霧の湖、その名の通り霧が深くて湖の全体を確認できない。冬場だし妖怪も寒くて近づきたがらないんだろうな。しばらく飛んでるが誰にも会わない。
「おいお前、ここはあたいの陣地だぞ!何勝手に入ってきてるんだ!」
「悪いな。すぐに出て行くからそこを通してくれないか?」
突然水色の女の子がそう言って俺の前に現れた。
「ここから先を通りたければあたいを倒してからにしなさい!まぁ、サイキョーのあたいを倒せるなんて無理でしょうけど。」
背中に羽が見える、妖精か。妖精は腰に手を当て胸を張り…要するに偉そうにそんな事を言ってきた。
「チルノちゃーん!無闇に戦いふっかけちゃ危ないよー!」
後ろの方から緑の髪の女の子が飛んできた。
「大ちゃんは後ろに下がってて!こいつはあたいがやるの!」
「ちょっと待った!俺はあんまり荒事は避けたいんだ。と言うわけでここは一つゲームをしないか、チルノ?」
「な、なんであたいの名前がわかった⁉︎」
いや、さっき大ちゃんが言ってたし。ただこの短い会話でわかった。このチルノとかいう妖精、少し残念なやつと見た。
「まぁ、荒事は避けるから大ちゃんも下がっててくれて大丈夫だ。」
「は、はい。」
大ちゃんはいい子だ。大人しく下がってくれた。
「では、今からやるゲームは簡単。相手の考えてることを当てるゲームだ。」
「え?そんなことできるのか?」
「まさかチルノ、できないのか?」
「できるぞ!お前の考えてることなんておみとおしだ!」
「よしこい、まずは俺の考えてることを当ててみろ。」
このゲーム、心を読めない限り違うといえば勝負がつかないのだがチルノが本当に俺の考えてることを言い当てれば素直に頷こうと思っている。
ちなみに今俺が考えてることは(今日の夕飯は何にしようかな)だ。
「わかったぞ!今お前はお腹が空いたと思っている!」
しばらく考えた後チルノは自信満々にそう答えた。食べ物であるところは当たっているな。意外と惜しい。
「残念、今俺は今日の夕飯のことを考えていた。さて、次は俺の番だ。」
「あたいにだってわからなかったんだ。お前にわかるわけないね!」
「簡単だ今お前は、自分の考えてることなんて俺にはわからないと思っている!」
「な!!なんでわかった!」
まぁ、当然のことを言っただけだ。なのにチルノは本気で驚いている。大ちゃんも後ろで頭を抱えている。
なんか2人に申し訳ない気持ちが湧いてきたな。
「とにかく、このゲームは俺の勝ち。先に行ってもいいよな?」
正直純粋な子を騙したような罪悪感からこの場から早く離れたい。
「ま、待て!」
通り過ぎようとする俺をチルノが引き止めた。俺が悪かったから早く行かせてくれ。
「次会った時はあたいが勝つ!だから。」
「だから?」
「名前、教えろ!」
「俺は智慧だ。次会った時はお前の得意な勝負しよう。」
そう言って俺はその場を去った。
目的地が見えてきた。目が痛くなるほど紅い色を意識した大きな館だ。あれがルーミアの言っていた館で間違いないだろう。
そして館の門の前には赤い髪の華人服のような感じの服を着た女がいる。
「止まってください。今は館の関係者以外通さないようにと言われているんです。」
あれは中国拳法の構えか。本で読んだだけだからこの動きで、こいつ只者じゃないな!みたいなことは言えないが異変の関係者である以上ある程度の実力は想像できるな。
「わかった。素直に諦めるから、その構えを解いてくれ。」
「あれ?諦めてくれるんですか?」
拍子抜け、といった様子で構えは解いてくれた。こんなところでいきなり戦闘なんてごめんだ。俺の目的はただの調査みたいなものだからな。
「それじゃ、見張り頑張ってな〜。」
「は、はい。」
そして俺はその見張りからある程度離れ、次回から離れたところで足を止めた。
せっかくここまできたんだ。敵の内情も少しくらい知っておきたい。と言うわけで俺はその場に穴を掘った。正面突破が無理なら下から行けば良い。空を飛んでいく手もあるがそれだと目立つからさっきの門番に見つかるのがオチだろう。
流石にこの館も地中には見張りが行き届いていないようで進行は非常に順調だった。ん?この先に地下室があるみたいだな。そこから侵入するか。
「よっと。穴は…一応直しとくか。この穴が見つかったら侵入者がいることがバレるからな。」
部屋に出た俺は穴を閉じ周りを見回す。なんだこの部屋は。
「お兄さん、誰?」
そこにいたのは金髪で色鮮やかな不思議な羽を生やした少女。侵入、いきなりバレたな。
「私と遊んでくれるの?」
「……遊ぼうか。」