ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット   作:グレン×グレン

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月下校庭のエクスカリバー 6

 

 一方、イッセーはイッセーでいろいろと動いていた。

 

「いやだ、いやだぞ、俺は逃げるぞぉおおおおお!!!」

 

「だめです」

 

 シトリー眷属の兵士、匙元士郎が涙を流して逃亡しようとする。

 

 そして、そのベルトを小猫がつかんで離さない。見ていて滑稽なほどだが、それほどまでに兵士と戦車の駒による筋力強化の差は大きかったのだ。

 

 匙元士郎が逃亡を試みている理由は単純明白である。

 

 ・・・一下級悪魔が、好き好んでエクスカリバー使いに喧嘩を売るわけがない。

 

「なんで、エクスカリバーを破壊しようだなんていうんだよ、お前らは!!」

 

「いや、そうでもしないと木場が納得しないだろうし」

 

 殺意すら混じり始めている匙の文句に、イッセーはあっさり答えた。

 

 結局、あの後木場は一人でエクスカリバー使いを探しに出て行った。

 

 いつもならレヴィアは気づいただろうが、コカビエルに気を取られているらしい。特に言及することなく増援を呼びに行ってしまった

 

 それだけの相手なのだと生唾を飲み込むが、しかし問題なのは木場の方だ。

 

 変なことをして、はぐれになられたらリアスが悲しむ。

 

 イッセーはそれだけの理由で、エクスカリバーを一本ぐらいは破壊させてはくれないかと頼みに行こうとしたのだ。

 

「まあ行けるだろう。なにせこちらとしては領内でもめ事を起こされてるんだ、自衛の許可ぐらいは貰ってもばちは当たらんだろう。・・・うっかり外を出歩くうっかりさんだろうが、身は守らないといけないからな」

 

「元浜先輩。眼鏡ですね」

 

 眼鏡をキランと輝かせながら含み笑いを浮かべる元浜に、小猫は冷静に、しかし素直に賞賛する。

 

 ぶっちゃけ、ここまで頭がいいとは思わなかったという顔である。

 

 イッセーもそれにうなづく。それに、それ以外にも勝算はあるのだ。

 

「そうそう。それに向こうは堕天使の手に渡るぐらいなら破壊するって言ってるんだ、俺たちが壊したってそのまま放置して向こうが回収すればいいわけ立つだろ?」

 

「それに俺を巻き込むなって言ってんだよぉおおおお! 殺す気かお前らぁああああ!!」

 

「だから逃げんなって」

 

 ついに限界を声て小猫を引きずる一歩手前にまでいった匙だが、しかしそこで松田も参戦した。

 

 二人掛かりではさすがにかなわず、結局匙は引きずられる。

 

「くそぉおおおおお! お前らのところのレヴィアさんとリアス先輩は厳しいながらも優しいだろうが! うちのソーナ会長は厳しくて厳しいんだよ!! バレたらどんなことされるか」

 

「いやいや、レヴィアさんだって厳しい時は厳しいぞ。こんなことしたのがばれたら、半月はエロいことしてくれないだろうな」

 

 松田がそれを想像したのか、涙を流して反論する。

 

 ・・・とたん、イッセーと元浜の歩く速度が数割減したのはご愛敬である。

 

「まあ、逆に匙は「舎弟が迷惑かけたね。お詫びに・・・っ」ってエロいことしてくれるだろうからそれが報酬ってことで」

 

「払うのレヴィアさんかよ!? ・・・え、マジ? マジで?」

 

 渾身のツッコミを入れた後、しかし鼻の下を伸ばしながら念のため確認する匙に、小猫は何も言わず冷たい視線を向けた。

 

 いつの世も、エロい男というものは年頃女子に嫌われやすいのである。レヴィアなどは例外なのである。

 

 だがまあ、いつものことといえばいつものことなので気にしない。

 

 そんなことより、気にするべきことはいくつもあった。

 

「ですが、どうやって探しますか? この街結構広いですよ?」

 

「あ、確かに」

 

 その言葉に、元浜がぽんと手を打った。

 

 そういえば、コンタクトを取る方法が一切ない。

 

 これではどうしようもないと思ったその次の瞬間だった。

 

