古宮 咲の暗殺教室   作:隔離場

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2話 授業の時間

……疲れた。

 

今日からE組の生徒として生活するということで理事長に挨拶をしてきたのだが、やはり彼は不気味な人だ。心の底が見えない。

 

結果的に特に何も問題はないということを告げられた。優秀な生徒を失うのは云々と言っていたが、全く感情が籠っていないので心に全く響かなかった。

 

最後に何か注意事項があるかと質問すると、E組として相応の態度をとれとの事。要するに本校舎の人間に逆らうなという事だろう。……私はA組のときから逆らおうと思わなかったのでいつも通りにしろという事だろう。何ら問題ない。興味のわかない人間に立てついても時間の無駄だ。

 

時計を見ると現在時刻は6時ちょうど。余裕をもって登校してから8時に理事長室を出ようと思っていたのだが、少し……いや、かなり早かったようだ。

 

……まあいい。理事長がこの時間からいるという事はE組の教師も一人くらいは来ているだろう。早めに登校して悪いことはないだろうし、さっさと向かってしまおう。

 

 

◇◆◇

 

 

……正直E組の人たち舐めてた。

 

本校舎から1kmの距離とかはもはやどうでもいい。猪やら蜂やらが出没することは聞いていない。蜂に関してはこちらから何もしなければ大抵は向こうも何もしてこないのでどこかの馬鹿が巣を突かない限りは安全だ。問題は猪のほうだ。なぜ私に突撃してくる。袖に仕込んだゴム製ヌンチャクで気絶させたからいいものを、鍛えていない人が遭遇していたら多少なりとも怪我をしているところだ。とりあえずワイヤー(ゴム製)で縛り上げて山頂まで引きずっていった。後で調理してやる。

 

 

 

 

心の中で愚痴りつつ山道を進み校舎が見えた時、後ろから声が聞こえた。

 

「嗅いだ事の無い匂いがして来てみれば、あなたが今日から編入してくる古宮さんでしたか?」

 

いきなり聞こえた声に驚きつつ振り向くと、いつの間にか体長約2m程の黄色い巨大ダコが黒い服を着た状態で立っていた。うん。異形の生物だわこれ。

 

というか匂いで分かるのか、猪と格闘して汗をかいたから変な匂いがしないといいが。

 

「私の主人の命を受け、こちらに転入させていただくことになりました。古宮 咲です。あなたがE組教師のイケイノセイブツさんですか?」

「にゅや!?イケイノセイブツ!?」

「はい。主人からはそう伝えられたもので……違いましたか?」

「いえ、そう伝えられていたのであれば仕方ありません……。ですが先生のことは殺せんせーと呼んでください。古宮さんも卒業までに先生を殺せるといいですね~、ヌルフフフ」

 

そう言ってイケイノセイブツこと殺せんせーは顔色を緑と黄の縞模様に変える。……なかなか面白い皮膚をお持ちのようで。

 

ところで殺せんせーの敬称はどうすればよいのだろう。一応名に先生とついているのでそのままで呼べばいいのだろうが、少し気になった。

 

「了解しました。殺せんせー」

「はい、では皆さんに紹介しましょう。先生についてきてください」

 

 殺せんせーに連れられ、校舎内の職員室に入った。

 

「古宮 咲です。失礼します」

 

「来たか、今日からよろしく頼むぞ」

「よろしくお願いします」

 

声をかけてきたのは凛々しい顔立ちをした烏間 惟臣という体育担当の先生で、表向きの担任をしているらしい。……身体つきが凄い。戦ったら絶対に勝てないだろうなぁ……。

 

「とりあえずそろそろ始業の鐘が鳴る時間だ。教室で挨拶をしてくるといい」

「ニュヤ、そうですね。では古宮さん、行きましょうか」

「はい」

 

殺せんせーの後ろを歩いて教室に向かう。床がギシギシ鳴っているのが不安だが、この調子ではまだ抜けないだろう。

 

殺せんせーは私に指示があるまで廊下で待つように言い、先に中へと入っていった。

 

教室の中の声は私にも聞こえてくる。

 

『HRを始めます。日直の人は号令を!』

『起立! 気をつけ! 礼!』『ドパパパパパ!!』

『発砲したままで結構ですので出席を取ります』

 

