シルヴァリオグランドオーダー   作:マリスビリ-・アニムスフィア

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特異点A 極点英雄聖戦 アドラー
序章 覚醒――


 ――見上げた視線の先。

 

 荘厳な天球儀の如き装置を背に現れた偉丈夫は王者の如く外套を翻す。立ち並ぶ星辰奏者(エスペラント)であり天星奏者(マスター)候補生となる特命部隊(おれたち)を視界に収め、柔和な笑みを作りながらもわずかな覇気を滲ませて頷いた。

 その何気ない所作からにじみ出るは、王者の気風ともいうべきもの。まさしくただしく選ばれし者の風格を有する男。

 貴種(アマツ)とはこういうものを言うのだろうとでも錯覚されそうだが、彼は違う。彼は、貴種(アマツ)に連なるものではなかった。

 確かに貴族として高い地位にあることは認めよう。王者の覇気や貴人としての立ち居振る舞いは、確かなものであることは血統が保証している。

 されど、いかに高貴な血なれど、貴種ではない。だが、現に――。

 

「これが、時計塔の君主(ロード)――!」

 

 聖教国(カンタベリー)が有する、時計塔が魔術(せいしん)協会と呼ばれる組織に連なる最高位の実力者。本物の貴種(アマツ)がたじろぐ程に、その男は、王者であったのだ。

 見ているだけで緊張が走り、緩みといった全てが駆逐されていく。自らをエリートだと宣っていた者どもは、自らの傲慢を恥じる。

 誰もが思っていた。この男の前で惰弱は一切、見せてはいけない。彼にとって最高の己でありたいという、尊敬、憧憬に値する、否、まさしく天の輝きに匹敵する輝きに誰もが魅せられていた。

 彼こそが傑物である。貴種でないからなどとだれが言えようか。この上官こそ、奉じるべき者なのだという確信が、この場にいる全員に伝播していた。

 

 彼のことを知らぬ者はいない。時計塔、天体科が君主――マリスビリー・アニムスフィア。

 天の星々を観測することを赦された、英雄(かいぶつ)だ。

 

「さて――」

 

 そんな男が口を開く。

 

「まずは、各々楽にするが良い。これからする話は確かに重要ではあるが、そこまで畏まる必要もない。ここに集った君たちは、平等であるのだから」

 

 声に応えて張り詰めていた空気がわずかだが、弛緩する。しかし、完全に元通りとはいかない。彼がいる前で、まっとうに緩んでいられる精神を持ち合わせた破綻者などここにはいないのだから。

 

「結構。では、始めよう。まず、君たちがこうして集められた、その理由を説明しよう」

 

 彼は告げる。自分たちに課せられた重大な使命を。

 学問の成り立ち、宗教の成り立ち、航海技術の獲得、情報伝達技術の着目、宇宙開発の着手。そんな数多くある星の開拓に引けを取らない――偉業。

 いいや、否だ。かつての英雄の偉業、それら全ての偉業を上回る偉業。

 霊長類である人の理、すなわち、人理を継続させ保障すること。つまりは、世界を存続させること。

 

「世界を救うのだ。私の後ろにある巨大な球体を見てほしい。これが我が人理継続保障機関カルデアが誇る最大の功績。高度な星辰体(アストラル)技術によって作られた、この惑星環境モデル」

 

 この場の誰もが息を呑んだ。その球体が感応している星辰体(アストラル)の量に、誰もが息を飲んだ。まるで、遥か上空に輝く第二太陽(アマテラス)がここにあるかのような星辰体濃度だった。

 そして、同時にある予感がよぎる。これが、全てではない。これは、ただの一端であると感じ取った。

 

 星辰奏者は星辰体と感応することで、力を得る。これは周知の事実だ。

 かつてアドラー帝国の黄金時代を築き上げた力。

 星辰体と感応することによって、何倍もの力をひねり出す人間兵器の根幹。

 

 つまりは基準値(アベレージ)から発動値(ドライブ)への移行による異星法則の獲得。

 それが、このカルデアスにも存在しているのだと、直感的に理解する。

 

「これは、極小の地球だ。我々とは位相が異なる特異点に存在しているため、我々の眼では細かなことは観測することはできない」

 

 これが地球。現代において、見ることのできないその姿に、誰もが惹きつけられた。

 

「だが、これを専用の神星鉄(オリハルコン)によって生成した専用のレンズシバによって相互に星辰体を感応させることで、未来を観測することに成功したのだ。さあ、マリー、レフ、始めてくれたまえ」

