シルヴァリオグランドオーダー 作:マリスビリ-・アニムスフィア
「――――ッ!!!」
意識の覚醒直前、身体に感じた誰かに触れられた感触から、咄嗟に跳ね起きようとした。取るべき行動は攻撃行動。
師匠からのいわれのない
もにゅん。
なにやら、最近触ったような、いや、しかしそれとはまた異なる、やわらかーい感触を手にした。とりあえず、何をさわってしまったのかわかるような、わからないような感じなので、ついもみもみとしてしまった。
「ひゃあ!?」
きいたことのない女性の声。視界が映像を受容し始めると、目の前には、見知らぬ女性。
金髪のとてもおっぱいの豊かな女性だ。左目に包帯をしているのが痛々しいが、それで美人度に影響しない辺り、かなりの美人さんなのが分かる。
胸も豊かだ。少なくともマシュよりも大きいことは間違いない。触った俺が言うんだから間違いない。思わずうんうんと頷きながら、寝ぼけているのか混乱しているのかもみもみとしてしまう。
「あ、んんん――」
何やら、自己主張するかたさがあるような。まあ、これは夢だろうきっとそうだ。この俺が、ラッキースケベ二回目とか、そんなことあるわけない。
そうそう、ないない。ははははは――。いやー、むにむに、それにしても柔らかい。マシュのよりも大きいなぁ。はは――。
――ってそうじゃねえよ!
なに冷静に分析してんだ、死ねよ俺! マシュに続いて見知らぬ女性にラッキースケベとか、もうこれは許されない。
しかも、こんな高貴そうな御方のオツパイとか、糞塵カス童貞野郎が揉んでいいものじゃない。寧ろ神聖に崇め奉ることこそが必然だろう。
こんな神の如き聖パイに触れてしまった俺はさながら、反逆者。こんな逆賊生かしておいていいはずがない。それだというのに、いまだに触れ続けている不埒な手。
混乱のせいで、腕の信号がまったく。
――ああ、我が保証しよう。おまえはいま混乱している。
よし、
だが、残念ながら、俺はいま絶賛大混乱中。戦闘が終わって気が付いたら、ベッドの上で? 目の前に見知らぬ女性が目の前。そのうえでラッキースケベ。
これで混乱しない男子がいるのなら出てきてほしい。俺と代わってくれ……。
「あ、あのぉ」
「ハッ!?」
女性の声でどうにか俺は正気に戻って、即座に手を放し――。
「も、申し訳ありませんでしたー!」
土下座を敢行。今回も俺が悪い。さらに、混乱していたとはいえ、揉みまくってしまった罪状はもう極刑レベルですら甘い。
もはや、マシュにも顔向けできない。彼女にも顔向けできない。
「あ、あのいえ、そんなに畏まらずとも大丈夫ですよ」
女神か、この人は。
いや、駄目だ。
「いいえ、女子の胸を掴んだ挙句に揉んでしまったのです。謝っても許されることではありません」
「今回は事故のようなものですから、お気になさらず――」
「いいえ!」
いいや否だ。何があろうとも、どのような事情があったとしても、女性のオッパイを弄んだ罪は重い! しかも二回目だ。
同じことの繰り返し。学習能力のないぼんくらすぎる自分を今すぐ絞め殺したい。いや、死のう。いいや、死ななければならない。
こんなところで婦女子を襲うような痴漢が英雄になるなど言語道断。こんな糞塵カス変態痴漢野郎が世界を救う? そんなこと出来るはずがないだろ死んでしまえ。
そんな奴に救える世界なんてありはしない。ラッキースケベなど死ねばいい。
「俺は、見ず知らずの、それもきっと、助けてくれたであろう、貴女の胸を揉んだのですよ!! もっと糾弾してくれて構いませんし、殴ってくれても構いません!」
「あ、あの、本当に大丈夫ですから」
「ああ、しかも、あなたはこんな俺を赦すという聖女のような人だ」
聖女と言ったら、何やら女性は少し苦笑したように笑みを作ったが、そんなことはどうでもいい。今重要なのは、どうやってこの罪を償うかだ。
ここはやはり。
「死んで詫びるしかありません」
慣れた動作でベッドわきにたてかけてあった刀を抜く。
「い、いけません、死んで詫びるなどと!」
「止めないでください、貴女の豊満で素晴らしすぎるおっぱいを揉んでしまった糞塵野郎は死んで詫びるしかないんです! この先、またどんな罪を重ねるかわかったものではありませんから。
なので、今から自罰の為に、腹を切りますので、どうか介錯のほどをお願いします。ああ。もし、糞豚塵野郎の無様な死にざまを見たいと申すのならば、是非もなし、どうかそのまま死ぬまで無様に苦しむ様をご覧ください」
何度も言おう。女性の乳房を誤って揉んだ対価は命で払うべきだ。それも初対面の女性。恋人ならば、まだ赦される余地があるだろうが、初対面の他人である。
もう死ななければ釣り合わないのは確定的に明らか。それもあんなに見事な乳房だったのだ。デンジャラスビーストを超えた、ビースト。
それはもう極上である。本来ならば、彼女の彼氏という選ばれし益荒男のみが揉むという栄誉を得ることができる聖域を汚してしまったのだ。
何度でも言おう。死ぬしか、ない!
