ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット 作:グレン×グレン
次の日、一夏とレヴィアは自主的にトレーニングを行っていてたまたま神社まで来たのでよってみた。
「いやぁ、あの大天使ミカエルがイッセーくんに何を渡すのかすごく気になるんだよねぇ」
「レヴィア、趣味が悪くないか?」
「近くまで行くだけだよ」
そういい合いながら神社の階段を上る二人の目的地は、朱乃が住処にしている神社だ。
「でも、なんで朱乃さんは神社に住んでるんだ? なんていうか、悪魔にとって神職って敵だよな?」
一夏は当然の疑問を口にするが、レヴィアはそれに対して口をつぐむ。
「プライベートだからあまり言えないかな」
「そうか。だったら仕方がないな」
レヴィアが言わないということは、つまりはそれだけ重い話だということだろう。
それぐらいは一夏も付き合いが長いのですぐにわかる。だから深くは詮索しない。
そして石段を登りきると、そこにはちょうど帰ろうとしていたイッセーの姿があった。
「あ、織斑にレヴィアさん」
「やっほー、イッセーくん」
「よ、イッセー」
挨拶をしあう中、見送りのためか朱乃も出てくると、満面の笑みを一夏に向けて送り出す。
「あらあら、一夏くんも来てくれたんですのね。・・・良ければお茶でもいかがかしら?」
「・・・え? あ、だったらイ―」
イッセーも、と言おうとしたその瞬間、レヴィアからハンドサインが出てきた。
フラグ発動
馬鹿な真似はやめろ
すぐに口をつぐんだ一夏の判断は間違っていない。もししなければ即座にレヴィアからサブミッションのお仕置きがされ、さらにベッドの上で搾り取られるという結末を受けるだろう。
男として、本命以外の相手と結ばれるのはやめるべきだ。ああ、主の命令だと逆らい辛いが、しかしできるだけ減らしたいのは事実なのだ。
そういうわけでお茶を飲むことになって、いま御呼ばれされている。
・・・ちなみに。
「さあ、イッセーくんもこっそり覗いてみよう。もしかしたら濡れ場が見られるかもしれないよ?」
「ま、まさか覗きを再開することになるなんて・・・っ」
などとレヴィアとイッセーが覗いているが、一夏は気づいていない。
「はい、お茶ですわ」
「あ、ありがとうございます」
一夏はそういうとお茶を飲む。
「美味しいです! 茶葉もいいけど淹れ方がよくなきゃこの味は出ない」
「あらあら。そんなことを言われるとうれしいですわ」
そういつも以上ににこにこしながら朱乃は言うが、やがて少し沈んだ顔をする。
「・・・そういえば、一夏くんには話していないことがありましたわね」
そういうと朱乃は立ち上がると服をはだけさせた。
「うぉおおおおお・・・っ」
小声であほ二人が興奮しているが、それは些細なこと。
すぐに、朱乃から翼が生える。
そしてそれは、悪魔の翼ではなかった。
「堕天使の、翼?」
「ええ、私の父はバラキエル。
そう告げる朱乃の表情は、どこまでも暗かった。
「母はとある神社の娘でした、ある日、傷ついて倒れていたバラキエルを助けた縁で私を宿したと聞いています」
その言葉とともに、黒い羽が舞う。
「穢れた翼でしょう? 悪魔に転生するとき、私はこの翼がなくなることを期待したけど、結局なくなることはなかった」
「・・・父親のこと、嫌いなんですか?」
一夏はそう聞いた。
「どうなのでしょう? 少なくとも私は堕天使が嫌いですわ」
「そうですか。だったらそれでいいと思いますよ?」
あっさりと、一夏はそう答えた。
その言葉に朱乃は一夏をまじまじと見つめるが、一夏は特に気にせずあっさりと答える。
「俺と千冬姉、両親に捨てられてるんですよ」
「え・・・?」
その言葉に、朱乃は表情をゆがめるが、一夏は特に気にしない。
「まあ、そんな奴らのことなんて知ったこっちゃないし、家族は千冬姉がいるし、蘭やレヴィアもいるからいいんです。・・・朱乃さんの家族のことも、それと同じです」
はっきりと、一夏はそういった。
「バラキエルってやつが朱乃さんを無理に連れ戻そうとかするんだったら、その時は俺が相手になります。いや、今の俺じゃ勝ち目がないけど、その時は千冬姉やレヴィアにも頭を下げて助けてもらいます。・・・そうしないと俺が怒られるし」
少し乾いた笑いを浮かべる一夏だが、しかしそれどころじゃないのが朱乃だった。
ひとことでいうと、感涙だった。
「・・・一夏」
そのまま感情のあまり、朱乃は一夏に抱き着いた。
「・・・カメラ、カメラはどこに?」
「許せねえ、俺たちのお姉さまを・・・許せねえっ!」
レヴィアとイッセーはそれぞれ別の意味で興奮するが、しかしそれもすぐに終わる。
具体的には、爆発とともに吹っ飛ばされた。
「「ぎゃぁあああああ!?」」
「な、ななななんだ!?」
「・・・あらあら。覗き見はお仕置きですわよ二人とも?」
などという漫才をこなしながら、現れるのは二人の美少女。
「・・・何をやっているんですか、レヴィアさん?」
「朱乃、あなたやっぱり織斑くんを選んだのね?」
阿呆二人にお仕置きをした蘭とリアスがそこにいた。
「・・・やっぱり一夏さんはそういうことになるんですね。悟りを開いて正解でした」
「いや、待ってくれ蘭! なんか俺がハーレムを作ることが確定なんけど!?」
