ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット   作:グレン×グレン

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戦闘校舎のフェニックス 終

 数日後、イッセーはレヴィアに招待されて、喫茶店に足を運んでいた。

 

 お嬢様ご用達の高級喫茶店。一部のメニューは数千円に到達する、超がつくほどの金のかかった店だった。

 

「さあ、イッセーくんはチーズケーキが好物だったね」

 

「あ、はい! ゴチになります!!」

 

 緊張のあまり吐きそうになりながらも、イッセーはしかし食欲を出そうと気合を入れる。

 

 こんなところでおごってくれるレヴィアに心から感謝しなければならない。

 

 と、そんな上がりっぱなりのイッセーの肩をつつきながら、一夏は苦笑していた。

 

「気にすんなよ。レヴィアもこんなときじゃなければこんな高級店なんて来ないからさ」

 

「そうですよ。たまにカップ麺で食事を済ませる時だってあるんですから。ね、レヴィアさん?」

 

 ニヤニヤとからかうように笑う二人を紅茶を飲んでスルーしながら、レヴィアはイッセーにケーキを進める。

 

「さあ、今回の功労賞だよ。遠慮せずにお食べ」

 

「い、いただきます」

 

 そういって、四人はケーキを食べ始めた。

 

「それにしても一夏君は本当にコーヒーをブラックで飲まないねぇ」

 

「レヴィアこそやめとけよ。胃があれるぞ?」

 

「別に食べながらなら大丈夫じゃないでしょうか?」

 

「織斑って健康オタクなんだな」

 

 そんな風に会話を楽しみながらケーキを食べ終え、食後の紅茶が運ばれてくる。

 

 それを静かに楽しみながら、レヴィアは少し苦い顔をしてイッセーに視線を向ける。

 

「それはともかくイッセーくん。仕方がないとはいえあれはさすがにまずかったよ」

 

「あれっていうと赤龍帝の鎧ですか? でも、あれぐらいしないと勝てなかったし・・・」

 

「それはそうだけど、君はもう少し自分の価値を考えた方がいい」

 

 自分の価値、といわれて、イッセーにはピンとこなかった。

 

 確かに赤龍帝の籠手を持っているのは大きな価値だが、ドラゴン化はそれを一時的にでも発揮するために必要だったことだ。

 

 あれがなければ勝てなかった。だから別にそれには問題ないと思う。

 

「それは俺もそう思うぜ。だってリアス先輩を守るためだったんだろう? むしろ褒めるところじゃないか」

 

 一夏も同意見なのかフォローを入れるが、レヴィアはそんな一夏にもため息をついた。

 

「じゃあわかりやすく言おう。蘭ちゃん、一夏くんが君を助けるために右腕をなくしたとして、君はそれを喜べるかい?」

 

「無理に決まってるじゃないですか! 好きな人が自分のせいで右手無くしたなんて、そんなの全然うれしくないです!」

 

 即答だった。

 

 想像しただけでいやな気持になったのか、蘭が涙目で一夏の方をみる。

 

 それを悪く思いながら、レヴィアはイッセーに向き直った。

 

「そういうことだよ。愛する下僕が自分のために左腕を捧げたなんて、情愛の深いリアスちゃんならかなり長い間気にすることだろうね」

 

「あ・・・」

 

 そこに至って、イッセーはリアスの態度の理由に気が付いた。

 

 ことが終わってから、リアスはイッセーの左腕を悲しげに見つめていた。

 

 これが終わってもまたあるかもしれない、とも言っていた。

 

 あれは、また同じことがあるかもしれないという不安ではなく、その時になってまた何か別のものを差し出すことになったらどうするのかという意味だったのだ。

 

 その時イッセーは何も考えずにほかに何かを差し出すだけだと返した。それでリアスが救えるなら安いものだと。

 

 それは、男として当然のことだったのかもしれない。だが、守られる女の側からしていればたまったもんじゃないだろう。

 

「今回は仕方がないことだったけれど、次からは僕に相談するなりなんなりすることを先にしようか。結婚関係は当分大丈夫だろうけど、ドラゴンはいろいろ引き付けるからトラブルも多いだろうしね」

 

 そういって、レヴィアはイッセーの左腕をとると、それを寂しげに撫でる。

 

「まったく、こんなことならまず殴り込みをかけて事情を問いただすべきだった。・・・君には悪いことをしたよ」

 

 本心からそう思っていることが取れる声色で、レヴィアは目を閉じた。

 

 その様子をみて、イッセーも罪悪感を感じて目を閉じる。

 

