恋姫無双 黄金の獣と聖杯大戦   作:月神サチ

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私は、あのときあの人のお願いに、頷いてよかった。

でなかったら、あなたにきっと会えなかったから。

わたしと一緒に笑って、一緒に泣いて、時に私にエッチなことしたあなた。

告白は2回断られたけど、3回目の正直で頷いてくれたあなた。

ちょっと怖い自称正妻や、ねりこさんそっくりな人に説得されて私にプロポーズして、結婚してくれたあなた。

夢から覚めたあと、色々なところに一緒に行ったよね。

私が一方的に傷つけたときがあったのに、それでも私やさしく受け止めてくれたよね。

どんな困難なときも、私を守ってくれたよね。

そんな貴方と、ようやく会えた。

その温もりを肌で感じることが出来た。

その優しい声を、聞くことが出来た。

あなたと出会い、そしてこうして触れ合えて、私は幸せです。



        ~とある少女の日記より、抜粋~


獣と七次元先からの訪問者、そして……?

5人と増えた一行は、再び天翔る王の御座(ヴィマーナ)に乗った後、陳元龍の案内によって、下ヒの近郊に着陸する。

 

そこから徒歩で1刻(約30分)ほど。

 

彼らは下ヒの街にたどり着いた。

 

 

 

 

 

「ふむ、なかなかの賑わいがある街だな」

 

街に入ってすぐ、視界に入った光景を見た私は、感想を素直につぶやいた。

 

日が傾き始めた時間帯。

 

それでもそれなりに人が行き来をしている。

 

やはり治安がいいのだろう。

 

私が心の中で冷静に分析していると、陳元龍が少しだけ不満げな表情を見せた。

 

「これでも徐州で2番目に大きい街なんだけど……」

 

「いや、治安が悪化しているであろうこの時世でこれだけの賑わいを見せているのだ、太守である卿の母親の手腕はかなりのものだなと感心していた」

 

私がそう告げると、メディアもそれに頷く。

 

「私から見ても、かなり賑わいがある街だと思いました。……時代も場所も全然違うコルキスと比べるのが間違っているとは思いますが……」

 

少し困った様子で後半部分を零すメディアだったが、私以外は聞こえてなかったようで、困った顔になったメディアの表情に3人は首をかしげるだけだった。

 

「……まあ、確かに母さんはここら辺の豪族をうまく懐柔して色々してるから、比較的治安はいいと思うよ。手段はほめられた物ではないけれどね」

 

少し自慢げに母親のことを紹介した陳元龍は、後半に複雑そうな表情を浮かべる。

 

私はとりあえず彼女を家に送り届けるために場所を聞こうとしたが……

 

「……カール、そこにいるのだろう?」

 

背後から感じた気配に対して問いかけながら振り返った。

 

「「「「!?」」」」

 

他の4人は私の行動から慌てて振り返る。

 

「これはこれは獣殿。ご機嫌いかがかな?」

 

影絵を髣髴させるような存在がおぼろげなその人物は、私を見て問いかける。

 

「私は見てのとおりだ。……卿が何故ここにいるのかは分からぬが、壮健そうなのは何よりだ」

 

私がそういうと、心なしか不満げな表情を我が友は浮かべる。

 

「……私が存在している理由について、貴方はそれとなく理解しておられると見た」

 

「ああ。……すまぬな、カール」

 

私が素直に謝ると、美花たちが目を丸くして私を見る。

 

が、カールは彼女たちなど相変わらず眼中に無いようで、私を見ながら答える。

 

「いえいえ。おかげで彼女に諸々を引き継ぐときに処理し損ねた負債について知ることが出来、それを処理するための手筈を整えることが出来たので、これはこれで悪くは無い」

 

「……? 黄昏の天にどのような負債を引き継がせたのかは知らんが、卿が私に腹を立てていないようで安心した」

 

私はカールの発言に疑問符を浮かべつつ感想を告げると、彼はいつもどおり胡散臭い笑みを浮かべた。

 

「……ええまあ。それはそれとして、私は今少々探している人がいるのでね。今回はこれで失礼させてもらう。また近いうちにお会いしよう」

 

「そうか。では、卿の探す相手が見つかることを祈ろう」

 

友は、私の言葉を聞くと、陽炎のように姿を揺らめかせて消え去りかけて……止まる。

 

