者を邪魔するのは

良くないことだ。それだけはわかる。

 

 

「セリカにゃ悪いが……」

 

 

グレンは懐に忍ばせておいた封書を取り出す。

その中身は辞表だ。恐らく魔術講師なんて自分

は一ヶ月ももたないだろうと思い、密かにした

ためておいたのだ。

 

今、ここにグレンはなんとしてもセリカのスネを

かじって生きていく決意をしたのだ。

 

 

「よし、帰ったら土下座の練習だ。一生懸命謝れば

きっとセリカも許してくれるさ……俺が無職の

引きこもりに戻ることをな!」

 

 

最低最悪な前向きさを胸に抱き、屋上を後に

しようと鉄柵から離れたその時だ。

 

 

「ん?」

 

 

この魔術学院校舎は本館の東西に東館と西館が

翼を広げるように、屈折して隣接する構造を

取っている。

 

今、東館の屋上にいるグレンは、西館が正面に

見下ろせる。

 

西館のとある窓のそばで影が動いたような

気がした。

 

 

「……なんだ?」

 

 

確かあの部屋は魔術実験室だ。流石にこんな時間

まで生徒が残っているはずはない。

 

 

「《彼方は此方へ・怜悧なる我が眼は・

万里を見晴るかす》」

 

 

グレンは右目を閉じて三節のルーンで遠見の魔術

――黒魔【アキュレイト・スコープ】の呪文を

唱えた。

 

その瞬間、まるで窓のすぐそばから実験室の中

をのぞき見ているような光景が、右目のまぶたの

裏に広がる。実験室の中には一人の少女の姿が

あった。

 

 

「あの金髪娘は……」

 

 

思い出した。件の銀髪少女にいつも子犬のように

ついて回るあの少女だ。

 

 

確か、銀髪の少女にはルミア、とか呼ばれて

いたか。

 

 

「何やってんだ? こんな時間に」

 

 

ルミアは教科書を開き、それを見ながら水銀で

床に円を描き、五芒星を描いた。

 

 

さらにルーン文字を五芒星の内外に書き連ね、

霊点に魔晶石などの触媒を配置していく。

 

 

どうやらルミアは一人で法陣の構築を実践して

いるらしかった。

 

 

「ほう? 流転の五芒……あれは……懐かしいな。

魔力円環陣か」

 

この法陣は特に何か起こるものではない。

法陣上を流れる魔力の流れを視覚的に理解する

ための、言わば学習用の魔術だ。これを何も見ずに

構築できるようになれば、まずは法陣構築術の基礎

を抑えたことになる。

 

 

「しっかし、下手くそだな……ほら、第七霊点が

綻んでるぞ?あーあ、水銀が流れちまってる……

って、おい、触媒の配置場所はそこじゃねー……

お、流石に気づいたか」

 

 

まるで昔、どこかで見たような失敗だ。

 

 

「そういやガキの頃、よくセリカと一緒に

遊びでやったっけな、あれ」

 

 

思えばあれが、グレンが初めて実践した一番魔術

らしい魔術だったか。特に何が起こるわけ

でもないチンケな魔術に、あの頃はなぜか胸が

躍ったのを覚えている。

 

グレンがのぞき見ているとは露知らず、ルミア

は試行錯誤の末、なんとか法陣を完成させ、呪文

を唱えた。だが、法陣は起動せず、ルミアは

不思議そうに首をかしげるばかりだ。

 

 

「ばーか。そんなんで上手くいくかよ」

 

 

ルミアは何度も教科書と床の法陣を見比べて

確認し、ちょこっと法陣の端を手直ししては呪文

を唱える。やっぱり上手くいかない。困った

ように肩を落とす。

 

 

「……アホくさ」

 

 

見てられなかった。グレンは遠見の魔術を解除

して、ため息をつき、屋上を後にする。

 

「ま、頑張りな、若人」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ノワールは自分の机の上で居眠りしていた。

 

 

「ふぁぁー…眠いなぁ〜って、もう夕方か……」

 

 

って言って教室を出て廊下を歩くと遠くにグレン

の姿が見えて着いていくと魔術実験室のグレンは

扉をばんっ!と外から乱暴に開けて入って行った。

 

 

 

「なっ‼︎ あの馬鹿⁉︎ やり過ぎ‼︎」

 

 

 

ノワールが魔術実験室に入っていくとグレンの

他にも人がいた。

 

