新しい章に入って行きます‼︎
【レン様】そして『応援してくださる皆様方』
期待していただき本当にありがとうございます‼︎
皆さまの応援のお陰で続けることが出来ます‼︎
【UP】『46.451』、【しおり】『86人』
【評価】『12人』、【感想】『14』
【お気に入り】『384』になりしました‼︎
本当にありがとうございます‼︎
期待してもらえる程のお話の内容に出来たかは
分からないですが頑張って書かせて頂きました。
『評価』や『しおり』更に『感想』などの応援を
してもらえたならありがたいです‼︎
【注意】
『グロい内容』や『暴力で重過ぎる演出』などが
沢山あります。怖いのやそういう系が無理な人は
あまりお勧めはいたしません。それでも見る人は
しっかり責任をもって見て下さい。
白銀の悪夢と消えない罪過
「………こ、ここは…?」
ノワールは辺りを見渡すと見たことのある
場所にかなり酷使していた。
「こ、此処は…まさか‼︎」
嘘だ…嘘だ‼︎嘘だ‼︎ 何故、夢だとしても
今になってこの場所に立っているんだ⁉︎
信じたくなかった。
ノワールにとっては忘れたくて心の奥底に
こびりついて絶対に忘れられなくて心が悴んで
今にも凍えてしまいそうな外の白銀の世界の
猛吹雪に実験施設の室内は大量の人の屍が
転がっていて10体20体などの数ではなく何万人、
数万人の数え切れない程のいろんな屍があっち
こっちに転がっていてた。
更には鼻に付く異臭やこびりついた赤黒くて
大量の生暖かい濃い血の跡があらゆる場所に
付着していて普通の人間なら気持ち悪くなって
吐き気を抑えきれない程のおびただし程のまさに、
地獄と呼ぶに相応しい地獄絵図だった。
「な、なんで…なんで今頃になって…?」
ノワールは顔を青ざめて一歩、また一歩と後ろに
下がろうとすると…
「ねぇ…何処に行くの…?ノワール?」
「ひぃ‼︎」
それはまるで逃げることを許さないと言うように
ノワールは何者かに足を掴まれ更には聞き覚えの
ある声が聞こえてきてノワールは身体をビクリと
させて震えながらも下を恐る恐ると向いて見ると
「い、イルシア…?」
ノワールの足元には血塗れで忘れてはいけない
ある人物、『イルシア』が目の前で倒れてノワール
の足を掴んで死んだ魚のような虚ろな瞳で口元から
一筋の血が流れて腹部にはあの時イルシアを死に
至らしめたあの忌むべきナイフがとても痛々しい
ぐらい深々と刺さったままでドロドロと大量の血を
流してとても悲しそうで苦しそうな苦痛の表情を
浮かべてノワールを見ていた。
「ねぇ…? 何であの時、助けてくれなかったの?
私達があんなに苦しくて痛い思いしていたのに
どうして気づいてくれなかったの…?」
「あ…あ………」
イルシアがノワールに聞くが今のノワールには
夢だと分かっているが衝撃的だったのか身体は
まるで石のように全く動けず顔を真っ青になって
イルシアの言葉はノワールの耳には全くもって
入って来なかった。
「どうして…どうして私と兄さんを置いて
逃げたの…?」
「ぼ、僕は………」
ノワールが必死になってイルシアに答えようと
するが声が言葉が出て来ない。
『それとも…私達の命より…そんなに…自分の命
が大事だった?そんなに血塗れの姿になってまで
醜く生き残りたかったの…?』
イルシアがノワールにそう言うとノワール自分の
身体の全身や足元を見るとを見てみるとテロ事件
で首をや腕などを狩り殺して切断したジンやレイク
の屍が転がっておりその醜い屍はゆっくりとだが
傷だらけで血塗れの手をノワールに伸ばしてくる。
「やっぱり…もう貴方はなんの躊躇いもなく人を
殺すことに慣れちゃったんだね…何の考えず、
ただ当たり前のように人の命を刈り取りそして
殺していく。それが今の貴方の当たり前の日常…
どうしてだろうね…?昔はあんなにも優しくて
思いやりがある暖かい人だったのに…今では
その面影すらなくなっている…これじゃあ…
『天の智慧研究会』と同じだね…」
イルシアは全身が血塗れのノワールにそう言うと
ノワールは自分の血塗れの両手や全身を見てそして
イルシアに今の自分の姿を見てそう言われて
「ち、違…「違わないわよ…ねぇ…兄さん…?」」
イルシアがそう言うとノワールの背後から
「そうだね…君がもっと早く気付いてくれてたら
僕達が死ぬ事はなかったんだ…」
ノワールが振り返ると頭から大量の血を流して
更に焦点が合ってない光なき虚ろな瞳で立ってる
イルシアの兄、『シオン』がいた。
「し…シオンさん…?」
ノワールは壁にもたれながらシオンの名を言うと
「僕達はこの冷たくて孤独な白銀の世界にいるのに
どうして…どうして、君だけが生き残って暖かくて
日の当たる場所にいるんだい…?」
「そ、それは…」
やめて…やめてくれ…僕が…僕が悪かったから…
許してくれとは言わないから…だから…だから
もう、もうやめてくれ…
「どうして…どうして助けてくれなかったの⁉︎
答えてよノワール⁉︎」
イルシアの心からの悲痛の叫びでノワールに聞くが
その悲痛な叫びに対してノワールはただ下を向いて
俯いているだけだった。それは赤黒い外道達の血に
染まり更には復讐に溺れ赤黒く染まってしまった
その狂った刃を外道達に向けて何度も首を刈り取り
殺す殺す殺す。そんな決まっているかのような無限
かのようにループするかのように見えるそんな地獄
を繰り返している自分自身にはもはや『正義』など
ありはしないし、その言葉の答えを返す資格は
もうないのだと分かっているからだ。
いや、もしかしたら先程言っていたイルシアの
言う通りかもしれない。そして外道達を殺すことを
『愉悦』に感じている醜くて忌むべきもう一人の
自分がいる。
嗚呼、どうすれば良いのだろう…分からない…
どのようにすれば正しいのだろう…こんな時
