良ければ最後まで楽しんで読んで頂ければ
本当にありがたいです。 (´・ω・`)
書けて本当に良かった…… (゚´ω`゚)゚
【意見】や【感想】更に【評価】などをよろしく
お願いします‼︎ (*´꒳`*)
僕は今、学院長室に呼ばれやって来たのは
良かったのだか……
「おぉ…君が、転入生の……」
「はい。『ノワール=ジャック』です。
よろしくお願いします。リック学院長」
「あ、ああ、よ、よく来てくれたのう……」
ノワールはリック学院長に挨拶するとリック学院長
は少し困った顔をして唸っていた。
「どうしたんですか?」
「いや、実は今日、来る筈の君の担任の講師が
まだ、来ていないんじゃよ……」
「えっ? じゃあ、どうするんですか?」
ノワールがリック学院長と話をしていると、
『ある女性』の声がノワールの背後から
聞こえてきた。
「それについては大丈夫だ。問題はないこの件は
私の方でなんとかしよう」
(こ、この声は……ま、まさか⁉︎)
後ろを振り返ると髪が金髪で黒いドレスを身に
纏っている上品で魔性の大人の女性が立っていた。
「おぉ‼︎ セリカ君! 君も来ていたのか?」
「やあ、学院長 暇だから見に来たぞ〜」
(やはり来たか……『灰燼の魔女』。
『セリカ=アルフォネア』)
「学院長。そいつがグレンのクラスに新しく入る
転入生か?」
「あぁ、彼はノワール=ジャック君。14歳で成績は
まぁ平凡じゃな……彼を二組に入れようと
思うじゃよ…」
「おぉ‼︎ グレンのクラスか‼︎
あいつなら非常勤講師だが、大丈夫だろう‼︎」
(……相変わらず、『愚者』のことになると熱く
語ってんなぁ…全く……この『魔女』は……
相変わらずだな……この親バカは……)
「よし‼︎ ならば私がその転入生を教室まで
一緒に連れて行こう‼︎」
「おぉ‼︎ それは助かるよ。本人のグレン君
はまだ来ていなくてのう……」
「何⁉︎ あの……馬鹿者が〜〜‼︎ 遅刻しやがって
……帰ってきたら、絶対に飯抜きとお小遣いなしに
して、最後は【イクスティクション・レイ】だ‼︎」
(あぁ〜なんか……『愚者』に同情するわー……
関係は無いが『愚者』が生きている事を心より本当に
願ってるよ……)
そんなふうにグレンの心配していると、リック学院長
がセリカを宥めていた。
「ま、まあまあ……セリカ君 。まずは彼を教室に
連れて行ってくれんか?」
「ああ、そうだな。確か……ノワールだったな?
私は此処の教授セリカ=アルフォネアだ。
分からない事があったら相談してくれ」
「はい、こちらこそお願いします。
セリカ=アルフォネア教授」
「おい‼︎ そんな敬語で呼ぶのはやめてくれ‼︎
普通に呼んでくれて構わないからな?」
「……分かりました。では、これからよろしく
お願いします。アルフォネア教授」
「あぁ、こちらこそよろしくな!」
そう言って学院長室を後にして廊下を歩いていると
セリカがノワールに質問してきた。
「しっかし…お前 本当に男か? 肌は白いし、腕や体
周りが細いしなぁ……まるで……「女みたいな細い腕
だな、ですか?」」
「⁉︎」
「よく言われるんですよ……女みたいに腕が細くて
なよなよしてるなぁって……」
セリカは驚きを隠せないでいた。目の前にいる
この少年は自分が言うよりも早く答えたのだ。
それにそれだけではない──
「……そんな事を言うのであればいくら
に至った大陸屈指の『灰燼の魔女』と呼ばれた
魔術師である貴方でも、僕は本当に怒りますよ……
ねぇ、アルフォネア教授?」
ノワールの周りから少しずつだが、恐ろしい程の残酷
過ぎるそんな冷たさと暗い空気と空間が殺気として
漏れていた。その瞬間、セリカは 何故か急に背筋が
寒くなり顔が真っ青になって、手や体の震え出して
しまっていた。
「い、いやぁ〜……すまん‼︎ すまん‼︎
私が悪かったよ‼︎だから許してくれ!」
(な、なんで、わ、私はどうして……こんなにも体や
手が震えているんだ……?こんな事は初めてだ……)
気が付けば、セリカは小刻みに震えていた右手を
押さえて止めようとするが、いくら抑えても震えは
一向に収まってくれない。
「……わかりました。僕も今回の事は水に流す事に
します。おっと、教授と話している内にもう教室に
着きましたね。」
「あ、あぁ……そうだな……」
(い、今のは……一体 ⁉︎ 汗が止まらない……
何だたんだ?)
セリカは何故に震えているのか何に恐怖を感じて
怯えているかセリカ本人ですらも全くもって
分からなかった。まるで得体の知れない何かがいる
ようでセリカの心が今まで感じた事の無い言葉では
言い表せない程のまさに未知の恐怖に襲われて
いた。
「あれ? どうしましたか? 顔色悪いですよ?