 

それは護衛対象のルミアだった。

 

 

ルミアはグレンの突然の魔術実験室の扉を乱暴

に開けた音でルミアは思わず飛び上がった。

 

 

「ぐ、ぐ、グレン先生⁉︎」

 

 

「僕もいるよ?」

 

 

「の、ノワール君 ‼︎」

 

 

開かれた扉の向こうには、グレンが仏頂面で

突っ立ってノワールは無表情でルミアに手を振り

ながらグレンの隣に立っている。

 

 

「相変わらずボロいんだな、ここ」

 

 

「でも、グレン先生の服よりは全然、

汚くないですよ?」

 

 

「……なぁ、お前さっきからなんか俺に

何か恨みでもあんの?」

 

 

「さぁ?」

 

 

そう言いながらグレンは室内を見渡しながら

ぼやく。比較的広い間取りの部屋だ。壁の棚

には髑髏やらトカゲの瓶詰めやら結晶やら、

妖しげな魔術素材達が並んでいる。並ぶ机の

上には羊皮紙に描かれた魔法陣やフラスコ、

拗くれたサイフォンのようなガラス器具達。

奥には大きな魔力火炉や錬金釜までもがある。

 

この部屋の胡散臭さが昔とちっとも変わって

いないことを、グレンは懐かしく思った。

 

 

「ど、どうしてここに……?」

 

 

「そりゃこっちの台詞だ。生徒による魔術実験室

の個人使用は原則禁止のはずだろ?」

 

 

「まぁまぁ…グレン先生。固い事言わないで

くださいよ?」

 

 

「だけどさぁ〜それがこの学院では生徒による

魔術実験室の個人使用は原則禁止だからさぁ?」

 

 

言って自分でも白々しいとグレンは思った。辞表

を提出するために学院長室まで行こうとすれば、

必ずこの魔術実験室の前を通ることになる。

 

 

なんとなく気になって実験室の扉の隙間から中

を見れば、やっぱり実験が上手く行かず四苦八苦

しているルミアの姿があった。気づけばグレンは

扉を開いていた。

 

 

「ごっ、ごめんなさい! 実は私、法陣が苦手で

最近授業についていけなくて……でも、 今日は

いつも教えてくれるシスティがいないし……

どうしてもこの法陣を復習しておきたくて……

その……」

 

 

「忍び込んだわけか。てか、魔法錠がかかって

いたはずだろ。一体、どうやって」

 

 

「え、えへへ……ちょっと事務室に

忍び込んで……」

 

ぺろっと小さく舌を出して、ルミアは手に持った

鍵をかざして見せた。

 

 

「……見かけによらず意外とやんちゃなんだな、

お前」

 

 

グレンが呆れたように肩をすくめる。

 

 

「ごめんなさい、すぐに片付けます!

後でどんなお叱りでもお受けしますから!」

 

 

「僕からもお願いしますよ? グレン先生の

お力で何とかならないんですか?」

 

 

「はぁ? 無理に決まってるだろ?

俺は講師でも『非常勤講師』だぜ?」

 

 

 

「この講師は全く、つかえねーですね?」

 

 

 

「…お前、俺の事を舐めているだろ?」

 

 

「はい‼︎ もちろん‼︎ メッチャ舐めてます‼︎

当たり前じゃないですか‼︎」

 

 

ノワールは今までに無い清々しい

笑顔でグレンに自分の気持ちを伝えた。

 

 

 

「よし‼︎ お前絶対に泣かす‼︎」

 

 

 

グレンはノワールを見てかなりドス黒い顔を

して見ていた。

 

 

 

「グレン先生‼︎ すみません‼︎ 今すぐ片付けて

帰りますので本当にすみませんでした。」

 

 

 

慌てて後片付けをしようとするルミアの腕を

グレンがつかむ。

 

 

「先生?」

 

 

「いーよ。最後までやっちまいな。

もうほとんど完成してんじゃねーか。

崩すのはもったいねーだろ」

 

 

「で、でも……上手くいかなくて……

どの道もう諦める所だったんです……」

 

 

少し哀しそうにルミアは息をついた。

 

 

「どうしてなんだろう……前は上手く

いったのに……手順には問題ないはず

なのに……」

 

 

「馬鹿。水銀が足りてねーだけだ」

 

 

「え?」

 

 

