恋姫無双 黄金の獣と聖杯大戦   作:月神サチ

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「彼との数奇な出会いが無ければ、きっと私はいつか退治されていたかもしれない。もしくは別の怪異に倒されてたかもしれない。でも彼に出会えたおかげで、出来ることも増えた。いろいろなことを知った。感謝しても仕切れないくらいに恩を感じてるわ。でも私はあいつみたいなメス犬じゃないから、素直にお礼なんて言わないわ」


~とある少女の日記より 抜粋~


とある少女たちとの邂逅

ひとまず朝食を終えた私たち。

 

あとは各自のんびりとするはずだったのだが……。

 

「陳珪様! 森脇様!! 一大事でございます!」

 

そういって食堂に駆け込んできたのは兵士と思われる男。

 

「なんだね、騒がしい」

 

冷静な教授の言葉に、兵士が大声で返答した。

 

「申し上げます! 西の邑で怪異が現れました!!」

 

「それで、種類は?」

 

陳漢瑜が問いかけると、兵士は即座に答えた。

 

「村の者によると巨大な肉塊だったとのこと」

 

「……ならまあ何とかなるか」

 

森脇教授はそういって立ち上がった。

 

「……教授。怪異とやらはどういうものかね」

 

私が問いかけると、彼は一度首をかしげた後に納得した様子で説明を始めた。

 

「怪異とは、一言で言えば意思を持つ幻想だ。人間の理解が及ばぬ存在の総称でもある。ただし、怪異といっても実はその生態から2種類に分類できる」

 

彼はそういって人差し指を立てる。

 

「一つは片方は夜に現れ、朝日と共に姿を消すモノ。さしずめ夜の住人といえば良いだろう。日の光の下に生きる人間をねたむ亡霊や、どちらかと言うとポルターガイストに近い存在で、大体その場で倒したとしても次の夜には大抵復活するし、そもそも神秘のこもらない方法では対処すらまず出来ないのが特徴だ。他にも幾つか特徴があるがまた今度にしよう」

 

続けて彼は2本めの指を立てた。

 

「もう一つはこうやって日中でも突然現れる化け物。出現頻度はそこまで高くないが、時間体帯の影響を受けることなく存在し続ける。唯一の救いは個体にもよるけど、一般兵10人居ればなんとか倒せるし、一度倒してしまえば復活はしない。同種こそ居ても、同一個体は居ないみたいだからね」

 

そういってから、彼は顎に手を当てた。

 

「二つに共通するのは、大体人間を襲うと言うことだ。……中には友好的だったり、そもそも人間に興味すらないのも居るけれど、それは少数派だ。前者は仲間として引きずり込むために、後者は自分の糧にして成長するために人間を襲う」

 

彼は途中である人物を一瞬だけ見たあとに私のほうを向いて説明を続けた。

 

そしてそれが終わると、手をパンッと鳴らして告げた。

 

「とりあえず怪異についての説明は以上だ。私は怪異の対処に向かうけれど、君はどうするかね?」

 

「無論同行させてもらおう。なに、肩慣らしには丁度良い」

 

私はそういった後、イオンたちに問いかけた。

 

「卿らはどうする? 留守番でも問題ないぞ」

 

すると美花がいの一番に答える。

 

「旦那様のいらっしゃるところが私の居るべき場所。ならば何故同行しないと言う選択肢がありましょうか」

 

「メイドたるもの常に瀟洒に主の傍に侍るべし。と言うわけでご主人が同行するならばもれなくお得なセットでキャットが付いてくるのである」

 

美花の答えにキャットが続く。

 

「私ももちろんついていくからね!!」

 

「マスターの護衛は私がちゃんとするから大丈夫」

 

「後方支援はお任せください!!」

 

イオン、ライダー、メディアがそう続ける。

 

すると教授が陳元龍と陳漢瑜、美鈴に問いかけた。

 

「では私と彼らは確定として、君たちはどうするかね?」

 

