ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット   作:グレン×グレン

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月下校庭のエクスカリバー 7

 

 

 そしてよる、メンバーを分割してエクスカリバーの破壊作戦が決行された。

 

 戦力としては、エクスカリバーの使い手であるイリナとゼノヴィアが小猫と組み、木場は先走ることを警戒して匙と松田と元浜の三人態勢。

 

 そして、或る意味最強戦力であるイッセーはセシリアと組むことになった。

 

「・・・あの、セシリアさん?」

 

「セシリアでいいですわよ」

 

 そして、イッセーはどうしたものかと不思議に思う。

 

 なんというか、セシリアは自分に対して態度がいいような感じがするのだ。

 

「あの、セシリア? 俺の顔に何かついてるか?」

 

「あら、誤解させたのなら申し訳ありませんわ。ただ、興味がありまして」

 

 その言葉にイッセーは首をかしげる。

 

 はて、色欲の権化でしかない自分がそこまで興味をひかれるような要素を持っているだろうか?

 

「私、もともとはイギリスでISの代表候補生をしていましたの。ですから、ウェールズの伝承に登場する二天龍には少し興味がありましたわ」

 

「ああ、そういえばドライグってイギリスの伝承だったっけ」

 

『忘れるなよ相棒。ちなみにその伝承はアーサー王伝説に絡んでいるぞ』

 

 木場のことといいイリナといい、妙なところでエクスカリバーと縁があるなと、イッセーは妙な感覚にとらわれる。

 

「それに、イッセーさんはお強いですから」

 

「え? 俺が? 結局負けたじゃん」

 

 イッセーとしては、自分が強いという自覚はあまりない。

 

 それなら、一夏や木場の方がはるかに強いとすら思っている。

 

 だが、セシリアは静かに首を振った。

 

「織斑さんは確かにお強い方ですが、イッセーさんも強いですわよ。少なくとも、私の父よりかは」

 

「え? セシリアのお父さんって?」

 

 少し踏み込みすぎたかと思ったが、しかし聞いてしまったら仕方がない。

 

 セシリアも隠す気はないのか、苦笑を浮かべると話し始める。

 

「私の父は、とても情けない人だったと記憶しております。・・・ああ、ISが開発されたからではありませんよ? 開発されてからはもっとひどいですが、その前からひどかったですわ」

 

「お父さんのこと、嫌いなのか?」

 

「どうなんでしょう。少なくとも、母は疎ましく思っているように見えました。・・・今となっては、もうわかりませんが」

 

 その言葉で、イッセーは彼女の両親がもういないということを理解してしまった。

 

「あ、ごめん」

 

「いえ、話したのは私ですから。・・・ですが、両親の死因は同じ事故でした」

 

 だから、本当の関係はよくわかっていない。とセシリアは続けた。

 

 その後、セシリアはオルコットを存続させるべく苦労したそうだ。

 

 IS適正を受けたのもその一環。そして、彼女はA+という非常に高い判定をもらった。

 

 その結果、本国からは様々な優遇措置をもらったそうだが、しかしそれも男女共用型のISの存在で無に帰した。

 

「イギリスは統一同盟に参加するかどうかで二分され、そのごたごたで結局オルコット家は没落。私は、そのあと判明した神器の適性から英国教協会のエージェントにして、ISと異形技術の連携のテスターに選ばれましたが、それまでには間に合いませんでしたの」

 

「・・・難しいな。一般人の俺にはよくわからないよ」

 

 それでも、少なくともいろいろと貴族としてのしがらみがあったのはわかる。

 

「でも、仲が良くないのに結婚するとかセシリアの両親は大変だよな。リアス部長も許嫁との婚約を強制されたけど、セシリアは強制されなかったのか?」

 

「あらお詳しい。・・・どちらかというと、第三次世界大戦の影響で食い尽くされて、それだけの価値がなくなったということが正しいですわね」

 

 おかげでいろいろと苦労した。と顔に書いてあるがセシリアは口には出さなかった。

 

 イッセーはそれについて考える。

 

 確かに没落した貴族にうまみは少ないだろうが、しかしそれでも狙いどころはあるだろう。

 

 IS適正がA+の人物などそうはいない。代表候補生だったということから考えて、狙って獲物にしようとする輩は多いだろう。

 

 つまり―

 

「―セシリアも、結婚したい相手のタイプとかこだわってるのか? そのために教会に?」

 

 ―彼女も結婚相手に条件を求めているということだ。

 

 そんな風に思って聞いていたが、セシリアは図星を突かれたかのように目を丸くする。

 

「頭の回転も速いのですね。・・・ええ、私は強い人と結婚したいのです。それが私の理想」

 

 セシリアは空を仰ぐと、苦笑を浮かべる。

 

「・・・ISが女性だけのものだったころ、私は特に男性を情けなく思っていましたわ。女性に比べれば男は情けないものだらけだと」

 

 だが、人類統一同盟によって男性でも使えるISができたことがそれを変えた。

 

 いや、それ以上に異形の存在とかかわることが原因だったとセシリアは笑う。

 