「・・・まったく、人が目を離した隙に何を考えておりますのイリナさんは」

 

「もっと言ってやってくれセシリア。私はいつもこれに振り回されてるんだ」

 

「うぅ・・・。だって、だって聖人の絵だって言ってたんだもん!」

 

 ・・・・・・・・・いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・まあ、私はカードを持っているのでどうとでもなるのですが」

 

「さすがは没落したとはいえ貴族。おかげで助かった」

 

「食べすぎですわよ! あとで請求書を送りますからね?」

 

 食後のコーヒーまでちゃっかりといただいているゼノヴィアを軽くにらんでから、セシリアは事情をイッセー達に説明した。

 

 なんでも、イリナが詐欺にあって全財産を変な絵を購入するのに使ってしまったらしい。

 

「職務中にすることでもなければ、最低限の生活費は残しておくものでしょうに。・・・私にそんなことを言われて恥ずかしくありませんの?」

 

「何を言うの!? そこに聖人の絵が描かれているのなら、全てを捧げてでも買い求めるのが信徒というものでしょう!?」

 

 心外だといわんばかりにイリナが文句をいうが、誰一人として味方になってくれそうなものはいなかった。

 

「うわーん! みんながひどい! 主よ、どうかこの私にお慈悲をぉおおおおお!!」

 

「痛い!? ちょっとあんた、悪魔(俺たち)の前で神に祈るなよ!?」

 

 イリナの祈りでダメージが入り、匙が即座に文句をつける。

 

 あんなに嫌がっていたエクスカリバー使いの前で、しかしそこそこ根性のある男であった。

 

「それで、いったい何の用だ?」

 

 話が進まないと判断したのか、ゼノヴィアが鋭い視線をイッセー達に向ける。

 

 それを真正面から受け止めて、イッセーは答えた。

 

「エクスカリバーを一本だけでも俺たちの手で破壊したい」

 

 その言葉に、三人は一瞬だけ沈黙するが、ゼノヴィアはふうと息を吐いた。

 

「個人的には、一本ぐらい破壊させてもいいとは思うけどね」

 

「まあ、貴族が領地でもめ事を起こされてるのですし、自分たちで解決しようとするのは当然ですけれど」

 

 セシリアも困り顔だが、しかし言いたいことはわかるのか目立った反論はしてこない。

 

「い、いやいや! 相手はイッセーくんとはいえ悪魔なのよ?」

 

「とはいってもイリナさん。人の領地で激突するのを黙ってろなどと、さすがに誰も納得できないのは事実ですわ。・・・ちゃんと核を返してくださるのなら、一本ぐらいは譲ってあげても仕方がないのではありませんか?」

 

 セシリアはそういうが、イリナは微妙に納得していない。

 

「そういうなよイリナちゃん。俺たちはエクスカリバーを独占したいんじゃない。木場にエクスカリバーを破壊させてあげたいだけなんだから」

 

 松田がそういうが、しかしやはり納得できてなさそうな表情だった。

 

「そもそも、なんでその木場君っていう子はエクスカリバーを破壊したいのよ?」

 

「・・・それは本人に聞いた方が早いだろ」

 

 と、ほかの誰よりも早く携帯電話をちらつかせながら元浜が告げた。

 

 そして、レストランのドアが開いて木場が入ってくる。

 

「まさか、エクスカリバーの使い手に許可を取ろうだなんてね」

 

 複雑な表情を浮かべながら、木場は警戒心を崩さずにみなと同じ席に座り込んだ。

 

「そういうなって。イッセーは知ってるみたいだけど、俺たちはそもそもなんでお前がエクスカリバーを憎んでいるのかだってわからないんだぜ? 教えてくれたら許可を出してくれるかもしれないじゃねえか?」

 

 元浜はすぐになだめるが、しかしイッセーはそれに立ち上がる。

 

「いや! その、それはなんていうか黙っていた方がいいと思うんだけど・・・」

 

 事情を知っているイッセーとしては、あまりこういうのを話すのはよくないような気がした。

 

 なにせ相当にプライベートな事情なのだ。内容も陰惨だし、人に話して気分がよくなるようなことではない。

 

 だが、木場は静かにそれを手でとどめると首を振った。

 