「……ああ、あと一つ。私も最近気が付いたのだがこの世界は神魔霊獣の類が自然発生しているらしい。()()()()()()()()()()()()()。ゆえに万が一があるかもしれません。まさかありえないとは思いますが、格下の相手となめて返り討ちにされる。それだけは気を付けて頂きたい」

 

振り向いてこちらに告げる友のその表情は、珍しく真面目なものだった。

 

「なるほど。忠告感謝する」

 

ゆえに私も真面目に受け止める。

 

私の言葉を聞いた友はフッ、と笑うと陽炎のように姿を揺らめかせて消えた。

 

「……旦那様、今のは一体」

 

「私の友だ。なにやらまた暗躍しているようだが、何を考えているかまったく分からぬな」

 

私は美花の問いかけに対し、肩をすくめながら答える。

 

「ラインハルトさんも、神代の神に比肩する力を持っていますが、あの人はラインハルトさん以上の力を持っていました。あの人は一体……?」

 

メディアが困惑した顔でこちらを見るが、私が答える前にキャットが割り込む。

 

「触らぬ神に、畳ハリセン……ではなく、祟りなしだ。下手に関わるとどこぞのケルトの女王みたいな死因で死ぬことになる。というか、アタシのオリジナルの原本といい勝負で、関わっていい相手ではない。もっとも、アレは幸か不幸か自身の自滅因子である大旦那様以外は大体塵芥と断じる類。接触は最低限に、あってしまったらえんがちょを忘れぬことだ。……もっといえば、大旦那様もかなり危険ではある。……地雷原でタップダンスしている気分と言えばいいだろうか? ちなみに地雷と言うのは踏んでも爆発はしない。踏んだ足を放すと爆発するのである。だから踏んでしまったら動いては駄目なのだ」

 

キャットの言葉に一同は首をかしげたあと、こちらを見た。

 

「……カールは、基本私以外には必要最低限の接触しかせぬ。ゆえにそれ以外のときに卿らから話しかけなければ、面倒ごとはまず起きぬと言ってもいいだろう。結論を言えば、好奇心でカールと関わるな、だ。あと私が危険であることは否定せん。が、逆鱗さえ触れねば大抵のことは肩をすくめる程度で赦すつもりではある」

 

私は真面目に答えた後、陳元龍に問いかけた。

 

「……さて、色々聞きたいだろうが、此処では色々と人目が多い。ゆえに卿の家に上がらせてもらいたいのだが……」

 

「分かった。ボクも助けてもらったお礼がしたかったから。……ついてきて」

 

そういうと、彼女は私たちを先導し始めた……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

日がそれなりに傾くなか、私たちは陳元龍の家と思われる比較的大きな屋敷に到着した。

 

「ここがボクたちの家だ。遠慮しないで上がって」

 

そういって私たちを彼女が招き入れる。

 

するといきなり玄関に誰かが全力でやって来て、残像を残す早さで土下座した。

 

「申し訳ございません、喜雨! 勝手に困っている人を助けて家に上げてしまいました!!」

 

「……どういうことか詳しく説明して、紅美鈴」

 

陳元龍がそう言うと、その誰かはすぐさま気をつけの体勢になる。

 

そこで明らかになったその人は……。

 

青みがかった灰色の瞳と、側頭部だけそれぞれ三つ編みにした背まであるストレートの紅の髪。

 

服装は淡い緑色で華人服とチャイナドレスを足して2で割ったような感じのもので、同色の帽子と、帽子についている『龍』とかかれた星型の飾りを見て確信する。

 

(……紅魔館の門番)

 

のちにそう呼ばれるであろう彼女は、弁解をし始める。

 

「えっとですね。その二人、街にいた悪漢を伸してくれたんですが、その時いくつか家の壁に穴空けてしまいまして……。弁償しようにもお金がないので困っていたので、喜雨の名義で建て替えました。そうしたら、建て替えてもらった分は働いて返すといわれたので、連れてきたんです」

 

指先をツンツンしながら答える紅美鈴。

 

「……分かった。とりあえずこちらの客人をしばらく別の客間でもてなしてて。ボクはそっちの人と話しあいしておくから」

 

「は、はいっ!!」

 

陳元龍はそう言うと、その場を後にした。

 

