恋姫無双 黄金の獣と聖杯大戦   作:月神サチ

7 / 8
「偶然や運■など、私は基本信じていなかった。が、彼■との再会をしたのだ。事実は■説よりも■なりというのはあながち間違■■もないだろう。……もしかしたらあの第■■■王こと、■■■■にも会えるかも知れんな。彼■と会ったら、何を言われる■ろう。まあ、私のことなど■れているだろうが」

~黄金の獣の日記より抜粋。一部欠損あり~


出会いと別れ それは二つで一つ

翌日

 

正確に言えば東の空が白み始めたころ。

 

人の情事を覗き見していた八雲紫と幽香と共に夜遊びから戻ってきた。

 

するとそこには体を清めて服も着替え終えていたイオンたちがテーブルを囲んで談話していた。

 

「あ、お帰りなさい。あなた」

 

「お帰りなさいませ、旦那様」

 

「お帰りなさい、ラインハルトさん」

 

3人の笑顔とは裏腹に、少しだけ不機嫌そうにライダーとキャットが問いかけた。

 

「マスターたちほったらかしにしてどこに遊び出てたの?」

 

「しかもなにやらあちこち2人の服が乱れて、泣いた後がある。……襲ったのか?」

 

ライダーとキャットの問いかけに、3人が少しだけ動揺しながら私たちを見た。

 

2人は何故か泣いた形跡がある(と言うか今でも若干涙目な)上、服のあちこちが破けているので、そう思うのも無理はない。

 

ちなみに私は特に傷などはない。

 

「……夜の街怖い」

 

「……この人鬼畜過ぎる」

 

「「「!?」」」

 

完全に心が折れて、へたれモードの紫と、若干折れかかった幽香の発言に一同が問い詰めるような視線を向けてきた。

 

「……人の情事を覗き見した罰と私の暇つぶしをかねて夜の街で怪異と少し遊んだだけだ。――2人とも飛べなくして、スキマなどの能力を封じた状態だ。出なければ簡単に逃げられて罰にはならんからな」

 

「……明かり一つ持たされた状態で怪異だらけの夜の街に放り出されたときは、全然楽勝だと思ったのに……」

 

「私、絶対この人に逆らわない」

 

私の言葉に幽香、紫が補足した。

 

もっとも、紫の言葉は補足になっていないが。

 

「これに懲りたら、人の情事を覗き見しないことだ」

 

「「……はい」」

 

素直に頷いた2人を横目に、私は告げる。

 

「ああ、あとそろそろここを離れようと思っている」

 

私の言葉に美花が反応した。

 

「と言うことは洛陽に向かわれると言うことですか?」

 

「ああ。もっとも……」

 

私は西のほうを向きながら続けた。

 

「迎えが今日中に着く。ゆえにもし滞在を伸ばすとしても、迎えの気分次第になるだろうがな」

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

とりあえず紫たちの服も即席で作り、着替えさせたあと、食堂に向かうと……。

 

そこには教授、陳漢瑜、陳元龍が既に着席していた。

 

「今日は美鈴君が料理を振舞ってくれるそうだ。なにやら彼女の闘志に火がついたようでね」

 

教授がそういった直後、厨房から繋がる扉が開き、美鈴が料理を運んできた。

 

「お待たせしました! あ、皆さんの分ももちろん作ってあります!」

 

そう言って美鈴が食事の配膳を始める。

 

「急な話になるが、今日か明日にはここを発とうと思っている」

 

「随分と急ではありませんか?」

 

陳漢瑜の問いかけに私は頷く。

 

「私もそう思っているが……」

 

私がそう言った直後、玄関の方から声が聞こえた。

 

「すまないが教授。家の前に客人が来たようだ。迎えてくれるかね?」

 

「……ああ、構わないよ」

 

彼はそう言って玄関の方へ向かっていった。

 

少しすると、教授と共に10歳前後と思われる黒髪ツインテの少女がやってきた。

 

「結衣」

 

「お久しぶりです。まあ、貴方からすれば数日ぶりでしょうが。将臣……いえ、ラインハルトと呼ぶべきでしょうね」

 

少女――結衣――が私の言葉に反応していつも通りやや無愛想な態度でそう言った。

 

「ああ。それでいくつか確認したい」

 

「何なりとどうぞ」

 

