ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット   作:グレン×グレン

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月下校庭のエクスカリバー 11

「・・・なんだ、あれは」

 

 薄れていた意識を取り戻しながら、一夏はその光景に感動すら覚える。

 

 合一化されたエクスカリバーという圧倒的な力を、さらに圧倒する木場の剣。

 

 さらにゼノヴィアもデュランダルを引き抜き、エクスカリバーを圧倒する。

 

 本来の折れる前のエクスカリバーを威力でなら上回るとされているデュランダルは当然として、しかし木場の魔剣は合一前のエクスカリバーにすら届かなかったはず。それがいったいどうしたというのか。

 

「どうやら、禁手(バランス・ブレイカー)に至ったようですわね」

 

 一夏をかばうように位置どったセシリアが、感歎の表情を浮かべる。

 

 その言葉に、一夏は驚いた。

 

 禁手。神器の覚醒形態ともいえる進化形態。

 

 最終到達点ともされるそれは、神器保有者である一夏や蘭ですらいまだ届かない未知の領域。所有者全体はおろか上級者の間で見ても、おそらく全体の一割にも届かないであろう最高難易度の領域だ。

 

 一夏とさほど変わらない年齢でそれに届く。それがどれほどの偉業かなど言われるまでもなくわかっていた。

 

「シィーット! 禁手にデュランダルとか何の冗談だよ!! こんなもん生身で勝てるわきゃねーだろうが! どういうことだよバルパーのオッサン!?」

 

 そのあまりの連続展開にフリードが絶叫する。

 

 すでにISまで装備しているが、禁手の影響で反応速度も上がっているのか木場はその反撃を簡単にいなしていた。

 

 そして、それに対してバルパーは返答することができない。

 

 それほどまでに、木場の禁手に驚愕していた。

 

「あり得ない、あり得ないぞ聖魔剣など!? 反発しあう二つの要素がまじりあうなど・・・っ!」

 

「糞が! 悪いがボス、これ以上はごめんだぜ!!」

 

 そういうなり、フリードはバルパーをひっつかむとそのまま高速で離脱する。

 

「あ、待ちなさい!!」

 

 蘭が即座に逃がさないとばかりに砲撃を放つが、フリードはそれを回避。それどころか、その結果空いた穴から結界の外に飛び出そうとする。

 

「って逃がすか!」

 

 一夏はそれにすぐに反応して即座に追いすがるが、その顔面に強大なオーラを放つ剣が映り込んだ。

 

 ・・・あろうことか、フリードはエクスカリバーを囮にして離脱を図ったのだ。

 

 そして、ついうっかりそれを受け取ることに意識を向けた一夏から逃れ、そしてその直後に結界がとじる。

 

「あ、待て!!」

 

「誰が待つかバーカ! 悪いがここらで逃げさせてもらうぴょーん!!」

 

 そういうが早いか、フリードは再び加速して離脱していった。

 

「・・・会長! 結界を解除してください!」

 

「駄目です。ここで結界を解除すれば、コカビエルとの戦闘の余波がすぐにあふれてきます。・・・申し訳ありませんが、バルパーとフリードは優先順位がはるかにしたです」

 

 正論で封じ込められてしまうと反論ができない。

 

 そして、確かにフリードやバルパーに意識を向けている暇もなかった。

 

 なぜなら、そこにはさらに強大な化け物がいるのだから。

 

「・・・フム。まあいいか、俺一人でも充分事足りるしな」

 

 そういいながら、コカビエルは感心するかのように木場とゼノヴィアを見る。

 

「ああ、少しは誉めてやろう。・・・使えるべき主をなくしてまで、お前たちはよくやっている。禁手とデュランダルとはなかなか感心したぞ」

 

 そう、本当に賞賛の感情をこめて、コカビエルはそう告げた。

 

 コカビエルは確かに心から褒めていたし、実際それだけの成果を上げているといってもいい。

 

 だが、その褒め方が問題だった。

 

「・・・なん、ですって?」

 

 リアスが、怪訝な表情で聞き返す。

 

 コカビエルは木場とゼノヴィアを褒める際、今こう言ったのだ。

 

 仕えるべき()()()()()まで、と。

 

 木場はまあいい。悪魔にとっての大本の主といえる四大魔王は、その全員がかつての戦争で死んでいる。

 

 確かに新たにリアスの兄であるサーゼクスたちが四大魔王に就任しているが、それはあくまで新たにだ。死んでいるということには違いがない。

 

 そんなことは周知の事実だ。今時の異形社会ならば子供でも知っている常識レベルの知識であり、ほかの神話体系にも知られている。知らない方が問題なレベルだ。

 

 だが、ゼノヴィアの主は聖書の神だ。聖四文字であらわされる、アブラハムの宗教における全能にして勇逸の存在である『神』だ。

 

 コカビエルの言うことが正しければ、その神すらすでに死んでいるということになるではないか。

 

「こ、コカビエル様は何を言っておられるのだ?」

 

「は? 神が死んだとでもいうのかよ?」

 