「えっと、ではこちらにどうぞ。私ができうる限りおもてなしいたします」

 

心なしか緊張している紅美鈴の後に、私たちは続いた……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「えっと、ではお茶をお持ちしますので――」

 

「それには及ばん」

 

客室に案内されたあと、紅美鈴がそのまま去ろうとしたので、それを止めた。

 

そして私は宝物庫から玉露の茶が入った茶器を出す。

 

「それよりも、少し卿が気になったのでな。話をしたい」

 

すると心なしか緊張の色を見せる彼女。

 

「……私で良ければ」

 

そういって彼女はお茶のあるあいた席に座る。

 

「単刀直入に言おう。卿は何者かね。 唯人にしては気配が一線を画しているが」

 

「―――ッ!!」

 

体を硬直させる紅美鈴。

 

「案ずるな。どちらかといえば私もそちら側の存在だ。証拠は今見せたとおりだ。もっとも、私はもともと人間だったがね」

 

「……他言無用に出来ますか?」

 

恐る恐ると言った具合に問いかける彼女。

 

「無論。キャスターと、キャットも私同様に正体を秘匿するべき存在なのでね。その点はわきまえている。それに同胞ともいえる卿をわざわざ売るほど切迫した理由は無い」

 

「……私は紅美鈴。龍と人の両方の血を受け継ぐ化外です。貴方たちが一緒に来た喜雨の母、燈に恩があるので、彼女が居ない間屋敷を守っています」

 

「なるほどな。……すまぬが、私たちの自己紹介は少し待ってくれ。もうすぐ卿がつれてきた者と共に陳元龍が来るからな」

 

そういいおえるのとほぼ同時に扉が開く。

 

「……? どうしたの、2人とも」

 

小首をかしげて廊下のほうを見る陳元龍。

 

私は冷静に廊下に居る二人に対して告げる。

 

「私もキャスターも卿らと積極的に事を構えるつもりはない。安心できぬならばサーヴァントは霊体化していて構わぬぞ」

 

「「!?」」

 

「だが、屋敷の主を困らせるのはあまりよい物と思えぬゆえ、あまり躊躇するならば発言を翻すかもしれん」

 

「……」

 

少しすると、陳元龍の背後から1人の少女がおどおどしながら顔を出した。

 

もう1人は澄んだ水を思わせる色の双眸と、ライトブラウンの背まである長い髪の少女。

 

「……よもや、このようなところで、卿と出会うとはな……」

 

私がそういうと、少女は目を丸くする。

 

「貴方は、私を知っているんですか?」

 

「ああ。もっとも、私が卿と共にすごし、卿の悲願を達成するために尽力した端末であるかは保障できんがね。――イオナサル・ククルル・プリシェール。……いや、結城寧」

 

「!!」

 

「……卿は何故この世界に来た?」

 

私が問いかけると、彼女は私たちを見たあと、答える。

 

「私は、神様と名乗る女の人に、ラインハルトって人を助けて欲しい、と言われました。貴方の力が、彼が集めきれなかった最後の鍵だから。貴女を助けた彼を、今度は貴女が助けて欲しいって。最初は信じられなかったけど、色々証拠を見せてもらって、私は信じることにしました」

 

(私を、助ける……? 集めきれなかった、最後の鍵……?)

 

そのとき、私の中で限りなく確信に近い仮説が浮かび上がるが、それを後回しにして、彼女の話しの続きを聞く。

 

「だから、私はこの世界に来ました。そうしたら、左手の甲に赤いこれが浮かび上がって、サーヴァントを召喚したんです」

 

「……なるほどな。色々気になるところはあるが、あの女神が何らかの理由で私の協力者として卿をこの世界に(いざな)い、降り立った直後にサーヴァントを召喚したということは分かった」

 

「!? ってことは……」

 

「私は、ラインハルト。ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒだ」

 

驚くイオナサルに対し、私が冷静に答える。

 

「ちょっと待って」

 

陳元龍が思いっきり話の腰を折る。

 

「とりあえず話を整理しよう。そっちの2人も座って」

 

すると、霊体化していたサーヴァントが姿を現す。

 

後ろだけひとまとめにした赤いショートヘアーの女性。

 

ラウンドシールドと、剣を持ち、やや露出が多いのが印象的だ。

 

そんな彼女は、イオナサルの隣の席に座る。

 

