ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット 作:グレン×グレン
ライザー・フェニックスは翻弄されていた。
正直に言えば、兵藤一誠の相手は疲れたといっていい。
なにせ殴っても殴っても立ち上がってくるのだ。しかもぼろぼろになっているのにもかかわらず。
正直恐ろしいとすら思ってしまったが、しかしそれでも戦闘能力は大したことがなかった。
そう、フェニックスの再生能力を抜きにしても、自分はこのレーティングゲームで最強の存在だ。
それは間違いなく自他ともに認める事実である。あるのだが・・・。
「なぜだ、なぜおれが翻弄されている!!」
いま、ライザーは完全に防戦一方に追い込まれていた。
全身に何度も裂傷が刻まれ、しかも反撃の炎はすべて弾き飛ばされる。
それだけの一撃を放つものは、この場においてただ一人。
「俺の仲間をあれだけやってくれたんだ。覚悟はできてるんだろうな、ライザー・フェニックス!!」
織斑一夏が、一人でライザーをここまで追い込んでいた。
「ぬぅうおおおおおおおおお!!!」
「うぅああああああああああ!!!」
超高速度での攻撃の応酬が巻き起こり、そして一夏がそれらをすべて打ち勝つ。
本来なら生半可な剣なら問答無用で熔け落ちているはずなのに、しかし一夏の剣は全くの無傷。
それだけの奇跡を成し遂げられる一因。それはもはや一つしか考えられなかった。
「それも
「そうだ! これが、俺の神器、
剣豪の腕。それは、所有している剣を超強化する神器。
ただの剣を伝説の魔剣聖剣と同等のクラスへと引き上げるそれは、この場において攻撃力で他を寄せ付けない領域へと高められていることの証明。
そして、その一撃を使う一夏も弱者ではない。
仮にもセーラ・レヴィアタンが自ら選んだ眷属は伊達ではないということか。少なくとも同年代の転生悪魔では頭一つとびぬけた戦闘能力を発揮している。
「ぬぅううう! なぜだ、なぜそこまでして、この冥界に必要な婚姻を邪魔する! お前たちの主は婚姻そのものには反対していなかったはずだ!!」
ライザーにはそれがわからない。
セーラ・レヴィアタンは政略結婚という概念そのものは受け入れている。今回の件に関しても、介入するのは本来の条件を反故にしたジオティクスに対する意趣返しだといっていたはずだ。
にもかかわらず、なぜか一夏は限界以上の全力をもってしてライザーを倒そうとしている。
「何言ってんだお前は、決まってんだろ」
それに対して、一夏は嫌悪感のこもった表情を浮かべてライザーをにらみつける。
「あんた、最後の最後でリアス先輩が見せた顔を見ただろう! 見たうえでそんなことが言えるのなら、アンタはリアス先輩と結婚する資格なんてない!!」
あの時、イッセーをかばった時、リアスは―
「リアス先輩はないいていたんだ! ふがいない自分に、自分のために傷ついた下僕たちに、そして何よりぼろぼろになっても立ち上がったイッセーに!!」
放たれる炎を全力で切り飛ばしながら、一夏は再びライザーの体を大きく切り伏せる。
「お兄様!? 今助けに―」
「あらあら、そうはいきませんわよ?」
レイヴェルが助けに入ろうとしても、そこに朱乃が妨害の雷を放って近づかせない。
くしくも、最終決戦は二対二の状況にまで追い込まれていた。
「そんな涙を見せる相手と結婚して満足か!? ・・・ふざけんじゃねえよそれでも男か! 男が女に流させていいのは、うれし涙だけだろうが!!!」
裂帛の気合とともに、ライザーの体が縦に両断される。
それだけの想いを込めた一撃は、確かに今までで一番ライザーの精神を消耗させ・・・。
「なるほど、確かに男としては思うところはあるな」
だが、ライザーは決して倒れない。
それほどまでにフェニックスの再生能力は強大。精神を大きく消耗させてこそいるが、一夏の今の戦闘能力ではとどめを刺すには足りなかった。
「なら、俺との結婚生活でそれ以上の幸せを与えて見せるさ。ハーレム作れる俺が、それぐらいできないと思ってるのか?」
そういいながら、ライザーは強引に一夏の首をつかみにかかる。
一夏はそれを切り飛ばすことで防ごうとするが、それより早くライザーの腕が爆発した。
「な・・・グッ!」
そして炎と共に再生したうえで一夏の喉をしっかりとつかむ。
そして、その結果生じた隙を逃さず、ライザーは一夏の右手をつかんで剣の攻撃を防ぐことにも成功した。
「そろそろ寝ているがいい! 俺をここまで追い込んだのはお前が初めてだ。さすがはセーラ様の眷属に選ばれることはあると言っておこうか!!」