「私は城に戻るわ。邑から逃げてきた人たちの対応をする必要があるはずだから」

 

「ボクは家に残っておくよ。昨日の一件で少し疲れたからね」

 

「私は家で掃除や洗濯をして皆さんのお帰りをお待ちします」

 

それぞれの回答を聞いて頷いた教授は兵士のほうに向いて告げた。

 

「では馬を4頭用意しておいてくれたまえ。こちらも準備が出来次第向かう」

 

「はっ!!」

 

兵士は短く返事して去っていった。

 

「……と言うことで支度は早くしてネ!!」

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

急ぎ支度をした私たち(といっても、持ち物を確認する程度)は、私とメディア、イオンとライダー、美花とキャット、そして教授の4組に分かれて馬に乗って隣の村まで駆けた。

 

しかし……。

 

「これはひどい……」

 

「完全に1から作り直したほうが早いレベルの惨状だな。しかも村の中心部でまだなにやら戦っている」

 

私はそういいながら飛んできた弾幕を私は即席で発動させた防御壁で防ぐ。

 

「……おかしいね。兵士の連絡ではあの肉塊みたいな怪異が現れたと聞いていたが……」

 

教授の独り言に対し、私は周囲を見渡してあるものを見つける。

 

「どうやらその肉塊の怪異は既に死んでいるようだ。……イオンたちは見ないほうが良い」

 

私が指し示すところにはモザイク待ったなしの状態になっている元肉塊型の怪異の死体があった。

 

「……私ではあの二人は止められない。すまないが君にあの2人をとめてもらいたいのだが、出来るかね?」

 

「無論。キャスターは後方支援と流れ弾対策に防御の維持を頼む。後美花とキャット、教授とライダーは周辺に逃げ送れたものが居ないか確認だけしてくれ。イオンはいつでも詩魔法でキャスターと共に援護が出来るようにしておけ。灯台守の夜ならば発動できるはずだ」

 

「はいっ!!」

 

「かしこまりました」

 

「がってんだワン」

 

「「了解」」

 

「分かった!!」

 

私は彼女たちの意思を確認したらそのまま防御壁から飛び出す。

 

すると片方から極太レーザーが放たれた。

 

私は即座にそれを回避する。

 

するともう一人のほうが声を上げた。

 

「誰だか知らないけど、早く逃げて! 私の力を弾くやつにかなうわけが無いわ!!」

 

「ならば余計に加勢せねばならぬだろう」

 

私はそういって、私に背を向けている金色の髪の娘の隣に立ち、目の前に居る若草色の髪の少女と正対する。

 

「……あら、ずいぶんと倒しがいがありそうなのが来たわね」

 

少女は好戦的な光を瞳に宿しながら、そう零した。

 

「貴方!! 私のいったことが聞こえたでしょ!? 理解できなかったの!?」

 

弾幕をばら撒きながら後退する娘に対し、私は言葉を返す。

 

「ああ。理解したうえで卿に加勢している。彼女は暴走しているが、卿では足止めが精一杯。ゆえに前衛を私が受け持とう。卿は後衛で各場所から弾幕をばら撒け」

 

「何を勝手な――」

 

彼女は痺れを切らしたのか、こちらを向いて抗議をしようとしたが、その瞬間少女が娘に襲い掛かった。

 

が、目の前の出来事を無視する私ではないので……。

 

振りかざされた傘を左腕で受け止める。

 

「あら、思ったより丈夫ね?」

 

「あいにく、丈夫さは私の自慢でねっ」

 

私は容赦なく右ストレートを振るうが、避けられる。

 

そして彼女はそのまま私の腹に一撃を加えると同時に間合いを開く。

 

が、私はその一撃を無視してそのまま殴りかかる。

 

流石にそれを予想していなかったのか、彼女は驚いた顔でそのまま鳩尾に一撃を喰らった。

 

それにより彼女は体をくの字に曲げる。

 

「……む。案外弱いな」

 