陳元龍も席に着き、私に問いかけた。

 

「貴方は大陸の外から来たといったけど、アレは嘘なの?」

 

「大陸の外から来たな。それは間違いない」

 

「この世界って言ったけど、アレはどういうこと? あの言い回しが正しければ、世界は一つだけじゃないってことになるんだけど」

 

「……回答を拒否する」

 

私がそういうと、何か言いたげな顔をした後、続ける。

 

「貴方とイオナサルの関係は?」

 

「彼女が本当に私の知る彼女ならば、夫婦と言うことになる」

 

「「「!?」」」

 

私の発言に、イオナサルは急に顔を赤くして頭から湯気を出し始め、美花、メディア、美鈴が頬を赤く染める。

 

ついでにキャットが、

 

「仕えた当日に第一次シュラバヤ海戦勃発とは、なんともまあ女たらしな大旦那様だ。……いつ後ろから刺されるかトトカルチョするのも面白いかもしれぬな」

 

とつぶやいていたが、それはスルーする。

 

「なら次。キャスターと、ライダーは、両方とも、サーヴァント、って言った。これは一体どういうこと?」

 

「回答を拒否しよう」

 

「……じゃあ、今回はこれで最後にする。貴方は大陸で何をしようとしているのか、貴方は何者なのか。そしてそちらのキャスターが何者なのか。答えられる限り、答えて」

 

「一つ目は未定。強いて言えば諸国漫遊か、侠客の真似事だ。2つ目は人であり、人ではない何か。……現状は人類に仇なす者ではない。最後の質問については、回答を控えさせてもらう」

 

私はそう告げた後、陳元龍に問いかけた。

 

「この中で、私を知らぬ者がいるのでな、自己紹介をしても良いかね?」

 

「あっ、そうか……なら双方自己紹介して」

 

彼女は今更ながらハッとして、自己紹介を促した。

 

「私はラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ。友からは獣殿、部下からはハイドリヒ卿などと呼ばれていた者だ。呼び方は、相当奇妙な物で無ければ、特に文句を言うつもりは無い」

 

「私はキャスターです。ラインハルトさんのサーヴァントです。よろしくお願いします」

 

「私は孫乾。字を公祐と申します。旦那様に賊から助けていただきましたので、そのご恩をこの身朽ちるまでお仕えすることでお返ししようと考えています」

 

「アタシはタマモキャット。今は首輪付きのメイドだワン。ご主人とともに賊から救ってもらい、ご主人を廃人から復帰させてくれた大旦那様とそのサーヴァントに恩返しするために犬馬の労を自主的に行うフォックスなのである」

 

私たちが自己紹介すると、イオナサルと、ライダーが自己紹介する。

 

「私はイオナサル・ククルル・プリシェール。イオンって呼んでください。えっと、ラインハルトさんとは……ふ、夫婦で、です」

 

「あたしはライダー。イオンのサーヴァントよ。……でもまあ、まさかマスターの探し人がこんなに早く見つかるとはね……」

 

恥らう主に、驚きと困惑を見せる従者という、どこか噛み合う主従の自己紹介が終わると、どこからとも無く、空腹を告げる音が2人分鳴る。

 

「「~~~」」

 

どうやらイオナサルと、美花らしい。

 

「っと、もうそんな時間か」

 

ふと外を見る陳元龍。完全に日が暮れようとしていた。

 

「美鈴。手伝って」

 

「は、はいっ!!」

 

椅子から降りた陳元龍は美鈴と共に部屋を出る。

 

「あ、私もお手伝いします」

 

「アタシも手伝うぞ。メイドの料理をご覧に入れよう」

 

その後に続くメイド2名。

 

「あ、私も作りたい料理があるんです!! ライダーは待ってて!!」

 

そういって彼女たちの後を追いかけるイオン。

 

「えっと、私たちは……」

 

困惑した顔のメディアに対し、私は告げる。

 

「客人として、私の従者としてもてなされておくといい。それに厨房はおそらく5人で十分。それ以上はかえって場所の関係で作業が滞る可能性すらある。ついでに私の話し相手も欲しいからな」

 

「は、はい……」

 

しばらくの沈黙の後、彼女は何か決心した様子で問いかける。

 

「あ、あの。イオンちゃんとの馴れ初めとか、聞いてもいいですか!?」

 

