その運命に、永遠はあるか   作:夏ばて

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四十九話

それにしても……

「はぁ、あついったらありゃしねえ」

炎天下を歩くシオンは覇気のない口調で悪態をついた。

道中は生い茂った草木が遮断してくれていたけど、海岸に出てしまえば日差しをもろに受けることになる。

 

布地を頭から被っているので刺すような痛みは感じられないが、それに引き換え通気性を失っているため、ぬるい空気が肌にまとわりつくようで気持ちが悪い。

 

「あー、やっと最後の主役の登場だよ。遅いよしおりん!」

 

現在進行形で体力が削られているシオンがだらだらと歩いていると、出迎えたのはシンプルな黄色い水着で手を振るティルファーだった。

 

アンダーの紐でセクシーな印象を与えたいようだが、如何せん胸が足りていない。

 

「こっちは溶けそうだってのに、ほんとお前らみたいな能天気は気楽でいいよな」

 

「えっ、水着姿への感想より先に出てくるのが罵倒って……」

 

悩殺を目論んでいたのに興味を持たれなかったティルファーはショックを受けていた。

 

ただでさえ上が暑いのに、下の砂浜も灼熱地獄。

こんな状況下で元気良く走り回れるティルファーはどうにかしている。

 

ドMなのかな。

 

そんなティルファーに背中を押され、既に集まっていたメンバーの元へ合流すると、色とりどりの水着で着飾っている少女たちは、どこか落ち着かない様子でそわそわと身動ぎしている。

 

そのうちの一人、婚約者候補のクルルシファーは積極的な姿勢をみせ、シオンの腕を自然な流れでとった。

 

 

「ふふっ、どうかしら。 あなたに喜んでもらえそうなデザインを選んでみたのだけれど……」

その言葉とは裏腹に、クルルシファーの態度そのものは自信に満ち溢れている。

 

ただシオンは熱気にやられてる。

じっとしているだけてクソ暑いのに、更に密着されるとなると、愚痴の一つや二つこぼしたくもなる。

 

「お前もミーハーなんだな」

 

「いくらなんでもその反応は失礼じゃないかしら?」

 

虚ろな瞳で溶けかけ寸前のシオンは面倒くさそうにそっぽを向くと、クルルシファーはむっと顔をしかめた。

 

きゅっとくびれた腰から、腰下への美しいライン。

抜群のプロポーションを誇るクルルシファーを前にしてもシオンはぶれなかった。

 

まぁ仮にも婚約者候補である身。

無反応も失礼だろうから、適当に見繕う言葉を模索しようと頭を働かせる。

 

 

黒か……。

 

「お前下着も黒派なの?」

 

捻り出されたのは、かなり最低な感想だった。

いくら温厚なクルルシファーでもこれには黙っていられず、大振りのビンタがシオンの頬に狙いを定めた。

 

気のきいた誉め台詞が沸き上がらないくらいには思考能力が低下しているシオンであるが、降りかかる驚異への対応速度は鈍っておらず、紅葉跡を作る前に腕を取って封じる。

それでもクルルシファーは負けじと睨みを返す。

 

「そう暴れなさんな。水着だろうが下着だろうが、脱がせばすっぽんぽんになるんだから大差ねえだろ」

 

今度はクルルシファーの黄金の右手が逆から飛んでくるが、そちらも当たる前に掴みとった。

そして膝を打ち込まれないよう、クルルシファーの足を払いそのまま覆い被さるように組伏せた。

 

婚約者候補に推されてからは、シオンの機嫌が悪い日には黙って隣に立ち並ぶ良妻的な立ち位置を演じてくれていたのに、この日は違った。

 

開放的になって浮かれているのか?