グレンは床の法陣のかたわらに歩み寄り、

水銀の入っている壷をつかみ上げ、酌をするかの

ように片手で眼前に構える。目を細めて法陣を

凝視し、じわりと手に持った壷を傾ける。その手

には震え一つなく、やがて壷の口から水銀が糸の

ように法陣へと零れ落ちる。

 

 

不意にグレンが壷を持つ腕を素早く動かした。

機械のような正確さで、水銀の糸が法陣を構築

する各ラインをなぞっていく。そこになんの迷い

も淀みもない。

 

 

「……凄い」

 

 

「さすが‼︎ グレン先生‼︎ ただの屑ニートでは

ないですね‼︎ 非常勤でも、講師なだけは

ありますね‼︎」

 

 

その手際とグレンがノワールのこめかみに拳骨で

グリグリを見てルミアは目を丸くして息を呑んで

いた。

 

 

「誰が屑ニートだ? 誰が?」

 

 

「ごめんなさい‼︎ ごめんなさい‼︎ ごめんなさい‼︎

ごめんなさい‼︎ 僕が間違えていました‼︎

許してください‼︎グレン先生‼︎」

 

 

「全く……後さっきの話しだがちょっと

慣れた奴はよく素材ケチって魔力路を断線

させちまうんだよ」

 

 

グレンは壷を置くと、床に落ちていた手袋を左手

に嵌めた。床の水銀法陣に指をつけ、卓越した

手さばきで水銀を動かし、要所の綻びを修繕

していく。

 

 

「お前達は目に見えない物に対しては異様に

神経質になるくせに、目に見える物に対して

はなぜか疎かになる。魔術を必要以上に

神聖視している証拠だ……よし」

 

 

グレンは立ち上がり、左手に嵌めていた

手袋を投げ捨てた。

 

 

「もう一回、起動してみな。教科書の通り

五節だ。横着して省略すんなよ?」

 

 

「は、はい」

 

 

ルミアは再び法陣の前に立つ。深呼吸をして、

詠うように涼やかな声で呪文を唱えた。

 

 

「《廻れ・廻れ・原初の命よ・理の円環にて・

路を為せ》」

 

 

その瞬間、法陣が白熱し、視界を白一色に

染め上げた。

 

 

「――っ!」

 

 

やがて光が収まれば、鈴鳴りのような高音を

立てて駆動する法陣が視界に現れる。魔力が

通っているのだろう。法陣のラインを七色の光

が縦横無尽に走っていた。七つの光と輝く銀が

織り成す幻想光景。その姿は神秘的で――そして

何よりも単純に美しかった。

 

 

「うわぁ……綺麗……」

 

 

「……キレイだ」

 

ルミアはその光景を 感極まったようにじっと

見つめノワールはその光に見惚れていた。

 

 

「やーれやれ……そんなに感激するような

もんかね? コレ」

 

 

グレンは冷めた目で法陣を一瞥する。

 

 

「だって……今まで見た誰の法陣よりも魔力の

光が鮮やかで……それに繊細で力強い……

先生って凄い……」

 

 

「そうですよ‼︎ これ凄いです‼︎ グレン先生、

少し見直しました‼︎ 今までグレン先生の事を

駄目でアホな先生だと思っていましたが…」

 

 

「はっはっはっ‼︎ 馬鹿言え。この程度、

誰だってできる。そもそもこれを組んだのは、

ほとんどお前だ。お前が精製した素材や触媒の質

がよかったんだろ、きっと後、ノワール…お前は

一体、俺を何だと思っている? お前、覚えてい

ろよ……いつかぜってー泣かす」

 

 

「……先生?」

 

 

「か、勘弁してくださいよ?

グレン先生……お願いしますよ?」

 

 

ルミアは実験室をそそくさと出て行こうと

するグレンの 背中に気づいた。

 

 

「帰る」

 

 

「あっ……ちょ、ちょっと待って下さい!」

 

 

ルミアは慌ててグレンの後ろ袖をつかんで

引き止める。

 

 

「……なんだよ?」

 

 

「え? あ、……その……」

 

 

「ルミア…ルミア」

 

 

「ノワール君?」

 

 

引き止めてからどうしたものかと考えてルミアは

目を白黒させているとノワールはルミアの耳元で

小さな声でひそひそと話しをしていた。

 

 

「んで、あぁして、こうしてこうすれば良いと

思うよ?」

 

 

「あ、ありがとう‼︎ ノワール君‼︎ ええ〜と……

た、確か……先生、今からもう帰るんです

よね?」

 