無力な自分自身がとても嫌になるしむしろ嫌いだ。
大嫌いだ。
「………卑怯者」
「⁉︎」
イルシアはそう言ってノワールの首を絞め始めた。
「ち、違う…違うんだ‼︎……僕は…」
ノワールは胸元を抑えて苦しそうに訴えるように
言うと
「…嘘つき…嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき
嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき
嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき
うそつきうそつきうそつきうそつきうそつき
ウソツキウソツキウソツキウソツキウソツキ
ウソツキウソツキウソツキウソツキウソツキ
うそツキウソつきウそつき‼︎ウそつキ
うソツキ‼︎」
イルシアは今にも泣きそうで虚ろな瞳で
叫びちらしながらノワールを見ていた。
「僕は…僕は…ただ‼︎」
彼女を救いたかった。助けたかった。そして
その笑顔を守りたかった。ただそれだけの
ちょっとしたワガママな願いだったはずなのに…
ノワールが泣きそうなイルシアにそう言うと
「…忘れないで…貴方は…」
イルシアがノワールに寂しそうにそう言うと
イルシアはノワールの首を絞めていた両手をパッと
離すと足元の床が崩れて落ちて崩れ落ちていく中、
ノワールはイルシアに手を伸ばしてイルシアの手を
握ろうとしていた。
「イルシア…待って、待ってくれ‼︎」
ノワールが叫びながら手を伸ばすがイルシアには
全く届かない
「お願い‼︎ お願いだから…奪わないでくれ‼︎」
ノワールはイルシアに手を伸ばしながら沢山の
涙をボロボロと流しながらも必死になって『神様』
という『理不尽で身勝手な傍観者』に声が枯れる
くらいの懇願をしながらも必死になってイルシアを
助けようとすると
「痛っ〜た……」
ノワールはベッドから落ちて大きなたんこぶを
さすっていた。
「……夢…か……」
ノワールはそう言って頬を濡らす涙をゴシゴシと
拭って窓から空を眺めて魔術を当たり前のように
使うフェジテやそして魔術師達が憧れ夢や浪漫を
見る象徴でありシンボルである嫌でも目に入る
天空の城『メルガリウスの天空城』を見渡しながら
先程の悪夢の夢を思い出していた。
「僕は何のために…ここまで…」
ノワールはそう呟いた瞬間、ノワールは己の手の平
を見て何かを悟った顔をしていた。
それはまるで『過去』の『己の罪』を戒める様に
『誰かに忘るな』と言われてる様だった。
アルザーノ帝国魔術学院、放課後の学院長室にて。
「——と、いうわけで。
給料の前借り、もしくはお小遣いをプリーズ」
「《ふざけんな・この・馬鹿野郎》——ッ!」
突如、紅蓮の炎と衝撃が渦巻き、
爆音が響き渡った。
セリカが唱えた爆裂呪文が、戯言をほざいた
グレンに容赦なく炸裂したのだ。
その爆発の余波によって部屋の窓ガラスは
吹き飛び、レースカーテンは灰化、壁は焼け焦げ、
絨毯は炭化。煌びやかな絵画や古めかしい本棚、
磨き抜かれた飾り鎧、ソファーにシェードランプ
などと言った品の良い調度品の数々は無残に
半壊——学院長室の内装は、もはや見る影も
なかった。
「ごほっ⁉︎ がはごほげほっ⁉︎
な、何すんだ、殺す気かテメェ⁉︎」
真っ黒焦げになったグレンが床に這いつくばり
ながら、非難がましい声を上げる。
「やっかましい! 生物の種の保存に関わる
重大な相談があるとか言って、何かと思って
身構えてたら、そんなことか⁉︎」
「そんなこととはなんだ⁉︎ もし、俺が餓死したら、
俺が絶滅しちゃうだろ⁉︎ 俺は世界に一匹しかいない
んだぞ⁉︎ 絶滅危惧種なんだぞ⁉︎ 大事にしろよ⁉︎」
「うっさい、絶滅しろ! むしろ、そんな劣等種、
手ずから根絶してやるわ!」
不毛な取っ組み合いを始めるグレンとセリカの
間に、この騒ぎにも動じず執務机に腰かけ、
二人の動向を見守っていたこの部屋の主——
リック学院長が割って入った。
「まぁまぁ、二人とも落ち着きなさい。
何か物凄く回りくい言い回しじゃったが……つまり、
グレン君は生活費……主に食費としてのお金が必要
なのかな?」
「その通り。さっすが学院長、話がわかる!
いやー、セリカの奴がさぁ? 最近になって
突然、自分の食費くらい自分で出せとか言いだす
からさー?」
「当然だろう! 無職の時ならいざ知らず、
今は学院の魔術講師として立派な収入が
あるんだからな!」
セリカがイライラとしかめっ面で腕組みして、
グレンを睨みつける。
「とにかく、俺、今月ヤバイんっすよ、学院長!
このままじゃ明日から半強制的な減量(ダイエット)
に突入する羽目に……」
「しかし、先週、給料日だったばかりじゃぞ?
君は一体、何にそんなにお金を使ったのかね?」
その問いに、グレンは憂いを湛えた表情で
窓際に歩み寄り、外の風景に目を向けた。
窓の外には、植樹と色とりどりの花が踊る花壇で
飾られた学院敷地内の庭園光景と、鉄柵を挟んで
その外側に広がるフェジテの古風な町並み——
そして、その遙かなる上空に浮かぶ雄大な幻の城
——フェジテの象徴、メルガリウスの天空城の
偉容があった。
「何に使ったかとおっしゃいましたか……
それはもちろん、未来へと投資したんですよ」
「未来に投資?」
「ええ、明日という無限の可能性のため、
そして、より多くの希望を掴むために——」
遠い目で語るグレンに、セリカがボソリと
口を挟む。
「要するにギャンブルでスッたのか。
本当に救えないな。もう死ねよ、お前」
「やめてよね、せっかく人が格好良く
決めてるのに水を差すの」
身もフタもないセリカの言い草に、
グレンは口を尖らせて抗議した。
「大体、俺が悪いんじゃないぞ⁉︎
あそこでハートの3が来るのが悪いんだッ!