私がそういったとたん、彼女が獰猛な笑みを浮かべて殴りかかってくる。

 

それに対し私は口元に笑みを浮かべてその拳を殴りつける。

 

すると鈍い音共に、少女の拳が砕ける。

 

「――ッ!!」

 

彼女は即座にバックステップで距離をとり、私たちに向かって傘を向ける。

 

すると極光が視界を白く染めた。

 

が、その光がやんだ後、私が平然と佇んでいるのを見て、少女は目を見開いた。

 

「私の攻撃が……効いていない……?」

 

私はすかさず肉薄、彼女の傘を叩き落し、そのまま首を掴む。

 

もちろん抵抗をされるが、私には無意味だ。

 

「さて……どうするべきだろうな」

 

私は少しだけ普段抑えている威圧感を出しながら、問いかけるように少女を見つつそう零した。

 

すると徐々に瞳から戦意や怒りなどの渦巻くものが消えていき、代わりに恐怖の色が滲み出した。

 

それと同時に私の手を離そうとする手も徐々に震えた物となる。

 

私はしばらくその成り行きを観察した後、少々乱雑に頸から手を離した。

 

当然少女は落下し、そのまま咳き込む音が響く。

 

「ちょっと! そいつまだ生きてるわよ!?」

 

先ほどの娘が怒りながら文句を言ってきた。

 

「案ずるな。痛みのおかげで我に返ったようだからな」

 

私の言葉に少女が反応する。

 

「ええ。おかげさまで」

 

立ち上がって私たちに見せた少女の表情は、痛みでゆがめられていた。

 

「さて、何があったか聞こう。内容次第では私の監視下と言う条件付きで引導だけは渡されぬように交渉する」

 

「……信じて良いのかしら」

 

やや疑いのまなざしで私を見る少女。

 

「ああ。でなければ私がとうに引導を渡している」

 

私がそういうと、彼女はぽつぽつと語りだした。

 

「あの気色悪いやつが、私のお気に入りだった村の傍の花畑を原型なくなるまで踏み荒らしてるの見たら、カッとなって……。そのあと怒りに任せてそいつボコボコにしたら、今度はそいつがなんか攻撃してきたから反撃したわ。あとは、貴方がきて……今に至るわ」

 

「なるほどな」

 

私はそういった後、付け加える。

 

「……ああ、言い忘れていたが卿も頭数に入っているからな」

 

私がついでに金髪の娘に対してそういうと、娘が目を丸くしてから問い返した。

 

「何で私まで!?」

 

「卿も怪異であるのだろう? あと個人的に気になることがあってな。手元に置いておきたいというのもある」

 

すると娘が自分の体を抱えるようなリアクションと共に一歩下がった。

 

「私にへんなことする気でしょ!? 艶本みたいに! 艶本みたいに!!」

 

「……あいにく、私には恋人も妻も居る。ゆえに恋人でもない女に手をかける意味は無い」

 

私は若干頭痛を感じながら、娘の言葉を否定した。

 

「嘘よ。人間の男なんて私みたいな可愛い女の子見たら見境無く襲ってくるんだから!!」

 

「ちなみにそれは経験則?」

 

娘のトンデモ発言に痛みを忘れているのか少女が呆れに似た表情を浮かべながら問いかけた。

 

すると娘は挙動不審になりながら答えた。

 

「え、ええ。そうよ。私何度も襲われたわ」

 

「……」

 

「……」

 

「な、何よ」

 

私たちが無言であることに違和感を感じたらしい娘。

 

「とりあえず卿らは私の監視下に入ることだ。――構わんな。教授」

 

私がそういって振り返ると、そこには教授たちが居た。

 

「まあ、構わんよ。最初に邑を襲った肉塊型の暴走と言うことで処理しておくさ。……ただここまでひどく壊されたら、復興とか色々かかるんだよね」

 

そういってこちらに目線を合わせたので私は答える。

 