 

「ん? ……まあな」

 

 

本当はこれから学院長室に辞表を 提出しに行く

はずだったが、今となってはなぜかそんな気分

じゃない。別に明日でもいいだろう。

 

 

「じゃあ、途中まで一緒に帰りませんか?」

 

 

「……はぁ?」

 

 

意外過ぎるルミアの申し出に、グレンは眉を

ひそめる。

 

 

「その……私、一度、先生とゆっくりお話し

たかったんです」

 

 

「やだ」

 

 

にべもなくグレンは切り捨てる。

 

 

「そう……ですか」

 

 

 

残念そうに、哀しそうにルミアは肩を落として

目を伏せた。その姿からは、なんとなく飼い主に

置いていかれた子犬の姿が被る。

 

 

 

「ぶー、ぶー グレン先生の意地悪‼︎

女の子を泣かせてる‼︎ 最低‼︎」

 

 

 

それを見たノワールはグレンに先程の仕返しに

かなりのブーイングをする。

 

 

 

「分かった…分かったから‼︎」

 

 

グレンは諦めてルミアとノワールに視線を

向ける。

 

 

 

「一緒に帰るのはごめんだが……」

 

 

 

どうにも調子狂うなと思いながら、グレンは

ボソリとつぶやいた。感覚としては可哀想な

捨て犬とイタズラ好きの黒猫を見て、後ろ髪を

引かれるような気分である。

 

 

 

「勝手について来る分には好きにしろよ」

 

 

「あ、……ありがとうございます、先生!

じゃあ、ちょっともったいないけど、急いで

片付けますから待ってて下さいね!」

 

 

ルミアは嬉しそうにふわりと笑って、急いで法陣

の後片付けを始めた。グレンはそんなルミアの

無邪気な様子を見てやれやれと肩をすくめている

とノワールがグレンを見ていた。

 

 

「ん?、何だよ?」

 

 

 

「……グレン先生は優しいね」

 

 

 

「 ふん、そんなんじゃねぇよ……」

 

 

 

「いや、本当に先生が思っている程以上に

それは凄い事なんだよ……」

 

 

 

ノワールは一瞬だけであったが、グレンの顔を

見て少し寂しそうな顔をしながら小声で呟いて

いた。

 

 

 

 

そんな中、ノワールとグレンが話していると

ルミアが来て魔術実験室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ、先生、あれ見て下さい!」

 

 

学院を出て、フェジテの表通りにさしかかった

三人の視界に飛び込んで来たのは、空に浮かぶ

幻の城だ。延々と緩やかな下り坂の先へと続く

大通りは空に視界が開けており、彼方に浮かぶ

天空の城の全容を仰望できる。夕暮れ時、緋色に

美しく染まる天蓋が、その荘厳なる城を黄金色に

燃え上がらせ、その偉容をより一層映えさせている

ようだった。

 

 

「私の友人にあの城が大好きな子がいて、

私はその子みたいに城の謎解きには興味ない

んですが……あんなに綺麗で雄大な姿を見て

しまうと……そうですね、私も一度はあの城に

行ってみたいって 思ってしまいます」

 

 

「……そうか?」

 

 

やや頬を上気させて空を仰ぐルミアとは裏腹に、

グレンの反応は冷め切っていた。

 

 

「あんな城があるから魔術に勘違いするバカが

出てくるんだ。まったく、鬱陶しいったら

ありゃしない」

 

 

「先生?」

 

 

その言い草は誰かを非難していると言うより

むしろ、どこか自嘲のような響きがあった。

 

 

「ほら、よそ見してないで行くぞ」

 

 

「あ、はい……」

 

 

「ルミア、グレン先生が冷たい」

 

 

「の、ノワール君‼︎ ぐ、グレン先生にそんな

事を言ったら……」

 

 

ルミアがノワールを慌てて止めるも時すでに

遅しだった。

 

 

「テメェ………」

 

 

「ひぃ‼︎ 拳骨でグリグリだけは勘弁して

ください‼︎お願いします‼︎グレン先生何卒

お慈悲を‼︎」

 

 

「……フン、まぁ良いさ」

 

 

するとグレンが歩き出す。ルミアとノワールが

慌ててそれについて行く。

 

 

フェジテの町の表通りを、グレンとルミアと

ノワールの三人が一緒に歩いていく。

 

 

