Fate/School Life 奏でるは立香の思い 作:日々はじめ
私の名前はジャンヌ・ダルク・オルタ。クラスはアヴェンジャーという、まぁいわゆる混沌としたものだ。
私を焼き殺した祖国。裏切った国民。そして、世界そのものに対して憎悪念を抱いたジャンヌ・ダルクでありジャンヌ・ダルクではない存在。それが私だ。
そして、今私はカルデア学園というのに在籍している。最初はサーヴァントなのだから勉強などどうだっていい、戦えればいい!という考えしかなかったのでそれを校長のオルガマリーという女にぶつけてみたら私よりも下の実力と思わせる赤い服装に身を包み肌が黒ずんだ青年と戦わされた。
結果は、完敗だった。
一時的なマスターとしてマリーと契約したがまるで相手の掌で躍らされているように軽々しくあしらわれてしまった。
そして、そのアーチャーは私にこう言い放った。
「ふむ。実力があるが少しばかり頭が弱いらしいな」
…あぁ!!今思い出してもムカつくわ!!この竜の魔女をあそこまでコケにしたのはあいつで二人目よッ!!しかも、この学園の料理長で味がとてもいいのも許せないわ!!
「どうしたの?オルタ?」
オルタが一人で悩みイラついていると座っている席の机に手を乗せて下から顔を出してくる金髪の聖女が顔を出した。
彼女の名前は、ジャンヌ・ダルク。こいつは私の――お姉ちゃんだ。
「――なによ?」
「なんか、悩んでたから…。力になれることとかない?」
心配そうに覗き込んでくる。その純粋な瞳に覗き込まれたら普通の男は落ちてしまうほどの破壊力がそれにはあった。
「何もないわよ」
「ほんとに?」
「あぁ!もううっさいわね!なんでそんなに私に構うのよ!!」
つい、苛立ちから怒鳴ってしまうがジャンヌはそれを何とも思わず両手を腰に当てドヤ顔で言い放った。
「お姉ちゃんですからっ!」
「吼え立てよ!我が憤怒!」
そこまで言って思い出す。今はマスター不在であることを。宝具はマスターの魔力が無ければ発動できない。最低限度の魔力しか受け取っていない私たちには発動は不可能だということにも。
「ふっふーん!どうしました?その先は言わないんですか!?」
宝具は撃てない。それはこの学園の常識と化している。にも関わらず痛々しいセリフを吐いてしまった。周りから見れば引いてしまっても可笑しくはないだろう。
―――この煽りスキルEXの聖女をどうしてやろうか?
顔に血管が浮き出ていても不思議ではないほどの怒りと共に今日の朝のあの出来事が頭を過ぎる。
一緒に住んでいるためジャンヌの着替えとかも把握している。そして、今日の朝は偶然そのお着替えと遭遇した。下着の色は確か…。
少しばかり破廉恥だと思う自分がいるが背に腹は代えられない。この聖女に鉄槌を下さなければ気が済まない。
「聞きなさい!獣を秘めたる男性諸君!ここに一つの朗報があるわ!」
このクラスは約30人、内男性が半数といった具合。朝のSHL前のため全員が席に座り駄弁っていたがオルタの呼びかけに男たちが反応する。
突然の妹の奇行に嫌な予感を感じながら身をたじろぐ。
「あっ、あの?オルタさん?」
「ここにいる聖女の下着の色を知りたいものは喝采を!知りたくなければ静寂を!!」
「ちょ、ちょっと何言ってるの!?」
オルタの提案はすぐにジャンヌは顔を真っ赤に染め上げ短いスカートを押さえ睨み付けた。
肝心の男どもは数寸静かにすると目をギラつかせ片手を掲げ叫ぶ。
『竜の魔女に祝福を!聖女の下着に刮目を!!』
その悍ましいほどの光景にどす黑い笑みを顔に張り付かせながらその期待に応えるためオルタは声を張り上げる。
「聞きなさいッ!この聖女の下着はし――」
「ごめん、お姉ちゃんが悪かったから!!オルタ許してぇ!!」
潔く謝罪を述べるジャンヌ。しかし、これで終わっては鉄槌を下したともいえない。なら、やるべきことは一つだろう。
オルタはジャンヌに笑みを投げかける。
それは、謝罪を受け入れてくれたと受け取ったジャンヌは目尻に涙を浮かばせながらオルタの名前を呼ぶ。
しかし、慈悲などなかった。
「白よ」
『ウオオオオォォォォォォォ!!!!!!』
「いやぁぁぁぁ!!」
男は雄たけびを、ジャンヌを悲鳴を。まさしく、アヴェンジャーにふさわしい光景がそこにはあった。
女性たちはただ静かに蔑んだ眼差しを男どもに向けるが誰一人として気が付かない。
「何やら騒がしいわね?」
カルデア学園の校長であるオルガマリーがぽつりとそう零した。
「まぁ、いいわ。藤丸君、君は聖杯戦争までにサーヴァントと共に勝ち進みなさい。優勝するとどんな願いでも叶えてくれる夢のようなものを進呈するわ」
マリーがそう言うと藤丸は少し考えるそぶりを見せる。
「本当に何でもなんですか?」
「まぁ、倫理に反するのはおすすめできなけどなんでもよ」
「そう、ですか…」
藤丸は何かを決意するとともに強い意志を感じさせる顔つきに変わる。
「―――」
突然の変わりようにマシュとマリーは何があったのか聞きたくなったがそれは心の中に閉まっておいた。今、聞いてはいけない気がしたからだ。
マリーは次にクラスの説明をして初めての会合に幕が下された。
マリーから聖杯戦争の概要とクラスについて聞いて校長室を後にした藤丸は只管動悸を抑えようと必死になっていた。
生まれて初めて恋をした。
その事実が藤丸の体を締め付ける。息も少し荒くなる。
「先輩、大丈夫ですか?」
マシュが心配そうに声を掛ける。
心配させるわけにもいかないので無理やり落ち着きを取り戻し大丈夫と告げる。やることは決まった、半年後行われる聖杯戦争。それで優勝して告白しよう。
オルガマリーは形だけの校長というのはマシュから聞いた話だ。ア二ムスフィアの家系であるマリーだったが前校長だった父親が没したことにより代わりにといった具合で請け負っているらしい。無論、学生としても滞在しているため運がよければ一緒に授業を受けることも可能だ。
そして、この学校を本に仕切っている人物。レフ・ライノールという方らしいが挨拶をした際嫌な雰囲気がその身から発しているのに気が付いた。
一応、用心しておこう。
「ここです、先輩!」
「ここが、俺のクラス…」
クラスの前まで案内されるとマシュはじゃあ私も授業がありますので!っと言って早足で去っていった。
深く深呼吸をして扉を2回たたいて大きな声で入室する。これから俺の輝かしいスクールライフが始まるんだッ!
「こんにちわ!今日からここに転入してきた藤、丸、立香…え?」
藤丸は元気よく入室した。これはまずいい。
教室内は全員がいた。これもまだ許容範囲だ。
教室の中央で涙に暮れる金髪美女と高らかに嘲笑う似たような美女に加え今日まで生きててよかったとか両手を組み神よと拝んでいたり様々なことをしている男たち、それに蔑んだ視線を送っている女子生徒。一部はパンをむさぼっているがそれを気にする余裕もない。
なんだこれは。
藤丸の学校生活の一ページには地獄という文字が刻まれた瞬間だった。