 堕天使やはぐれ悪魔祓いですら唖然としているなか、コカビエルは自分が言ったことに気が付いたようだ。

 

「・・・ああ、若手や下級の連中が知っているわけがないか。まあ、隠す必要もないしな」

 

 そう勝手に納得すると、最大限の憐みを見せた表情で、ゼノヴィアに目を向ける。

 

「先の大戦で四代魔王が死んだことは知っているだろう? その時、聖書の神も相討ちになって死んだのさ」

 

 その言葉に衝撃を受けたのは、コカビエルを除く全員だった。

 

 それもそうだ。この場にいるものは三大勢力。聖書の神はある意味でその頂点に存在する存在だ。

 

 転生悪魔であり、基本無宗教のイッセー達ですらさすがに驚いている。それほどまでに聖書の教えというものは大きな存在であり、影響力が大きいのだ。

 

 その、最高存在が数百年以上前にすでに死んでいるなど、誰一人として知らなかった。

 

「嘘だ! そんな話、聞いたことがないぞ!!」

 

「本当だよ。その転生悪魔の聖魔剣が証拠だ。聖書の神が死んだことで、聖と魔のバランスはすでに崩れている。だからそんなイレギュラーが生まれるのさ。バルパーはそろそろ気づいているだろうがな」

 

 反論の余地を許さない証拠を突き付けられ、ゼノヴィアは愕然とする。

 

「まあ、隠されているのは仕方がない。キリスト教を中心とする神の奴を信仰している人間どもの数は人間全体の約半数。最近は信仰心が緩い奴も多いが、それでも極限まで少なく見積もっても数億人は本気で信仰しているだろう。それも、人間たちの主要国家である先進国でろくに信仰してないのはこの日本だしな」

 

 そう、この情報は決して公言することができない。

 

 そんなことになれば、まともな信者は間違いなくパニックを起こす。

 

 事実、敬虔な信徒であるゼノヴィアとアーシアは足がふらついていていつ倒れてもおかしくない。セシリアも愕然としてレールガンを落としているし、神に裏切られた感情すら持っていたはずの木場ですら剣を持つ腕が下がっている。

 

 まともな信仰を持っていたものの反応がこれだ。少なくとも、三大勢力の天使側として戦っている教会の戦士や神父やシスターがこれを知れば、どうなるかというあまりにもわかりやすい実例だろう。

 

 冗談抜きでショックで死ぬものがいてもおかしくない。それほどまでに、信徒にとって劇薬極まりない情報だった。

 

「主は、いない? 死んでいる? では、私たちに与えられる愛は・・・」

 

 愕然としたアーシアが、弱弱しくそう疑念を浮かべる。

 

 教会から追放され、そして悪魔になってもなお信仰を捨てなかったアーシアにとって、この事実はあまりにも毒すぎた。

 

「死んでいるのだから、そんなものあるわけないに決まっているだろう」

 

 そう、コカビエルは冷酷に一蹴する。

 

「まあ、聖書の神はその奇跡を運用するにあたってシステムを構築していた。今はミカエルがそれをうまく運用しているからある程度は機能している。・・・ある程度は、だがな」

 

 そう苛立たしげに言い放つと、コカビエルは大きく声を上げた。

 

「そして残ったのはなんだ? 魔王を含めた上級悪魔の大半を失った悪魔! 根本ともいえる神を失った天使! そして戦争はないと断言までしやがった腑抜け共の堕天使だ! ・・・なんだそれはふざけるな!!」

 

 ショックですでに倒れているアーシアを視界にすら入れず、コカビエルは唾を出すほどに怒り狂う。

 

「振り上げた拳をただ下すなど腑抜けたこと!! そんなに戦争をする気がないというのなら、俺一人でも戦争を起こしてやる!! 手始めにサーゼクスとセラフォルーの妹を殺して、ついでに忌々しいレヴィアタンの忘れ形見も血祭りにあげてな!!」

 

「・・・ふざけるな!!」

 

 その顔面に、一夏は剣の切っ先を突き付ける。

 

「なんの大義も正義もない力なんてただの暴力だ!! てめえ、堕天使の指導者の一人のくせして、そんな小さい真似で満足できるのか!?」

 

「小さい? ハッ! そんなものは体の震えを止めてから言うんだな」

 

 コカビエルはそれを一蹴する。

 

 事実、一夏の体はわずかながらに震えていた。

 

 怒りのあまり手加減すら忘れた圧倒的な力の奔流に、本能が恐怖をうんで体の動きを阻害する。

 

「所詮、それが弱者の限界だ。強大な力の前に震えるしか能のない小鹿が、俺の邪魔をしようなど片腹痛い!」

 

「それが・・・どうした! 俺は戦えるぜ!」

 

 震えながらも、しかし一夏は剣を構える。

 

 たとえ相手が脅威以外の何物でもなかろうと、しかしそれでも一夏は守りたいものを守るだけだ。

 

 それが、守る王である彼女の眷属である自分の在り方なのだから。

 