「・・・いや、それでエクスカリバーを破壊させてくれるなら構わないさ」

 

 そういうと、木場はぽつぽつと過去を語りだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かつて、木場は名無しの孤児だった。

 

 日本では珍しいかもしれないが、貧しい国では珍しくも何ともない孤児の1人。

 

 そんな彼は、聖剣計画の被検体として拾われる。

 

 そして記号替わりとはいえ名を与えられ、そして何人もの同類たちとともに厳しい実験を受けることになった。

 

 お前は選ばれたのだ。選ばれた存在になるためのものだといわれたとおりに信じて。

 

 しかし、実験は凄惨を極め、そして一人また一人と減っていった。

 

 それでも、彼らは頑張った。

 

 仲間たちで寄り添い、聖歌を謳った。それがいつか報われるものだと固く信じて。

 

 だが、それは裏切られた。

 

「・・・毒ガスを使って殺したそうだな。あの件は我々の間でも汚点だよ」

 

 ゼノヴィアが、心底いやそうな顔でそう告げる。

 

「そ、そうか。教会の総意ってわけじゃなかったんだな」

 

 それならアーシアもほっとするだろうと思い、イッセーは少し安心した。

 

 とはいえ、教会の者によって罪のない子供たちが殺された事実には変わりない。そういう意味では問題は先送りにされていなかった。

 

「私は詳しいことは知りませんけど、それだけのことをしたのなら相当の処罰を受けているのではありませんこと?」

 

「ええ。関係者はたいてい処罰を受けたし、首謀者は追放されて堕天使側に行ったらしいわ」

 

 セシリアの質問にイリナが答えるが、しかしそれは不安材料だ。

 

「ってことは、エクスカリバーを盗んだ連中はそいつの手でエクスカリバーが使えるんじゃないか?」

 

 元浜が実にいやそうな顔で推測を口にする。

 

 もしそうだとするならば、敵の戦力はさらに上がっているからだ。

 

「そうだろうね。実は少し前にエクスカリバー使いに襲われたけど、フリードとかいうあの男はエクスカリバーを使っていたよ」

 

「おま!? そういうことは先に言えよ!!」

 

 木場の言葉にイッセーは大声を上げる。

 

 フリードとは以前にも因縁があるので当然といえば当然だ。しかも、時期から見てゼノヴィア達が来る前に襲われた可能性すらある。

 

「お願いだから教えてください。・・・祐斗先輩が死んでしまったら、いやです」

 

「・・・お前、こんなロリっ子を悲しませてただで済むと思ってるんだろうな?」

 

「ご、ごめん。僕も少し思い詰めてて・・・元浜君目が本気だよ!?」

 

 涙目の小猫にロリコンである元浜が殺意すら見せ、木場は思わず怖気づく。

 

「っていうかフリードってフリード・セルゼン? 天才だったけど教会から追放されたっていう?」

 

 うわぁ、とでも言いたげな顔で、イリナはいやそうな顔をする。

 

「あ、そっちでも扱いに困ってたの?」

 

「ああ。信仰心など欠片も持たない殺戮衝動に忠実な男。まさかあんな男の手にエクスカリバーが渡っているとは・・・」

 

 イッセーの同情の視線に、ゼノヴィアは眉間にしわを寄せる。

 

「しかも彼は男女共用型のISを保有していたからね。相当に危険な相手になるだろう」

 

「それは最悪ですわね。ISがそんな下賤な男に手にわたっているだなんて、元代表候補生として許せませんわ」

 

 木場の言葉にセシリアもいやそうな顔をする。

 

 誰もが嫌がる男、フリード・セルゼン。ある意味わかりやすい男だった。

 

 しかし、だとすると難易度はより高くなっている。

 

 なにせエクスカリバーもISも人間が持てる中では強力な武装なのだ。

 

 二つ合わされば必ず強くなるというわけではないが、しかし脅威であることには変わりない。

 

 しかも使い手もまた強敵となれば、その難易度はうなぎのぼりだ。

 

 そうなると、イッセーとしては匙に罪悪感すら湧いて出てくる。

 

 想定の遥か上空を行く難易度だ。さすがに付き合わせるのはまずい気がする。

 