「空に浮かべているあの飛行戦艦は何だ?」

 

私の言葉にイオン、キャスター、ライダー、キャット、教授が他の者と異なる反応を見せる。

 

「パンダグリュエルです。……暇つぶしで貴方があのゲームのデザインを元に引いた図面を元に作りました。もっとも、運動性能や居住性、耐久性を重視して特殊防御障壁、空間歪曲型光学迷彩の実装などのアレンジをしたので、対地攻撃性能がほぼゼロになりましたが」

 

「……卿はどこと戦争するつもりだ?」

 

私が顔をしかめながら問いかけると、彼女はため息をついた。

 

「別に戦争なんてしませんよ。巨大兵器が空に浮かぶ。そのロマンを私は自重せずに実現で来たのでやっただけです。現代では浮かべると高確率でどこかの国にばれましたので自重してたのです」

 

「巨大兵器狂いが自重しなくなった結果がアレか……」

 

私は西の方向を見た後、ため息をついて続けた。

 

「あと卿の拠点はどこだ? まあ、それなり以上につきあいのある卿のことだ、私の目的地なのだろうが……」

 

「当然洛陽です。もっとも、アレ作ったのはもっと南西の山の中ですが」

 

そこでふと疑問が浮かぶ。

 

「……卿は一体いつからこの世界にいる?」

 

私の言葉に対し、結衣は少しだけ小悪魔的な笑みを浮かべた後、真面目な顔になった。

 

「それは内緒です。……というか、そろそろ私に自己紹介させてください。皆さん置いてきぼりになってますし」

 

私はハッとして一同を見る。

 

完全に付いていけてなくて呆然としていた。

 

「自己紹介をさせてもらいます。私は南雲結衣。彼の正妻です」

 

「「「!?」」」

 

目を見開く一同に対し、イオンがさながら電球に明かりがついたような表情をする。

 

「ラインハルトさんが昔言っていた正妻さんですね!!」

 

「ええ。お久しぶりです。イオン。あと洛陽に戻ったら貴女と会いたがっている人がいますので、会ってあげてください」

 

「……私に合いたがっている人……?」

 

首を傾げるイオン。

 

それを横目に結衣が私に告げた。

 

「あ、あと貴方にも会わせたい人がいます。出てきて、沖田」

 

扉の方を向いて名前を呼ぶと、そこにかつて看取った若き天才剣士が出てきた。

 

「――」

 

私が驚いて言葉が出てこない中、彼女はあの時の笑顔で問いかけてきた。

 

「お久しぶりです、将臣さん。お互い一回死んでしまってますが、元気にしてましたか?」

 

「あ、ああ」

 

するとキャットが沖田に対して問いかけた。

 

「そちらはアタシと同じ匂いがするが、もしや同じ穴の狢か?」

 

「えっと、意味が分からないのですが……」

 

キャットの問いかけに困惑する沖田。

 

「つまり玉藻の前のアルターエゴである彼女はこう言いたいのでしょう。『お前もアタシと同じ、前回の聖杯戦争で呼び出され、聖杯戦争終結宣言後、令呪の喪失と同時に受肉したサーヴァントなのだろう?』と」

 

「流石チート9割捨てて一人の男追っかけた女神。通訳が堪能すぎるのである。で、アンサーは?」

 

キャットがそう言った後、沖田は頷いた。

 

「まあ、そうなりますね。……貴方やそこの胡散臭いおじいさんと同じで」

 

「……」

 

空気がやや剣呑なものになり始めたので、私はそれを止めるために一石投じた。

 

「まずは食事にしよう。……足りない分は私が追加で作る。あとで前回の聖杯戦争についていくつか聞きたいゆえ、当事者たちは可能な限り情報共有してくれ」

 

私がそう言うと、誰かのお腹の音がなった。

 

「まあそうだね。美鈴君が作ってくれた食事が冷めてしまうのはもったいない。それに今日でここを君たちが経つとしても、まだ情報交換する時間はあるのだからね」

 

教授の言葉に、一同は頷いた……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

私が追加分の食事を用意している間に、双方の自己紹介が終わったのか、比較的穏やかに食事は進んだ。

 