4以上のカードだったら、俺はぁーッ⁉︎」
なんかもう、ダメ人間の見本だった。
「——というわけで、助けて下さい、お二方」
「しかしなぁ……規則は規則なわけで、
給料の先払いはできんのだよ」
「ぐっ、そうなんすか……困った。高利貸しの
連中も、定職について間もないお前には貸せない
とかケチ臭いこと言うし、セリカも屋敷の食料庫
に魔術の鍵かけてやがるし……」
望みを絶たれたグレンは掌で顔を覆って、
ため息をついた。
「なぁ、セリカ君。次の給料日まで食費だけでも
融通してやったらどうかね? グレン君は君の
屋敷に部屋を間借りして、一緒に暮らしている
のだろう?」
そんなグレンを少し気の毒に思ったのか、
リックがセリカにそんな提案をする。
「お断りだ、学院長。こいつを甘やかしたら
ロクなことにならんからな。そもそもが
全部自業自得、たまには良い薬だ。
ま、頑張って次の給料日まで生き延びな」
だが、対するセリカの反応はけんのほろろだ。
「食費さえ入れれば、昔からのよしみで食事の
世話くらいはしてやるさ。食費さえ入れればな。
それが最低条件だ。ただでさえ、家賃は見逃して
やってるんだからな」
「ほら、聞きました? 学院長。まったく、
セリカの奴、これなんですもの……昔から
本当にワガママな奴でして……やれやれ、
困ったもんです」
グレンは呆れ顔で嘆息し、口の端を釣り上げ、
肩をすくめて鼻で笑い——
「な ん で、私が悪いような話になってるんだよ⁉︎
悪いのはお前だろうが⁉︎」
「ちょ、ギブ⁉︎ こめかみ痛い⁉︎
頭つぶれる⁉︎ 助けてママぁああ——ッ⁉︎」
セリカは掌でグレンの頭蓋を、ぎりぎりと
万力のように締め上げた。上がるグレンの情けない
悲鳴に、リックは苦笑いをしながら一つの提案を
する。
「給料の先払いはできんが、特別賞与は出せる
可能性があるぞ、グレン君」
「特別賞与ですと⁉︎」
その言葉に、グレンはセリカの手を振り払い、
リックの下へ素早く馳せ参じた。
「それは一体、なんなんですか⁉︎」
「来週、学院で開催される『魔術競技祭』じゃよ」
「な⁉︎ ま、魔術競技祭……?
それは一体……?」
「うむ、我らがアルザーノ帝国魔術学院で年に三度
に分けて開催される、学院生徒同士による魔術の技
の競い合いじゃ。それぞれの学年次ごとに、各クラス
の選手達が様々な魔術競技で技比べを行い、総合的に
最も優秀な成績を収めたクラスの担当講師には、恒例
として特別賞与が出ることになっておる」
「なんと、マジっすか⁉︎
そんな素晴らしいイベントがあったんですか⁉︎」
「来週に開催される魔術競技祭は、
ちょうどグレン君の担当するクラスが参加する
二年次生の部じゃ。ここは一つ、特別賞与狙いに
頑張ってみてはどうかね?」
「はい、頑張らせていただきます!
それにしても、魔術競技祭……そんなものが
あったとは⁉︎ くっ! もっと早く教えて
いただけていればッ⁉︎」
グレンの現金な発言に、セリカはこめかみを
押さえ、冷ややかな呆れ顔で呟いた。
「いや、お前、この学院の卒業生だろ、なんで
知らないんだよ? 大体、二年次生の連中は
どのクラスも盛り上がってただろ。なにしろ
今回は特別に女王陛下が——」
「ええい、こうしちゃいられん! 俺には
やらねばならないことがある! ちっ、あいつら、
まだ残っていればいいが——さらば!」
だが、セリカの突っ込みなどグレンは露ほどにも
聞いていなかった。何を思ったか、握り拳を
固めて踵を返し、慌ただしく学院長室を
飛び出していく。
そんなグレンの後ろ姿を、セリカはため息混じりに
見送った。
「……で? 学院長。現実的な話、グレンのクラス
は優勝できるのか?」
「……正直、厳しいじゃろうな」
リックは微妙な表情で、セリカの問いに応じた。
「確かにグレン君のクラスには、学年トップクラス
の成績優秀者であるシスティーナ君がいるが……
総合力でハーレイ君の一組の優勝が固いと、
もっぱらの評判だ」
「ああ、ハーレイ担当のクラスか。
あそこはやたら粒が揃ってるからな……」
「うむ、彼のクラスはとにかく成績優秀者が多く、
層が厚い。いくらシスティーナ君がいるとは言え、
彼女を全競技種目で使い回してもおよばん
じゃろうて」
「全種目で使い回す……ね」
その時、セリカはなぜか辟易したように
息をつく。
「いいのかね? セリカ君。このままだと
君の愛弟子殿は本当に餓死してしまうかも
しれんぞ? 助けてやらんのかね?」
「ま、それは心配ないさ、学院長」
セリカはあっけらかんと応じた。
「あいつなら草を食うなり、枝をかじるなり
なんなりで生き延びるさ。昔、そういうことも
教えたしな。それよりも、あのまま捨て置いた方
がどうやら面白くなりそうだ」
「……ほう?」
そんなセリカの物言いに、学院長も興味を
引かれたように口の端を釣り上げる。
「動機はアレだがグレンの奴、ようやく『その気』
になったようだ。ここ最近、競技祭に蔓延する例の
風潮にはうんざりしていたとこだが……さて、
あいつはどうするかな?」
どこか楽しそうにセリカは笑った。
そしてリック理事長はセリカに真剣な表情で
「セリカ君……君に言われたように『例の物』は
用意しておいたぞ?」
「あぁ、そうだったな……すまないな」
セリカはリック理事長にそう言うと机の上に
ある封筒を手に取って
「調べるのに苦労したぞセリカ君。まさか…
こんな事になるとは思っていなかったぞ?」
リック理事長は溜息をつきながら言うと
「あぁ、本当に助かったよリック理事長……」
セリカはそう言って理事長室を出て封筒の中を
確認すると
(さてと…結果は……)
セリカはドキドキしながら封筒を開けると
「こ、これは……まさか‼︎」
セリカは封筒の中にある書類を見て驚きを
隠せなかった。
放課後のアルザーノ帝国魔術学院、東館二階。
その時、魔術学士二年次生二組の教室は、
びっくりするほど盛り下がっていた。
(天の智慧研究会のテロ計画を未然に防ぐ事が
出来て良かったけど……)
ノワールはテロ事件を思い出しながら
思いふけっていると
「はーい、『飛行競争』の種目に出たい人、
いませんかー?」
壇上に立ったシスティーナがクラス中に
呼びかけるが、誰も応じない。
(このクラス…やる気なさすぎだろ…?)