「分かった。補填のほうは宝物庫の財をいくらか見繕おう。木材と鉄などの金属で構わんかね?」

 

私の答えを聴いて満足そうにする。

 

「良いとも。細かいところは後で話をつめよう。……とりあえずそちらの2人の名前を聞かせてもらえるかな?」

 

すると2人とも硬直する。

 

「あー、もしかしてどっちも名前が無いのかな?」

 

教授がそういうと、2人とも頷いた。

 

「……とりあえず君がパパッとつけて」

 

教授がめんどくさそうにそういったので、私は金髪の娘の肩に手を乗せた後に告げる。

 

「卿の名は八雲紫だ。姓は八雲、名は紫。異論は認めん」

 

すると少女はきょとんとした顔をした後、自分の名を反芻した。

 

「……八雲、紫……八雲紫。まあ、悪くないわね」

 

そうつぶやいた彼女を横目に、私は少女のほうを向いて告げる。

 

「それで卿の名は風見幽香だ。姓は風見、名は幽香」

 

「風見幽香。なかなか良いわね」

 

うれしそうに少女は自分の名前を評価した。

 

「名前も決まったようだし、一応自己紹介してくれるかな?」

 

教授がそういうと、2人は幽雅に自己紹介をする。

 

「私は八雲紫よ。この人になんでかわからないけれど目をつけられたみたい」

 

「私は風見幽香。よろしくね」

 

二人の自己紹介の後、私も自己紹介する。

 

「私はラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒだ。ラインハルトとでもハイドリヒとでも好きに呼ぶと良い」

 

私を皮切りにメディア、イオン、ライダー、美花、キャット、教授と自己紹介がされた。

 

「……それで、君はどうして彼女たちを庇護下に置こうとしてるのかな?」

 

教授がそう問いかけてきたので、私は答える。

 

「八雲紫は面白い力を持っていたから。風見幽香は最低でも精神面での矯正せずに野放しにしていれば。いずれ人の敵として討たれるだろう。私はそれを見過ごせなかっただけだ」

 

「なるほどね」

 

「……ああそうだ。念のための仮契約をしておくか」

 

私はそういって宝物庫から魔法の杖を取り出して地面を杖でつつく。

 

すると私の周りに魔法陣が浮かび上がる。

 

驚く一同を無視して私はやや強引に八雲紫を魔法陣に引き入れて、そのまま口づけをした。

 

「「「!?」」」

 

一同が驚愕し、紫が状況把握できないまま硬直している間に、魔法陣の色が変化する。

 

それを確認した私は紫から離れる。

 

すると魔法陣の中心から二枚のカードが現れ、それと同時に魔法陣は消滅した。

 

私は宙に静止するそのカードの片方を手に入れた後、紫に告げる。

 

「これで卿は私の従者として仮契約した。これでどこに居ようと何をしていようと一方的に私が卿を呼び出すことが出来る。ちなみに今宙に浮かんでいるもう1枚は従者用で、なくすと従者が色々大変なことになるゆえ、大事にしておくことだな」

 

「そんなことよりいきなり何するのよ!!」

 

我に返った紫が猛抗議を始める。

 

「私の庇護下にあるということは、卿らが起こした諸々は私の責任になると言うことだ。ならばどうして首輪を付けずに野放しにすると思う?」

 

「まあ、妥当だよね。契約方法がアレだけど」

 

教授が一部非難しつつも賛同してくれた。

 

すると幽香も問いかけてきた。

 

「あら、なら私ともするのかしら?」

 

「ああ」

 

私は紫に従者用のカードを渡しながら頷くと、イオンたちが不満そうな顔をする。

 

「……卿らも仮契約するかね?」

 

私が問いかけると、イオンたちは首を立てに振った。

 

するとキャットが何故か前に歩み出てきた。

 