イオンは主に結衣と先ほど挙がった飛行戦艦について、美鈴は紫と幽香と怪異あるあるを、キャスターは沖田と共に少々アレな話を、キャットが美花と教授、結衣と共に聖杯戦争について情報交換などの話をしていた。

 

大体全員が食事を終えたころ。

 

「さて、私は紫たちがやらかした分の補填を教授の指定する倉庫に出してくる。……結衣、出立はいつになる?」

 

私の問いかけに、彼女は普通に答えた。

 

「いつでも出れますが、出来れば明後日の昼までには出立したいです」

 

「では今日の夕方に出立しよう。各自支度などをしておいてくれ」

 

私がそう言うと、美花、キャットが片付けなどを始めた。

 

「幽香さん、食後の腹ごなしとして、お手合わせお願いします!!」

 

「……えっと」

 

美鈴にお願いされた幽香は困った表情でこちらを見た。

 

「結衣、万一暴走しても被害が出ないように結界を展開しておいてくれ」

 

「了解」

 

私はそれを確認した後、教授を連れて部屋を後にした……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「さて、ある程度情報がそろっただろう。卿の推測を可能な限り話してもらえるかね?」

 

私は倉庫の中に指定された量よりも多めに資材を出した後、教授に告げた。

 

「……何から聞きたい?」

 

「1つは前回と今回の聖杯戦争の関係性。もう1つは今後の行動だ。卿はどのように振舞うか……だな」

 

「1つ目はともかく、2つ目は言わなくても分かると思うが?」

 

「一応な。卿はいずれ彼女たちと袂を別つのだろう?」

 

私がそういうと、彼はうなずく。

 

「ああ。だがしばらくは、彼女たちとの生活を楽しませてもらうさ。私が必要とされるまではね」

 

彼は悪役らしい笑みを浮かべてそう言った後、わざとらしいせきをしてつづけた。

 

「それでは1つ目について、私なりの考察を述べよう。まず聖杯そのものは十中八九同じ代物だ。これは、キャット君とメディア君、そしてブーティカ君の反応、および私のクラスから、人理が一度焼却された可能性軸から持ちこまれたモノで間違いはないだろう。あと私と同じなら人類最後のマスターである彼女に呼び出されてからの記憶も引き継いでいるハズだ。ただし、沖田君は彼女のマスターの縁でその可能性軸から引っ張られた可能性が高いがね」

 

「……」

 

私は無言で続きを促す。

 

「そして、聖杯は前回の聖杯戦争の始めと終わりで管理している者が変わっている」

 

「何……?」

 

私が眉をひそめて問いかけると、彼は肩をすくめる。

 

「聖杯戦争終結を宣言したものが大聖杯と呼ばれるものを手に入れたのは間違いない。確か、南華老仙だったかな……? あと言えるのは大聖杯は最低でも3つの派閥、あるいはそれに相当する勢力で奪い合いをしているらしいということだけだ」

 

「それは第三者が情報をもたらしたのかね?」

 

「ああ。筋肉隆々の自称乙女二人に教えられたよ。聖杯をもともと持っていた者たちは、君のように、外から来たもので、聖杯を奪ったのはこの世界の管理者……とかいう存在で、そのうちこの世界の破壊を是とした派閥らしい。もう一つはその乙女で、管理者だが世界の存続を是としている、とのことだ」

 

彼はそう言うと、手を叩いた。

 

「私からは以上だ。あと喜雨君が珍しい植物を欲しがっていた。……できればジャガイモとかのイモ類、南瓜、トウモロコシあたりの食べられるモノの種を育て方と一緒に渡してくれると嬉しいね」

 

「善処しよう」

 

私はそう言って、彼と共に倉庫を後にした……。

 

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「将臣さん、将臣さん」

 

自室に戻って宝物庫から出したソファーに座ると沖田が駆け寄ってきた。

 

見た限り、紫や幽香、結衣や沖田を含めた私と同行する者全員が部屋に居座っていた。

 

そして沖田は私に身体を預けると、ふにゃっとした笑顔を浮かべた。

 

「えへへ」

 

「「「……」」」

 

明らかに不機嫌そうなイオンたち。

 

「まあ、今日は多めに見てください。なにしろ数百年ぶりの再会ですから。あと貴女たちは二日連続で彼に可愛がってもらったんでしょ?」

 

少しだけ怒った顔の結衣が布団に寝っ転がりながら指摘すると、3人は黙る。

 