……なかなか楽しそうなクラスだな(汗)

 

音量からしてクラス全員の一斉発砲とかなのかな?殺せんせーが余裕そうなのが少し腹立たしい気もする。

 

『今日も遅刻なし…っと。素晴らしい!……さて、今日は以前から話していた編入生を紹介しようと思います。古宮さん、入ってきてください!』

 

呼ばれたので扉を開けて教室に入る。

 

床に大量のBB弾が散乱しているので、教壇の上の比較的綺麗なところに飛び移る。

 

とりあえず自己紹介……え-、

「古宮 咲です。これからよろしくお願いします」

 

これでいいのだろうか?これまでの自己紹介イベントはこれで乗り切ってきたのだが…。

 

「えっと、それだけですか?」

 

お気に召さなかったようだ。

 

「いえ、私の情報などあまり価値のないものですし、皆さんが求める情報を的確に話すことができないので……」

 

「う~む。では質問タイムといきましょうか。質問がある人は手を挙げてください。古宮さんも答えられる範囲でいいので答えてあげてください」

「了解しました」

 

まず手を挙げたのは窓側の一番前のさわやかそうな男子生徒、前原というらしい。

 

「なんで執事服着てんの?」

「主人の指示です」

「主人?」

「私が仕えている屋敷の現当主の方です」

「リアル執事か……」

「その通りです」

 

前原の質問がこれ以上ないようになので次の人の番になった。

 

次に手を挙げたのは前原さんの隣の女子生徒。学級委員の片岡さんというらしい。

 

「執事ってどんな仕事するの?」

「本来の執事は食器の管理やお客様の対応になります。ただ私の場合はそれらと合わせて主人の警護も行っています」

 

「じゃあ古宮くんって強いの〜?」

 

割り込んで質問してきたのはふわっとした髪型が印象的な女子生徒。名前は殺せんせーが呼ばなかったので分からないが、後で聞くことにしよう。

 

「いえ、多少武術の心得はありますが家の中では一番弱かったと自負しております」

 

本気で腕を折りに来る姉をどうにかしてほしい。切実に。

 

「へー、ところで裏に猪が転がってたけどあれやったの?」

 

さらに割り込み。一番後ろでふんぞりかえっている男子生徒だ。あの顔は確か暴力沙汰を起こした赤羽だったか。

 

「はい。登校中に襲い掛かってきたので気絶させておきました。下校時刻になっても気絶しているようなら焼肉にでもしようかと」

「へぇ、猪を気絶ってどんな手使ったの?」

 

袖からヌンチャクを出して軽く殴っただけと伝えると面白いヤツを見る目になった。怖い。

 

すると窓際の女…男子生徒か。が手を挙げた。潮田というらしい。

 

「使う武器はヌンチャク?」

「いえ、基本は格闘です。ヌンチャクは祖父に教えられた武器の一つです」

「ってことは他にも使えるの?」

「はい。槍、ナイフ、ヌンチャクなど。格闘がメインとは言いましたがあまり模擬戦などには向いていないでしょう」

 

ここまで答えてノイズ混じりにチャイムが鳴った。とりあえず授業を受けてみよう。

 

私の席は一番後ろ、赤羽の隣で奥田という三つ編み女子生徒の後ろになった。とりあえず周りの生徒に挨拶だけしておいた。

 

 

◇◆◇

 

 

 

授業を受けた結果からいうと殺せんせーの授業はとても分かりやすかった。ただただ速く教えることに重点を置いたA組の授業とは大違いだ。速いことは速いが、生徒の理解が追いつくようにたまにギャグを入れたりする。まぁ、もう次週でやっていた内容なので真剣には聞いていなかったが。

いや、殺せんせーが生徒の名前を呼ぶのは聞いていたか。4時間も聞いたおかげで生徒の大半の苗字は覚えた。一応メモは取っているが。

 

昼食は近くにいた赤羽と潮田と一緒に食べた。その時に1人に苗字で呼ぶを禁止されたので今後はカルマと渚で呼ぶことになったのだった。かなりどうでもいいが渚さんと呼ぶとと女子感がかなり増す。

 