ノワールが心の中でそう思って呆れていると
クラスメイト達は皆、一様にうつむいたまま、
教室は葬式のように静まり返っている。
「……じゃあ、『変身』の種目に出たい人ー?」
やはり、無反応。教室は静まり返ったままだった。
「はぁ、困ったなぁ……来週には競技祭だって
いうのに全然、決まらないなぁ……」
システィーナは頭を掻きながら、黒板の前で
書記を務めるルミアに目配せする。
ルミアは一つ頷き、穏やかながら意外に
よく通る声でクラスの生徒達に呼びかけた。
「ねぇ、皆。せっかくグレン先生が今回の競技祭は
『お前達の好きにしろ』って言ってくれたんだし、
思い切って皆で頑張ってみない? ほら、去年、
競技祭に参加できなかった人には絶好の
機会だよ?」
すると後ろの席から
「はい‼︎ はい‼︎ はーい‼︎」
ノワールが元気よく手を上げて声をあげていると
「の、ノワール‼︎ な、何か出たい種目があるなら
遠慮なく言っていいわよ‼︎」
今のシスティーナにとってノワールはまさに
救世主の様に見えて本当に感謝しかない。
「システィがさっきから眉間のあたりにシワを
沢山、寄せているからその表情を見てみんなが
怖くて上げられないんじゃないかと思います‼︎」
「……は?」
だが、ノワールがシスティーナに平然とそう言うと
システィの頭の中思考が一瞬にして停止した。
そして二組の教室の空間が更に重くなる。
すると
「おい‼︎ おい‼︎ ノワール⁉︎ 何で今ここで
要らん事を言っているんだよ‼︎」
ノワールの前の席に座っていたカッシュは
「空気を読めよ‼︎」と席を立ってそう言うが
「えー? でも事実だし? システィの顔が今迄に
ない程に眉間にシワが寄ってたからみんな言えない
のかなと思ってたんだけど?」
ノワールは頭を傾げながらカッシュの席まで
歩いてカッシュの目の前でそう答えると
「お前、どうなっても俺は知らねーからな……」
カッシュは少し青ざめた表情でノワールに警告
するようにそう言うと
「ノワール……」
「ッ‼︎」
ノワールは背後からから聞こえる自分の名前を呼ぶ
低い声にビクリと肩を震わせていた。
その時、ノワールは一瞬にして理解した。
『決して後ろを振り返ってはいけない』と本能が
告げている気がした。
「カッシュ…‼︎ すまないけど…僕は急用を思い出
したから後は任せた‼︎」
「お、おい…‼︎」
カッシュはノワールを呼び止めるが既にノワールは
早歩きで教室の扉を開けようとすると
「《雷精の紫電よ》――ッ!」
「へ…?」
後ろから【ショック・ボルト】の一節詠唱を
唱える声が聞こえて扉の目の前で光っていた。
「あ、危なっ…⁉︎」
ノワールが驚いてよろめいていると
「何処に行こうとしているのかしら…そして私にも
是非、分かりやすく詳しくゆっくりと聞かせて
もらえないかしら? ねぇ、ノワール…?」
ノワールがその声に反応して後ろを
振り返ると……
「し、システィ……?」
ノワールが苦笑いしてそう言うと システィーナの
物凄い不気味な笑顔を浮かべて表情や周りに
見えない重い空気が漂わせていた。
「さて、ノワール…言いたいことは山のように
沢山あるけど…とりあえず単刀直入に言うわね?
死ぬ覚悟は出来ているんでしょうね…?」
システィはノワールに近づいて顔の表情が凄みが
増していた。
「くっ…‼︎ 逃げるが勝ちだ‼︎」
「あ⁉︎ 待て‼︎ 逃げるな‼︎」
「逃げるなと言われて逃げない奴がいるか‼︎」
「あ、あはは……」
そう言ってシスティとノワールの追いかけっこ
が始まってルミアは苦笑いを浮かべていた。
それでも、ノワール以外は誰も何も言わない。
皆、気まずそうに視線を合わせようとしない。
「……無駄だよ…全く……」
その時、この膠着状態にうんざりした
眼鏡の少年が席を立った。
少年の名はギイブル。このクラスではシスティーナ
に次ぐ優等生だ。
「皆、気後れしてるんだよ。そりゃそうさ。
他のクラスは例年通り、クラスの成績上位陣が出場
してくるに決まってるんだ。最初から負けると
わかっている戦いは誰だってしたくない……
そうだろ?」
「……でも、せっかくの機会なんだし」
「そうだ‼︎ そうだ‼︎ もっと言ってやれ‼︎
システィ‼︎」
「あんたが言うな‼︎ あんたが‼︎」
むっとしながら反論しながらノワールを
捕まえようとするシスティーナを無視し、
ギイブルが続ける。
「おまけに今回、僕達二年次生の魔術競技祭には、
あの女王陛下が賓客として御尊来になるんだ。
皆、陛下の前で無様をさらしたくないのさ」
「僕は全然気にしないけどなぁ…?」
「全く…そんな考えなしな事を考えるのは
君だけだよ…それに全員が全員、君みたいな
鋼のメンタルは持ってないよ?」
「はいはい…そうですか……」
ノワールが拗ねている中、疲れた表情で嫌味な
物言いだが、ギイブルの言葉はノワール以外の
クラスに蔓延する心情を的確に突いていた。
「ノワールのせいで話しが脱線してしまったが……
それより、システィーナ。そろそろ、真面目に
決めないかい?」
「……私は今でも真面目に決めようとしてる
んだけど?」
「ははっ、冗談上手いね。足手まとい達にお情け
で出番を与えようとしてるのに?」
ギイブルは皮肉げな薄笑い口の端に浮かべ、
クラスの生徒達を一瞥する。
「見なよ。君の突拍子もない提案のおかげで、
元々、競技祭に出場する資格があった優秀な
連中も気まずくなっちゃって萎縮している……
もういいだろう?」
「わ、私はそんなつもりじゃ⁉︎
それに皆のことを足手まといだなんて……ッ!」
「えー……システィ? 僕達の事をそんな風に
思っていたの? 差別しないと信じてたのに酷いよ‼︎
システィ‼︎」
「あーもう‼︎ これ以上、話しをややこしく
しないでよ‼︎」
ノワールは「シクシク…」と嘘泣きしていると眉を
釣り上げ、声を荒げながらノワールに文句を言って
いるシスティーナ。ギイブルはそれをさらりと受け
流し、さらに歯に衣着せぬ言葉でたたみかける。
「綺麗事はいいよ。そんなことより、さっさと全競技
を僕や君のようなクラスの成績上位陣で固めるべき
だ。そうしなければ他のクラスに……特にハーレイ
先生が率いる一組に勝てるわけがない」
「勝つことだけが競技祭の目的じゃないでしょう?
それに、それ去年もやったけど……なんか凄く
つまらなかったし……」
「勝つことだけが目的じゃない? つまらない?