「しかし大所帯になったわね」

 

「全部のちのハーレムメンバーなのだから大旦那様の好色と絶倫、後甲斐性はキャットにとって筆舌しがたいものだ。もっとも、アタシの手だと筆は使いづらいけどな。あと頭数だけなら、どっかの槍みたいな名前の主人公をはるかに上回るだろう」

 

ライダーの言葉に対し、さながら百面相のようにコロコロ表情を変えながら、そう結論付けたキャット。

 

「……」

 

「幽香、返事しなさい。……いくら負けたといっても、ここまでへこむ必要ないじゃない」

 

机に突っ伏している幽香と、その隣で声を掛けた後、ため息つく紫。

 

どうやら手合わせの結果幽香は美鈴に負けたらしい。

 

「む、そうだ。私は植物の種を私に陳元龍のところに持って行かなければ。すまぬが降りてくれ」

 

「……どうしてもですか?」

 

不満げな彼女に対し、私は耳元でささやいた。

 

「…………」

 

「分かりました。約束ですからね?」

 

「無論。私は約束は守る」

 

私がそう答えると、少しだけ名残惜しそうに私から降りた。

 

私はその後、即座に机を一つ取り出して、宝物庫から教授に頼まれていた植物を見繕う。

 

そのあと麻の巾着袋にそれぞれ袋詰めして巾着にタグを付けておく。

 

あとそれぞれの育成について注意点を羊皮紙に数枚ずつ書いて本として閉じ、それぞれのタイトルに加えて通常版、予備1、予備2と書く。

 

「……相変わらず頭おかしい作業速度ですね」

 

結衣が呆れ顔でそう告げた。

 

「……? 私は陳元龍にこの植物の種を渡してくる。卿らは結衣の指示に従って荷物をまとめておいてくれ」

 

私はそういって、部屋を後にした……。

 

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

ラインハルトさんが部屋を出た後、私は結衣さんに問いかけた。

 

「あの、結衣さん」

 

「どうしました? イオン」

 

私と結衣さんのやり取りに、他の人たちからの視線も自然と集まった。

 

「あの人は、2人の人が融合した姿なんですよね?」

 

「……ええ。もっとも、外見……性格には外見の色としゃべり方などの行動のクセなどは黄金の獣と呼ばれた彼に引っ張られていますが、態度は基本的に将臣です」

 

「あ、外見はいまのあの人黒髪にして、後ろでまとめて、目の色黒にすると、大体将臣さんになりますね」

 

思い出すように沖田さんがつぶやいた。

 

「……両方とも、貴方たちの知っている人なのかしら?」

 

ライダーが問いかけると、結衣さんは少し困った顔で答える。

 

「ラインハルトのほうは、私が一方的にある程度知っている程度です。将臣のほうは私が60年近く連れ添っているので性癖や特殊体質などもほぼ網羅しています」

 

「私は将臣さんしか知りません」

 

沖田さんはきりっとした顔でそう答える。

 

「……これが年齢詐欺と言うやつか」

 

キャットが真顔でそういうと、結衣さんは鼻で笑う。

 

「年齢なんて私たちにとっては飾りです。その上、外見も性別を含めて自由自在でもあります。……ただ、こっちのほうが何かと買い物するときとかおまけつけてくれる人が多いからこの姿をずっと維持し続けてたら、他の姿がしっくりこなくなっただけです」

 

「そういえば、私が病に伏せていたときにマスターさんたちと出会いましたが、マスターさんはその姿でしたもんねー。まあ、そのときはおかっぱでしたけど」

 

沖田と呼ばれていた女の子が思い出すようにそういった。

 

ほのぼのとしてるな~。

 

「……ところで、旦那様の性癖など、教えていただけませんか?」

 

と思ったら、美花さんがいきなりとんでもないことを言い出した。

 

「まず彼の性的欲求を刺激するには、一定以上の外見が求められます。これは外見が優れた人間ほど種として他より優れていることが多いからです。そうでなければ、相手にされません。まあ、私が見る限り、この部屋に居る全員問題ないでしょうが」

 

結衣さんはそういうと、ベッドから降りて、どこからともなく足のついたホワイトボードを出現させて、そこに色々書き始めた。

 