 

原因は何だろうと首を捻ると、考える間もなくあの日のティルファーの発言が浮上してくる。

 

『クルルシファーは超不機嫌でさー』

 

あー、と思い出したシオンは間延びした声を漏らした。

 

要するにたまっていた不満が大爆発、ということでいいだろう。

 

ここ最近は部活に比重を置いていたこともあり一緒に過ごす時間も減り、クルルシファーなりに思うところがあっても表には出さないでいた。

 

泊まりがけの合宿こそはと張り切っていたのに、拵えた水着に興味を示さず、終いには笑えない冗談を返され、とうとう着火したと。

 

状況を整理してみたところで、今更誉め尽くしても余計な燃料を投下することになる。

 

ごちゃごちゃと考えるのも疲れるので、思考を放棄してキスで黙らせることに落ち着いた。

 

が、しかし。

 

その手法には惑わされまいと、クルルシファーは顔を背け拒否する仕草をみせた。

 

手を繋ごうとすれば断られ、キスを迫れば断られ。

この短期間で自尊心に傷を負う回数が増えてきているシオンは、それはもうカチンと。

 

なにせ神の寵愛を一身に受けている自分は、男としての魅力も世界一。

 

本気を出せば落とせぬ女などいないと、むしろ女の方から落として下さいと懇願するのが、このしみったれた現世に舞い降りてやった現人神に対する礼儀ではあるまいか。

 

だからこそ隣に寄り添うことを許しているクルルシファーが反抗的に振る舞うのはカチンどころではないほどカチンときてしまった。

 

「やめて。そうやって誤魔化され――」

 

ごちゃごちゃとぬかそうとする前に唇を強引に奪った。

 

苦しそうにするクルルシファーがはねのけようとしても両腕を拘束されてしまい、されるがままに弄ばれてしまう。

 

「はぁ、ん……」

段々と抵抗する気力も吸いとられ、肩の力が抜けた切なげな吐息を漏らし出す。

受け入れ体勢に入った証と捉えたシオンは拘束を解き、ぺたりとクルルシファーの両耳に手を当てた。

 

外の雑音が遮断され、湿りきったいやらしい音が頭の中で直接鳴り、次第に熱い快楽に変化していく。

 

情熱的な愛情表現ではあるが、限界を迎える前に呼吸を整えるために離れる。

 

「ちゃんと飲んで」

そこでシオンは短く言った。

耳を塞いでいるので聞こえているかは定かではないが、唇の動きで理解はしたであろう。

 

自覚させてから口内に流し込むと、ごくりと嚥下する喉の音がはっきりと聞こえた。

 

その光景は、自らの唾液を飲むように命じる年下の少年と、従順に答えてしまうみっともない姿を晒す年上の少女の立場を明確に物語っていた。

 

快楽とは時として暴力以上の手段になりえる。

 

自分は溺れず、相手は必ず溺れるように誘導するよう教わったシオンにとっては、性という概念も武術の枠組みの範疇である。

 

「黙ってくれるなら、今度は死んじゃうくらい気持ちーくしてあげるけど、どうする?」

 

それでもまだべちゃくちゃとするなら、今夜媚薬でも突っ込んで、色々な言質をとる方法に切り替える。

蕩けた表情で息を乱すクルルシファーの髪の毛を掬い上げると、こくりと小さく頷いてくれた。

 

最後に触れるだけのキスを落としてから、クルルシファーを連れて皆の元を向かうと、そこは微妙な空気が漂っていた。

 

少女たちは赤面して顔を背けてばかりで、はっきりとこちらに体を向けているのはレリィとアルフィンしかいない。

 

「やりたい放題しすぎなのよアナタは……」

レリィはうんざりした口調だ。

 

「減るもんでもねえし、そうカリカリすんなって」

 

「夏空の下、白い砂浜の上、青い海をバックにアナタは来て早々彼女たちを凍りつかせたのよ。反省しなさい」

 

「舐めんなよ。やろうと思えばそれ以上のことだって出来るぞ」

 

「なんの自慢にもならないわよ……」

 

悪そびれる風もなく胸をはって言い返すシオンに、学園長のレリィも気力が削られたらしい。

説教はそこで終了した。

 

純情少女たちの熱が冷めてからレリィが手を叩き、注目を集める。

 

「それじゃあ主役の男子が揃ったから自由時間、といきたいところなんだけど、セリスさんはどこにいてもセリスさんね」

 

絶好の海水浴日和なのにね、と付け足すレリィが視線を投げると、心ここにあらずといった様子で呆けていたセリスが、ハっと我に返った。

 

水練をすると言いくるめられ半強制的に恥ずかしい格好に着替えることになった彼女は反対の姿勢を示し。

 

「はい。私たちは観光気分で来ているわけではありません。新王国を代表して戦う自覚を持っているならば、遊んでいる暇はないと分かっているはずです」

 