 

 ――天昇せよ、我が守護星――鋼の恒星(ほむら)を掲げるがため

 

 紡がれる魔星の起動詠唱(ランゲージ)

 発動する星辰光(アステリズム)

 

 地球の姿は変わる。赤く変色した、燃えるような――。それは嫌な予感を想起させた。いいや、嫌な予感どころか。

 まるで、未来はないとでも言われているかのような。そんな風な予感を感じさせた。

 

 これこそが、カルデアスという超新星が宿す(いのう)

 未来、過去、あらゆるすべてを観測する超新星。

 

 未来、過去、現在を見通せ、天文台の天球儀(ロード・カルデアス)

 

「現状は見ての通りだ。半年前からこのカルデアスは変色し 未来の観測は困難となった。観測で来る最後の文明の光は一年後。つまり、あと一年で、人類の絶滅が観測、いえ、証明されてしまったのだ」

 

 絶滅の確定した。そう言われても実感がなかった。そもそも未来の観測からして荒唐無稽な話だ。

 だが、誰もその話を与太話だとは断じない。誰もが知っているからだ、世界というものは、いつだって終わる可能性があるのだということを。

 

 数年前に起きた、古都プラーガにおける騒乱を見れば明らかだろう。あるいはそれよりもまえ、帝国アドラー首都で起きた英雄の落日。

 あの世界が終わるかと思われた災厄を知らぬ者などありはしない。

 

 今回は、突発的ではなく、初めからわかっている。ならばこそ、対処可能だ。

 

 ここにいるのは、聖教国(カンタベリー)をはじめとして、商国(アンタルヤ)帝国(アドラー)から集められた適性者たち。

 世界を救うためと選ばれた者たち。

 

 帝国の民ならば、英雄を知っている。なればこそ、民草を護るべく散った彼の英雄に続くべくここにいる。

 聖教国の民ならば、大和(カミ)に選ばれたとして、大いにその力を振るうだろう。

 商国の民とて、世界が滅んでしまっては商売になどならない。

 

 三者三様の理由はあれど、三国家による連合部隊派遣は成った。

 そこには、ある交渉官の尽力もあったそうだ。

 

「言うまでもなく、ある日突然人類史が途絶えるなんてありえることではない。何か理由があるはずだ。よって、我々はここ半年、未来焼失の原因を究明し続けて来た。未来に原因がないのならばあるとすれば過去にある。

 その結果、ついに我々は発見した。それがここ、空間特異点。どことも知れぬ特異点に存在する都市。ここに存在しえない観測できない領域を発見した。カルデアはこれを人類絶滅の原因と仮定、星辰体転移(レイシフト)実験を三国家に提案。承認された」

 

 星辰体転移。レイシフト。それは、かつてアドラーで起きた聖戦と呼ばれる超常現象において、ある星辰奏者が用いた技の応用だ。

 自身の身体を量子として分解する。それによって、特異点の向こう側へと至る。

 この応用。座標を指定し、自己保存をこちらですることによって、あらゆる場所に星辰奏者を送り込むことを可能とする技術だ。

 

 それによって、空間特異点へと赴き、事態の解明および解決を行う。

 

「そのためには、適正を持った君たちが必要なのだ。どうか、頼む。世界を救うために協力してほしい」

 

 その言葉に、誰もが胸を打たれた。彼ほどの英雄がこんな一兵卒でしかない自分たちに頭を下げるのだ。

 

「――は!!」

 

 なればこそ、答えなければ嘘だ。雄々しく敬礼し、決意を言葉に変えた。

 ゆえに――

 

「ぐー」

 

 その時、巻き起こった鼾に誰もが唖然とした。

 この状況、この偉丈夫を前にしてよくも眠っていられるものだと。

 

「せ、先輩、起きてください――」

「――――ぇ」

 

 一人だけ、眠っていた少年は、隣の少女マシュの呼びかけで目を覚まし――。

 

「え、うあぁ――」

 

 体勢を崩して倒れた。

 

「――――……」

 

 そして、少年と言えば――。

 

 俺は予想外のものを掴み取って、頭が真っ白になっていた。

 いや、待て。待ってください。起きたら、パイタッチって、どんなラッキー? じゃなくて!

