ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット   作:グレン×グレン

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月下校庭のエクスカリバー 4

 

 木場祐斗は、ゼノヴィアを相手に防戦一方に追い込まれていた。

 

 様々な魔剣を作り出してはたたきつける木場だったが、しかしそれはゼノヴィアには通用しない。

 

 聖剣が一振りされるごとに、瞬くまに魔剣は粉砕されていった。

 

「わが破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)の前には子供のおもちゃだね」

 

「七分の一でもこれだけの威力か・・・! 全部壊すのは修羅の道だね!」

 

 木場はそれでも逆に戦意を向上させる。

 

 そんな様子をみて、レヴィアは軽くため息をついた。

 

「これは駄目だね。完全に頭に血が上っている」

 

「ええ、いつもの祐斗じゃないわ」

 

 リアスも不安げに見つめるが、しかし木場の様子は変わらない。

 

「典型的なテクニックタイプの木場君が、正面から力押しに回ってる時点で悪手だよ。あれじゃあいつもの力も出てないだろうね」

 

 そう酷評すると、レヴィアはほかの戦いも確認する。

 

「一夏君もいつもの癖が出てたからやらかされるかと思ったけど、本当にやらかしてるし・・・」

 

 一夏は有頂天になっていると、左手を握ったり開いたりする癖がある。

 

 エクスカリバーを使いを押し込んでいたことでその癖が出ているのに気づいていたが、やはりまだまだだということか。

 

 そして、イッセーだが・・・。

 

「なかなかやりますわね。剣技ではあの二人にはかなわないとはいえ、回避能力はなかなかですわ」

 

「そりゃそうさ! なんたって周りが一生懸命鍛えてくれたからな!!」

 

 意外にも一番善戦しているのはイッセーだった。

 

 相手がエクスカリバー使いでないことを考慮に入れても、かなり戦えているといってもいい。

 

 だが、その表情は何かエロかった。

 

 そして、松田と元浜も無言でエロい表情を浮かべて何かに期待していた。

 

 その気配に不穏なものを感じたのか、セシリアはバックステップで距離をとると、防御を重視した構えをとる。

 

「・・・なにかいやらしいですが、いったい何を考えておりますの?」

 

「はっはっは! 敵に秘密を教えるほど馬鹿じゃないぜ!!」

 

「・・・気を付けてください。イッセー先輩は女性の衣服を破壊する技を持っています」

 

 速攻で小猫がすべてをばらした。

 

「・・・な、ななななんですかそのいやらしい技は!! 恥を知りなさい!!」

 

「小猫ちゃん!? なぜネタバレを敵にばらす!?」

 

「警戒されたじゃないか、どうしてくれるんだ!!」

 

「ああああああ! な、なんてことだぁああああ!」

 

 顔を真っ赤にして胸をかばうセシリアに背を向けるという失態を犯しながら文句をいうイッセーに松田も便乗し、元浜に至っては崩れ落ちる。

 

 そんな馬鹿三人組に冷たい視線を向けながら、小猫はその理由を簡潔に言った。

 

「女の敵、最低です」

 

「うう、辛辣だよ子猫ちゃん!!」

 

 しかし事実なので誰一人反論できなかった。

 

 そして、それに大きなショックを受ける少女が一人。

 

「な、なんてことなの!? あの日の大事な幼馴染が変態に堕ちていただなんて!? ああ、主よ!!」

 

 衝撃を受けただけではなく、よほど心が揺れ動いたのか手を組んで天に祈るイリナ。

 

 それに対してイッセーは不満げな表情を浮かべるが、それより先に動いた人物がいた。

 

「戦闘中に―」

 

 一夏は一瞬で距離を詰めると、そのままイリナにつかみかかる。

 

「あ!?」

 

「油断しすぎだ!!」

 

 そして見事なまでの一本背負いを叩き込んだ!!