一緒に、とは言っても、グレンが大股で無遠慮に

ずかずか歩くのに対し、ルミアが早足で必死に

ついていくという構図だったが。

 

 

今は夕方なので、昼間ほどではないが、表通り

にはそれなりに人が行き交いしている。

 

 

ルミアとノワールがついて来ていることなど

すっかり忘れ、グレンが人を避けることに専念

していると。

 

 

「先生って……本当は魔術がお好きなんです

よね?」

 

 

隣に並んだルミアが不意に、そんなことを

言った。

 

 

「どうしてそう思う?」

 

 

「いえ、その……先生が私の法陣を手直しして

くれていた時……先生、凄く楽しそうだった

から」

 

 

グレンは思わず口元を押さえて言葉に詰まった。

楽しそう? 自分は楽しそうな顔をしていたのか?

魔術を実践して?

 

 

「ははっ……ねーよ」

 

 

グレンは笑い飛ばした。

 

 

「もうわかっちゃいるとは思うが俺は魔術が

大嫌いなんだ。楽しいだなんて、ありえん」

 

 

「ふふ、そうですか」

 

 

だが、ルミアは訳知り顔で微笑むだけだ。

まるで自分の内を見透かされているようで、

なんとなくグレンは面白くない。

 

 

「でも……もし、先生が本当に魔術をお嫌い

だったとしても、今日の言い方はちょっと

ひどいですよ? システィ……システィーナ、

泣いていましたし」

 

 

あの銀髪の少女の名前はシスティーナ

だったらしい。

 

 

「明日、謝ってあげて下さいね? システィに

とって魔術は、今は亡きお爺様との絆を感じて

いられる大切なものなんです。偉大な魔術師

だったお爺様をシスティは大好きで、ずっと

尊敬していて……いつかお爺様に負けない立派な

魔術師になる……それが亡くなったお爺様との

約束なんです」

 

 

「……そうか。 そりゃ流石に悪いことをしたな」

 

 

自分の尊敬している人を間接的にとは言え、

無価値で下らない物におとしめられたら、

誰だって怒るだろう。

 

 

「それは置いといて、なんだ? 

お前は俺に説教するために誘ったのか?」

 

 

「あ、いえ……それもありますけど、

そうじゃなくて……」

 

 

言葉をまとめるようにルミアはしばらく

沈黙する。

 

 

「あの……聞いてもいいですか?」

 

 

「内容による」

 

 

「全く、グレン先生も相変わらずケチケチして

ますね?そんなんだから学生時代やその歳に

なっても女の人に全く、モテなかったのでは?」

 

 

 

 

ノワールはくっくっとグレンを見て笑っていると

ノワールは少し顔色が真っ青になっていた。

 

 

 

「………お前、しばくぞ……」

 

 

 

「え⁉︎ え──と……」

 

 

 

グレンの目がとてつもなく怒っていた。

さすがに、これはまずかったみたいだ。

 

 

「ええと……この学院の講師になる前は……

グレン先生って何をされてたんですか?」

 

 

(ナイスフォロー‼︎ ルミア‼︎)

 

 

言葉に詰まったように、グレンは一呼吸

置いてから堂々と胸を張って言った。

 

 

 

「引きこもりの穀潰しをやってました」

 

 

「え? 引きこもり? 穀潰し?」

 

 

「穀潰し? …… 引きこもり?」

 

 

 

「学院にセリカって言う偉そうな女が幅を

きかせてるだろ? ガキの頃、そいつには

お袋代わりに世話になってたんだけど、

そのよしみで今までずっとそいつに養って

もらってたんだ。ふっ、凄いだろ?」

 

 

「あ、あはは……なんでそんなに得意げ

なんだろう……?」

 

 

「……それってニートで駄目人間の

思考と発想じゃあないんですか?」

 

 

「おい‼︎ お前やっぱり俺をかなり馬鹿に

して下に見てるだろ⁉︎」

 

 

 

「何を今更…?」

 

 

 

「あははは……」

 

 

 

ルミアは苦笑いをするしかない。

 

 

 

「でも、それ嘘ですよね?」

 

 

 

どうしてそんなに自信を持って断言するのか、

グレンは戸惑いを隠せない。

 

 

「嘘じゃねーよ。この俺がマトモに働くような

殊勝な人間に見えるか?この一年はセリカの

スネを齧りまくりだったんだぞ?」

 

 

 

「うわぁ……屑の鏡だ……」

 