アルフォネア教授?」
ノワールがセリカに声を掛けるとセリカは
ノワールを見て少しだけ呼吸を整えていつもの
顔に戻っていた。
「あぁ、すまんな……私も少し緊張したみたいだ」
「良かったです。じゃあ、教室に入りますね?」
「そうだったな……じゃあ行くか……」
セリカとノワールは二組の教室に入って行った。
「みんな席に座れ!」
アルフォネア教授が生徒達に指示を出して生徒を
座らせて僕の自己紹介をしてくれた。
「転入生の紹介をする。じゃあ本人にも自己紹介
をしてもらうとするか……入って来い」
セリカがそう言うと紺色のマフラーをして黒髪と
黒い瞳 に更には肌白くて腕や足が細い少女と完全に
間違えられるくらいの綺麗な少年が教室に入って来て
教卓の隣に立っていた。
「ノワール=ジャックです。是非、皆さんと仲良く
できたら嬉しいです。よろ──「うおぉー‼︎ 喜べ‼︎
女の子が……いや、女神が来たぞ〜‼︎」
「「「うおぉぉぉ──‼︎ 美少女キタァァ──‼︎」」」
(え? 何が? 美少女……?)
男子生徒達の言葉を聞いた瞬間、ノワールは意識は
真っ白になっていた。今起きている状況が何故なのか
とても理解が出来なかったからだ。
(えっ? ちょと待って……今の状況をしっかりと
整理しよう。えーと……つまり、此処にいる眼鏡の
男の子以外の男性全員が僕が男性用制服を着ている
はずなのに、それでもあの『猿達』は僕を女性だと
勘違いしていると……はあ、何とも迷惑な……)
「じゃあ、ノワールちゃんの好きな物は‼︎」
「何で『男性用』の服を着ているんですか?
もしかして、『男装』が趣味なんですか?」
「好きな『男性』のタイプは?」
「今、『彼氏』はいますか?」
「俺にもついに春が来た──‼︎」
「これが人生最後のラストチャンスだ‼︎」
「………」
「? どうしたの? ノワールちゃん……?」
「水を指すようですまんな……実はこいつは
『女』ではなく『男だよ』正真正銘な?」
「「「………………え"っ?」」」
セリカが男子生徒達にそう言うと、眼鏡掛けた以外
の男子生徒達や更には女子生徒達も「おい、嘘だろ」
という表情と無意識に声が出ていた。
(いや……こっちが『えっ?』って言いたいのだが?
それに……何で…女子生徒達まで僕を見てそんなに
驚いているの……?)
その真実を他の生徒達は特に男性の方はセリカの
告げたそんな真実を信じられない言わんばかりに
がっかりとしたり、更には血の涙を流して絶叫する
男子生徒などもたくさんいた。
「そ、そんな──‼︎ 嘘だろ‼︎」
「あんなに容姿は綺麗なのに──‼︎」
「野郎かよ──‼︎」
「更に美男子かよ──‼︎」
「クソッ! 期待したのにがっかりだ‼︎」
「もしかして……リア充野郎か?」
「「「「チクショ───‼︎」」」」
その時、何かが切れそうな気がした。って言うか
こいつら『冥府の鎌』で一瞬でこいつらの首を
刈り取ってやろうかと思った。この猿どもが自分
勝手に期待しておいてこの反応……しかも最後に
『がっかりだ‼︎』などもしっかりとこの耳に
聞こえた。
(なんかムカつく……いつかこの借りは絶対に
倍にして返す‼︎)
ノワールがそんな風に考えていると、そんな状況に
ルミアが席から立ち上がり、眼鏡の男子生徒以外の
クラスの男子達に注意していた。
「そんな事言ったら駄目だよ‼︎ みんな‼︎」
ルミアが男子生徒の皆に訴えかけるように説得を
する。
「る、ルミアちゃん……」
「け、けどよ‼︎ どこからどう見たって、誰もが
女性だと思うよ‼︎」
(なんか……虚しくなってきた。
自分が男としての自信がもう無くなってきた……)
「そんな事を言ったらノワール君が可哀想だよ‼︎」
「そうよ‼︎ 今日、転入したばかりのノワールに
そんな扱いは、いくらなんでも酷いと思うわよ‼︎」
システィーナも男性生徒達全員を注意して、
そして男性生徒達は渋々とノワールに謝った。
「な、何かすまん……」
「お、俺も悪かったよ」
「か、勘弁してくれ……」
(やめて‼︎ そういう謝罪などは、かえって傷口が
広がって消えない傷になるから‼︎ それに更に
虚しくなるから──‼︎)
ノワールが心の中で男子生徒達に叫んでいると、
ルミアはノワールに近づいて
「ね? お願いノワール君。今回の件は許して
くれないかな?」
「………」
ルミアはノワールに手を合わせて、真っ直ぐな瞳
でお願いをしていた。
「……わかったよ。ルミアさんに免じてこの場を
治めるよありがとう……助かったよ。ルミアさん」
「こちらこそありがとう。ノワール君」
ルミアは頭を上げて、向日葵のように明るい笑顔で
ノワールに微笑んだ。それはあの時、暗い森の中で
泣いていた小さな少女のは姿はもうなかった。
「さすが、ルミアね!」
システィーナはルミアに言葉を掛けて話していた
姿を見て、ノワールは内心、安心していた。
(良かった……彼女が平凡な日常の幸せを手にして
友達も沢山出来ている。あの忌まわしい薄暗い
記憶を忘れて普通の女の子として暮らせている……
少しでも……イルシアへの贖罪に……罪滅ぼしに
なっているだろうか?)