「あと、将臣は人と化外の混血のせいか、人の心を一方的に読むことが出来ます。対策はあるにはありますが、それは横におきます」

 

『心が読める!』

 

と強調して書く結衣さん。

 

「そのため、言い寄る女性が、自分の金や富や権力目当てなのか見分けてしまいます。ラインハルトの言葉を借りるならば、『愛が足りん』相手は、交際できるかもしれませんが、彼が手を出すことはしません」

 

『愛が、足りんよby獣』

 

再び強調して書く結衣さん。

 

すると、紫さんが挙手する。

 

それに気がついた結衣さんが、発言を促した。

 

「あの人、私たちには手は出さないって言っていたのだけれど……」

 

「基本自分からは手を出しません。ある特殊な状態になっていない限りは、こちらから言い寄るしか、彼と既成事実を作る方法はないといってもいいです」

 

そういっていて、なにか思い出したのか、結衣さんがハッとした。

 

「あっ、彼が今手を出した人は、全員ここにいますよね?」

 

するとキャスターさんが答えた。

 

「私が覚えている限り全員居ます。……私、美花さん、イオンちゃんの3人だけなので……」

 

「幾つか確認を。彼に抱かれていたときのことを思い出してください。彼の瞳は金色のままでしたか?」

 

かなり真剣な表情で結衣さんは問いかけをした。

 

「……? 金色のままでしたよ」

 

「はい。キャスター様の仰るとおりです」

 

「私も、おぼえてる限りだと金色のままだったよ」

 

キャスターさん、美花さん、私がそれぞれ答える。

 

「瞳の色なんて普通変わらないと思うけど?」

 

幽香さんがうなだれた状態のまま結衣さんに問いかけた。

 

「……まあ、とりあえず彼の瞳の色が赤だったら、夜一緒にいてはいけません。彼はそのとき、理性がほとんど吹っ飛んでるのと、体重ねたら、例え人間だろうと、神様だろうと、怪異だろうと、女性ならおめでた確実なので。あ、これは私や、私の式、および彼と関係を持った人たちからの情報ですから確実です」

 

すると、紫さんや、沖田さんが顔を真っ赤にする。

 

「どっかのファンタジーも真っ青な能力である。……逆に言えばそのとき以外はいくらしても不発ということになるが……」

 

キャットがそういうと、結衣さんが一度入り口を見たあと、切り上げるように告げた。

 

「とりあえず、あの人は人に抱かせる以外のことは、大体問題なく性癖を受け止めてくれる器が広い人です。から、ありのままをさらけ出してもだいじょうぶです。ちゃんと思いを告げれば、彼はその思いを受け止めてくれます。当たって砕けなさい」

 

彼女はそういった後、付け加える。

 

「あ、そうだ。今後は夜の順番や、一度に突撃できる人数の上限などを私が設定します」

 

「「「!?」」」

 

唐突な言葉に私たちは硬直した。

 

「理由としては3つほどあります。まずは流石に彼と言えど、一度に5人以上は相手できないという、物理的な理由。次に、可能な限り不平等感を出さないようにするため。最後に万一不満があってもその矛先が私に向くようにするためです」

 

そういったあと、手をたたく。

 

「ということで、彼に突撃掛けたいなら、先に私に言ってくれるとうれしいです。さて、女性の猥談はこの辺で切り上げましょう。彼が戻ってきますから」

 

そういって彼女は出現させたときのようにまた唐突にホワイトボードを消し去り、部屋にいつの間にか増えていた本棚から一冊本を出して再びベッドにごろんと横たわった。

 

すると彼が部屋に戻ってきた。

 

「昼食の時間だ。卿らも来るといい」

 

彼はそういうと、部屋を後にする。

 

「……えっと、結衣様は……」

 

「?」

 

「嫉妬などなさらないのですか?」

 

美花さんの問いかけに、結衣さんが肩をすくめて答える。

 

「正直言えば、していますよ。彼が……将臣が本当に愛していたただ1人に対してですがね。正妻面していますが、彼からすればきっと私と貴方たちに大差はありません。あと嫉妬というのは、自分よりも何らかの面で上の相手にするものです。ですから、嫉妬の対象はその1人以外いません」

 

「……その相手の人って……」

 

キャスターさんが問いかけると、彼女は零すように答える。

 