何を言ってるんだ、君は。魔術競技祭はつまる
つまらないの問題じゃないだろう?」
ギイブルはシスティーナの言い分を鼻で笑った。
「……」
ノワールはギイブルの言葉を聞いて黙って
しまった。
ギイブルの言っていることは事実だった。
綺麗事で力の差が埋まるはずがない事はノワール
が誰よりも知っていた。
所詮は『弱肉強食』だ。強い奴は『捕食者』と
なり『弱者』は全て『強者』に奪われる。
それが全ての理だ。歴史がそう物語っている。
「めったなことじゃ魔術の技比べができない
この学院において、誰が本当に一番優れた魔術の技
を持っているのか——それを明白にできる数少ない
機会が魔術競技祭じゃないか」
「それはそうかもしれないけど……ッ!」
「しかも、この競技祭には学院の卒業者……
魔導省に勤める官僚や、帝国宮廷魔導士団の団員
の方々も数多く来賓としていらっしゃるんだ。
魔術競技祭は将来それらを目指す生徒達にとって、
絶好のアピールの場でもある。僕ら成績優秀者に
その機会がより多く与えられるのは当然と
思わないかい?」
「ねぇ、貴方、それ本気で言ってる……?」
怒りも露わにシスティーナがギイブルを
睨みつける。だが、ギイブルはどこ吹く風で、
さらに持論を展開していく。
「それにさ、今回の優勝クラスには、女王陛下
から直々に勲章を賜る栄誉が与えられるんだ。
これにどれほどの価値があるのか、君にもわかる
だろう? システィーナ。だから、だだこねてない
で大人しく出場メンバーを成績上位陣で固めるんだ。
これはこのクラスのためでもあるのさ」
(ふーん…クラスのため、ねえ……)
ノワールは視線をシスティからギイブルに向ける。
クラスのため、みんなのためと御託を言っているが
要は『陛下』や『帝国宮廷魔導師団』、『魔導省』
達が来るから強くて賢くて成績優秀者の天才達で
固めて自分の経歴や名声、そして自分達の将来に
傷が付かないように自分達優等生と落ちこぼれの
生徒達と分けて型にはめてるだけだ。
結局は『名誉』や『勲章』更には『陛下』や
『お偉い方』の声援や言葉を独占して独り占め
したいだけの身勝手な意見であり押し付けだ……
「ギイブル……貴方、いい加減に——」
恐らく場の雰囲気は最悪になるだろう——
それを理解していながらも、とうとう我慢できなく
なったシスティーナが怒声を上げようとした、
その時だった。
ドタタタタ——と、外の廊下から駆け足の音が
迫ってきたかと思えば……次の瞬間、ばぁんっ!
と、派手に音を立てて教室前方の扉が開かれた。
「話は聞いたッ! ここは俺に任せろ、
このグレン=レーダス大先生様にな——ッ!」
両袖に腕を通さず羽織ったローブが、無意味に
バサリと翻る。
開け放たれた扉の向こうには、人差し指を前に
突き出し、不自然なほど胸を反らして、全身を
ねじり、流し目で見栄を切る、という謎のポーズ
を決めたグレンがいた。
「……ややこしいのが来た」
システィーナが頭を抱えてため息をついた。
あまりにも意味不明の登場の仕方に思わず呆然と
するクラス一同を前に、グレンはシスティーナを
押しのけるように教壇に立った。
「喧嘩はやめるんだ、お前達。
争いは何も生まない……何よりも——」
グレンはきらきらと輝くような、爽やかな笑みを
満面に浮かべて——
「俺達は、優勝という一つの目標を目指して
共に戦う仲間じゃないか」
(——キモい)
その瞬間、クラス一同の心情は見事に一致した。
なんとも悲しい統率力だった。
「グレン先生‼︎ 助かりました‼︎
ありがとうございます‼︎」
ノワールがグレンにそう言うとグレンは
「よ、よせよ…俺は講師として当然の事をしている
だけだぜ?」
グレンはノワールに褒められて照れていると
「ですが、そんなグレン先生にはとても残念な
お知らせがあります……それは…正直言って
今のグレン先生は『キモい』ですよ?」
「ぐっ‼︎ ぐはっ…‼︎」
((((あいつ言いやがった‼︎))))
「ま、まぁ、なんだ。なかなか種目決めに
難航しているようだな、お前達」
((((うわぁ…動揺してるよ…))))
クラスの全員がグレンを見てすぐに分かった。
そんなクラスに気不味い雰囲気が流れる中、
グレンはいつも通りに振る舞うが膝が震えて
動揺していたが話しを続ける。
「ったく何やってんだ、やる気あんのか?
他のクラスの連中はとっくに種目を決めて、
来週の競技祭に向けて特訓してんだぞ?
やれやれ、意識の差が知れるぜ」
「やる気なかったのは先生でしょ⁉︎」
あまりにもあんまりな言い草に、流石に
システィーナが突っ込みを入れる。
「大体、先生ったら先日、私が競技祭について
聞いた時、『お前らの好きにしろ』って言ってた
じゃないですか! なんで今頃になってそんなこと
言うんですか⁉︎」
「……え?」
いかにも心外だとばかりに、きょとんとする
グレン。
「……俺、そんなこと言ったっけ?
いや、マジで覚えがないんですけど」
「あぁ……やっぱり面倒臭がって、人の話、
全っ然、聞いてなかったんですね……」
グレンの相変わらずの平常運転ぶりに、
システィーナは激しく脱力して突っ伏した。
「まぁ、んなことはどうでもいいとして、だ。
お前らに任せて決まらない以上、ここはこのクラス
を率いる総監督たるこの俺が、超カリスマ魔術講師的
英断力を駆使し、お前らが出場する競技種目を決めて
やろう。言っておくが——」
野心と熱情に煌々と燃えた瞳で、
グレンが偉そうに宣言する。
「俺が総指揮を執るからには勝ちに行くぞ?
全力でな。俺がお前らを優勝させてやる。だから、
そういう編成をさせてもらう。遊びはナシだ。
心しろ」
ざわざわ。普段の低温動物ぶりからは想像も
つかないこの熱血ぶりに、クラス中の生徒達が
どよめきながら顔を見合わせる。
「おい、白猫。競技種目のリストをよこせ。
ルミア、悪いが今から俺が言う名前と競技名を
順に黒板へ書いていってくれ」
「人を猫扱いするなって言ってるのに……もう!」
「でも、本当は猫扱いされて、構ってもらえて
システィ、嬉しいんでしょ? もしかして…今、
グレン先生がいるからって恥ずかしいからって
照れ隠ししてんの? へぇ〜…システィにも女の子
らしい仕草は『まだ』、残ってたんだ?」
ノワールが【ニヤリ】と笑いながらシスティに
耳元でそう言うと
《ノワール・少し・黙ろうか?》
システィは笑顔でノワールに三節詠唱を唱えると
『し、システィ…ま、まさか⁉︎
また、【ゲイル・ブロウ】‼︎』
「またって何よ‼︎ いつもいつも私にばかり
ちょっかい出してきて‼︎」
「だって…そんな事を言われても…いつも
システィの反応が面白いし、弄りがいがある
『
諦めて?」
「しょうがなくない‼︎ あー‼︎ もう、ノワール‼︎
今日という今日は絶対に許さないんだから‼︎」
「ルミア……」
「は、はい…わかりました、先生……」
グレンがノワールとシスティのやり取りに面倒に
なったのか二人のやり取りを見ながらルミアに
言うとルミアが苦笑いしながらもグレンの考えを
示したのかチョークを構えた。
「ふむ……」
グレンが真剣な眼差しで、競技種目とそのルール
が書かれたリストに目を通し始める。
「なぁ、おい、白猫。
これって毎年同じ競技なのか?」
グレンがシスティーナに聞くと疲れ果てて膝が震えて
地面についてバテていた。
「ち…違うわ。『決闘戦』とか、いくつかの例外
を除いて、去年とまったく同じ競技をやるという
ことはほとんどないわ。今までになかった新しい
競技も突然作られたりするし、一見同じ競技でも
ルールが変わっていたり……」
「なるほど、生徒達の応用力を試す意味合い
もあるか。つーことは……ふむ……」
システィーナはグレンのそんな様子を
横目で流し見ながら、小さく嘆息した。
(まったく、なんで突然、やる気になったの
かしら?)