 そりゃ、あんなドシリアスな話の中で眠ってしまった俺にも非はある。そこは認めよう。全面的に俺が悪い。しかし、釈明させてほしい。

 このカルデアに入ってくる時に受けた検査。到着が遅れたおかげで、一番遅くて、終わったのは先ほど。急激な眠気が襲うと書いてあった。

 眠気はそのせいだ。断じて、重要な話の最中に眠りこけるような屑ではない。

 遅れた理由だって、正当なもので、あちらの手違い。

 

 ああ、だが、しかし。

 などと考えるも、絶賛頭は混乱中。ぐるぐると回る思考回路は、ショート寸前であり、これで相手方の女の子が抵抗でもしてくれば潔くぶっとばされて離れることもできるのに、女の子の方はといえば、男に押し倒されて穢れの知らない見事なマシュマロをわしづかみにされている。

 実にビースト、実にマーベラスと、変態じみた思考をしている阿呆を前に、子鹿のように身を縮こませて顔を赤く染めるばかり。

 

 さらに周りの逼迫した状況に、焦りに焦ってどうにか退こうと思うのだが、手は彼女の胸の上にあるわけで? 動くたびに、彼女が呼吸をするたびに動く胸は、それはもう素晴らしい弾力でもって手の中でぷるんと跳ねるものだから。

 

「あ、ああぁ、んんぅ!」

 

 そんな甘い声が彼女の口から飛び出して、盛大にこちらは意識を失いそうになる。しかし、ここで倒れると、彼女の上に倒れるわけで、そうなると腕ではなく顔が胸に飛び込むことは予想できたわけで。

 だから、必死に耐えたのだが、これが逆に悪かった。意識を集中してしまったおかげで、掌に感じられるぬくもりと弾力、女性特有の柔らかさの中にある、少しだけかたいものを発見してしまって。

 しかも、揉めば揉むほど、心なしか自己主張を強めているようなそんな気配までしてしまって――。

 

「ん、んぅ、せ、先輩、い、いけません、ここでは、その――」

「は。はは。あっはっははははは――」

 

 などともういろいろと限界だった。

 ここに来る前は、英雄になるんだとか、大言壮語を吐いていたが、過去の自分を殴りつけたい。こんなところで婦女子を襲うような痴漢が英雄になるなど言語道断だろう。

 ラッキースケベなど死ねばいい。

 

「ああ、もうだめだ……切腹しよう、そうしよう……」

 

 さようなら現世。来世では、きっと英雄になれるさ。

 うん、いい考えだ。どうせ、今の自分じゃ英雄になれないことは百も承知。それでも努力で頑張ればなんとかなると信じてはいるけれど、こんな破廉恥をかます自分などどうあがいても英雄の器でないことが証明されてしまった。

 よし、腹を切ろう。

 自分の馬鹿さ加減とあまりにも酷いどうしようもなさをはっきりと自覚した。彼女の胸からなんとか手を放して、支給された剣を手に取る。

 ああ、いやその前に。

 

「不可抗力だ、なんて言っても許されないとは思うけれど、すまなかった。ごめんなさい。婦女子の胸を事故でも揉むとか、地獄に堕ちるほどの罪。赦してくださるとは思わないけれど、謝罪します」

 

 土下座。ザ・土下座を敢行。そして、そのまま流れるように剣を抜いて。

 

「今から自罰の為に、腹を切りますので、どうか介錯のほどをお願いします。ああ。もし、豚野郎の無様な死にざまを見たいと申すのならば、是非もなし、どうかそのまま死ぬまで無様に苦しむ様をご覧ください」

 

 女性の乳房を揉んだ対価は命で払うべきだ。それも初対面の女性。恋人ならば、まだ赦される余地があるだろうが、初対面の他人である。

 もう死ななければ釣り合わないだろう。それもあんなに見事な乳房だったのだ。それはもう極上である。本来ならば、彼女の彼氏という選ばれし益荒男のみが揉むという栄誉を得ることができる聖域を汚してしまったのだ。

 

 こんな糞塵童貞の屑がである。しかも、自分を起こそうとしてくれた優しい少女であり、何よりここまで案内してくれ、自分を先輩と慕ってくれる少女である。

 そんな少女の胸を揉んでおいて故意でないから赦されるなどと、ふざけるのも大概にしろよ盗人猛々しいにもほどがあるわ、死ね。

 

「あ、いえ、先輩、わたしは、あの――」

「心が非常に傷ついたと! ならばもはや猶予はなし! いざご照覧――」

「アホか――!!」

 

 いざ、現世にグッバイ、ようこそ来世と剣を腹に突き刺そうとしたその時、後頭部に放たれた容赦のない蹴り。

 