若干紅潮が残っている学園の堅物リーダーは周囲が盛り上がっていても、空気を読まない発言をして場を盛り下げることで有名だ。

 

だがこんな時こそ、学園名物三和音の出番である。

 

自由時間を手に入れるためにと、ティルファーとシャリスがまず飛び出した。

 

「でもでもセリス団長、折角海に囲まれた離れ島に来たのに、何もせず帰るのは勿体なくないですか」

 

「勿体なくありません。私たちが見据えなければならないのは、国の威信をかけて戦う対抗戦のみです」

 

「しかしセリスよ。時には肩の力を抜くことも必要だろう。確かに私たちが目指しているのは全竜戦だが、四六時中気を張るのは逆効果ではないか?」

 

「それについては同意しますが、今ではありません。学園に戻ってから、十分な休息日を設けます」

 

「「ノクトォォ!」」

 

長女シャリス、次女ティルファーは説得に失敗した。

 

望みは情けない年上二人に泣きつかれた末っ子ノクトに託された。

 

「シオンはどう思いますか?」

 

単独突破は不可能と察したノクトはシオンに意見を求めた。

 

四大貴族セリスの影響力は学園では飛び抜けているが、唯一その上から動かす権限を持っている者がいる。

 

それは部活という枠組みに限った話になるが、合奏部の指揮者であるシオンだ。

 

経験の浅いセリスはかなりシオンの言いなりになっている節がある。

 

この短期間でコンミスとソリストを兼任するなんて難題も二つ返事で了承しているのだ。

 

その関係性を傍で観察している三和音の頭脳を担うノクトは確信した。

 

堅物を柔らかくするには、シオンをぶつけるのが一番であると。

 

話を振られたシオンは暫し間を置いたあとに頷いた。

 

「どうせコイツらもう遊ぶモードに入ってるから切り替えられねえだろ。ならパっと弾けて、それから気合い入れ直せばいいだろ」

 

「ですが機竜使いは忍耐強くなければなりません。一時の誘惑に流されてはいけませんよ」

 

相変わらずのぶれないクソ真面目さに、シオンはやれやれと肩を竦める。

 

「我慢するのが正解とするのがお前のやり方であっても、コイツらは違うかもしれないだろ。いつも言ってるが、他のパフォーマンスを最大限に引き出すのがお前の役割だ。勝手に突っ走って、振り返れば誰もついてきてないのが一番やっちゃいかんとも言ったな。自分から主張して引っ張らなきゃならない時と、そうでない時とを見極めろよ」

 

正直シオンの腹を覗けば、訓練だろうがどうでも良かった。

一刻も早く用意されてある日除けの天幕に駆け込みたい。

それを叶えるには三和音の支持にまわり、セリスただ一人を説得するのが手っ取り早い。

 

「……シオンがそこまで言うのであれば」

 

やや強めの口調で諭されたセリスは案の定折れた。

その背後では言質が取れたことでシャリスとティルファーが拳を上げて喜びを表明していたが、そんなお調子者の二人を制するように。

 

「ですが軽く体をほぐしてからにします。いきなり動いて怪我をしてしまえば元も子もありません」

 

どこまでも真面目なセリスがそう纏めると、待機していた生徒が一斉に動き出した。

 

体重を預けて寄りかかって来ていたクルルシファーにも、折角の海を満喫して来いと背中を押してから、灼熱地獄から避難しようと天幕を目指す。

 

「ちょーいちょいちょい。いくらなんでも無反応で立ち去るのは酷いよしおりん!!」

 

「お前もしつこいなぁ」

 

涼みたいのに涼めない。

 

オアシスに向かう途中、ティルファーに呼び止められたシオンが不機嫌そうに振り向くと、もじもじしているセリスを中心に三和音がそれぞれ決めポーズをとっている奇妙な光景があった。

 

 

「我ら美少女四人組をスルーするなんて、君らしくないじゃないか」

 

「自分で美少女言うなよ」

 

すかさず突っ込みを入れると、おどけるようにしてシャリスはペロッと舌を出した。

 

「さっきからしおりんの反応超悪いよ!そういう所はルクっちを見習わなきゃ!」

 