「いい加減にしてください!」
「ガハッ――」
俺の意識は再び、漆黒の中に沈む。
「あ、ああ、またやりすぎてしまいました!?」
何やら女性の慌てる声が聞こえていたが、いい感じに入った足は俺の意識を刈り取った――。最後に見たのは、何やら黒――。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「本当に、申し訳ありませんでした……」
「いえ、本当に大丈夫ですから」
あの後、意識を取り戻した俺は再び土下座。ただし切腹はなしだ。やろうとしたらまた蹴りますよ、と言われてしまったら俺も黙らざるを得ない。
蹴られて喜ぶ変態でもない。何より彼女がするなというのなら、甘んじて生き恥を晒して償おう。
「この償いは、必ずいたしますので」
「ええ、それで、切腹を諦めてくださるのであれば、是非もありません」
「それで、そのあなたは?」
「私はジャンヌ・ダルクと申します。お気づきの通り英星です」
「やっぱりですか」
彼女は英星だった。
ジャンヌ・ダルク。
――旧暦における聖女の名前だ。
なるほど、まさしく聖女だったというわけだ。
「助けてくれたのも?」
「はい、私とここにいるもう一人の英星です。あなたの英星も無事です。隣の部屋で今は眠っています」
「ありがとうございます」
「いえ、もしあのままでしたらきっとダインスレイフにつかまっていたでしょうから」
ダインスレイフ。それは、強欲竜団の首魁の名だ。やはりあいつも来ていたようだった。そうなると、本当に命拾いしたとはこのことだろう。
「ありがとうございます」
「強欲竜団に襲われていたのはわかっていましたから。助けるのは当然です」
なんていい人なんだ。そんな人の胸を揉むとか、本当死ねよ俺。
「それで、ここは?」
「オルレアンから離れた廃城になります。我々の拠点です」
「なるほど……あの、この世界を修正するために、俺たちは来ました。何か情報はありませんか?」
「私たちも目的は同じです。協力しましょう」
そういうわけで、マシュの部屋に向かう。
「先輩! ご無事で何よりです」
「マシュこそ、無事でよかった」
彼女の無事な顔が見れて心底安堵した。良かった、ちゃんと守れたのが嬉しい。
「それで、先輩、そちらの方は?」
「ああ、こっちはジャンヌ。俺たちを助けてくれた人だよ。ジャンヌ、こっちはマシュ」
「そうでしたか。ありがとうございます」
「よろしくお願いします」
「それで、マシュ早速で悪いんだけど、作戦会議をしようと思うんだ」
「わかりました」
「では、行きましょう」
ジャンヌの案内で廃城の中を進む。思うほど汚くないのは、彼女が掃除などをしたからだろうか。綺麗とはいいがたいが、それでも生活していて苦になるほどではない程度には整っているようであった。
彼女の案内で、広間に入れば鎧を着けた青年がいる。纏う星辰体の密度は、英星のそれだ。
「目が覚めたか」
「リツカさん、こちらがジークフリートさんです。お二人をここまで運んで下さいました」
「ありがとうございます」
「当然のことを、したまでだ」
「いい人みたいですね」
「そうだね」
その後は、自己紹介もそこそこに、俺たちは現状の確認を行う。現状を把握することによってこれからどう行動するかを決める。
このフランスは今現在壊滅の危機にあるという。その原因となっているのが強欲竜団とジャンヌ・ダルクだと、ジャンヌは言った。
「えっと、ジャンヌさんは、あなたでは?」
「はい、そうなのですが……」
曰く、この世界には今、二人のジャンヌ・ダルクがいるのだという。一人は今、目の前にいる彼女。もう一人は、フランス王シャルル七世を殺し、このフランスにて強欲竜団を雇い大虐殺を行っている。
この特異点における俺たちの目的がひとつはっきりしたといえる。件のシャルル七世が死に、オルレアンが占拠された。
ダ・ヴィンチちゃん曰く、この特異点において人理を破壊している原因であるらしく、修正すべき事柄だということ。
なぜならば、それはフランスという国家の破壊だからだ。