 

 

「うるせぇ‼︎ やっぱりテメェ泣かす‼︎

今、ここで、講習の人前で‼︎」

 

 

 

「あ、あの……一年……それよりも前は?」

 

 

「……あー、悪ぃ、カッコつけ過ぎた。

あの学院を卒業して以来ずっと、だ。

どうも働くってのが性に合わなくてなー、

本当の自分探しをしてたっつーか……」

 

 

どうにも納得いかなそうにルミアはグレンを

見つめている。

 

 

「あー、俺の黒歴史を掘り返すのは終わりだ、

終わり! 今度は俺が聞くぞ!」

 

 

 

この話は蒸し返されたくないので、グレンは強引

に話題を変えた。別にこのルミアとか言う小娘に

など興味の欠片もないが、背に腹は変えられない。

 

 

「お前らってさ。

なんでそんなに魔術に必死なの? 

システィーナって奴と言い、お前と言い、

魔術ごときにマジになり過ぎだろ?」

 

 

「それは……」

 

 

「今日、話したがな。魔術って本当にロクでも

ない術なんだぞ? 別になくても困らないし、

あればあったでロクなことにならん。

何を好き好んでこんなもんやってんだ?」

 

 

話題を変えるために何気なく問いかけたこと

だが、ルミアという少女は思いの他、グレンの

問いを真摯に受け止めたらしい。しばしの時を、

考え込むようにうつむいた。

 

 

「他の人達が何を思って魔術の勉強に励んでいる

かはわかりませんけど……私は魔術を勉強する

理由があります」

 

 

「ふうん、アレか? 世界の真理探究とか、

人間の進化とやらか?」

 

 

「あはは、違いますよ。 そんな高尚なこと、

私にはとても無理ですから」

 

 

「……ほう?」

 

 

(…愚者……?)

 

 

グレンは初めて、ほんの少しだけ、このルミア

という少女に興味が沸いた。

 

 

「じゃあ、なぜ、魔術を志す?」

 

 

「そうですね……私は魔術を真の意味で人の力

にしたいと考えています。そのために今は魔術を

深く知りたい」

 

 

グレンはその言葉を自分の魔術否定に

対する遠回しな批判と受け止めた。

 

 

「やれやれ、力は使う人次第ってありきたりな

理屈か? 剣が人を殺すんじゃない、人が人を

殺すんだってか?」

 

 

「…………」

 

 

「はい。でも……私はもう少し違うことも考えて

います」

 

 

「?」

 

 

「今日、先生が仰ったとおり、人を傷つける

可能性を大いに秘めた魔術なんて、きっとない方

がいいんです。なければ少なくとも魔術で 傷つけ

られる人はいなくなるから。でも、現実として

魔術はすでに()()んです」

 

 

「……まぁな」

 

 

「それがすでに()()以上、それが()()ことを

願うのは現実的ではありません。なら、私達は

考えないといけないんです。どうしたら魔術が

人に害を与えないようにするか」

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

「でも、魔術のことをよく知らなければ、

それを考えることなんて到底できません。

知らなければ魔術はどこまでも ただの得体の

知れない悪魔の妖術で、人殺しの道具で、

法も道もない外法なんです」

 

 

「要するに……盲目のままに魔術を忌避する

より、知性をもって正しく魔術を制する、と? 

全ての魔術師がそうなるように働きかける、と?」

 

 

「はい。私みたいな凡才にそれができるか

どうかわかりませんが……」

 

 

「お前、魔導省の官僚……魔導保安官にでも

なる気か?」

 

 

「ふふ、そうですね。それが私の目指す道に

通じるなら……それが今の私の目標です」

 

 

 

グレンは能天気な少女に深くため息をつきながら

諭す。

 

 

「言っておくが徒労に終るぞ? いや、努力すりゃ

官僚くらいにはなれるかもしれん。だが、お前の

目指している物はあまりにも高過ぎる。お前一人

がどうこうできるほど、魔術の闇は浅くない」

 

 

 

「わかってます。それでも……です」

 

 

「なんでだよ? なんでそんな報われない道を

あえて行くんだ?」

 

 

 

(愚者……)

 

 

ノワールは分かっていた。グレンが、かつて

自分が歩んで失敗して叶えられなかった夢の

『正義の魔法使い』の道を彼女、ルミアが

自ら自分と同じ道を歩もうとしている事を。

 

 