「レフ! こいつをとりあえず連れ出して! こんなところで死なれたらお父様の計画が台無しよ!」

「さすがに不意打ちキックはないと思うよ、オルガ」

「いいから! 良いですねお父様」

「ああ、彼の方も少し落ち着く時間が必要だからね。本当なら先発チームだったけれど、先発チームからは外そう」

「さあ、レフ!」

「わかったよ、オルガ──マシュ、悪いが彼を個室に案内してくれ。すまないね新人君。私はレイシフトの準備があって同行できないんだ」

「すみません」

「構わないさ」

「それでは先輩、こちらへ。先輩用の先輩ルームにご案内しますので」

 

 管制室をでると。

 

「フォウ!」

「危ない!?」

 

 謎生物のフォウが彼女の顔に飛びついた。

 

「問題ありません。フォウさんは、私の顔に奇襲をかけ、背中にまわり最終的に肩に落ち着きたいらしいのです。それにしても先輩、着任早々災難でしたね」

「いや、全面的にこちらが悪いのです。申し訳ありません! 返す言葉が見つかりません!」

「いえ、あの先輩になら……」

 

 え、それはどういう意味なのでしょうかと、さすがに問う勇気はありませんでした。

 

「──ここですね。先輩、つきました。ここが先輩用の個室になります」

「ここまでありがとう。そうだ、マシュは何チームなんだい?」

「先発のAチームです。ですので、すぐに戻らないと」

「フォーウ!」

「フォウさんが先輩を見てくるのですね。それなら安心です。それではこれで。運が良ければまたお会いできると思います」

 

 そう言って彼女は戻っていった。

 

「運が、良ければ?」

 

 なんだろうか。まるで運が悪ければもう会えないとでも言いたげな言葉は。星辰体による転移実験、そんなに危険なのだろうか。

 そう思いながら部屋の扉を開ける。

 

「はーい、はいってまー──ええ!? 誰だ君は!」

 

 そこには先客がいた。

 

「あれ、間違った?」

「ここは空き部屋だぞ! 僕のサボり部屋だぞ! 誰の断りで入ってきたんだ!」

「いや、ここが俺の部屋だと言われてきたんですけど」

「ああ……そっか、ついに最後の子がきちゃったかぁ。道理でなんか荷物が置いてあると思ったよ──じゃあ、自己紹介しよう。

 僕はロマニ・アーキマン。医療部門のトップだ。みんなからはなぜかドクターロマンと呼ばれてる。君もぜひそう呼んでくれると嬉しいね」

「よろしく御願いします」

「それにしてもそろそろレイシフト実験のはずなのに部屋に来るってことは、君は着任早々なにかやらかしたってことかい?」

「出来れば聞かないでください……」

「そうかい? それじゃあ、少し話でもどうかな?」

 

 良い人そうだし、待機命令が出ているので、ちょうどいい暇つぶしになるだろう。

 

「えっと、医療部門のトップと聞きましたが、あなたも星辰奏者(エスペラント)なんですか?」

「いいや、違うよ。ボクはちょっと訳アリってやつでね。星辰体とは感応できなくてね。まあ、それでもマリスビリー所長の好意もあって今はこうしてここで医療部門のトップというわけさ」

「そうなんですか」

 

 それがどうしてこんなところでさぼっているのだろうか。

 

「まあ、いろいろあってね」

 

 などと言っていると通信機から声が響く。

 

『ロマニ、そろそろレイシフト実験を開始する。万が一に備えてこちらに来てくれ』

「ありゃ、およびだ。今から行くよ」

『ああ、それとそちらの新人も落ち着いた頃だろうから連れてきてくれ。後発チームとして出発してもらう』

「了解」

 

 通信はそれで終了だ。

 

「さて、そういうわけだけど行けるかい?」

「はい。大丈夫です」

「なに、安心すると良い。ちゃんと医療体制もバッチリだし、向こうに行けば、心強い味方がいるはずだからね」

 

 心強い味方? それは何かはわからなかったが、俺もまたドクターロマンとともに管制室に戻り、レイシフトを行った。

 燃え盛る街だった。あらゆる全てが燃え盛っている。だが、不思議と、ヒトは燃えていないように思えた。生命がいない。

 

 いいや、違う。

 

「GAAA――」

 

 異形の怪物がいた。

 

「話が違うぞ、安全な場所に出るんじゃなかったのか!!」

 

 本当ならば、先発チームが作った拠点にレイシフトするはずだった。座標に間違いはない。だが、先発隊はどうなったのか。

 異形の怪物。骸骨がいるのならば――。

 

「マシュ!!」

 