「教えられません。彼と結婚する条件に、どんな拷問も記憶を覗く術を以ってしても暴けないようにその情報に対してのみ強力な漏洩防止の術を掛けられました。無意識だろうと意識しても、それを他者に伝えることは出来ません。ただ……」

 

彼女は悲しそうに続けた。

 

「私が言えるのは、彼は彼女との思い出が秘したままであることを望んでいる。そして2人に訪れたのは悲しい結末だった。それだけです」

 

そう言い切ると、彼女は先ほどまでのふてぶてしい態度を見せる。

 

「さあ、何をしているのですか、早く昼食にしましょう」

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

昼食を食べ終えた後、私は部屋に出しておいた物を宝物庫にしまっていた。

 

が、何故か部屋に居た全員が本来キャットやライダー、紫たちが使っている部屋に行ってしまっており、1人だった。

 

「ラインハルトさん」

 

声を聞いて振り向くと、そこには陳元龍が居た。

 

「どうしたかね?」

 

「喜雨……」

 

「……それは卿の真名ではないかね?」

 

私が問いかけると、彼女は頷いた。

 

「昼食の後、森脇さんに貴方から渡された植物のことを聞いたんだ。こんな貴重な植物をくれたお礼をしたいけど、貴方はきっと何もかも持ってるって森脇さんに言われてモノでのお返しは諦めたんだ。代わりになるか分からないけどボクの信頼の証として真名を受け取って欲しくて……」

 

「そうか。では、ありがたく卿の真名を預かるとしよう。喜雨」

 

「……じゃ、じゃあね」

 

彼女はそういって去っていった。

 

「……あのまま押し倒せばよかったのに」

 

ゆらりと近くの空気が揺らいで結衣が現れた。

 

「そうしたら卿は私を嬉々として折檻するだろう」

 

「まあそうですね。それにしても、農業一辺倒だった少女の心を揺さぶるのですから、さすが男版ビーストⅢ/Rですね」

 

「キアラ……」

 

私が思わずそうつぶやくと、結衣が呆れた様子で問いかけた。

 

「まったく、現代であの人始末したことをまだ悔やんでるんですか?」

 

「否定はしない」

 

私の様子に思うところがあったのか、ごまかすように告げた。

 

「それにしても、あの菌糸類はすごいですね。あの現代の世界における事実のほとんどをそのままゲームの設定として思いついたのですから。まあ、人理焼却はありませんでしたが」

 

「……行くぞ、結衣」

 

私は彼女の軽口を無視して、部屋を後にした……。

 

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

見送りということで、玄関にきてくれた喜雨たち。

 

「一般人に見られると色々面倒なので、ここで全員転移させます。お別れの挨拶があったら早めにお願いします」

 

結衣がそういうと、美鈴が号泣しながら紫と幽香に抱きついた。

 

「お別れなんてさびしいです。せっかく出来たお友達なのに……!!」

 

「大げさよ、貴女」

 

「別にこれが永遠の別れじゃないんだから。何か会ったら、彼女たちごと会いに来ればいいんだし」

 

幽香が若干うんざりし、紫が泣き虫な姉をなだめる出来た妹のように言葉を紡ぐ。

 

教授は私に握手しながら告げる。

 

「君が洛陽でどんなことをするか、私は楽しみに待っていよう。もし私の力が必要になったのなら連絡をくれると良い。手が空いてたら、悪巧みのアドバイスくらいならしてあげよう」

 

「次に会うとき、卿が頼れる味方であることを祈っておこう」

 

「さて、それはどうかな? 私はヴィランだ。確かに正義の味を知ってはいるが、どう転ぶかは神のみぞ知る、だろう」

 

教授はそういい終わると、一歩下がる。

 

「貴方が下さった資材は、有効活用させてもらいますね」

 

「中抜きされぬように、信頼できる取引先を選ぶことだな」

 

「ええ、それはもちろんです」

 

陳漢瑜は私の言葉に満足したのか、話を切り上げた。

 

「えっと、ラインハルトさん」

 

「どうした、喜雨」

 

「あなたからもらった植物の種、大切に育てるからね」

 

私はそれを聞いて、少しうれしくなった。

 

「では、卿が育てた野菜を食べられるのを、心待ちにさせてもらおう」

 

「楽しみにしてて……」

 

