仮面ライダーエグゼイド -バルキーショック- 作:猫丸@柄杓
「で、どうしてあたしが呼ばれたワケ?」
西馬ニコは不機嫌そうにいった。それもそうだろう、「自分の唯一の黒歴史」として恨んでいる永夢に協力を要請されたのだから。
「今担当している患者がどうも鬱病みたいなんだ。それで、一番歳が近いニコちゃんなら少しは心を開いてもらえるかな、って」
「こいつが初対面の人間の信用を得られるとは思えん」
飛彩は呆れながら呟いた。ポッピーも、永夢の突然の思い付きに言葉を失っていた。
「はぁ? 意味判んないんだけど!」
「そこを何とか!」
「イ、ヤ、だ」
しばらくの間押し問答が続き、キャンディーを受け取ったニコは渋々病室へ足を踏み入れた。
「本当に平気なの? ニコちゃん、あんまりこういうの向いてないと思うんだけど……」
「大丈夫です。ニコちゃん、根は優しいから」
ポッピーが心配そうにいうも、永夢はあっけらかんと笑ってみせた。あんなに罵詈雑言を吐かれておきながら彼女を優しいと評する永夢がポッピーにとっては不思議だった。もちろん、ポッピーもニコが成長していることは理解していたが。
しばらくして、疲れきったニコがキャンディーを舐めながら出てきた。
「何いっても反応ないし……なんかあたしが鬱になりそう」
「ニコちゃん、ありがとう」
「二度とやんねーからな!」
ニコはリュックを背負ってさっさと部屋を出ていってしまった。反応は芳しくなかったようである。
「永夢、またニコちゃんの恨みかったんじゃない?」
「そうかもしれませんね……」
立腹していたニコの表情を思い出して、永夢は苦笑した。
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「人を鬱にするバグスター……聞いたこともねえな」
花家大我はパソコンの画面をみやったまま答えた。
「突然CRなんかに行って、何があったんだ」
「Mから患者のカウンセリング頼まれたの。無視しとけばよかった」
「カウンセリング?」
「ゲーム病で運び込まれた患者が鬱病らしいよ。それで、歳が近いあたしが呼ばれたってワケ」
「ずいぶん若い患者なんだな」
「十五歳。中学生で鬱病だなんて、世も末じゃない?」
「それで人を鬱にするバグスター、か」
大我は少し考え込んだが、顔を上げ、
「ゲーム病の症状に精神に影響を与えるものはない。基本的に身体の異常のせいで精神が不安定になるか、ゲーム病を発症したショックで鬱にでもなるかっていうくらいだな」
「ふうん」
流石詳しいじゃん、と大我を誉めるような台詞を照れ臭くて飲み込んだニコは、ベッドに腰かけてリュックを下ろした。だが、それと同時に大我が立ち上がり、
「行くぞ」
とだけいってさっさと歩を進めていってしまった。ニコは驚き、慌てて追いかける。
「どこ行くの?」
「CRだ」
「……またぁ!?」
ニコの哀しそうな叫びが廃病院に木霊した。