そう考えると、同時に自分への不安と罪悪感が
溢れてきた。
自分だけこんな暖かくて、優し過ぎるこの光ある
眩しい世界に良いのだろか? 自分は此処にいる
資格はあるのだろうか?『ルミアをイルシア』に
して無意識に重ねて見ているのでは? と不安や
罪悪感に胸を焦がしていく。
「僕は一体、何を望み、何がしたいんだか……」
「ノワール君……?」
ノワールがボソッと小声で誰にも聞こえないくらい
の声でそう言うと、ルミアがノワールの顔を見て
心配そうな顔していた。
「話は以上だ。その間は各自自習だ」
セリカはそう言い去ろうとするとシスティーナが
セリカに声を掛けた。
「アルフォネア教授一つ良いですか?」
「何だ? システィーナ」
「今回、来る非常勤講師の先生はどんな先生
何ですか?」
「そうだな……」
システィーナはセリカに質問した後、セリカは
口元をニヤリとして質問に答えた。
『まぁ、なかなか優秀な奴だよ』
その言葉を残しドアを開けて教室から出ていった。
「手の震えが止まってる……さっきのは一体?」
セリカは先程、震えていた右手を見て先程の違和感
について考えていた。
「ノワール=ジャック……少しこちらでも、調べて
みるとするか……」
セリカはそんな焦りと不安感がいっぱいになり
ながらも、その場を後にした。
ノワールは後ろの端の席で余り目立たないように
して周りの人間の観察をしていた。
(今のところは怪しい奴はいないな……まぁ、警戒を
しておいて、越した事はない。あのクズ外道魔術師達
『天の智慧研究会』が『ルミアの異能の能力』を
野放しに絶対にする筈がないから……)
ノワールは難しい顔をしながら窓を見ていると、
彼女の声が響いてきた。
「ノワール君」
「ん? どうしたの、ルミアさん?」
「ノワール君。朝早く会ったよね? まさか、
同じクラスになれるなんて思ってなかったよ。
とても嬉しいなぁ‼︎ これからよろしくね‼︎」
「あ、あぁ……よろしく……」
「あっ! 噴水の時、会ったわよね⁉︎」
「やぁ システィ 自己紹介がまだだったね。
僕の名前はノワール=ジャックだよ。これから
よろしくね?」
「よろしくね。えーと……」
「僕のことは『ノワール』って呼んで良いよ ?
それに僕、堅苦しいのは嫌いだし?」
「じゃあ、よろしくね? ノワール」
「よろしく」
自己紹介を終えて担任が来るまでかなり待つが、
担任は一向に来る気配がなかった。
「……遅い!」
魔術学院東館校舎二階の最奥、魔術学士二年次生
二組の教室。正面の黒板と教壇を、木製の長机が
半円状に取り囲む構造の座席、その最前列の席に
腰かけるシスティーナは、苛立ちを隠そうとも
せずに吐き捨てた。
「どういうことなのよ! もうとっくに授業開始
時間過ぎてるじゃない⁉︎」
「もう、システィたら また、全く……また変な
呼び名が付いちゃうよ?」
「ルミアさん。それってどういうこと?」
「……彼女、システィには学校ではある呼び名が
あってね ……それが『講師泣かせのシスティ』
なんだよ」
「そ、そうなの……?」
「ねぇ……それキライなんだけど?」
「講師にそれは……流石に不味くない?」
「ち、違うのよ⁉︎ 私がちょっと授業の態度に
ついて注意しただけで、音を上げる根性ナシが
多かっただけよ‼︎」
(それでも、講師を泣かせたら駄目だろ……)
「何かあったのかな? でも一体、どんな人
なんだろうね?」
「さあ……? あんまり期待してないわ」
見渡せば、一向に現れる気配を見せない講師に
同クラスの学友達も訝しむようにざわめき立って
すらいる。今日はこのクラスに、ヒューイ先生の
後任を務める非常勤講師がやってくる。
一から七まである魔術師の位階、その最高位、
セリカ=アルフォネア教授が用事があったとはいえ
直々にこのクラスに赴き、そう発表した朝のホーム
ルーム から早一時間過ぎ。セリカが構築した
『まぁ、なかなか優秀な奴だよ』という前評判は
早くも瓦解しそうな勢いだった。
「あのアルフォネア教授が推す人だから少しは
期待してみれば……これはダメそうね」
「そ、そんな、評価するのはまだ早いんじゃ
ないかな? 何か理由があって遅れているだけ
なのかもしれないし……」
システィーナはそんなルミアに振り返り、
猛然と抗議する。
「甘いわよ、ルミア。いい? どんな理由があった
って、遅刻をするのは本人の意識の低い証拠よ。
本当に優秀人物なら遅刻なんて絶対ありえない
んだから」
「そうなのかな……?」
「まったく、この学院の講師として就任初日から
こんな大遅刻だなんて良い度胸だわ。これは生徒を
代表して一言言ってあげないといけないわね…」
と、その時だ。
二人と話しているとドアを開ける音が聞こえ視線を
ドアに向けると……
「あー悪ぃ悪ぃ遅れたわー」
(今のあいつではこうだろうな…あの魔女の