「もうどうしようもありませんよ。レヴィアさんに迷惑をかけてばかりもいられないので、上級悪魔になってください」
一夏の弁明を一切許さず、蘭は心底ため息をつきながら朱乃に振り返った。
「・・・トレードをするならそれでもかまいませんけど、ちゃんとリアス先輩を納得させてくださいね」
「そこまでしなくても大丈夫ですわ。・・・私は不倫狙いですから」
「いや、ハーレムと不倫は全く別物だと思うんですけど」
そんなこんなをスルーしながら、リアスはイッセーの前に立った。
かなり怒っているというか、割と本気で魔力が漏れ出している。
「イッセー! 人の女に横恋慕するなんてどういうつもり!? あなたは私のイッセーなのよ!?」
「は、はいすいません! 俺は部長の下僕悪魔です!! あと人の女を寝取る趣味もないです!!」
「待ってくれリアスちゃん! 三回に一回ぐらいでいいからたまに貸してくれると嬉しかったりするんだけれど!!」
「レヴィア!!」
こちらもこちらで漫才が繰り広げられているが、しかしそれどころではなかったりする。
「・・・あ、燃えてる」
「誰か水もってきて!!」
そんなこんなで日常が過ぎるが、しかし仕事も必ず来るものである。
ついに、三大勢力の会談の日が訪れた。
「・・・フケたい。心の底からフケたい」
「駄目ですからね」
ぼやくレヴィアの腰にロープを巻き付けながら、蘭がしっかりとくぎを刺した。
政治的な公式行事に参加することを心から好まないレヴィアは、放っておくと確実に逃げ出しかねないのだ。
そんな光景を見て、千冬は自分の目を疑った。
「一夏。レヴィアはあそこまで不真面目な女だったか? 私の記憶ではむしろ率先して責任ある立場についていた記憶があるんだが」
「いや、レヴィアはノブレスオブリージュとかいうのをしっかり守ってるんだけど、政治的な業務は逃げたがるんだよ」
仮にも眷属であり、付き合いの長い一夏は大体理由もわかっている。
当然、同時期から眷属をやっている蘭もまたわかっている。わかっているがそれでも参加しなければならないのも分かっているのだ。
「いや、レヴィアって先代四大魔王の末裔なんだけど、悪魔にとってすごく重い層なんだよ。だからレヴィアが意見を言うと右に倣えで動く悪魔が多いらしくって」
「なるほど。付和雷同で判断してほしくないということか」
理由を聞いてむしろ納得した千冬だが、しかしそれはそれとして教職として未熟な少女を指導することも忘れない。
「とはいえお前が私を呼び戻して事態を解決に導いたのだから、最低限参加するべきだろう。なに、どっちつかずの意見を言ってうやむやにする政治家など腐るほどいるさ」
あまり褒められたことではないがな、と付け加えながら、千冬は蘭から縄を受け取る。
「ほら、逝くぞレヴィア」
「いまニュアンスが違ってないかな!?」
レヴィアのツッコミをスルーして、五人がかりでレヴィアを引っ張っていく。
引っ張っていくが、それはそれとして非常に緊張感が漂う光景だろう。
なにせ、彼女の意見だけで付和雷同する悪魔が多発するレベルの存在がレヴィアだ。
現政権側の真なる魔王の末裔というのはそれだけ重い存在ではあるが、だからこそ危険だ。
なにせ、外にはその現政権側の悪魔がゴロゴロといるのだ。
もし見られたらブチギレて大暴れ・・・などということを真剣に心配する必要すらある。
そういうわけで、いい加減レヴィアもあきらめて自分で前を進みだした。
「・・・とりあえず、四人はもちろん千冬さんも、極力話さないようにしてね。特に一夏君は無意味に喧嘩売る時あるから」
レヴィアはそういいながら釘をさす。
「なにせ、下手したら三大勢力の戦争が再発・・・なんてオチもありかねない。僕や僕の眷属が原因でそんなことになったら末代までの恥・・・というか僕の代で悪魔が終わる」
「あの、なんで俺たち新米がそんな会談に参加しなきゃならないんですか!?」
松田が速攻でツッコミを入れるが、レヴィアはジト目で返す。
「・・・こうなったら眷属も道連れだ。大丈夫。攻撃受けたら僕が守るから」
「ひでえ!! レヴィアさんこんなキャラだっけ!?」
「ソーナちゃんのところの眷属も全員巻き込んだから勘弁してよ。本来僕がこの会談に参加したなんて知られたら、僕が感想言っただけで事態が二転三転しかねないんだからストレスが溜まってるんだ」
額に手を当てながら、元浜の悲鳴にも律儀にレヴィアは答える。
実際、正当な魔王の正当な末裔というのはインパクトが大きいのだ。
日本でいうなら天皇もしくは征夷大将軍。下手をすれば彼女が黒といえば白も黒になりかねない。
それだけの状況を前にしながら、レヴィアは会議の場である部屋の前へと到着する。
そして、ちょうどそこにはリアスたちもいた。
「・・・やあリアスちゃん。ギャスパーくんは欠席かい?」
「ええ。ギャスパーはあの戦いには参加してなかったし、何より神器の制御がまだできていないもの」
リアスはそう告げながら、ドアの前に立つ。
立って、しかし五秒ぐらい固まっていた。
「先、開けようか?」
「大丈夫よ。・・・イッセー、手を握って頂戴」
緊張を紛らわすためとはいえ、それはそれとして役得をちゃっかり得ている様子を見て、レヴィアは少し苦笑する。
とはいえ、ここから先は責任重大。
下手をすれば三大勢力の戦争が即座に勃発しかねない危険地帯に、レヴィア達は踏み込んだ。