そしてグレンは知っている。魔術の血みどろ

の世界と自分の限界を痛いほど思い知らされた。

この魔術の世界がどれだけ醜いのかそしてこの

魔術の世界にかつて夢見た『正義の魔法使い』

などはいないとあの時、グレンはその残酷な真実

を知って絶望したのだ。だからグレンはあの時

から本当の『正義』や『魔術』や『魔術師』の

意味が分からなくなった。だから幼い頃の夢の

『正義の魔法使い』を 諦め、そして魔術師を

やめた。

 

 

それを知っているし、理解しているノワール

だからこそ、自分でも痛感する。

 

 

もしあの時、自分がイルシアを最後まで、

守れていたならば……ともしかしたらイルシア

は自分を恨んでいるかもしれないと今でもそう

考える。

 

 

自分はこんな暖かい世界にいる資格は無い

化物であり獣であり死神に成り果てた魔術師

だからだ。

 

 

すると、ルミアはなぜかグレンに優しく微笑み

かけ、それから何かを懐かしむように遠くを見た。

 

 

「私……恩返ししたい人達がいるんです」

 

 

「恩返し? なんなんだそりゃ?」

 

 

「………」

 

 

「あれは今から三年くらい前の話です。

私が家の都合で追放されて、システィの家に

居候し始めた頃。私、悪い魔術師達に捕まって

殺されそうになってしまったことがあって……」

 

 

「見かけによらず、なかなかハードな人生送って

んだな。てか、家の都合で追放って……お前

って、ひょっとして、どっかの有力貴族か

なんかの生まれ?」

 

 

「あ、いえいえ! そんな大層な家じゃないです!

ホント! 貧乏でした! 貧乏!」

 

 

(ルミア…そこまで貧乏を強調しなくても……)

 

 

ルミアが慌てたように手を振って否定する。

だが、貧乏人が生活に困って子供を捨てるのは

普通、『追放』とは言わないだろう。

 

 

「待てよ……ていうか、お前……」

 

 

ふと、何を思ったのか。グレンが不意にルミア

の顔をのぞき込んだ。目を細め、遠くを透かし

見るかのような表情だ。

 

 

「……先生? どうかしましたか?」

 

 

するとルミアは、何かに期待するような

表情で、グレンを見つめ返す。だが。

 

 

「うんにゃ、なんでもない。……で?

話の続きは?」

 

 

ありえん、とでも言いたげにグレンが頭を

振って、ルミアに話の続きを促す。すると

ほんの少し残念そうにルミアは息をつくと、

話の続きを始めた。

 

 

「あの時の私、前の家を追放されたことも

あって不安定で……どうして私ばっかりこんな

目にって、怯えて震えて泣いて、もうだめだと

諦めて……でも、そんな時、どこからともなく

現れた別の魔術師達があわやと言うところで

私を助けてくれたんです」

 

(それって……まさか⁉︎)

 

 

「なんだそりゃ。そいつ等、絶対、タイミング

狙ってんだろ。ったく格好つけやがって」

 

 

「その時の私は、私を守るために悪い魔術師達

をためらいなく殺害していくその人達がとても

恐ろしかった。あの人達も悪い魔術師を殺す

ことが自分達の仕事だって言ってました。でも、

あの人達は人を殺めるたびに凄く辛そうな顔を

していて……それでも私を守るために最後まで

戦ってくれて。なのに、あの時の私は怖くて

その人達にお礼すら言えなくて……」

 

 

(僕の事を覚えていたのか……? あんな……

おぞましい記憶を? 死神に成り果てた魔術師

の事を……?ルミア、何でだ……?)

 

 

「ふーん」

 

 

「あの人達と過ごした時間はほんのわずか

でしたけど……あの人達は本当に優しい人達

だったんだと思います。だから自分の心を痛め

ながら、自分以外の誰かを守るために戦っていた。

あんな風に道を外してしまった悪い魔術師達さえ

いなければ……あの人達は、私のためにあんなに

悲しい顔をしないで済んだはずなのに……」

 

 

「ふーん」

 

 

「…………」

 

 

「私はあの人達に命を救われました。

あの事件の後、今度は私があの人達を助ける番

だと思いました。人が魔術で道を踏み外したり

しないように導いて行ける立場になろうって。

そのために魔術のことをよく知ろうって。

そんな道を歩んでいけば……いつかあの人達に、

あの時のお礼が言える日が来るんじゃない

かって。 暗闇の中、ただ一人きりで泣いていた

幼い頃の私に光をくれた……あの人達に」

 

 

そこまで聞いて、グレンは肩を震わせて

含み笑いを始めた。

 

 

「くっくっく……ご都合展開過ぎだ、それ。

そんな三文大衆小説もびっくりな超展開、

ベタ過ぎて売れないぞ、きっと」

 

 

(いや…お前は他人のように言ってるが

それは100%確実に『お前』の事だからな?)