グレンは紆余曲折を経て、このクラスを担当する
ことになった魔術講師である。質の高い授業こそ
行うものの、自身の魔術研究には関してはさっぱり
やる気がなく怠惰、あまつさえ崇高なる魔術を
小馬鹿にする問題発言を繰り返す魔術師失格の
ダメ人間……というのがこの学院内における、
グレンに対する共通認識である。
だが、システィーナは知っている。普段のグレンは
ダメ人間だが、いざという時には己が命を張って
自分以外の誰かのために戦える——そんな熱い人間
であることを。
グレンのそんな一面を知っているからこそ、
システィーナはグレンに対して普段は説教
ばかりだが、決定的に愛想を尽かす気には
なれない。
今回もそうだ。 むしろ、やる気になってくれた
ことを好ましく思うくらいである。
(でも……なんて言うか、間が悪いなぁ……)
システィーナは心の中で、ほんの少しだけ
苦々しく思った。
グレンはこう言ったのだ。全力で勝ちに行く、と。
この魔術競技祭において全力で勝ちに行くという
ことは、凡庸な成績の生徒達は出場させず、クラス
の成績上位者数名を全ての種目で使い回すという、
例年お決まりの編成をするということだ。
(はぁ……何もこんな時にやる気出さなく
たって……)
システィーナは事実、学年で五本の指に入る
成績優秀者だ。当然、去年もそんなお決まりに
従って、一年次生の部の魔術競技祭に出場した
のだが……面白くなかった。父親から聞かされて
いた話とずいぶん違った。
昔はクラス全員が参加して、全員一緒に
盛り上がったお祭りだったらしいのだが、そんな
競技祭はいつの間にか廃れてしまったらしい。
だから、グレンが好きにしろと言ってくれたのは、
それはそれでよかったのだ。皆で参加すれば、
きっと楽しくなる。
父親から聞いていたような楽しい魔術競技祭に
なる——そう思ったのだ。
だが、食い入るようにリストを見つめるグレンの
真剣な表情を見る限り、今年も父親から聞かされて
いたような、楽しい魔術競技祭になることはなさそう
だった。はぁ、と諦めたかのように、システィーナが
寂しい嘆息をこぼしていると。
「……よし、大体わかった」
グレンが顔を上げる。
とうとう参加メンバーを発表するらしい。
「心して聞けよ、お前ら。まず一番配点が高い
『決闘戦』——これは白猫、ギイブル、そして……
ノワール、お前ら三人が出ろ」
えっ? と。その時、クラス中の誰もが首を
かしげた。競技祭の『決闘戦』は、三対三の団体戦
で実際の魔術戦を行う、最も注目を集める目玉競技
であり、各クラス最強の三人を選出するのが常だ。
だが、成績順で選ぶならば、システィーナ、
ギイブルの次に来るのはウェンディのはずなのだ。
なぜ、ここで成績的にはウェンディなのに
ノワールが出てくるのか。指名されたノワール
自身も、この謎の選抜を面倒くさを隠そうとすら
していなかった。
だが、グレンはクラス中に渦巻く困惑を完全に
無視し、さらに続ける。
「えーと、次……『暗号早解き』。これは
ウェンディ一択だな。『飛行競争』……ロッドと
カイが適任だろ。『精神防御』……ああ、こりゃ
ルミア以外にありえんわ。えーと、それから
『探知&開錠競争』は——『グランツィア』は——」
次々と発表される参加メンバーに生徒達は
気付いた。複数の競技種目に何度も使い回されて
いる生徒が一人もいない。成績上位者で固めたい、
配点の高い競技にも平気で上位の生徒を差し置いて
下位の生徒を割り当てたりしている。察するに、
グレンはクラス四十人全員を、なんらかの競技種目
に出場させるつもりらしかった。
全力で勝ちに行くのではなかったのか?
遊びは無しじゃなかったのか?
グレンの意図が読めず、クラス一同等しく当惑
していると。
「——で、最後、『変身』はリンに頼むか。
よし、これで出場枠が全部埋まったな」
グレンのメンバー発表が終わった。
結局、選を漏れた生徒は一人としていない。
四十人全員、最低一回は何かしらの競技に
出場することになっていた。
「何か質問は?」
「
生徒達がざわめく中、いかにもお嬢様然とした
ツインテールの少女、ウェンディが早速、言葉
荒々しく立ち上がる。
「どうして
んですの⁉︎ 私の方がノワールさんより成績が
よろしくってよ⁉︎」
「そうですよ。何で僕なんですか? それに自分は
成績が良いからってそんな差別をするなんて…
なんて酷い人だ……酷いよ…え、えーと……
『ナープレストさん…?』」
「なんで疑問系ですのよ‼︎ それに名前を酷く
間違えてますわよ‼︎
『ウェンディ=ナーブレス』ですわよ⁉︎ それに
その言い方をやめてくださいまし‼︎ その言い方だと、
ですの‼︎」
「あー…なんかねぇ……半分、八つ当たりで
もう半分が面白半分でついしちゃたんだ。
だからごめんね?」
ノワールはウェンディに謝るがノワールは
悪戯好きの子供のような悪戯じみた笑みを
浮かべながらウェンディにそう言うと
「だったら、尚更タチが悪いですわよ⁉︎」
ウェンディがノワールの言葉にそう叫びながら
反論しているとグレンはそんな二人の会話を
見ながら
「あー……まぁ、話しを続けるが……」
少し言い辛そうにグレンがこめかみを掻いた。
「お前、確かに呪文の数も魔術知識も
スゲェけど、ちょっと、どん臭ぇトコあるからなー。
突発的な事故に弱ぇし、たまに呪文噛むし」
「な——ッ⁉︎」
「それに、ノワールは決闘戦みたいな種目の方が
向いてるって判断した。それで気を悪くしたんなら
謝る。その代わり『暗号早解き』、これはお前の
独壇場だろ? お前の【リード・ランゲージ】の
腕前は、このクラスの中じゃ文句なしのピカ一
だしな。ここは任せた。ぜひ点数稼いでくれ」
「ま、まぁ……そういうことでしたら……
言い方が癪に障りますけど……」
(えー…勝手に納得しないでよ…そこはむしろ
もう少し食らいつけよ…)
ノワールは内心ウェンディにツッコミをする中、
怒るに怒れず、 反論もできず、ウェンディは
すごすごと引き下がる。他にも、どうして自分が
この種目に選ばれたのか、疑問に思った生徒達が
次々と手を上げ、グレンに問いかける。
「そりゃ【レビテート・フライ】も
【グラビティ・コントロール】も結局は同じ重力
操作系の黒魔術だし、黒魔術は運動とエネルギー
を操る術ということでどれも根底は同じだ。カイ、
お前ならいけるはずだ」
「テレサ、お前、この間、錬金術実験で
誰かが落としかけたフラスコを、とっさに
【サイ・テレキネシス】で拾ってたろ? お前、
自分で気付いてないだけで念動系の白魔術、
特に遠隔操作系の術式に相性がいい」
「グランツィアは、個々の能力うんぬんより
チームワークだ。いつも仲良し三人組のお前らが
やるのが多分、一番いいんじゃねーか?