 なにせ、彼は全く持って乗り気ではないのだ。もうこれは、黙っていてくれればそのまま返してもいいだろうという気分にすらなってくる。

 

「・・・匙、悪かった。お前はもう帰っても・・・ぉぉ!?」

 

 そう言いかけたイッセーは、匙の顔を見てぎょっとなった。

 

「う、うぅ、うぅうう!!」

 

 号泣していた。

 

 鼻水すら流す勢いで号泣していた。

 

「・・・木場ぁ。俺は、お前のことがいけ好かなかった。イケメン王子として女子からの人気を不動のものとしていたお前のことが正直嫌いだった」

 

 そういいながら、しかし匙は全力で木場の両手を握る。

 

「だがそんなことはどうでもいい! 今の話を聞いた以上、俺も全力でお前に力を貸すぜ! ああ、会長のお仕置きもあえて受けるさ!!」

 

「え、あ、どうも・・・」

 

 勢いについていけず木場が戸惑う中、匙は涙をぬぐうとこぶしを握り締めた。

 

「ああ、俺は本気出して協力するぜ! だからお前もリアス先輩を裏切るな! お前の恩人を泣かせたら承知しないぞ!!」

 

「ああ、俺たちも力を貸すぜ」

 

「もちろん私も協力します」

 

「そうですわね。没落したとはいえ私は英国貴族。今の話を聞いて義憤に燃えねばオルコット家の名に傷がつきますわ」

 

 松田も、小猫も、そしてセシリアも木場を励ますように声をかける。

 

「元々我々も仕事だしな。ついでに聖剣計画の汚名をそそぐとするか」

 

「ええ! そういうことなら私も上に怒られるわ! 木場くん! 一本破壊するだけなら主も許してくれるはずよ!!」

 

「おお、こいつらも悪い奴じゃないんだな」

 

 ゼノヴィアとイリナも乗り気になり、それに元浜が感心する。

 

 皆の心が一致団結する中、匙は鼻をすすると照れくさそうに笑みを浮かべた。

 

「ああ! そういうことなら、俺の話も聞いてくれ! 実は俺には夢があるんだ」

 

「へえ? どんな」

 

 少しつきものが取れたのか、木場が匙を促した。

 

「・・・会長とできちゃった婚をすることだ!!」

 

 沈黙が発生した。

 

 ついでに言うと二つの意味で沈黙が発生した。

 

 そして、その沈黙に気づくことなく匙は続ける。

 

「ああ、みなまで言うな。できちゃった結婚はまず致す必要があるから実は難易度が高い。会長みたいなタイプならなおさらだ。だけど、俺は必ず会長とできちゃった婚をして見せる」

 

「最低ですわ! すべて台無しですわ!!」

 

「やはり所詮は悪魔か。いいことを言ったと思ったのだが欲望に忠実すぎる」

 

「・・・あの、私を一緒にしないでください」

 

 いろいろ酷評するセシリアとゼノヴィアに小猫が文句をいうが、しかし問題はこれでは終わらない。

 

「・・・匙!」

 

 号泣の涙を流し、イッセーは匙の手を取った。

 

「俺は、俺の夢は部長の乳首を吸うことだ!」

 

 二秒後、匙も号泣した。

 

「兵藤! お前、そんな難易度の高いことが本当にできると思っているのか!」

 

「できるとも! あきらめなければ夢はかなう! 少なくとも、俺は部長の乳首を見たことがある!」

 

 その言葉に、匙はもちろん松田と元浜も愕然とした。

 

「そ、そんな素敵なことが!?」

 

「い、いつの間にそんなことに!?」

 

「な、なんて羨ましい奴!」

 

「・・・とりあえず今のうちに話を進めましょう。変態は放っておきます」

 

 小猫は作戦を円滑に進めるため、地図を取り出した。

 

「あの、放っておいてよろしいのですか?」

 

「かまいません。匙先輩はわかりませんが三馬鹿先輩は吸収力は良いので、後で説明すればわかってくれます。素直なので文句も言わないでしょう」

 

 ためらいがちのセシリアに太鼓判をおし、小猫は話を進めるべくさらに細かい地図も取り出した。

 

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