 

「あうっ! ま、まだ―」

 

 慌てて起き上がろうとするイリナの首元に、日本刀が突き付けられる。

 

「・・・まだやるか?」

 

「・・・参りました」

 

 隙を見せたのは完璧に自分が原因なので、イリナは素直に敗北を認めた。

 

「うう、悪魔に転生した人間に負けるだなんて・・・。主になんといってお詫びすればいいのかしら」

 

 ずーんという擬音が付きそうなほど落ち込むイリナに、戦闘中のゼノヴィアが声をかけた。

 

「気にするなイリナ。少なくとも、いま相対した悪魔の中では最強の使い手だ。・・・いずれ上級悪魔に昇格することもあり得るだろう」

 

「戦闘中に余裕があるね!!」

 

 木場は激高しながら切りかかるが、しかしゼノヴィアはそれを一振りで破壊する。

 

「悪いが、そろそろ決めようか」

 

「・・・なめるな!!」

 

 余裕の表情を崩さないゼノヴィアに、木場は最大規模の魔剣を生み出して切りかかる。

 

 しかし、それすら一太刀で破壊したゼノヴィアは、一瞬でその腹に柄をたたきつけた。

 

「・・・がっ!」

 

「まったく。何があったのかは知らないが、いくらなんでも激高しすぎだ。この程度でエクスカリバーの使い手を倒そうなどと片腹痛い」

 

 ため息をつきながら、ゼノヴィアはエクスカリバーを下す。

 

 ここにきて状況は一勝一敗。最後の戦いはイッセーに託されたわけだが・・・。

 

「うぉおおおおおおお! 金髪おっぱい!」

 

「そ、そんなに言うほどありませんわよ!?」

 

「いや、十分にスタイルがいい! だからその裸を、見る!!」

 

 そしてイッセーのやる気は十分。

 

 エクスカリバーに比べれば格下とはいえ、聖剣を相手にすべてをかわして攻めるという奮戦を見せていた。

 

「うぉおおおおおお! 英国貴族のおっぱいぃいいいいい!!!」

 

 その執念は限界を超え、兵藤一誠という男を極限の領域へと高める。

 

「行け、イッセー!」

 

「俺たちに、光を!」

 

 親友たちもまた思いを託し、そして未来をつなげようとせめて声を張り上げていた。

 

「そうだ、イッセーくん! 僕たちに素晴らしいものを見せてくれ!!」

 

 そして、レヴィアもまた彼に信頼を抱いて願いを託す。

 

「・・・変態達が劣情を暴走させてるだけ」

 

 小猫がそれらを簡単にまとめてからため息をついた。

 

「イッセーさん! そんなにおっぱいが見たいなら・・・私のを・・・」

 

「アーシア先輩、それは言ってはいけない道です! 戻ってください!!」

 

 恋は盲目を体現しているアーシアを蘭が引き戻そうと必死になっているが、しかしそれはそれとしてすごい戦いではある。

 

 今の兵藤一誠は、間違いなく少し前まで一般人だった下級悪魔の次元を超えていた。

 

 ゆえに、セシリア・オルコットでは対応しきれない。

 

 否、その能力は紫藤イリナやゼノヴィアですら困難な領域だろう。

 

 それを、ただの神器使いであるセシリアがしのぐことは困難に近く―

 

「もらった!」

 

 ゆえに、兵藤一誠の手はあと少しというところまで届き―

 

「・・・そうはいきませんわ」

 

 ―しかし、セシリア・オルコットが一歩上を行く。

 

 イッセーがセシリアに触れるほんのわずかの一瞬。

 

 その一瞬で、セシリアの足元から大量の聖剣が生えた。

 

 それを()()かわしたイッセーは、間違いなく将来の素質が高かっただろう。

 

 だが、ただの神器をもってして、エクスカリバーの使い手と並び立つのは伊達ではない。

 

 彼女もまた、一流の実力者なのである。

 

「・・・あれ? 力が・・・っ」

 

 聖剣のオーラの影響を受け、イッセーは崩れ落ちる。

 

 今ここにおいて、戦いの決着はついた。

 

「驚きました。戦い方は素人に毛が生えた程度なのに、しかし優れた反応速度ですね」

 

 セシリアはそういいながら聖剣を解除すると、そのままリアスたちの方をみて笑みを浮かべた。

 

「二勝一敗。・・・これで、勝負は終了ですわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あ~、負けた~」

 

「大丈夫ですか、イッセーさん」

 