私の言葉に対し、彼女は頬を緩ませてそういった。

 

「では、転移します」

 

彼女が指を鳴らすと、私たちの視界が白く染まった……。

 

 

 

 

視界が開けると、そこには鋼鉄の扉がそびえていた。

 

「ようこそ、私の空飛ぶ船へ、さあこちらへ」

 

結衣がそういうと、扉が開かれた。

 

そして彼女の後を着いていくと、鋼鉄の床と壁に、赤いカーペットやシャンデリア、色々な調度品がやや不調和をかもしながら私たちの視界に映る。

 

幾つかの扉を開いて、その後しばらく歩く。

 

「まあ、私にデザインセンス求めるのは間違っているので、あとでデザインセンスある人に内装はいじってもらうとして……着きました」

 

これまでよりも一回り横幅が小さな扉を開くと、そこは船橋だった。

 

そして、艦長席以外は結衣の式が作ったと思われる人と寸分違わぬ式神たちがおり、船の操作をしていた。

 

私たちがそれに驚いていると、結衣がいつの間にか艦長席に座っていた。

 

「これより、洛陽に帰還する。速度は40ノット、防御障壁と空間歪曲型光学迷彩の展開はそのまま維持。余剰エネルギーは30%を切らないようにしつつ空調管理に回して」

 

「「「了解!!」」」

 

式神たちは息の揃った返事を行い、それぞれが計器や機器を操作し始める。

 

「とりあえず、手の空いた式たちに部屋を案内させます。明後日には着きますので、その間はご自由に。……ただし、今夜は私と沖田の邪魔はしないでくださいね?」

 

結衣は不敵な笑みを浮かべて、そういったのだった……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

夕食は各自の部屋に運ばれたシチューとパンを食べた(と思われる)。

 

そして食べ終えた後には月が夜空に浮かんでいた。

 

唯一つ残念なのは、娯楽の概念が薄い結衣が作っただけあってか、娯楽になりそうなものがほとんどなかったことだろう。

 

そう思いながら部屋のシャワー室で身を清めていると、シャワー室の部屋が開く。

 

「お、お背中流しましょうか?」

 

「拒否権はもちろんありませんが」

 

前をバスタオルで隠しながら問いかける生まれたままの沖田と、結衣がやってきた。

 

「……卿が作った船だ。マスターキーくらい持っていてもおかしくはないな」

 

部屋の中からロックが掛けられるはずなのにどうしてと突っ込みそうになったが、船の製作者を思い出してため息混じりにそう告げた。

 

「で、では私たちが綺麗にしてあげますからね!!」

 

「数百年の研鑽がどんな物か、その身をもって体験するといいです」

 

やる気を見せる沖田に対し、結衣は不敵な笑みを浮かべながら、そう告げたのだった……。

 

 

 




補足
オリ主こと将臣たちが居た世界について
ここから反転
実のところ、限りなくFate世界。
イメージとしては、歴史上の人物が型月のサーヴァントたちに置き換わっていると考えてくれればいい。
あと、魔術妖術などの神秘が、20世紀中盤あたりで人間の手からは消え去ってしまっているが、細々と生きる人ならざるものは、まだその神秘を使役できている。
ついでに某菌糸類さんが、歴史を元に、Fateシリーズを創り出している。
あと、リアルでキアラさんがやばいことしていたので、彼が始末している。
え? めちゃくちゃすぎる? 良いんじゃよ、どうせ剪定事象なんじゃから

反転ここまで

あと作者の(割とどうでも言い)独り言
ここから反転
ジャンヌとマリーは尊いと思いました。
反転ここまで

次回予告を見ない方はこちらからジャンプしてください















【次回予告?】

目が覚めたら荒野に寝転がっていた。

なにかのドッキリかと思ったがそうでもないらしい。

おまけに南華老仙とか言う爺さんが現れるし、サーヴァントとか聖杯戦争とか訳わからないこと言い出すし、言われたとおりにしたらアサシンって名乗る刺青のお兄さんが出てくるし一体どうなってるんだ?

俺は現代に戻れるのか!?

次回、序章 白き御遣い編 第1話 「一刀、華北に降り立つ」

乞うご期待!!

《注:あくまで予告です。この内容と本編の相違点について作者はは一切の責任を負いません》




















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