言い分はわかるが……いくらなんでも…)
するとシスティーナがその男に勢いよく
噛み付いて行く
「やっと来たわね! ちょっと貴方、一体どういう
ことなの⁉︎ 貴方にはこの学院の講師としての
自覚は——」
早速、説教をくれてやろうとシスティーナが男を
振り返って……硬直した。
(だろうな……まさか、非常勤講師があの『愚者』
だったからな……)
「あ、あ、あああ——貴方は——ッ⁉︎」
ずぶ濡れのままの着崩した服。蹴り倒された時に
できた擦り傷、痣、汚れ。嫌な記憶は蘇る。朝、
通学途中で会ったあの変態が、そのままの姿で
そこにいた。
「…………違います。人違いです」
グレンは自分に指を差してくるシスティーナの姿を
認めると、抜け抜けとそんなことを言い放って
スルーの態勢に入った。
「人違いなわけないでしょ⁉︎
貴方みたいな男がそういてたまるものですかっ!」
「こらこら、お嬢さん。
人に指を差しちゃいけませんってご両親に
習わなかったかい?」
(だったら、朝の大人気ないあの行動は
良いのか……)
ノワールが内心そう思っていると、表情だけは
紳士のそれのまま、男がシスティーナに応じた。
「ていうか、貴方、なんでこんなに派手に遅刻
してるの⁉︎ あの状況からどうやったら遅刻できる
って言うの⁉︎」
「そんなの……遅刻だと思って切羽詰まってた
矢先、時間にはまだ余裕があることがわかって
ほっとして、ちょっと公園で休んでいたら本格的な
居眠りになったからに決まっているだろう?」
「なんか想像以上に、ダメな理由だった⁉︎」
「あれが、世間の駄目人間の良い例だな……」
「おい誰だ⁉︎ 『駄目人間のいい例』だって言った
愚かな奴は‼︎ 全く……俺程の完璧で天才的な人間は
世界中探し回ってもいないと思うぜ‼︎」
男の物言いは突っ込み所が多過ぎて遅刻を咎める
気にもならない。周囲の反応も同様だった。
そんな状況の中でこの男、
ただ言えるそんな言葉は……
(あいつ……ウゼェ‼︎) 【クラス全員】
ただその一言だけだった。ノワールも目の前の
男に対して同じ意見だった。
現れた講師の異様な姿に、教室中の生徒達が
ざわめき立つ。だが、男はそれを華麗にスルーして
教卓に立ち、黒板にチョークで名前を書く。
「えー、グレン=レーダスです。本日から
約一ヶ月間、生徒諸君の勉学の手助けをさせて
いただくつもりです。短い間ですが、これから
一生懸命頑張っていきま……」
「挨拶はいいから、
早く授業始めてくれませんか?」
(早速、学院の呼び名の『講師泣かせのシスティ』
がいきなり出てきたよ‼︎)
「あ、あの人が講師だったなんて……」
「ソウダネー」
ルミアがノワールにそう言うと、ノワールは棒読みで
返事すると苛立ちを隠そうともせず、システィーナは
冷ややかに言い放った。
「シ、システィ……」
「あー、まぁ、そりゃそうだな……
かったるいけど始めるか……仕事だしな……」
すると、先ほどまでの取り繕った口調は
どこへやら。たちまち素が出てきた。
「よし、早速始めるぞ……一限目は魔術基礎理論II
だったな…あふ」
(少しくらい教師らしさをだせよ……メリハリも
出来ないのかよ…愚者の野郎……)
あくびをかみ殺してグレンがチョークを手に取り、
黒板の前に立つ。途端にクラス中の生徒が気を
引き締める。システィーナもグレンに対する
さっきまでのわだかまりを捨て、その一挙手
一投足に注視し始めた。
(さて、どの程度のものかしらね……)
『自習』
「…………ん? 」
「ハイ 今日の授業は自習にします」
グレンがそうシスティーナに言いながら椅子に
座り教卓に顔を付けな
『……眠いから』
「え? 何 言ってんの……?」
「おいウソだろ。もう寝たのか?」
「ち……ちょっと待て───っ‼︎」
(初日にこれは……酷い……酷いぞ。愚者⁉︎)
一方、学院長室では、グレン=レーダスの話し合い
が行われていた。
「どうかお考え直し下さい、学院長ッ!」
帝国魔術学院の学院長室に怒声が響き渡った。
二十代半ばの、神経質そうな眼鏡の男だ。
学院の正式な講師職の証である梟の紋章が
入ったローブを身にまとっている。
名前はハーレイ。多くの魔術師が
終えるこの世界において、この歳で早くも
に至った若き天才魔術師である。
「私はこのグレン=レーダスというどこの馬の骨
とも知れぬ男に、非常勤とは言えこの学院の講師職
を任せるのは断じて反対です!」
「しかしなぁ、ハーレイ君。彼を採用するのは、
セリカ君たっての推薦なのだよ?」
「リック学院長ッ! まさか、あなたは
あの魔女の進言を了承したのですか!?」
「まさかも何も、了承したからグレン君は
非常勤講師をやっとるんだろうに。確かに彼は
教職免許を持ってない。だが、教授からの推薦状
と適正があれば、非常勤に限り特例で採用が
認められるから何も問題なし……」
「その適正が問題なのです!