 アーシアから回復を受けながら、イッセーは肩を落として落ち込んでいた。

 

「うう、金髪美少女のおっぱい見たかった」

 

「そこかよ。女に負けたこととか落ち込むところはほかにあるだろ」

 

 悪魔でおっぱいが見れなかったことに落ち込むイッセーに、一夏はあきれ半分でため息をつく。

 

「別にそれはな~。俺の周り、俺より強い女の子ばっかりだし」

 

「だから気合を入れろって話だよ。人類統一同盟が男でも動かせるISを開発したんだから、もう男は弱いだなんて言えないんだぜ?」

 

 一夏は日本刀を手入れしながら、何かを思う表情で真摯にイッセーを諭す。

 

「そりゃ俺の価値観は古いかもしれないけど、男の意地ってやつはやっぱり大切にしないといけないだろ? 特にお前はハーレム目指してるんだから、それこそすごい男じゃなきゃいけないだろうが」

 

 それは確かにその通りだ。

 

 多くの女を引き寄せるには、それ相応のものが必要だ。

 

 それを周りに認めさせるには、相応の能力が必要だ。

 

 ハーレムなどという夢を認めさせるには、それにふさわしい人物にならなければならない。

 

 上級悪魔になるためには、戦闘能力も必要不可欠。そしてそれ以外にも必要なものは多くある。

 

「なるほどなぁ。俺たちの夢は険しいということか」

 

 それを理解して、元浜も肩を落とすが、すぐに気合を入れなおした。

 

「よっしゃ! だったら明日からもっと走るか!」

 

「そうだな。まずは体力をつけなくちゃ話にならないからな!」

 

 松田もそれに同調し、イッセーもまた気合を入れなおす。

 

「・・・ああ、そうだな。俺、赤龍帝だし」

 

「そういうことだよ。ま、俺は特に興味がないんだけどな」

 

 一夏のその言葉に、数秒後集中攻撃が放たれたがそれはともかく。

 

「うう、主の教え的に問題があるのですが、受け入れるしかないのでしょうか」

 

「アーシアさんはまだいいですよ。一夏さんは間違いなく冥界じゃそうなるのに自覚が足りてないし・・・」

 

「二人に同情します」

 

 肩を落とすアーシアと蘭に、小猫はおやつの饅頭を差し出した。

 

 しかし、それはそれとして問題は多い。

 

 なにせ、相手は堕天使幹部のコカビエルだ。

 

 間違いなく堕天使陣営において最強クラス。そんな手合いが、いかに魔王末裔とはいえまだ子供の悪魔の領地に侵入など大事件以外の何物でもない。

 

 それがわかっているがゆえに、レヴィアは即座の対処を決めた。

 

「リアスちゃん。・・・魔王様に連絡するべきだ」

 

「だめよ」

 

 レヴィアの言葉にリアスは即答する。

 

「そんなことになればお兄様に迷惑がかかるわ。・・・魔王が妹のために無理をしたなんて知られれば―」

 

「足を引っ張らないのも立派な支援。・・・これは僕らで解決していいレベルの領域じゃない」

 

 リアスの反論を、レヴィアは切って捨てる。

 

「・・・魔王レヴィアタン直系の末裔である貴女なら解決していいレベルじゃないの?」

 

「勘違いしないでほしい。魔王レヴィアタンの妹君はソーナちゃんだ。僕は先祖が魔王だったただの悪魔だよ」

 

 レヴィアは苦苦しい表情でそう告げる。

 

 が、それは一瞬のこと。すぐに笑みを浮かべると指を鳴らした。

 

「まあ、ルシファー様やレヴィアタン様じゃなければ問題ないでしょ。・・・そういうわけで、すでに通信はつなげてある」

 

 そういうなり、レヴィアの後ろに通信用の魔法陣が展開される。

 

 そして、そこに映し出されるのは二人の悪魔の姿だった。

 

 その二人を見て、レヴィアは深く一礼する。

 

「緊急の呼び出しをお受け下さり、ありがとうございますアジュカ・ベルゼブブさま、ファルビウム・アスモデウスさま」

 

「あ、アジュカさまにファルビウムさま!?」

 