「男がISを使える。この事実に狼狽して醜態をさらす女性たち。そして、異形の社会に存在する、ISを余裕で打倒できるであろう者たちを見て思い知らされました。・・・ああ、しょせんかつての女尊男卑はISによりかかっただけの情けない女の矜持だったと」

 

 自分もそんな者たちの一人だったのかと思うと、セシリアは本当に情けなく思えてくる。

 

 ISという兵器を超える者たちが闊歩する異形社会において、男と女は大差ない。

 

 身体能力ではなく魔力などといった異形の力を主要とする悪魔や天使ともなれば、女性であっても魔王や熾天使として無双の力をふるう。そしてそれは、男も同じだ。

 

 そんな本当に本人の力によって戦う者たちからしてみれば、ISが女性にしか使えないという、ごくわずかな権力にすがっている女が馬鹿らしく思えた。

 

「私も、父のことは笑えませんわね」

 

「いや、それは違うって」

 

 なので、イッセーがさらりと否定してセシリアはぽかんとした。

 

「え?」

 

「だって、少なくともセシリアはISを持ってるんだろ? そして、持つために一生懸命頑張ってたんじゃないか」

 

 イッセーは素直にそう感心する。

 

「俺なんか、ハーレム作るのが夢で女子の多い駒王学園に入学したけど、レヴィアさんに会うまで覗きがやめられなくってさ」

 

 おかげでやめた今でも結構距離取られていると、イッセーは自重した。

 

「いや、ぶっちゃけ覗きをやめられたのもレヴィアさんに抜かれて賢者タイム入っているだけだし、そういう意味じゃ全然努力が成果になってないからさ」

 

 だから、努力を成果にしているセシリアはすごい。

 

 そう、イッセーは言い切った。

 

「ああ、セシリアはすごいって。俺は父さんも母さんも生きてるけど覗きで迷惑かけっぱなし。でもセシリアは、父さんも母さんも死んでるのに頑張って代表候補生にまでなってるんだろ?」

 

 だったら弱いわけがない。

 

「ああ、俺なんかよりすごいよセシリアは」

 

 そういって励ますように笑うと、セシリアは顔を真っ赤にして首を振った。

 

「いいえ、それは違いますわイッセーさん」

 

 今度はイッセーがきょとんとする番だった。

 

 自分より頑張って、自分より成果を上げて、自分より強い。

 

 そんなセシリアが、イッセーのことをすごいといったのだ。

 

「貴方はアーシア・アルジェントさんをかばって、神にすら戦うといいました。・・・おそらくは、一人になってもという意味で」

 

「え? そりゃぁ、部長に迷惑はかけられないし・・・」

 

 当然のことを言ったつもりだったが、セシリアはそれを苦笑して否定した。

 

「聖書にしるされし神を、一介の下級悪魔が敵に回すだなんて恐れ多くてできませんわ。仮にも信徒である身からすれば、思わず愕然となりそうでしたもの」

 

「え? マジで? いや、それは俺が馬鹿だからよくわからないだけだって。それに、アーシアみたいな優しい子を追放するなんて許せなかったからさ」

 

 イッセーとしては当然のことを言ったつもりだったし、リアスが叱責したら謝って下がるつもりだった。

 

 だが、そんなイッセーをセシリアは目を細めて見つめる。

 

「貴方は、あなたが思っているよりはるかに強いですわ。ええ、思わず見惚れてしまうぐらい―」

 

 そう言いかけたセシリアは、しかしすぐに動きを止める。

 

「イッセーさん、下がってください」

 

「え?」

 

 思わずつられて視線を向けるイッセーの視界に、黒い翼が映った。

 

「ほう? 悪魔が神父の恰好をするとは、教会と同盟でも結んだか?」

 

「それに、そこにいる女もただものではないな。・・・教会の狗がようやく追ってきたか」

 

 敵意を隠しもせず、にらみつける数人の男たち。

 

 間違いない。イッセーはかつてあったレイナーレを思い出す。

 

「・・・堕天使か!」

 

「そのようですわね。エクスカリバーはありませんが、この数はさすがに大胆ですわ」

 

 イッセーは自然とセシリアの前に出る。

 

 仮にも男が女の影に隠れているわけにはいかないだろうという自然な判断だったが、しかしその肩に手を置かれた。

 

「イッセーさんは籠手の倍化を高めてくださいな。ここは、私が前に出ますわ」

 

「いや、さっきまでの話的に男の俺が前に出ないわけにも・・・」

 

「大丈夫ですわ」

 

 イッセーのことばを遮り、セシリアは笑みを浮かべる。

 

「ご安心ください。私、これでも元代表候補生でしたので」

 

 そういうと、セシリアはイヤーカフスに触れた。

 

「さて、見たところ中級堕天使とお見受けしますが」

 

 そして、静かに笑みを浮かべた。

 

「私と、このスターダスト・ティアーズの組み合わせを打倒するなら上級は連れてきてくださいませんと困りますわ」

 

 絶対的強者による、余裕の笑みを。

 




イッセー、フラグを立てる。

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