これを読んでもう一度お考え直し下さいッ!」
ずばん、と。 ハーレイは書類の束を学院長、
リックの腰かける机に叩きつけた。
「これは、先日に測定したグレンという男の
魔術適正評価の結果です! なんなのですか、
この惨憺たる結果はッ!」
「ふむ? ほほぅ、なんつーか特徴がないのう。
も全て平凡、良くも悪くも普通の魔術師……いや、
基礎能力だけ見れば中の下って所かの」
リックはハーレイから渡された書類の束を
手に取り、ざっと目を通していく。
「しかも奴の魔術師としての位階はたかが
「む? ……おお、彼はこの学院の卒業生
だったのか」
「卒業と言うのは語弊がありますがね。
奴は卒業魔術論文を提出していません」
ふん、と小馬鹿にしたように、ハーレイは
鼻を鳴らした。
「グレン=レーダス。十一歳の時に魔術学院に
入学……十一歳じゃと⁉︎」
書類に眼を通していたリックが驚きの声を上げた。
「通常、学院に入学する年齢は十四、五歳じゃぞ⁉︎
それを十一歳で、じゃと⁉︎」
「……ええ。当時は史上最年少で難関と名高い
学院の入学試験を通った少年、と言うことで
ずいぶん騒がれたようですな」
忌々しそうにハーレイは顔をしかめた。
「だが、奴の栄光はそこまでです。入学後の成績は
極めて平凡。そして、四年の魔術学士課程を経て
十五歳の時に卒業……という名目の退学。最終成績
もやはり平凡。特に見るべき物はありません」
「ふむ……どうやら、そのようじゃな……」
「問題は奴のその後の進路です! 奴は魔術という
至高の神秘の求道に一度は身を置きながら、卒業
から今日に到るまでの四年間、何もせずに無駄な
時間を過ごしていたのです! もし、その間、魔術
の道に邁進していれば、どれほどの魔術の発展に
貢献できたことか!」
確かに見ればグレンの経歴項目欄には四年間の空白
があった。
「ほう……四年間も無職でのう……一体、
何かあったんじゃろうか?」
「もう私の言いたいことはわかるでしょう⁉︎
奴のような低位で低俗な魔術師など、この学院の
講師として、ふさわしくないということです!」
「うーむ、別に我らが魔術学院の講師募集要項
には、経歴や位階による制限などなかったように
記憶しておるのだが?」
「明文化などされてなくてもそんなものは暗黙の掟
でしょうが!」
再び、ずだんとハーレイは机を叩いた。
「思い出して下さい、学院に在籍するそうそうたる
講師陣を!
高度な魔術を修め、研究成果を残した者達ばかり!
なぜグレンのような男が彼らと肩を並べられる
のですか⁉︎」
「ふむ……」
「あなたもあなたです、学院長! こんな重大な
書類に目を通さずに、なぜ二つ返事で彼の採用を
許可したのですかッ!?」
「そりゃあ、だって、ほら? セリカ君が推薦して
くれた男じゃろ? こう……なんか面白いこと、
やってくれるような気がせんか?」
リックはいたずら坊主のように口元を歪める。
「しません!あなたはあの魔女を過大評価
し過ぎだ! あの魔女は過去の栄光にしがみついて
己が我欲を振りかざし、守るべき秩序を破壊する
旧時代の老害ですッ!」
その時だった。
「言ってくれるじゃないか、ハーレイ」
学院長室内に突然響き渡った、その何気ない言葉に
ハーレイが凍りついた。
「ふふ、あのハナ垂れ小僧がまぁ、ずいぶんと
偉くなったもんだ。私は嬉しいぞ?」
振り向けば、部屋の隅に意地の悪い笑みを満面に
浮かべるセリカがいた。
「な……いつからいた?
セリカ=アルフォネア……」
「さ、いつからだろうな? 先生からデキの悪~い
生徒に問題だ。当ててみな」
「転移の術で……いや、時間操作……
そんな馬鹿な……魔力の波動も、世界則の変動も
感じられなかった……」
「はい、不正解。お前、まだまだ三流だよ、
精進しな。ついでに課題だ。今の不思議現象を
究明してレポート三百枚以内にまとめろ。
あ、これ、教授命令な」
「ぐぅ……ッ!」
屈辱に震えるハーレイを尻目に、セリカは
リックに向かい優雅に一礼する。
「ごきげんよう、学院長」
「おお、セリカ君。相変わらず若くて美人
じゃのう、羨ましいのう」
「ふふふ、学院長もまだまだ若くて素敵だぞ?」
「ほっほっほ、そうか! ならばセリカ君、
今晩辺りワシと一緒に……どうじゃ?」
「あはは、お断りだ。てか、相変わらず学院長は
お盛んだな。いい加減枯れろよ」
「ふははははっ! ワシは生涯現役よ!」
そんな温い空気を、ハーレイが机を叩いて
吹き飛ばす。
「私は認めんぞ、セリカ=アルフォネアッ!