 想定外の人物に、リアスは言葉を失い、そして部屋にいるほとんどの人たちが即座に跪いた。

 

「イ、イッセー先輩たちも早く! この人たち魔王様です!!」

 

「・・・え? えっと、マジ?」

 

「うぉおおおおお!? や、やややばい! 反応遅れた!?」

 

「え、ちょ、嘘だろおい!!」

 

「・・・あ、そうなんですか? 主に仕える者が悪魔の頂点とお会いするだなんて、主よ、これも試練ですかあうぅ!?」

 

 慌てる蘭の言葉に、状況が把握できていない者たちは混乱の極みになっていた。

 

 特にアーシアは条件反射で神に祈りを捧げて天罰を喰らっている。

 

『ああ、別に気にしなくていいよ。・・・面倒くさい状況になってるよねもう』

 

 と、眠そうな顔をした魔王が非常に眠そうな感じでそう答える。

 

「はい。それはもうコカビエルというとんでもない問題がやってきてしまいまして・・・」

 

『コカビエルって言ったら堕天使のタカ派筆頭じゃないか。本当にめんどくさいなぁ』

 

 いやそうな顔をするその魔王の言葉に、もう片方もうなづいた。

 

『ああ、それにこちらも問題がちょうど発生している状態だ。・・・すまないが増援を送るのには数日かかるとみていいだろう』

 

 その言葉に、レヴィアはすぐに眉を顰める。

 

「・・・何かあったのですか、アジュカ様?」

 

『ああ。現在魔王の領地で開戦派の悪魔たちがデモを起こしている。おそらく収まるのに数日かかるだろう』

 

『このタイミングでコカビエルが何かしたら、間違いなく世論は戦争再開に傾くだろうねぇ。・・・君たちが殺されたら本当に戦争勃発だよ』

 

「・・・え? マジ? 戦争ってそんなに起きかねないのかよ?」

 

 魔王二人の言葉に、松田が唖然として声を漏らす。

 

「・・・あり得るね。現魔王派は停戦を目的として旧魔王派を追い出したけど、それはあくまで当時の話だ。・・・転生悪魔による戦力増大をあてにして戦争再開を望む派閥は存在してる」

 

 レヴィアはそれにうなづきながら、一筋の汗を流す。

 

「エクスカリバーが都合よく三本も盗まれたことといい。まさか開戦派で示し合わせて戦争再開の口実を作ろうとしてる・・・なんてことがあるかもしれない」

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいレヴィアさん! それってマジでやばくないですか!?」

 

「お、俺のハーレム王の未来に戦争の影が!? マジで!?」

 

 元浜とイッセーが愕然とするが、しかしこれは非常にあり得る話だ。

 

 現政権の中にだって、最終的な勝利のために必要だから一時的な停戦を了承したものも多いだろう。そしてそれは天使や堕天使にも一定数いるはずだ。

 

 もし、彼らがどこかの勢力が動いた時に便乗するための準備を起こしていたとしたら・・・。

 

「・・・まずいね。コレ、下手に魔王様を呼んだら逆効果だ」

 

『だよね。たぶんだけど、デモを先導してる連中はコカビエルの動きを察知したとかじゃない? 足止めして君たちがコカビエルにエクスカリバーで惨殺される・・・って格好の戦争勃発理由を作ろうとしてるんだよ』

 

 眠そうな顔をしている方の魔王―ファルビウム・アスモデウス―が確信すら持った声色でそう言い切る。

 

 しかし、これでは下手に魔王が動けばそれこそ戦争が勃発しかねない。

 

『堕天使総督であるアザゼル自身は戦争継続には反対の方針をとっているはずだ。おそらく、堕天使側がコカビエルの動きを知っていれば、止めるための戦力が動かされるだろう』

 

「それに期待するしかないですが、しかしそれだけってわけにもいきませんね」

 

 ため息をつくと、レヴィアは立ち上がる。

 

「是非もない。リアスちゃん、悪いけど二日持たせて」

 

「どこに行くの、レヴィア?」

 

 リアスの当然の疑問に、レヴィアは苦笑を浮かべながら答えを返した。

 

「コカビエルを倒せそうな戦力を、いまから呼んでくるんだよ」

 

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