こちらにだけ聞こえるダ・ヴィンチちゃんの説明によれば、フランスという国は人間の自由と平等を謳った初めての国であり、多くの国がそれに追従した。
自由と平等。その権利が百年遅れるだけでも、文明はそれだけの期間、停滞する。もしも認められないという事態に陥ってしまえば、いまだに人類は中世と同じ生活を繰り返していた可能性すらあるというのだ。
「次は、我々の番ですね。わたしたちの目的は、この歪んでしまった歴史の修正です。
――カルデア。わたしたちは、そう呼ばれる組織に所属しています」
マシュがジャンヌに事情を説明していく。全てを聞き終えた、ジャンヌの顔は険しいものになっていた。
「世界の消滅……。にわかには信じがたいですが、このような事態に、
「ああ、それには同意する。何より味方は必要だろう。あのファブニールは、俺の生前とはかなり違っていたが、相手をするのはかなり厳しい」
「そうでしょう。私の左目もあの方にやられましたから。ですが、目的は決まっています」
オルレアンへ向かい、都市を奪還し、すべての元凶たるジャンヌ・ダルクを排除する。
「主からの啓示はなく、その手段は見えませんが、ここで目を背けることはできませんから」
「それじゃあ、今後の方針なんだけど、まずは仲間を集めようと思う」
通信でオルガマリー副所長が言っていたことになるが、どうやら、特異点というものには英星が召喚されるのだという。
敵味方かはわからないが、味方もいるということ。さらに言えば、この土地においての基点となるポイントに処理を施せば、こちらも英星を召喚できるというのだ。
本来ならば莫大な星辰体が必要となるが、それはカルデアが有する星辰体炉心であるカルデアスとプロメテウスがどうにかするという。
『ポイントとしては、やっぱりこの城がいいみたいだねー』
図らずもこの廃城は絶好のポイントだという。ならば、
「まずは、召喚をしてみたいと思うのだけれど、どうだろう」
「良いと思います。仲間が増えるというのは良いことかと」
「同意する。戦力が増えれば、あの邪竜に対抗しやすくなるだろう」
同意も取れたので、召喚を行う。
「えーっと、どうするだったけ」
「確か、この盾をこうして、サークルを設置して――それから、この聖晶石を核として、先輩が詠唱をすれば良かったはずです」
「ありがとうマシュ。それじゃあやってみるよ」
特異点の中、詠唱を紡ぐ。
それは星を繋ぐための
惑星の周囲をともに行く衛星なりし英星を呼ぶための言葉が廃城に響く。
「
繰り返すつどに五度。 ただ、満たされる刻を破却する」
超新星を生み出すのではなく、引き寄せる。
己の
己の
「告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
吹き荒れる星辰体の嵐。
莫大な量の星辰体が聖晶石を通して俺と感応する。可視化するほどの星辰体の波濤は何よりも強く、何よりも光り輝く極晃星へとつながっていく。
俺という惑星に従属する英星を、引き寄せる。
「誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者
我は常世総ての悪を敷く者」
誓う。
必ずや勝利を。
ふさわしき善を。
倒すべき悪を。
示そう。
「汝三大の言霊を纏う七天、 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ」
莫大な星辰体が形となる。その瞬間――。
「見つけたぜぇ、ジークフリートォォォ!!!」
床が抜け、悪竜の牙が突き立てられた――。
というわけで、最初のサーヴァントを召喚じゃー。
誰にしようかまったく決めてない。
誰がいいかなー、……ヴァルゼライド閣下の登場とか?
かつての敵を召喚するのは熱いし。
とか思ったけど、そんなことをすると本気おじさんのテンションが天元突破してギルベルトと同じく
特異点の事件解決そっちのけで戦い始めて、諫めに来た邪ンヌがミンチにされる。
あかん、駄目だ閣下だけは召喚してはいけない。
誰召喚しようかなー。
アンケートでも取るか。活動報告でアンケート取るのでよろしくお願いします