あのような愚物を講師に据えるなど、絶対に
認めんッ! 何かあったら責任を取って
もらうぞッ!」
「……取り消せ」
その時、その低く漏れたつぶやきに部屋の空気が
凍てついた。
「別にお前が私をいくら悪く言おうが構わん。
陰であいつを悪く言うのも流す。だが……
私の前で、私に向かってあいつを悪く言うのは
許さん。取り消せ。謝れ」
セリカの圧倒的存在感がハーレイをあっと言う間に
絡め取っていた。
「な、にを……グレンとか言う男が……取るに
足らない三流魔術師である…のは事実……
だろう……が……ッ!」
脂汗を垂らしながら、ハーレイは喉奥から声を絞り
出すように言う。そんなハーレイをセリカは目を
細めて冷ややかに流し見る。
「お前にこれが受けられるか?」
見れば、セリカは左手に嵌めていた手袋を
ゆっくりと外しにかかっていた。
「——ッ⁉︎」
セリカのその動作を見て取ったハーレイは
目に見えて狼狽し、青ざめた。
「わ、わかった……取り消す……私が……
悪かった……」
言質を取った瞬間、セリカはにっこりと笑い、
外しかけていた手袋を嵌めなおした。
「くそぉ……覚えてろよッ!」
捨て台詞を吐いて、ハーレイが学院長室を逃げる
ように出て行く。残されたリックとセリカの間に
しばらくの間、沈黙が流れた。
「やれやれ。相変わらずおてんばじゃのう。
学院長室が吹き飛ぶかと冷や冷やしたわい」
呆れたようにリックはため息をついた。
「だが、セリカ君。流石に今回の
一件は君の差し金でも無茶だよ」
「……わかってるよ。本当にすまんと思ってる」
「なんの実績もない魔術師を強引に講師職に
ねじ込む。ハーレイ君に限ったことではない、
恐らくあの反応が学院に関わる者達の総意
じゃろうな……」
セリカは少しの間、押し黙ってから迷いなく
言った。
「責任は取るさ。アイツがこの学院で為すこと
やること、全て私が責任を取る」
「そこまでして彼を推すか……彼は君にとって
なんなのか……聞いていいのかな?」
「はは、別に浮いた話も、特殊な因縁もないよ。
ただ……」
「ただ?」
「あいつにはただ、生き生きとしていて
欲しくてな。まぁ、老婆心だよ」
セリカはリック学院長に言うと、セリカは
リック学院長に『ある頼み事』をしていた。
「学院長……実は折り入って頼みたい事が
あるんだが」
「おや? 久しぶりにセリカ君が真面目な話し
とは……一体、何かのう?」
「あぁ、実は、転校生の『ノワール=ジャック』
という男についての書類などを全部、見せて
もらいたいのだが……」
「転校生のノワール君のかね? 構わないが……
どうしてかね? 君らしくないと思うのだが?」
「なに、少しきになる事がただあるだけだよ……」
「ふむ、分かった……こちらも出来るだけ
早く何とか出来る様に手配しよう……」
「あぁ、すまないな……」
「なぁーにワシとセリカ君の仲じゃないか‼︎
全くもって気にする事はないぞ?」
「そう言ってくれると助かる……」
(私の気のせいなら良いのだがな……)
セリカはリック理事長に笑顔で微笑んでいた。
(とはいえ、駄目過ぎだろ……)
「うわー、見ろよ、ロッド、あの講師を……」
「あぁ、スゲェな……目が死んでる……」
「あんなに生き生きとしていない人を見るのは
初めてだ……」
教室のあちこちから、ひそひそと響く囁き声。
「で〜〜多分、こうだから~~きっと、こんな感じで
〜〜で~~大体、こうで〜」
生徒達の蔑みきった視線の先では、脳天に盛大な
タンコブを乗せた男……グレンがまるでゾンビの
ように緩慢な動作で教鞭を取っていた。
「あぁ、ヒューイ先生はよかったなぁ……」
「ヒューイ先生、なんで辞めちゃったんだろ……」
「……ルミアさん、さっきからみんなが言ってる
ヒューイ先生って誰?」
「あっ! そう言えば確かノワール君は転校して
来たから分からないよね? ヒューイ先生は私達の
担任の先生だったんだけど、何故か最近になって
学院をやめちゃって」
「なるほど……」
(そのヒューイって奴はますます臭いな……)
「ルミアさん、ヒューイ先生が辞める理由を
出来れば誰かから聞いたりしていないかな?」
「え? えーとね 確かね……噂ではね……一身上の
都合で学院を退職したらしいよ? でも、どうして
ノワール君がヒューイ先生の事を聞くの?」
「いや、何となく気になってさ? それにみんなが
言ってるヒューイ先生はどんな人物だったかな〜
ってね? 教えてくれて本当にありがとうルミアさん
かなり助かったよ。」
「どういたしまして……あと私の事はルミアで
良いよ?」
「分かった、ありがとう……ルミア」
ノワールはルミアの姿を見て重なってイルシアの
笑顔に似ていて少し躊躇いながらもお礼を言った。
(しかし、これは一度ヒューイって奴を怪しいな……
かなり調べてみる必要があるな……それにしても、
『愚者』の授業は全くやる気無いにしても
かなり酷過ぎだろ……)
端的に言えば、グレンの行う授業は今までに
