中間テスト。
椚ヶ丘では全校生徒が本校舎でテストを受ける規則となっている。本来であればこのテストもE組の校舎で受けさせるべきと考えられるが、成績不振の生徒が本校舎に戻りたいがためにカンニングをする恐れがあるという理由で却下されている。教師も同様に生徒にアドバイスをする恐れがあると入室を許可されていない。
……まぁテストの内容を心の中でいくら言っても何の面白みもない。結果から言うと、E組の生徒は惨敗だった。
主な理由としてはやはりというべきか、テストの範囲が大幅に広げられていたからだ。
テストを終えたE組には重く苦しい空気が立ち込める。
「……。これは一体どういう事でしょうか。公正さを著しく欠くと感じましたが」
『…おっかしいですねぇ~。ちゃんと通達したはずですよ、あなた方の伝達ミスじゃないですか?なんせおたくら本校舎に来ないからハハハハ』
静かな教室だからこそ、鳥間先生の講義の電話の内容がよく聞こえてくる。
「伝達ミスなど覚えはないしそもそもどう考えても普通じゃない。テスト2日前に…出題範囲を全教科で大幅に変えるなんて」
『…わかってませんねぇ、えーと…烏間先生?うちは進学校ですよ。直前の追い込みにもついていけるか試すのも方針の1つ。本校舎のクラスでは、なんと理事長自らが教壇に立たれ、見事な授業で変更部分を教え上げてしまわれました」
「……!!」
いくら鳥間先生が抗議したところで結果は変わらない。鳥間先生は防衛省ではトップクラスの実力を持っていたとしても、ここでは1人の教師。ここのルールには逆らえない。それは殺せんせーも同じことだ。
「…先生の責任です、この学校の仕組みを甘く見過ぎていたようです…君達に顔向けできません」
『……』
落ち込む殺せんせーを心配そうな目で見る生徒たち。50位以内にクラス全員が入るという目標を成し遂げられなかった今、殺せんせーが立ち去るかどうか、私達が殺せんせーを暗殺するに足る人材かどうかは本人の判断によって変わる。
「にゅやッ!?」
黒板に背を向け立っていた殺せんせーの東部に、隣にいたカルマがナイフを投擲した。カルマは殺せんせーを挑発するために教壇に向かうが、党中で私の答案をひったくっていった。なにすんだ…。
「いいの~?顔向けできなかったら俺が殺しに来んのも見えないよ」
「カルマ君!!先生は落ち込んで…」
空気を読めと抗議する殺せんせーにカルマは自分の回答を投げ込んだ。
国語:98点
数学:100点
社会:99点
理科:98点
英語:98点
合計点数:494点
学年順位:5位/186人中
「俺テスト問題変わっても関係ないし」
「うお…すげぇ…」
「俺の成績に合わせてさ、あんたが余計な範囲まで教えたからだよ。……それに、あんたが教えなくても自力でこういう点を取るやつもいるし」
そういって今度は私の回答を投げた。あ~あ、プライバシーガン無視かよ。
国語:100点
数学:100点
社会:100点
理科:100点
英語:100点
合計点数:500点
学年順位:1位/186人中
「全教科満点…」
「すげぇ……」
「俺は高得点を取ったからE組から抜けれる権利を得たね。もちろん咲君も。でも俺はこのクラスから出る気はないよ。前のクラス戻るより暗殺してたほうがずっと楽しいし。咲君はどうする?」
「…私も戻りませんよ?何が悲しくて進みの遅くて何の面白みもない組に戻るんですか。…それにまだ殺せんせーの暗殺が済んでいません。この状態で元のクラスに戻ったら父に殺されます」
「おーこわ。…で、どうするのさ殺せんせー?全員50位に入らなかったって言い訳つけてここからシッポ巻いて逃げちゃうの?…それって結局さぁ、殺されるのが怖いだけなんじゃないの?」
カルマは
「なーんだ、殺せんせー怖かったかのかぁ」
「それなら正直に言えばよかったのに」
「ねーー。『怖いから逃げたい』って」
カルマの挑発を聞いて調子が戻ったのか、皆口々に挑発を重ねていく。それを聞いた殺せんせーの顔はみるみるうちに真っ赤に染まり、自他ともに似ていると認める生物。凧のようになっていく。
「にゅやーーーッ!!逃げるわけありません!!期末テストであいつらに倍返しでリベンジです!!」
殺せんせーの若干古い怒り方に皆刺激されたのか、クラス中で笑いが起こった。やはりこの先生は面白いな。
◇◆◇
「今日どうだったの?なんか殺せんせー?だっけ。がクラス全員50位以内じゃないと出て行くって言ってたんでしょ?」
所変わって深月の屋敷。今日の出来事の詳細が気になったのか私に詳しい説明をっするように求めてくる。
「…鳥間さんから伝えられていないのですか?」
「いやー、聞いてはいるんだけどねー。彼ちょっと報告書の文が固すぎて読む気になれないのよねー」
「そうでしたか」
「そう。だから何があったか詳しく教えてくれない?」
「…了解しました」
優さんには全てを話した。理事長がテストの範囲を3日前に大幅な変更をしたこと、それをE組に伝えず、他のクラスには伝えていたこと、自分の責任だ、と殺せんせーが謝罪したこと、カルマが私の回答と自分の回答を出し、そこから挑発して殺せんせーを軽く怒らせることでE組全体に活気を取り戻させたこと。
優さんは両手で頬杖を突き、時々感心したように声を上げて聞いていた。
「…ふふっ」
「どうかされましたか?」
「いや、咲ちゃんがA組にいた時よりも明るい声で近況報告してくれるから嬉しくてねー」
「…そうでしょうか。いつもと変わらないと思うのですが……あと咲ちゃんって言わないで下さい」
「はいはい、分かったわー。…ところで咲ちゃん、あなたもう殺せんせーの暗殺は試みたの?」
「いえ、まだですね。もうすぐ修学旅行なので観光ついでに試してみようかとは思っていましたが」
「修学旅行かー…懐かしいなぁ…。…もし、あなたの組の生徒に被害が及ぶようなことがあったらその装備外して全力で助けに行きなさいね?修学旅行に限ったことじゃないけど」
「…はい。分かりました」
まぁ、そうそう事故や事件なんて起こらないだろうが、優さんが忠告したという事は何かしらの対策はしておいたほうがいいか…。一応警戒はしておこう。
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