お前ら
だが、それら生徒達の疑問にグレンは一応、
筋の通った答えを返し続ける。要するに、
グレンは生徒達の、普段は目立たなくとも
実は尖っている長所を最大限生かした編成を
したらしかった。
なぜグレンが突然、やる気になったのかは
不明だし、全力で勝ちに行くと言うわりには
非効率なことをやっている感は否めないが、
グレンはグレンなりに最強の編成を
考えたようだった。
(しかも、これって……)
システィーナは黒板に並んだ名前を見る。
基本的には各生徒達の得意分野を生かし、
得意分野から外れていたとしても、得意分野
からの応用で対応できるよう、よく考えられて
いる。これは常日頃から生徒達のことをよく見て、
得手不得手を細かく熟知していなければできない
編成だ。
普段、自分が教える生徒達のことなどまったく
興味がないような素振りのグレンだが、一応、
きちんと見ていたらしい。
(先生って、本っ当にダメ人間だけど……
たまに、こういうとこあるからなぁ……)
生徒達の疑問に応対するグレンの姿を、
システィーナは少し微笑ましく見つめていると
「おやおや…その腑抜けた顔色はシスティ…
まさか…グレン先生に惚れたのかにゃ…?」
ノワールが悪戯じみた笑顔でシスティーナの耳元で
そう囁くと
「な⁉︎ …な、な、何でそうなるのよ⁉︎」
「だってグレン先生を見て微笑んでたじゃん?
近頃の恋するウブな女の子は大変ですなぁ…?」
ノワールは右手で口元を隠して「ムフフ…」と
笑うとシスティは真っ赤な顔をしてプルプルと
体を震わせながら
「こ、この…変態‼︎ 変態‼︎ 変態‼︎」
システィはノワールにそう言って本や魔術を使って
攻撃してきた。
「い"ッ‼︎ イタタタ‼︎ システィ‼︎ 痛い‼︎ 痛い‼︎
それに僕はシスティみたいに変態じゃないよ」
「何ですって…‼︎」
「実際、本当の事じゃん? そもそも システィって
さぁ、なんで恥ずかしがるの? それにさっきから
グレン先生の事を目の視線で追いかけて釘付けに
なっていたじゃん?」
「う…うるさい‼︎ うるさい‼︎ うるさい‼︎
うるさい‼︎ うるさい‼︎ この変態ノワール‼︎」
ノワールはシスティーナの更に大量の本や魔術の攻撃
を受けた。その後、クラスのみんなに見られた為に
システィーナはかなりの羞恥心からか頭から大量の
湯気が出て顔を机に埋めてその時は立ち直るのに
時間がかなりかかったらしい。
ちなみに、その時の事はシスティーナの『黒歴史』
となったのは言うまでもない事である。
「——さて、他に質問は?」
「はーい‼︎ 僕は反対です‼︎ 僕なんかが
決闘戦なんて無理です‼︎ イジメだ‼︎ 横暴だ‼︎
職権乱用だ‼︎」
ノワールがグレンにそう言う。それは当然だった。
しかも決闘戦なんてものに出てしまえばノワール
は間違いなく『グレンに正体がバレてしまうリスク
や可能性が高くなってしまうからだ』。
「じゃ、これで決まりってことでいいか?」
「おい‼︎ 話しを聞いてくれませんかね⁉︎
それに少しは僕の人としての人権を大事に
してもらえませんか⁉︎」
ノワールのそんな話しを無視しながら内心
ほくそ笑むグレンは生徒達に問いかけた。
(ふぅー、やれやれ、上手くいった……)
グレンの目標はとにかく、勝つことだ。
なんとしても勝たねばならない。勝って、
特別賞与をもらわなければならない、
生きるために。ていうか、餓死は嫌だ。
セリカは助けないと言ったら本当に助けない
非情で冷たい奴なのだ。
ゆえに、勝つためには多少強引でも、ここで勝率を
最大限高める編成を押し通さねばならなかった。
いくら
各人やりたい競技を適当に決められてしまっては
困るのだ。勝つために、あざとい編成をしなければ
ならなかった。
なんやかんやで第一目標はうまくいきつつある。
このクラスの生徒四十人で優勝を目指すならば、
グレンが提案した編成が間違いなく
ベストのはずだ。
(ふっ……あざといとか言うなかれ、
勝利以外に価値はあらず、勝てば官軍なのさ……
まぁ、できるならシスティーナとか全種目で
使い回したいんだけどな……)
確かに生徒達の尖っている部分を最大限生かす
ように編成はしたが、それが成績上位者との
根本的な実力差を覆せる物ではないことを、
グレンは理解している。
あくまで、いい勝負ができるようになるだろう
程度の気休めに過ぎない。さらに本気で勝ちに行く
ならば成績上位者のみで全種目を固める、などと
いうことをするべきだろう。
(……けど、そりゃ流石に反則だろうしな……
まぁ、しゃーない、この四十人を上手く使って、
勝率を最大限高めて挑むっきゃねぇ……)
グレンがそんなことを考えていると。
「やれやれ……先生、いい加減にしてください
ませんかね?」
ゆらりと、生徒の一人が立ち上がった。
ギイブルだ。
「何が全力で勝ちに行く、ですか。
そんな編成で勝てるわけないじゃないですか」
「む……?」
まさか、自分が考えた編成以上に勝率が高まる編成
があるのか。
もし、あるのならば、そっちを採用するに
決まっていた。グレンにとっては、もはや講師と
してのプライドや威厳の問題じゃないのだ。
餓死の瀬戸際なのだから。
「ほう? ギイブル。ということはお前、
俺が考えた以上に勝てる編成ができるのか?