見たことない最低最悪の授業だった。とにかく、
聞いていて授業の内容が理解できない。そもそも
説明になっていない。だらだらと間延びした声で
要領の得ない魔術理論の講釈を読み上げ、時々、
思い出したかのように黒板に判読不能な汚い文字
を書いていく。
生徒達は授業の内容を何一つ理解できなかったが、
このグレンとかいう非常勤講師が恐ろしくやる気が
ないことだけは理解できた。こんな授業は拝聴する
だけ時間の無駄であり、その時間を自分で教科書を
開いて独学した方がまだましだった。
それでもごくわずかに、この最低の授業からでも
何か得るべきものを得ようとする真面目で健気な
生徒もいた。
「あの……先生……質問があるんですけど……」
とある小柄な女生徒がおずおずと手を上げる。
名前はリン。少し気弱そうな、小動物的雰囲気を
持つ少女だ。
「なんだ? 言ってみな」
「ええと……先ほど先生が紹介した五十六ページ
三行目に載っているルーン語の呪文の一例なんで
すが……これの共通語訳がわからないんです
けど……」
「ふっ、俺もわからん」
「えっ?」
「すまんな。自分で調べてくれ」
あまりにも堂々とそんな風に返され、質問した
リンは呆然と立ち尽くしていた。こんなグレンの
対応に、元々腹を立ててはいたが、ますます腹を
立てたシスティーナが席を立ち、猛然と抗議した。
「待って下さい、先生。生徒の質問に対して
その対応、講師としていかがなものかと」
刺々しいシスティーナの糾弾に、グレンは心底
面倒臭そうにため息をついた。
「あのなぁ。だーかーら、俺もわからんって
言ってるだろ? わからない物をどうやって
教えりゃいいんだよ?」
「生徒の質問に答えられなければ、後日調べて次回
の授業で改めて答えてあげるのが講師としての務め
だと思うのですが?」
「むぅ……だったら、やっぱ自分で調べた方が
早いんじゃねーか?」
「そういう問題じゃありません!
私が言いたいのは——」
「……あ、ひょっとして、お前らってルーン語
辞書の引き方、まだ教わってねーの? それじゃ
調べられんか……しゃーねぇ。面倒だが、俺が
調べておいてやるよ。あーあ、余計な仕事
増えちまった……」
「ぐ…辞書の引き方くらい知ってます!
もう結構ですッ!」
どこまでもやる気ない態度を改めようとしない
グレン。
肩を怒らせて、荒々しく着席するシスティーナ。
それをはらはらした様子で見守るルミア。
その後ろで溜息をついているノワール。
教室内の雰囲気は最悪。クラス中で募る苛立ち。
無駄に流れる時間。
こうしてグレンの記念すべき最初の授業は、
何も得る物のない不毛な時間の浪費に終わった
のであった。
「やれやれ、分からなくはないがな……」
ノワールは後ろの席からグレンやルミアの行動を
観察して、情報収集を隠密に行う。
グレンの初授業終了後、学院の女子更衣室内にて。
身に着けている制服やケープ・ローブを脱ぎ捨て、
上下の下着姿となったシスティーナは木製ロッカー
の中にそれら衣類を叩き込みながら、苛立ちの
あまり吐き捨てた。
「まったくもう、なんなの⁉︎ あいつ!」
「あはは……まあまあ」
ルミアがあいまいに笑いながらなだめるが、
システィーナの怒りは収まらない。
「やる気なさ過ぎでしょ⁉︎ なんであんな奴が
非常勤とは言え、この学院の講師をやってる
わけ⁉︎」
「そうだね……グレン先生にはもうちょっと
頑張って欲しいかも」
次にシスティーナ達が受ける授業は錬金術実験
である。確かにシスティーナ達が普段、着用して
いる制服やローブは身体回りの気温・湿度調節魔術
—黒魔【エア・コンディショニング】が
されており、見た目以上に夏は涼しく冬は暖かい、
とても便利な代物だ。男性と異なり、その生来の
外界マナに対する親和性の高さを伸ばすため、
魔術の習熟初期段階では薄着で過ごすことを推奨
される女性にとって、その制服は強い味方である。
だが、錬金術の実験は実際に生徒達の手で魔法素材
を加工し、器具を操作し、触媒や試薬を扱う授業だ。
その実験内容によっては衣服がひどく汚れたり、
衣服に薬品の臭いが移ったりしてしまう場合がある。
それゆえに、システィーナのクラスの女子生徒一同
はこの更衣室に集い、実験用のフード付きローブに
着替えている真っ最中であった。
半裸になった少女達の、瑞々しく張りのある肌。
子供から大人へと移行する思春期の少女特有の
艶かしくも清楚な身体の線。誰もが惜しげもなく
その若さの証をさらしている。
年頃の男子生徒達には目の毒過ぎる肌色の
ユートピアがそこにはあった。
「はぁ……確か次の錬金術の実験もアイツが
監督するんでしょ?」
「うん、そうだよ。グレン先生はヒューイ先生の
後任だから」
「うぅ……胃に穴が開きそう」
その時、顔をしかめていたシスティーナが、突然、
何か思いついたかのようにほくそ笑んだ。隣で
するりと肌を滑らせて衣類を脱ぎ、下着姿と
なったルミアを流し見る。