「アタシの見立てが正しければ、大旦那様の今の術は完全に独自に編み出した契約系統の魔術。ただ、その効果を考えると、複数契約した場合、術者は生半可な力量では耐えられないはず。……先の戦闘と言い、大旦那様はただの人間とは思えない。……一体どんなナマモノなのだ?」

 

「英雄王の持つ無限ともいえる宝物を包含した宝物庫を持っていた時点で気になってはいたけれど……。確かに君は規格外だ。私も出来れば色々聞きたいね」

 

キャットに続いて教授にもそういわれたので、私は簡単に答えることとした。

 

「英雄王の宝具についてだが、現時点では黙秘させてもらう。代わりに私について話そう」

 

私は一度区切ってから、一同の態度を見る。

 

いずれも好奇心などあれど、不思議と恐怖の色は見えなかった。

 

それを少しだけ驚きながら続けた。

 

「私はある2人の存在がわけあって融合した存在だ。片方は人と人ならざるものの間に生まれた者。もう1人は今のこの姿であるラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ。どちらも常軌を逸脱した力を持っていた。が、一応人として生を受け、人として育てられた。だから人ならざるものである怪異を全て排すべき存在とみないし、常人を逸脱した力を持っていようと人とともに生きていた」

 

私はもう一度区切って続けた。

 

「ゆえに私を拒絶する者を私は否定しない。私はいつの世も迫害され、それでもなお人と共に歩もうとした人間好きな半端者だからな」

 

私がそういい終わると、美花が真っ先に口火を切った。

 

「旦那様が何者であろうと、私にとっては些事に過ぎません。私にとって重要なのは、旦那様が私を助けてくださったという、私が私の全てを捧げるに値する事実だけです」

 

「ご主人の狂信ぶりに冗談抜きで困惑するキャットではあるが、野生の掟を破るつもりも無いのでご主人とお別れは当分先だ。あと大旦那様とはいい酒が飲めそうで何よりなキャットであった」

 

何でここまで忠誠心振り切ってるのか分からない美花と相変わらず独特な理論を展開したキャットの言葉を聞いたイオンたちも自分の思いを告げだした。

 

「あなたはちょっとエッチだけど、優しいし、私のために色々なことをしてくれた。今度は私が貴方の傍にいて、出来ることで少しずつお返しをするって決めてるんだから!! 拒絶なんて……悲しいこと、言わないでよ……」

 

「神代に生きていた私にとって、人間とそうでない者の恋愛なんてよくある話ですから。私は拒絶なんてしませんよ。むしろ私のほうが拒絶されないか心配なくらいですし」

 

「あたしからは特に言わないよ。まだであって二日目だし。……でも君が他人に対して誠実であろうとしてるのは分かるから。私は信用してるよ」

 

イオンが悲しげに、メディアはホッとしたような表情で、ライダーは真面目な顔でそう告げた。

 

「私は特に何も言わないさ。というかそれ言い出したら美鈴君の肩身狭くなってしまう。それに私自身は人間だろうとそうでなかろうとあんまり関係ないからネ」

 

「あの出鱈目な強さの理由がわかって私はホッとしてるわ」

 

「……紫に同じく」

 

教授、紫、幽香の3人も自身の思いを告げてくれた。

 

「……もの好きだな」

 

私はそう零した後、告げる。

 

「では幽香、イオンたちと仮契約をする。……キャスター、卿とはパスがあるのだから良いだろうに」

 

「なにか、不平等な気がします!!」

 

メディアの反論を聞いた私は、答えた。

 

「分かった。だが幽香が先だ」

 

「あら、別に私は後でいいわよ?」

 

痛みがぶり返したのか、少し声が強張っている幽香。

 

「仮契約をすれば私の魔力で卿の傷の回復が早まるからな」

 

私はそういって魔法陣を展開し、幽香にこちらへ来るように促す。

 

「……口付けは、流石に少し恥ずかしいのだけれど」

 

私を見たあと、頬を少し赤く染めてそっぽを向いて幽香はそういった。

 

「他の方法はこれの数十倍時間がかかるのでな。我慢してもらおう」

 