よし、言ってみてくれ」
「……あの、先生、本気でそれ言ってる
んですか?」
苛立ちを隠そうともせず、吐き捨てるように
ギイブルは言い放った。
「そんなの決まってるじゃないですか!
成績上位者だけで全種目を固めるんですよ!
それが毎年の恒例で、他の全クラスがやってる
ことじゃないですか!」
「………え?」
グレンの動きが止まる。
え? 何それ? そんなんいいの?
硬直しながらとめどない思考が流れていく。
どうも、自分はひどい勘違いをしていたらしい。
(あ、なぁーんだ。一人の生徒を複数の種目に
使い回していいんだ、毎年の恒例なんだ、どこも
やってることなんだ、へぇー、そうなんだー、
ほぉー、ふぅーん……)
それを聞いたグレンは内心、
ガッツポーズを決めていた。
(よっしゃ……ぐへへ、この編成でも充分
あざとくて、どん引きされるかと思ったが、
そういうことなら、もう容赦しねえ。さらに
あざとい編成を考えてやるぜ……ッ!)
(あ、あの腹黒くてゲスい顔…絶対ロクなことを
考えてない顔だな……)
特にシスティーナは容赦なくコキ使ってやる。
あの白猫
優秀であることだけは間違いないのだ。生意気で
生意気だが。システィーナが多くの競技種目に
参加してくれれば、それだけで優勝確率が
跳ね上がるのだ。
「うむ……そうだな、そういうことなら……」
グレンがギイブルの意見に首肯しようとした、
その時だ。
「何を言ってるの、ギイブル! せっかく
先生が考えてくれた編成にケチつける気!?」
ギイブルに真っ向から反論する少女がいた。
システィーナだ。
(ちょ——おま、何、ギイブル君に反論
しちゃってるの——ッ⁉︎)
焦燥に満ちたグレンの胸中も露知らず、
システィーナはクラス一同に向き直ると、
真摯な表情で訴えかける。
「皆、見て! 先生の考えてくれたこの編成を!
皆の得手不得手をきちんと考えて、皆が活躍
できるようにしてくれているのよ⁉︎」
システィーナの必死の訴えに、クラス中が
ざわめく。
そう言えば……とか。確かに……とか。
あちこちから、ひそひそと声が漏れる。
(ちょ……お前ら……説得されんな……
頼むから……)
(グレン先生…もう終わったな…)
ノワールがそう思ってるとシスティーナの演説が
更に苛烈さが増す。
「先生がここまで考えてくれたのに、皆、
まだ尻込みするの⁉︎ 女王陛下の前で無様な
姿を見せたくないとか、そんな情けない理由で
参加しないの⁉︎ それこそ無様じゃない!
陛下に顔向けできないじゃない!」
(無様でも顔向けできなくてもいいから、
余計なこと言わんといて頼むから……)
「大体、成績上位者だけに競わせての勝利なんて、
なんの意味があるの? 先生は全力で勝ちに行く、
俺がこのクラスを優勝に導いてやるって言って
くれたわ! それは、皆でやるからこそ意味が
あるのよ!」
そして、システィーナはグレンに振り返って
言った。
「ですよね、先生⁉︎」
その表情は、グレンに向けるものとしては
珍しく険の取れた、朗らかな笑顔だった。
「お、おう……」
としか言えなかった。ここで違うとか言ったら
単なる極悪人である。
「た、確かにシスティーナの言うとおり
だよな……」
「あぁ、そうだ……俺達だって……」
そして、クラス全体の雰囲気は明らかに
システィーナに追従ムードだった。
(あ、後に引けねぇ——ッ⁉︎ こらぁ、
ちょっと待て、お前ら! 俺にとっては
死活問題なんだぞ⁉︎ 餓死がかかってんだぞ⁉︎
わかってんのか、コンチクショウ⁉︎)
こうなると頼みの綱はギイブルしかいない。
(頑張れ! 負けるな、ギイブル君!
白猫の言い草なんざ派手に論破したれ!)
グレンは縋るような視線でギイブルを
見つめるが……
「ふん、やれやれ。君は相変わらずだね、
システィーナ。……まぁ、いい。それがクラスの
総意だというなら、好きにすればいいさ」
ギイブルは皮肉げに冷笑して着席してしまった。
(てめ、この、押し弱過ぎだろ、
この草食系男子がぁ——ッ⁉︎)
「ま、せいぜいお手並み拝見させて
いただきますよ、先生?」
(やかましいわ! 見せられるお手並み
なんかねーよ⁉︎)
挑発的なギイブルの物言いに、グレンは
もう声無き叫びをあげるしかなかった。
と、そんなグレンに。
「あはは、よかったですね。
先生の目論見どおりに行きそうですよ?」
システィーナがそんなことを言って、
くすりと笑った。
(こ、こいつ……あざ笑いやがった?
この俺を! 思いっきり、蔑むかのように
笑いやがった⁉︎ しかも痛烈な皮肉の追い打ち
まで……ッ⁉︎)
グレンにはその笑顔がもう、悪魔の微笑み
にしか見えなかった。
(ま、まさか、こいつ……俺の企みを察して
わざと⁉︎ だとしたら、なんて嫌な奴なんだ、
白猫め……ッ!)
「ま、せっかく先生がたまにやる気出して、
一生懸命考えてくれたみたいですから、私達も
精一杯、頑張ってあげるわ。期待しててね、先生」
「お、おぅ……任せたぞ……」
珍しくご機嫌なシスティーナと、
どこか引きつった笑みを浮かべるグレン。
「なんか……かみ合ってないような気が
するなぁ……なんでだろう?」
そんな二人の様子を、ルミアは苦笑いで
眺めているとノワールが視線に入って何故か
目が離せなかった。
(ど、どうしたんだろう私…最近、ノワール君を
見ていると胸が苦しくてしょうがない…
どうしたんだろう…?)
ルミアは自分自身でも知らない内にそう考えながら
ノワールを見ていた。そんなルミアの視線に
ノワールは気が付かなかった。
そしてノワールはクラス全員を見て
(みんなが人間らしく幸せそうに笑っている
日の当たる世界を見ていると自分の姿を見ていると
僕と言う化物はあまりにも醜くて哀れに見えてくる
……僕は一体…一体どうすれば…どうすれば
良かったんだろう…)
(ノワール…君?)
その時、ルミアだけはノワールの悲しげな表情が
一瞬だけ見えた気がした。
読んで頂きありがとうございます‼︎
これからも頑張って書き続けますので
よろしくお願いします‼︎
次から盛り上がっていきます‼︎
(多分)……