 

 

 

「ふふ、そうかも。でも、事実は小説よりも

奇なりって言いますし」

 

 

真摯な想いを無神経に笑い飛ばされたと

言うのに、ルミアは穏やかに笑うだけだ。

 

 

「ははっ、ねーよ」

 

 

それきり、特に会話はなかった。相も変わらず

自分のペースでずかずかと歩くグレンに、

なぜか機嫌の良いルミアがちょこちょこと

子犬のようについていき、ノワールは後ろから

黒猫みたいに気まぐれに二人を見守る。そんな

構図を保ちながら、三人は三人が初めて顔を

合わせた例の十字路まで辿り着いた。

 

 

「あ、先生。私、こっちです。

システィのお屋敷に下宿しているので」

 

 

 

「僕も家がこっちなので失礼します。」

 

 

 

「そうかい。 じゃあな、気をつけて帰りな」

 

 

「大丈夫ですよ? もう近いですから」

 

 

 

「そうですよグレン先生?」

 

 

 

「そうか。だが、万が一ってこともある。

一応、気をつけな」

 

 

「ふふ、先生って意外と心配性なんですね?」

 

 

 

「全く、先生は過保護なんだから〜?

グレン先生……まさかルミアの事‼︎」

 

 

 

「馬鹿。それだけお前等が危なっかしいっつー

コトだお前、変な想像するなよ?」

 

 

 

「あはは、気をつけます。それじゃ先生、また、

明日!」

 

 

 

「分かりましたよじゃあグレン先生また

明日です。」

 

 

「……ん」

 

 

 

グレンは次第に小さくなっていくルミアと

ノワールの背中を、なんとなく眺めていた。

 

 

特にルミアは途中何度も振り返って、グレン

の姿を見つけては嬉しそうに手を振っていた。

 

 

「……子犬か、あいつは」

 

 

何気なくこぼれた言葉だが、それはなんとなく

的を射ている気がした。

 

ルミアが子犬なら、システィーナとかいう少女は

白猫かね、あぁ、なるほど、つんとお高くすまし

ている様などぴったりだ……なら、ノワールは

黒猫か? いつも気まぐれで偶に人をからかう

黒猫だな……などと益体もないことをつい考えて

しまう。

 

 

 

「しかしまぁ……ぼ~っとしているようで

色々考えてるんだな、あいつ等……」

 

 

 

グレンは先ほど、ルミアが言っていたことを

胸中で反芻した。

 

 

 

「…『考えないといけない』……か……」

 

 

そして、グレンは懐から辞表を取り出し、

それを空に掲げ、中身を透かすように眺めた。

 

 

「さぁて……どうしたものかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルミアとノワールが歩いているとルミアは

ノワールを見つめていた。

 

 

 

「……ルミアさん? 何で僕の顔をじぃーと、

見つめているんですか?」

 

 

 

「あ、あぁ……ごめんね? 何でもないよ?」

 

 

 

ルミアは何故か動揺してそわそわしていた。

 

 

(ルミア、どうしたんだろう?)

 

 

「ルミア、言いたい事あるなら

はっきりと言ってくれ?」

 

 

「ノワール君……分かった……」

 

 

 

すると、ルミアは何かを決意したのかルミアは

『ある疑問』をノワールに聞いてきた。

 

 

 

 

『ノワール君……君は一体…何者なの?』

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

その日、真っ赤な夕日が誰もいない街を真っ赤に

ノワール達を染め上げていく中、ルミアは

ノワールが予想もしない言葉を発していた。

 

 

 

その日、その時を境に一瞬だけ僕等の時間が

止まった。

 

 




やっと、書き上げて落ち着きました。


今後の『ルミア』と『ノワール』の展開が
どうなるか……?


更に今から『FGO』の新章の『アガルタの女』
が近いうちに来るから準備しておかなきゃ
ヤバイ‼︎ ヤバイ‼︎ヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3


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