「Yes,面白味の欠片もありません。再度やり直しを要求します」

 

聞いたところによれば、一足先にビーチに出ていたルクスは下着と勘違いをして、あわてふためいていたらしい。

 

期待を裏切らなかったルクスのように、純粋な反応を提供すれば満足させられたかといえばそうでもない。

 

要は彼女らも、見返りを求めてるのだ。

折角お洒落して来たのだから、男性陣からの甘い言葉の一つや二つ吐き出せと。

 

なんだかなぁ、とシオンは腑に落ちない。

 

これが下着ならまだ話は分かる。

衣服の下に身につけ普段は隠れているからこそ、羞恥心を払い勇気を出して晒してくれたお返しとして、ならまだ頷ける。

 

一方水着は見せる前提に使われているわけで、大したありがたみもない。

 

コレらと色事に励むというのならいくらでも褒めてやるが、残念ながらそんな予定もなく、正直装衣姿を褒めてと迫られている気がしてならなかった。

 

以前、人相が悪いおっさんが経営している湖で学園の生徒と水遊びをした際は、好感度上昇計画のために適当な台詞を並べてやったので、全く感情の籠っていない上辺だけの誉め台詞であれば用意はできる。

 

が、いくら何でも親しい彼女たちには失礼極まりない。

 

「お前ら無駄に着飾んなくても良いくらい素材がしっかりしてんだからさ、大抵のものはそつなく着こなせて当たり前だろ」

 

「それは遠回しながら似合っていると受け取ってもいいのかい?」

 

「なんだっていいよもう」

 

早く解放されたい気持ちで一杯なシオンは適当に頷いた。

 

「入念に選んだ甲斐があったようで一安心だな、セリス」

 

「そ、そうですね。シオンに喜んでもらえるのは悪くない気分です」

 

喜んでいるわけでもないのだが、都合よく解釈してくれるのは非常にありがたい。

 

そんなセリスティアも露出はほどほどのタイプの水着を選んではいるが、まあ破壊力は隠しきれていない。

 

「ホントお前ってエロい意味でも学園最強だよな。前世でどんな善行を積めばその肉体美を手に入れられるんだよ」

出てはいけない部分は引き締まり、出るべき部分はしっかり出ているメリハリついた体は一種の理想だろう。

 

お隣の貧相なのと比べてみたら目も当てられない。

これが格差社会というものか。

 

「しおりんは……一体どこを凝視してるのかな?」

 

「まっ平らなお胸。ティルファー平野」

 

「超あり得ないんだけどっ! それを言うならクルルシファーだって同じくらいなのに、わたしに対してだけ異常に辛辣でしょ!」

 

「あいつは細くてスラッとしてるから見栄えは良いからなぁ。無くても女としての価値は高いぜ」

 

「わーん! 雪国から来た妖精の下位互換で悪かったね」

 

騒いだり卑屈になったり、忙しい奴だ。

まっ平らだってマニアックな層への需要はあるのだから、そう卑屈になることはないのに。

 

「気を付けるんだぞセリス。どうやら彼は、君の身体がお目当てらしい」

ティルファーの発育を願っていると、シャリスがそうセリスに耳打ちしていた。

 

人聞きの悪いことを言わないでほしい。

そこにダイナマイトボディがあるのにそっぽを向くなんて、それこそ失礼ではないのか。

 

逆に岩影に連行しないこの紳士っぷりを称えてほしいところだ。

 

「あまりじろじろ見られると、恥ずかしいのですが……」

じっと見つめられていたセリスが、体を腕で隠すような仕草をみせた。

 

 

「嫌なのか?」

あまりにストレートに返されたセリスはうっ、と言葉に詰まってから。

 

「嫌というほどではありませんが、このような格好は慣れません」

恥じる乙女は何故こんなにも絵になるのだろう。

 

拒否反応はされなかったので構うことなく見続けていると、何やら背中に重みが。

 

「セリス団長だけ特別視してズルいよ!差別反対、生徒を平等に扱えー!」

ピョンとティルファーが背中に飛び乗り、耳元できゃいきゃいと抗議を始めた。

 

こうして気軽にボディタッチしてるティルファーも、十分優遇されている気がしてならない。

 

「わたしを選ぶならもれなくノクトもセットでついてくるからお得だよ!」

 