「これは……癒しが必要だわ」
「システィ?」
システィーナは戸惑うルミアに素早く近づき、
ルミアの背後から突然、抱きついた。
「えい!」
「きゃ⁉︎」
システィーナは思いっきりルミアのすべすべの
背中に肌を密着させ、下着に包まれたルミアの
胸の二つのふくらみに手を当てた。
「あー、やっぱりルミアの身体は気持ち良いなー、
肌は白くて綺麗で、きめ細かくて」
「ちょ、システィ、だ、だめだよッ!」
甘える子猫のようにすりつくシスティーナの
腕から逃れようと、ルミアは顔を真っ赤にして
抵抗する。が、システィーナの腕は蛇のように
ルミアに絡みつき、逃げられない。
「きゃん! システィ、あっ、だめ!」
「むむむ……ルミア。
貴女、なーんか順調に育ってるわね……」
システィーナは掌に伝わってくる、微かに芯のある
柔らかな感覚が以前とは微妙に変化している事実に
眉根を寄せた。ルミアの胸は大ぶりではなく、
小ぶりでもない。まるでルミアと言う少女の身長
体格から精緻に計算したかのような、理想の黄金比
と造形美を保った双丘だった。
「はぁ……良いなぁ、これ。私はなぜか胸には
栄養行かないからなぁ……うぅ……癒しどころか
私、なんだか落ち込んで来たんだけど……」
「ちょっと……やめてってば、システィ。
そんなに強く……あ、あんッ!」
「あー、もう、羨ましいなぁ! ほれほれ、
良いのはここかー? ん? ん?」
「ひゃんっ! い、いやっ! やめて……」
どうやら、こういう場で年頃の少女達のやること
など同じようなものらしい。
「ず、ずるいですわ、テレサ!
あなた、いつの間に——」
「うふふ、成長期ですから」
「わたくしを差し置いて、けしからんですわ!
ええい! こうしてやりますわ!」
「きゃっ! ウェ、ウェンディさんっ⁉︎」
更衣室のあちこちで似たような悩ましい光景が
展開されていた。
女子生徒一同、きゃいきゃいと姦しくも楽しげに
騒いでいる。だが、そんな少女達の前で、更衣室
の扉が突如、ばぁんと乱暴に開かれた。
「あー、面倒臭ぇ! 別に着替える必要なんか
ねーだろ、セリカの奴め……ん?」
全開となった扉の外に、借り物の実験用ローブを
肩に担いだ不審な男が立っている。
グレンであった。
扉から最も近い位置にいたシスティーナとルミア
の二人と、グレンの目が合う。
三人とも無言で硬直。
そして、今まで半裸の少女達が妖精のように
戯れる楽園はどこへやら。
突如、その場に氷結地獄が展開され、時間すらも
完全凍結し、全てが沈黙した。
「……あー」
グレンは部屋の中をじっくりと見渡す。そこに女子
生徒達しかいないことを確認すると、面倒臭そうに
頭をがりがりかいて、更衣室の外の プレートを
見やる。
「昔と違って、男子更衣室と女子更衣室の場所が
入れ替わってたんだな……まったく余計な
コトしやがる」
その場に、なにやら凄まじい殺気が徐々に渦巻き
つつあった。
その抗えない流れを前に、グレンはうんざりした
ようにため息をついた。
「やーれやれ。これが最近帝都で流行の青少年向け
小説でよくあるラッキースケベ的な展開って
やつか?はは、まさか身をもって体験することに
なるとは思わなかったが」
システィーナを筆頭に、ゆらりと少女達が
動きかけた。
グレンは、それを威風堂々と手で制した。
「あー、待て。お前ら落ち着け。俺は常日頃、
こんなお約束展開について物申したいことが
あってな。まぁ、聞いてくれよ。末期の
水代わりに」
少女達の動きが止まる。死刑囚も最後に
何か言い残すことは許されるのだ。
「俺、思うんだが……その手の小説の主人公って
馬鹿だよな? ラッキースケベ的イベントを発生
させた時点で、ヒロインにボコられるのはもう確定
してるのに、どうして慌てて眼を背けたり手を
引っ込めようとしたりするんだろってな。たかが
女の裸をちらっと一目見るのとボコられるのが
等価交換だなんて割に合わねーだろ?
どう考えても」
そんな最低最悪な前口上の後、グレンはここに
高々と魂の宣言をする。
「だから、俺は——この光景を目に焼きつけるッ!」
くわ、と。グレンは目を血走らせんばかりに
見開き、腕を組み、修羅の表情となって
仁王立ちし、眼前に広がる肌色成分多い光景を
凝視して——
「「「「この—ヘンタイ—っ!」」」」
その日、学士二年次生二組の女子生徒達による、
とある非常勤講師への目を覆わんばかりの凄惨な
校内暴力事件が発生した。
ちなみに、その日の錬金術実験は担当する講師が
人事不省に陥ったため中止となったらしい。
「全く……教師になっても……ここまで駄目人間に
なっているとは……」
その噂を聞いた時、ノワールは呆れながらも己が
行う任務を全うした。
今回のグレンは全く持って駄目(クズ)
人間でしたね…… (´・ω・`)
次のお話ではグレンがどうなるか?
ノワールのこれから活躍が出来るように頑張って
書きたいです‼︎
楽しんで読んでもらえると嬉しいです‼︎ (゚ω゚)