「あ、あたしもそれ気になるな」

 

ライダーも興味津々で口を挟む。

 

「……それは、数奇な出会いからだったな……」

 

私は暇つぶしとばかりに、昔語りをはじめた……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

 

「お待たせいたしました」

 

「おまたせ~。はいっ、貴方が食べてみたかった好きです♪やきにくだよっ」

 

「タマモキャット特性オムライスだ。ご主人と大旦那様用の分も、勿論あるぞ」

 

「なんか、あの3人に負けてるけど……」

 

「私たちも作らせてもらいました」

 

それぞれが料理を用意する。

 

美花、陳元龍、美鈴が作ったのは、この大陸の料理。

 

キャットは、オムライス。

 

そしてイオンは私が以前食べたいと言っていた好きです♪やきにく。

 

「……では、いただこう。頂きます」

 

「「「「「「いただきます!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「まて、この部屋割りはおかしい」

 

(若干私の分だけ量がおかしかった気がする)食事の後、料理の後片付けをする美鈴を横目に、私たちはそれぞれの部屋に案内されたのだが、美花、キャット、イオン、ライダー、メディアが私と同室で、屋敷で一番大きい部屋に割り当てられていたのだ。

 

「……えっ? イオンは貴方の妻だし、孫公祐とキャットはメイド。それでライダーとイオンは一緒にいないとだめみたいだし、同じ理由でキャスターも外せない。ならこれが妥当じゃない?」

 

陳元龍の発言に対し、私は申し出る。

 

「部屋割りは、私とキャスターで一つ、美花とキャットで一つ、イオンとライダーは一つ。それで頼む」

 

「……あんまり部屋汚さないでね」

 

ジト目でこちらを見る陳元龍。

 

「汚れた分は取り替えておく」

 

このようなやり取りがあって、部屋が割り振られた。

 

……が。

 

「何故やってきた」

 

キャット、ライダーを除く全員が入室し、一応監視と言うことで、部屋の外にライダーとキャットが立つことになっているらしい。

 

彼女たちの発言に若干頭が痛くなりながら、問いかけた。

 

「イオン。夫婦であり、ようやく出会えたからと言って、いきなり初夜をすることはないのだぞ?」

 

「い、今しないと、け、決心が鈍りそうだから!! それに、出会ったら端末越しじゃ出来なかったこと、色々するって決めてたから」

 

生まれたての小鹿を髣髴させる雰囲気をかもしながら、彼女はそう告げた。

 

私はその決意を是とし、それ以上言及するのをやめる。

 

「キャスター。私で本当にいいのか?」

 

「ラインハルトさんから召喚されたときから、一目ぼれでした!! それに、私と袂を分かつまで、ずっと居てくれると、私が幸せになるために助力を惜しまないと言ってくださりました。私にそれを信じさせてください」

 

(私と話すとき終始頬を赤く染めていたが、まさかそこまで思っていたとはな。)

 

彼女の決意は固く、おそらく断ればそれこそ人間不信が本格化してしまいそうだった。

 

これを断る理由も特にない。

 

「……美花は……言うまでも無いのか」

 

「はい。今宵、旦那様の寵愛を受けるつもり参りましたので。それに、初めてのお2人が安心できますように、手本をお見せいたしませんと……」

 

(……いきなり4○だが、まあ、今の体の小手調べには申し分ないか)

 

私はそう思った後、3人に告げる。

 

「ならば今宵、私の無聊を慰める楽器となれ。私は総てを愛している。ゆえに卿らも愛しているよ。我が腕の中で夜の静けさに負けぬよう、その美しい声で快楽の音色を奏でておくれ。――さあ、今宵は互いの熱に、溺れるとしよう……」

 

そしてそれぞれと口付けを交わす。

 

それはほんの小鳥が啄ばむようなささやかな物だったが、少女たちの体に熱を持たせるには、十分すぎる甘美な毒だったようだ……。

 

私はイオンをその腕に抱いてそっと寝台に下ろす。

 

すると、メディアと美花がイオンの両側にそっと座った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果だけいえば、私は朝日を寝ることなく拝み、3人は安らかに寝ていたとだけ残しておこう。

 

それにしても、陳元龍の母親は、ずっと太守として働いているのだろうか……?

 

そんな疑問を朝日を拝みながら私は考えるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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