「No,巻き込まないでください」

 

「更に期間限定でシャリスもおまけでつけちゃうよ!閉店間際の大セール、さあ買った買った買いなさーい!」

 

「私はおまけなのか……」

 

ひとりは太刀打ちできないためか、ティルファーは三和音として売り込みをかけた。

 

両者を天秤にかけた場合、四大貴族のセリスの価値は論ずるまでもなく、個々のスペックが高い『三和音』も捨てがたい。

 

「過度な密着は不許可ですティルファー。離れてください」

その時、目に余る行いとして映ったセリスがピシャリと咎める。

 

「えー。でもセリス団長だって、しおりんとデートした時くっついてたってノクトから聞いたよ。なのに人のは取り締まるってどうなんですか」

 

「あの時は指揮者とのコミュニケーションをとっていたまでで他意はありません」

 

必死に否定する姿が逆に怪しく思えたのか、ティルファーは目を細めて笑った。

 

「だったらこれも指揮者と演奏者のコミュニケーションってことでいいんですよね」

 

「良くありません。コミュニケーションを建前に接触したいだけではありませんか。 動機が不純なのです」

 

「セリス団長こそコンミスって地位を建前にしてるじゃん。ここ最近ずっとしおりんに張り付いててさ、実は質問するのを装って一緒にいたいだけなんじゃないの」

 

言い争いをしているセリスとティルファーの間に邪険な雰囲気が流れる。

 

そこで見かねたシャリスが仲裁に入る。

 

「シオン君本人が嫌がっていないのなら咎める必要はなかったのではないか。それにセリス、君だって邪な気持ちがないわけではないだろう」

 

「一切ありません。わたしとシオンは、指揮者とコンサートミストレスとして清い関係を結ばせていただています」

 

「しかしセリスよ。最近嗜好が変わってきているのは私の勘違いではないだろう。昔は正統派感のある王子や騎士に熱中していた君が、最近は最終的に貴賤結婚に落ち着く作品を揃えている――」

 

「余計なことは喋らないでください!」

 

言い終わらないうちにシャリスの口が塞がれた。

秘密は漏らすなという念を瞳に宿したセリスの犯行であった。

 

アイコンタクトでやり取りをしてシャリスが同意を示すと、一段落ついたセリスが向き直る。

 

「ち、違いますからね。幅広い系統に手を出しているのは将来において有効に活用するための準備段階でありまして! コンミスとしてシオンを知る為の参考文献に役立てていただけであって、ただそれだけの用途にしか使ってません!」

 

「どしたお前?」

 

「……なんでもありません」

 

墓穴を掘ることに定評のあるセリスは恥ずかしさのあまりしゅんと小さくなった。

よくもまあこれまで欠点のない完璧なセリスお姉さまを演じてこれたものだ。

 

「しっかりしてくれよコンミス。成功はお前の出来にかかってるんだぞ」

 

「うぅ、もう帰りたいです……」

妄想暴走少女セリスの明日はどっちだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ん、アイリか」

 

振り切って日除けの天幕へ逃げ込むと、同じく暑さにやられたのか先客のアイリが水着姿のまま膝を抱えて座り込んでいた。

 

セパレートタイプであるため肌の露出面積は広く、シオンの姿を見るとより一層小さく縮こまっただけで特に返事はない。

ジト目でこちらを一瞥してから読んでいた本をパタンと閉じて、座れるだけのスペースを開けてくれた。

 

ツンツンしているのが平常運転となりつつアイリには色目を使っておこうと瞬時に判断する。

 

 

「やっぱりアイリは白が似合うな。そのフリルもアイリの愛らしさを表しているみたいで俺は好きだな」

 

 

掴みはバッチリ。

これで好感度は微々たるものだが上がっただろう。

そう確信するシオンだったが、アイリはそんなに甘い女ではなかった。

 

顔色一つ変えずに言う。

 

「セクハラですか?」

 

「なんでだよ……」

シオンの明日もどっちだ。

 




あやせ平野というものがあってだな……

まあジョーカーより9-nine-を買って。
調子よければみゃーこ先輩をヒロインにして陰陽師要素ぶっこんだの書くんで。

あとましろ色も紗凪リメイク出るって。

やるなぱれっと。

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