「・・・くそ、負けて、負けてたまるか・・・っ!!」
意識が遠のきそうになるが、しかしそれでも一夏はライザーを引きはがそうと蹴りを叩き込む。
そう、負けるわけにはいかない。負けたくない。
一夏にとって、女とは男が守るものだ。
今時古臭いといっても過言ではない考え方だが、しかし一夏は少なくとも自分はそうであるべく頑張ってきた。
少なくとも守り守られる関係には到達したいと心から願っている。レヴィアに守られている今の現状に甘んじることだけは、絶対にしたくなかった。
ああ、だからこそ負けたくない。
だって、それがレーティングゲームにおける常とう手段だとわかっていたとしても・・・。
「女を戦わせて高みの見物してるような奴に、負けてたまるかよ・・・!」
守るべき存在に守らせるその在り方だけは、一夏としては決して認めたくないものなのだから。
「そうか? 今時はやらないぜその考え方」
「それで・・・も、ゆずれ・・・ない、んだ・・・よ」
しかし意識はどんどん薄れ、そして力も抜けていく。
それでも、それでもせめて気持ちの上だけでは負けないとにらみつけ―
「ああ、この戦い、最後まで粘ったお前の勝ちだよ」
ライザーの顔面に、濡れたこぶしがたたきつけられた。
同時に、莫大な力がその水分へと流れだす。
『Transfer!』
その瞬間、ライザーの頭部が爆ぜた。
「ギャァアアアアアアアアアアアアア!?」
あまりの激痛にライザーはのたうち回り、そして一夏は解放される。
「ゲホッッゲホッフゲッホォ! ・・・な、なんだ?」
助かったのは良いが状況がわからない。そんな状態で視線を向ければ、いつの間にか新たな存在が其の場に現れていた。
赤い龍を模した鎧。
そこから放たれるオーラは明らかに莫大であり、圧倒的だった。
「大丈夫か、織斑」
「おまえ、イッセーか!?」
なんでそんな姿に・・・とは思うが、しかし今は戦闘中だった。
「・・・バカな! 今のは・・・聖水!?」
よろよろと立ち上がりながら、ライザーは唖然として自分の体についた水分を見つめる。
聖水。聖別された特殊な水は、すなわち悪魔にとっての害悪となる。
むろん、たかが聖水を浴びた程度で上級悪魔が死ぬほどの激痛を味わうわけがない。
訳がないが・・・。
「禁手化した赤龍帝の力を譲渡すれば、これぐらいはできるってわけさ」
鎧越しでわからないが、しかしイッセーはにやりと笑っているだろう。
「あり得ない! お前は今自分でも触れてたはずだ! こんな威力の聖水を、下級悪魔のお前が浴びてただで済むはずが―」
言いかけたライザーは、しかし目を剥いて沈黙する。
その理由が一夏にわからず首をかしげるが、イッセーはそのまま左腕を掲げた。
「気づいたか? そうさ、俺は左腕をドラゴンにささげてきたばっかでな。ドラゴンの腕なら聖水なんて関係ないだろ?」
その言葉に、その場にいた全員が言葉を失う。
ドラゴンにささげてしまった以上、もはやその腕はイッセー自身のものではない。
一生治ることのないそんな代償に対してイッセーは軽く答えた。
「安いだろ? たった左腕一本で、部長が救えるんだからよ」
「イッセー・・・お前、すごいなほんと」
その姿に笑みすら浮かべ、一夏はイッセーの肩をたたく。
「やるじゃねえか! ああ、男ならそれぐらいやって見せないとな!」
「ま、負けられないからな! ・・・そういうわけで」
すでに限界だったのか鎧が解除されたイッセーだが、しかし状況はもう覆らない。
聖水の影響でライザーの再生力は極限まで低下した。
精神力の低下が、ライザーの治癒の力すら低下させているのだ。今から大きなダメージを受ければ、ライザーはもう耐えられない。
「ま、まて! この婚姻は、冥界の未来のために必要なことなんだ! お前ら下級悪魔風情が、本来偉そうにかかわっていいことじゃないんだぞ!?」
心が折れたのかライザーは命乞いをするが、しかし二人は取り合わない。
「知らねえよ。俺は、守りたいものを守るだけだ」
「リアス部長泣かせておいて、今更情けない面見せんじゃねえ」
一夏が剣を差し出し、イッセーはそれを手に取る。
『Transfer!』
最後の譲渡が行われ、ただでさえ強力になっている剣が正真正銘最強クラスの聖剣魔剣と同等レベルにまで跳ね上がった。
「ま、まて、やめ、やめ、やめ―」
ライザーは顔を引きつらせて後ろに下がるが、しかし間に合わない。
「「いっせーのーせ!!」」
「・・・ぎゃぁあああああああああああああああああ!!!!!!」
莫大なオーラを纏った斬撃が、ライザーを性根ごと真っ二つにたたき切った。