昼食を済ませて5時間目の体育をすることになった。流石に体操服まで執事服という意味不明なことはなかった。武器は執事服と同じように仕込んだが。

 

体育の主な内容はナイフや狙撃などの暗殺に必要な基礎技能を鍛えるようだ。準備体操としてナイフを振るようなので見様見真似で振っていた。ナイフの型なんか知らなかったよ。

 

準備体操終了後、鳥間先生と生徒の模擬暗殺が始まった。

 

ナイフを鳥間先生に当てれたら加点されるらしいが、もちろん皆当てることができない。二人係でも駄目とか鍛えてんなぁ。

 

「では次、古宮君。いけるか?」

「できるとは思いませんがやってみましょう。ところでこれはナイフ以外で攻撃が当たった場合は加点はないのですか?」

「そうだな…体術を駆使して攻撃を当てるというのであれば加点は行おう。ただしナイフのほうが点数は高いぞ」

「了解しました。では、胸をお借りします」

 

 

◇◆◇

 

彼らの戦闘を見た生徒たちは戦慄していた。

 

咲の着る服からどこからともなく抜き取られる武器の数々、それらをすべて捌く鳥間に目を奪われていた。

 

振るわれるナイフ、弾く手。

突き出される槍、掴む手。

絡みつく肢体、振りほどく手。

 

一見先が不利に見える状況だが、足元に転がっていく武器の重さに比例して咲の速度は増していく。一方の鳥間はかなり手加減しているとはいえ、段階的に速度を上げていく先の対応が難しくなっていく。

 

咲の持つ武器、袖から取り出した2つ目のヌンチャクが弾き飛ばされた時だった。

咲が全身の力を抜き構えを解いた。

 

「流石に勝てませんね。これでは」

「君は武器の隠し方はうまいが一つ一つの動きが単調だ。工夫を凝らさないと俺に攻撃は当たらないぞ」

「それもそうですね。今のところ鳥間先生から攻撃しようというという気配が感じられませんし、()()は取ってもよさそうです」

 

そういうと咲は服に手を入れ、胸のと背中に開けられた内部ポケットから厚さ5mmほどの鉄板を取り出した。

 

「では再度攻撃行動に移ります」

 

両手の鉄板を手放し、烏間に肉薄する。咲はバイクもさながらの速度で鳥間に走り寄るが、飛来する矢を掴み取れる鳥間にはそれでも遅く見えた。

鳥間の間合いに入る直前、咲は地面を強く蹴り前方宙返りを行う。

本来であれば何の意味もない無駄な回転だが、鳥間の意表を突くことには成功した。宙返り中に足を延ばし、踵落としに移行する。

鳥間は体を逸らすことで躱すが、突然のことに動揺し軽く体勢を崩してしまう。

その鳥間の頭にもう片方の足の踵落としが迫る。

 

「反応が速いのはすごいと思いますがこれが防がれると流石に落ち込みます」

 

鳥間は両腕を交差させて攻撃を防いでいた。それを確認した咲は両手で逆立ちをしつつ悪態をつく。

即座に足を鳥間から離し、地面すれすれを先ほどの速度で走り拾ったナイフで足を切り付ける。

 

「……そこまで。見事だった」

「ありがとうございました」

 

◇◆◇

 

 

鳥間先生との模擬暗殺を終え、武器を回収してからクラスの待機場所に戻ると、いろんな視線が突き刺さった。大半が「お前凄いな!」みたいな尊敬の眼差しだったけど少数ながら「お前なんなんだよ…」みたいな視線も向けられた。こっちが困るのでそんな目で見ないでほしいものだ。

それにしても最近漫画で見ただけの技だったがやはり上手くいかなかったな。今後も訓練しなければ。

 

 

6時間目は小テスト。少し面倒な引っかけ問題のある各教科満遍なく問題が割り振られた小テストを渡された。意外と難しめだったが攻略のヒントを問題文から絞り出して何とか100点をとれた。なんで最後の問題中学の最後の方に習うやつだったのかねぇ、殺せんせー?

 

うん。授業の分かりやすさとか雰囲気とか見てもこっちの方が過ごしやすいな。

 




立体起動する武器搭載ゴキブリ系主人公
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