私はそういって彼女のあごをそっと指で触り、こちらに顔を向けさせる。

 

「や、やさしくお願い」

 

私は彼女の恥らう表情に少し驚いた後、頷いて仮契約を行った。

 

すると幽香が少し戸惑った様子を見せる。

 

「……すごい。痛みがもうほとんど無い……」

 

自分の体調の変化に驚く幽香。

 

事実彼女の拳は既にパッと見では違和感が無く、既に普通に動かせていた。

 

そして美花、イオン、メディアの3人とも仮契約を行うと、3人とも満足そうな顔を浮かべていた。

 

「……最も、イオンたちならばチェインと本契約できるゆえ、そっちのほうが出来ることが多く、制約など少ないがな」

 

「何でそっちにしないの?」

 

ライダーからの純粋なつっこみに私は肩をすくめて答える。

 

「いきなり自分でも御しきれない力を与えられても暴走させるだけだ。それに仮契約の恩恵だけでも十分すぎるほどだ。ゆえに今はこれだけだ」

 

私は答えた後、全員に告げる。

 

「怪異討伐の作戦はこれで終了。撤収する」

 

「これ以上居ても得られるものは無いだろうからね。帰るとしようか」

 

教授も私に賛同したので、帰ろうとしたが……。

 

「……馬が4頭しか居ないね。どうする?」

 

教授が困った顔でそう問いかけた。

 

すると紫たちが答えた。

 

「私たちは別に宙に浮かべるから、飛んで付いていけば問題ないでしょ?」

 

「ええ。それに今ものすごく調子がいいから、どこまでも行けそうな気がするわ」

 

二人がそういったので、私たちは4頭の馬に、紫たちは街の近くまで飛行して戻った……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「……ということは、私のお仲間さんですね!!」

 

日が傾き始めたころ、陳家に戻り、丁度戻っていた陳漢瑜たちに事の顛末を話すと、美鈴がうれしそうにそう結論付けた。

 

「ええ。もっとも彼の首輪付きだけど」

 

「……首輪つき……」

 

幽香がちょっと困り顔で言った言葉に、紫がなにやらハッとしたあと、少しだけ顔を赤くしながら反芻した。

 

これが本当に幻想郷の賢者になるのだろうか、と若干心配になりながら私は陳漢瑜に問いかけた。

 

「ということでさらに2人分の部屋を用意をしてもらいたい。出来るかね?」

 

「ええ、構いません。それに、色々こちらに支援して頂けるようですから……」

 

彼女は妖艶な笑みを浮かべながらそうつぶやいた……。

 

 

 

 

 

ということで、後のフラワーマスターと幻想郷の賢者を仲間に出来た。

 

ただ、陳漢瑜と教授のタッグにより、予想よりかなり多い出費をすることになってしまったことだけが、今日の残念なところだろう……。

 

あと蛇足だが、紫も幽香も食事を思ったより気に入ったらしく、家計のエンゲル係数が若干心配になった。

 

宝物庫の食材が有限の可能性を考慮して、真面目に備蓄の確認をしなくては……。

 

 

 

 

 




やくもゆかり と かざみゆうか が なかまになった!

なおしばらくは活躍の場は無い予定です。

次回予告を見ない方はこちらからジャンプしてください















【次回予告?】

それなりの仲間を集めた獣殿。

あまり長く居ると別れがつらくなるので早く出立しようとしたが、ある少女に呼び止められた。

その少女からのお願いはなんと「種が欲しい」!?

そして同時壁をぶっ壊して突撃してきた自称正妻。

慌ててやってきたイオンたち。

修羅場待ったなしじゃないか? この状況。

獣殿は生きて帰れるのか!?

つか壁の弁償はどうなるの!?

次回、黄金の獣と聖杯大戦 獣編

「種をください」

お楽しみに!!


《注:あくまで予告です。この内容と本編の相違点について作者はは一切の責任を負いません》


















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