 敬愛する主や尊敬する人を悲しませていては、ハーレム王になんて一生慣れないだろう。

 

 こんなことがないように、もっと強くならなければならないと、イッセーは固く決意する。

 

 とはいえ、それで納得できない古風な人も中に入る。

 

「いや、でもそれは男としては勲章っていうか誇りっていうか。守られることを喜んでほしいんだけどなぁ」

 

 一夏としては素直にそう思うのでいろいろと思うところがあるのだが、しかし直後悲鳴を上げそうな表情になった。

 

 当然、空気を読んでない馬鹿に女子二人がお仕置きとして足を踏んづけたのである。

 

「一夏君。下僕が主を守るのは当然で、必要となるならば盾になって散るのも仕方がない。だがそんなことをされても僕はうれしくも何ともないんだ。この文明の発達した時代に過度の男の沽券なんてはやらないよ」

 

「全くです。私を守りたいなら私を泣かせない方法で守ってください」

 

「い、痛い痛い痛い! わかった、できるだけ何とかするから怒らないでくれよ!!」

 

「・・・このとーへんぼく」

 

 美少女二人に怒られる一夏をみて、イッセーは自分とは別の意味で一夏が問題児だということを痛感する。

 

 むしろ、覗き行為という最大の失態を封じ込めることに成功した自分の方がかなりましな部類ではないかとすら思ってしまうレベルだった。

 

 とはいえ、そんな彼に今回はとても助けられた。

 

 一夏がライザーを抑え込んでくれなかったら、リアスはすぐにでも投了をしていただろう。

 

 そうなれば、イッセーの左腕を犠牲にした覚醒も無意味になるところだった。

 

 様々な状況が神合わさったからこその勝利。ふたを開ければ自分たちの方が優勢な勝利だったが、しかしかなりの苦戦だった。

 

 こんなゲームで何度もしなければ、上級悪魔にはなれないのだ。

 

 険しきは昇格の道。これを潜り抜けて最上級にすらなったという転生悪魔たちを、イッセーは心から尊敬する。

 

 だが、だからといって夢をあきらめてはいられない。

 

 そう、ハーレム王になると決めた以上、こんなところで負けるわけにはいかないのだから。

 

「ま、お前も頑張って心配かけさせないように守り通せよ織斑。俺も女子を悲しませないようにハーレム王目指すからさ」

 

 そういうと、イッセーは拳を前に突き出した。

 

 思えば、覗きを敢行した時に容赦なくボコってきた一夏のことをイッセーは微妙に思っていた。

 

 だが、或る意味どこまでも男らしい側面を持つ彼には、尊敬できる部分もいっぱいある。

 

 だから、いまは尊敬するし感謝も使用。

 

「・・・まあ、確かに女の子を泣かせるのは男として失格だよな。頑張ってみるさ」

 

 そして、見直したのは一夏も同義だ。

 

 女の裸をこそこそと覗き見るような行為をする男なんて、下劣で卑怯だとすら一夏は思う。

 

 だが、イッセーたちはハーレムを作るために一生懸命努力して、難関校である駒王学園に入学したのだ。

 

 入学したのは一夏もだが、レヴィアのサポートの元優秀な家庭教師をつけてもらったことも大きい。そういう意味では半ば独学のイッセーたちの方がすごい。

 

 何より、今回のレーティングゲームでの男の張りっぷりは尊敬に値する。

 

 あれだけ叩きのめされても、意識を失うまで前に出続けた意志力は、素直に称賛するべきだ。

 

 じっさい、レヴィアに排出されて本質の部分が出てきてからは、イッセー達は女子からも見直されている。

 

 夢に向かって一生懸命で、人を色眼鏡で見ない彼は、最初に除きをしなければ持てていたかもしれない。

 

 だから、一夏も拳を前に突き出した。

 

「これからよろしくな、織斑」

 

「ああ、よろしく頼むぜ、イッセー」

 

 二人は、ここに友情を誓い合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、帰りにホテルによろう。今回の敢闘賞二人に僕らでご褒美を―」

 

「レヴィアさん。私に一夏さんいがいの男の前で裸を見せろと?」

 

「あ、ごめんごめんちょっとした冗談というかなんというか待って待って待ってここ喫茶店ぎゃぁあああああああ!?」

 

 あと、レヴィア(アホ)の失言による制裁は二人ともスルーした。

 

 友情の連携会話でなかったことにするあたり、実は意外と本質的に似た者同士かもしれない。

 

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