「ああ、まったくじゃねえかこの野郎が!!」

 

 そして、そこに並び立つ姿があった。

 

 赤龍帝、兵藤一誠。彼はこの場において震えすらしていなかった。

 

 そこにあるのは純粋な怒り。大切な街を勝手な理由で滅ぼそうとし、そして大切なアーシアを傷つけられた怒りが彼を突き動かす。

 

 たとえ心得が無かろうと本能で理解させるコカビエルの圧倒的な力に、しかしイッセーは全く臆していなかった。

 

「お前みたいなクソ野郎に! 俺のハーレム王国の建設の邪魔はさせねえぞ! このカラス野郎が!!」

 

「イッセー、お前・・・」

 

 その姿に、一夏は感心するしかない。

 

 これだけの圧倒的な力を前に、しかし彼は自然体だった。

 

 それだけのことができるようになるのに、自分は一体どれだけの修練を積めばできるようになるのか。

 

 ああ、子供のころ、友達を愚弄する悪ガキ相手に手加減もせずに叩きのめしてはレヴィアに説教されたことを思い出す。

 

『一夏君。弱者を相手に加減をせずに叩きのめしている時点で、君はただの乱暴者だ。真の強者はむやみに人を傷つけない』

 

 そういって寸止めや捕縛術の訓練をされたが、その意味を理解するのにはかなり時間がかかったものだ。

 

 ああ、いまなら本当によくわかる。

 

 こういうのが、本当の意味で強いものなのだろう。そう感じさせるほどに、自然と強さを感じさせてくれる。

 

「・・・俺についてくればハーレムを簡単に作らせてやろう。手ごろな女を見繕ってやるが?」

 

「え、マジで!?」

 

 自然体すぎるのも考え物だが。

 

「イッセー!! あなた何考えてるの!?」

 

「イッセー先輩、状況を考えてください」

 

「イッセー先輩、平常運転過ぎます!!」

 

 主と後輩二人から即座にツッコミがとび、イッセーは肩をびくりと震わせた。

 

「え、えっと、その、どうしてもハーレムってことばには弱くて・・・」

 

「・・・はははっ! お前、本当に平常運転すぎるだろ」

 

 なんというか、肩の力が抜けて、一夏は笑ってしまう。

 

 だが、おかげで震えは収まった。

 

「コカビエル! 悪いが、俺たちだっていることを忘れてもらっちゃ困るぜ!!」

 

 そういいながら、一夏は今度こそためらいなく剣を突き付ける。

 

「俺の仲間は誰一人やらせない! そして、俺もやれたりなんて絶対しない!!」

 

「もちろんだぜ織斑! ・・・コカビエル、悪いが俺は俺の力でハーレムを作ってやるよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うんうん。さすがは僕の愛しい一夏君とイッセー君だ。いい啖呵だね」

 

「だが未熟だ。彼我の戦力差が読めていないのは難点だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉とともに、結界が切り裂かれ、そしてより強大な結界で上書きされる。

 

 その場の全員が、上を見上げた。

 

 グレモリー眷属はもちろん、神の不在に沈むゼノヴィアも、そして一夏と蘭もそれを見た。

 

 そこにいるのは二人の影。シルエットはともに女性だが、片方はISを纏っている。

 

 そして、その姿を見て一夏は目に涙すら浮かべる。

 

「ははは。まだ三十分経ってないぜ?」

 

「馬鹿者。こういうのは言った時間よりも早く来るのが基本というものだ」

 

 一夏にたいして厳しく、しかし慈愛を感じさせる口調で返すその声の主は、舞い降りるとイッセーをみて笑みを浮かべる。

 

「そこの少年。彼奴ほどの相手を前に自然体とはなかなかの器だが、しかし貴様ではまだ未熟だ。ここは任せて下がっていろ」

 

「・・・・・・・・・え?」

 

 その姿を見て、イッセーは唖然とした。

 

 いいや、その場にいるほぼ全員が、驚くべき人物の登場に唖然としている。

 

 しかし、リアスたちはできる限り早く冷静さを取り戻した。

 

 そう、セーラ・レヴィアタンの眷属には織斑一夏がいる。彼はレヴィアの頼れる眷属だ。

 

 ならば、彼の唯一の肉親である彼女が事情を知っていても何ら不思議ではない。

 

「さて、切っていいな?」

 

「どうぞどうぞ。そのために呼んだんですからお願いします」

 

 そして、連れてきたレヴィアはそう告げると、コカビエルに向けて意地の悪い笑みを浮かべる。

 

「じゃあ、お前の野望はここまでだよ、コカビエル」

 

 それは、人類最強。

 

 それは、表の人間における至高を体現するものの1人。

 

 それは、世界中の人間が知っているであろう最強の戦士。

 

「・・・織斑、千冬?」

 

 人類最強のIS使い。初代ブリュンヒルデ織斑千冬が、そこにいた。

 




はい! 皆さんお待たせしました!

ブリュンヒルデキター!!
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