広大に広がる森林。
その一角でけたたましい銃撃音とその銃声にかき消されないようにか、悲鳴にも似た声で通信機に指示を飛ばす1人の艦娘の姿。
不知火「各員牽制射撃を行いつつ、現在の陣形を保ったまま約2km先の市街地を目指します!!」
不知火が指揮するは自信含めた総勢28名の小隊。更に現在28人を4名ずつに分け、系7分隊が一定の間隔を保った状態で森林を市街地へ向けて駆けている。
不知火の小隊を追撃するは歯を剥き出しにした狼の部隊章をつけた4人の中の1人とその者が指揮する同じエンブレムをつけ、黒色のバラクラバで顔を隠した数10名の部隊。
数時間前
紅音「おはよう諸君」
グラウンドにて佐世保の全艦娘が集合させられ、マイクを握って居る紅音へ視線を向けている。
紅音「昨日あんな事があって混乱してたり筋肉痛の者も居るかもしれんが、今は質問を一切受けつけない。明石、説明を」
明石「はい、と言う事で寝起きでやる気が無い紅音に変わって私こと明石が説明します」
「パチン!」
明石が指パッチンをすると、明石の後ろから数字が表示されている巨大なモニターが地面からせり出してくる。
明石「約2週間後、国連軍東アジア基地で人類の存亡を賭けた1大作戦についての作戦会議が開催されます。作戦の内容は一般艦娘にはまだ言えない内容ですが、おそらくあなた達全員が経験した事のない規模の作戦です」
明石「そしてこの数字は作成会議の日にちまでの残り時間です」
明石「この作戦に参加するのは軍隊だけではありません。大手のPMC数社も参加する事が決定しています」
「ザワザワ......」
『PMC』と言う単語に艦娘達に動揺が走る。
明石「......大規模な作戦ともなればPMCは勿論、民兵組織と協力する事もさほど珍しい事ではありません。それにこの作戦に参加予定の大手PMC4社はそれぞれ何度も大規模な軍事行動に参加、尚且つ深海棲艦を何度も倒していると言う実績を持っています」
明石「少し話題がそれたので戻りますが、皆さんどうやら過去の資料を見る限り大規模作戦に参加した経験が無いようですね」
明石「なので急ですが今から訓練をします。それも陸上戦闘の」
そう言うとどこからともなく、大きめのボストンバックを持ったアッカー達が現れ、艦娘1人1人にバックを渡していく。
明石「そのバックの中には皆さんが使う装備一式が入っています。そして今から4小隊に別れてもらいます」
紅音「ここからは再び変わって俺が説明する。まずバックを開けてくれ」
艦娘達は各々にバックを開けていく。
紅音「ワッペンがあるはずだ。ローマ数字で「Ⅰ」「Ⅱ」「Ⅲ」「Ⅳ」のどれかが縫われていると思うが、それは各員の部隊だ。小隊長については既に決めてある」
紅音「第Ⅰ小隊長不知火!」
不知火「は、はい!」
紅音「第Ⅱ小隊長木曽!」
木曽「了解だ」
紅音「第Ⅲ小隊長天龍!」
天龍「おう!」
紅音「第Ⅳ小隊長長門!」
長門「腕が鳴るな」
紅音「もう一度言うが、現在質問は受け付けない。質問がある者は後で来い」
そう一度区切ると再び話し始める。
紅音「今から5時間各員に銃の使い方やCQC、CQB等の基礎を教える。他にも砂漠や森林、豪雪地帯様々な環境での戦い方を5時間で叩き込む。その後1つ実地訓練を踏まえたサバイバルゲームをしてもらう」
紅音「これだけ大所帯だと俺や川内、海風、利根、比叡5人では全員に教えるのは難しい。そこで今回俺の親しい者達を呼んだ。出てきてくれ」
紅音の左右の時空が歪んだように感じると、50人近くの黒色の戦闘服にバラクラバで顔を隠した兵士が姿を現す。その様子を見て1人の艦娘が「光学迷彩......!?」と呟く。そしてその兵士達の前に居るスカルバラクラバの4名が隊長格である事は明白である。
紅音「紹介しよう。彼らは民間軍事会社『World War Security』と言う超大手のPMCが有する特殊私兵部隊『WOLFHOUND』だ」
紅音「まずお前らから見て俺の右隣に居るのが『ボルト』だ」
ボルト「よろしくなのです」ペコッ
紅音「その隣、ロングコートを着ているのが『ジャック』」
ジャック「......」
紅音「んで俺のすぐ左隣が『ライトニング』」
ライトニング「よろしくね!」
紅音「その隣が『フューリー』」
ヒューリー「これは訓練......になるのかな?」顎抑え
紅音「そして4人の指揮下の隊員達だ」
後ろの隊員達は休めの姿勢を保ったまま視線を正面に固定している。
馴染みのなる茶色の目から青い目、その他にも多種多様な目の色や肌の色を持った人種が集まっている事が僅かに空けられた視界を確保する部分から分かる。
紅音「彼らがこれから5時間の教官にしてその後のサバイバルゲームの対戦相手の内の1チームだ。手加減はするなと伝えてある、気を引き締めろ」
その発言から時は進み冒頭に戻る。
ジャック「こちら、エイハブ......ポイントアルファに、誘導、成功」
ボルト『こちらクィークェグ。こちらも同様に狐をポイントアルファに誘導成功』
ライトニング『エイハブ、クィークェグ了解したわ。スターバックも同じく追い込みに成功』
ヒューリー『イシュメールだよ。こっちも成功』
ライトニング『それじゃあブラッド・スポーツと行きましょうか』
ボルト『格下相手でも油断はダメなのです』
ジャック「窮鼠、猫を、噛む......」
ライトニング『分かってるわよ。油断はしないわ』
ライトニング『......ポイントアルファ侵入まで秒読み。10、9』
ジャック「......」スッ
ジャックが手を上げると各員がGPNVG-18と言われる四眼のナイトビジョンを展開する。
ライトニング『6、5』
ボルト『......』
ヒューリー『......』
ジャック「......」
ライトニング『3、2、1、状況開始! 状況開始!』
とある強襲揚陸艦の甲板にて。
夕張「......時間ね」
明石「とんでもねぇ、待ってたんだ」
揚陸艦のすぐ上空を無数のF/A-18E/F、F/A-18Cが編隊飛行しながら市街地へ向かっていく。その編隊が飛び去ると空母、揚陸艦からこれまた無数の兵員輸送ヘリ、ホバークラフトが発進する。
夕張「私もそろそろ行くわ」
明石「はい。お気をつけて」
夕張は髪を靡かせながら後部ハッチからV-107に乗り込むと、すぐにヘリは飛び立つ。
ヘリの小さな窓から見える『大艦隊』と言う言葉が相応しい海を覆い尽くす艦艇群。窓から見えるだけでも空母8隻、揚陸艦10隻強、駆逐艦と巡洋艦に至ってはもう数え切れない。そしてこの他にも倍近くの数が視界外に存在する。それを考えただけで思わず夕張は苦笑する。
明石「さぁ見せてあげましょうか。世界一のハイテク軍隊を」
ゲームは始まったばかり。
投稿が遅くなって本当に申し訳ない(某博士並み感)