 瓦礫の下に、彼女はいた。

 先発隊は全滅したのか。ならば、こちらの後発チームは。

 

「ぐ、あああああ――」

 

 異形の怪物に蹂躙されていた。

 精鋭たる星辰奏者が何もできない。

 相手の力は、こちらよりもはるかに弱い。だが、しかし――圧倒的なまでに数が違った。さらに、敵はまるで、こちらの弱点は把握していると言わんばかりの連携。

 

 どうあがいても勝ち目などありはしないということがたった一目でわかった。

 

「それでも――!」

 

 俺は走った。彼女の下へ。

 今日であったばかりの女の子。それでも――助けたいと思った。

 助けなければいけないと思った。

 

 ――なぜだ。

 

 その時、声を聴いた気がした。

 

「助けたいからだ」

 

 ――どうして。

 

「理由なんてない」

 

 ――ならば。

 

「それでも、見捨てたくない。助けたいんだ。俺は、誰かを護れる英雄になりたいから――」

 

 ――ならばこそ、答えろ半身よ

 

 おまえは、なにを選択する。

 

 ――ゆるぎなき勝利を

 ――求めた世界の再生の為に

 ――ただ、生きるために

 

 いいや、否だ。

 そんなもの答えではない。

 言われるまでもない。

 

「黙っていろ――おまえに言われるまでもない」

 

 総じて邪魔だと断じた。

 こんなものにかかずらっている暇などありはしない。目の前で誰か(しょうじょ)が死にそうになっている。ならば、それだけで十分だ。

 選択肢など不要。そのような児戯に興じる時間などありはしない。

 

 やるべきことは一つ。たとえ敵陣の真ん中であろうとも。やるべきことは常に一つだ。

 いいや、むしろ、自分と彼女二人きりになったのならば、好都合といえる。

 そうだ、これでいい。

 

 彼方にありし、極点の流星雨が如く――さあ、唱えろ。

 

「創生せよ、天に描いた星辰を――我らは煌く流れ星」

 

 紡がれるは絶対不可侵の詠唱(ランゲージ)

 

「愚かなり、全知全能たる我らが主よ。

 どうして、あらゆる全てを返還したくらいで、我らが諦めると思ったのか。

 あの男に教えられた、全てを我は覚えている。

 自分自身の間違いなど百も承知。少女の祈りが得られないことも既にわかっている」

 

 連鎖する灼熱の光帯爆裂。

 天に煌く光を束ねて、身にまとうはかつて世界を焼いた浄化の炎に他ならない。総身を焼き尽くす光はされど、その身を焼くことはなく、絶対不滅の刃となって新生する。

 骸骨どもは雪崩れ込むが遅い。

 

 基準値から発動値に移行した。もはや、おまえたちにこの疾走を止めることはできない。歩くだけで、光を纏うだけで、全身が焼けていく。

 いいや、消滅している。だが、その程度でどうして止まらなければならない。

 

 あらゆる不具合、不条理の代償を胆力で耐えながら、俺はただひたすら敵を斬滅する。

 

「だが、それでもなお果てなく征くのだ。

 人類を救済するべく、今度は貴様と征こう。

 罪業を滅却すべく、あらゆる世界を救済すべく、征け救世主(マスター)

 

 我慢しろ。歯を食いしばれ。ただそれだけでいい。

 英雄にとって重要なのは、光にとって大切なのは意志力のみ。

 意志力の方が趨勢を左右する。

 ゆえに、まずは抗う事が肝要。なによりもまず意思を示す事こそが重要なのだ。

 

「七つの冠を束ね合わせて、今こそ銀河へと至らん。

 我が消滅の果てに、人王の光は世界を照らす」

 

 ただ前へ。ただ前へ。

 道理を蹴飛ばし、無理をこじ開けろ。

 限界、限度、無理、不可能など、英雄の前には何ら障害になどなりはしない。

 

「人よ、生きよ――」

 

 世界を照らす光は此処に在る。

 

超新星(Metalnova)――聖杯探索、救済せよ航海者(Silverio Grand Order)

 

 ――さあ、世界を救おう

 

 遍く敵の全てを打ち倒して。

 世界を焼いた白銀の超新星が今ここに新たな産声を上げた――。

 




FGOとシルヴァリオのクロス。
シルヴァリオ世界で、グランドオーダーやろうとした結果がこれだよ! ネタだけど続くかは未定。
感想次第。

これだけは言っておこう。
わかっていると思うが、マリスビリーのイメージは、糞眼鏡だ。
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