ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット 作:グレン×グレン
そこには、すでに重鎮が集結していた。
「これはこれは。皆さんお揃いで」
「レヴィアちゃんお久しぶり」
「リアス、レヴィア。さあ、そこに座ってくれ」
「よ、赤龍帝。この間ぶりだな」
首脳陣からそれぞれ声を掛けられながら、レヴィア達は席へとついた。
そして、何より視線が集まるのは千冬だった。
当然といえば当然だ。白龍皇ヴァーリが面白半分で様子見をしたからとはいえ、彼女がコカビエルを倒して事態を解決した最大の功労者だ。
すでに彼女は、異形社会内においても大きな注目を集めている。
表の人類最強など、裏の化け物たちに比べれば子供も同然。などという風潮すらあった異形社会において、彼女の存在は驚愕以外の何物でもない。
「いや、ヴァーリがマジで悪かったな。こいつ強い奴とバトルするのも強い奴のバトル見るのも大好きでよ」
「できればこれが終わったら午前試合でもしてくれると嬉しいものだ」
堕天使側からツッコミどころのある発言が飛び出すが、千冬それをレヴィアの方を向いてスルーした。
「レヴィア。面倒ごとを私に押し付けるなよ。これでも忙しいんだ」
「了解千冬さん。・・・まあ、今回の会談次第では暇が作れるかもしれないから面倒なんだけどねぇ」
レヴィアは苦笑しながらそう返しつつ、しかしヴァーリに視線を向ける。
「・・・」
「そんなにまじまじ見つめないでくれ。照れるじゃないか」
かけらもそう思ってない口調でヴァーリが発言を求めるが、レヴィアは視線を逸らすことでそれをスルーした。
そして、全員が席に着いたところでサーゼクスが口を開く。
「会談を始める前に一つ。レヴィア・・・否、セーラ・レヴィアタンの意向もあり、この場のものは大前提としての「聖書の神」の死をすでに知っている。これを前提として会議を始めたい」
その言葉に大きく反応する者はいない。それこそが、今のことばの証明だった。
そして、会議は始まる。
「我々天使の現状は、こんなところですね」
「なるほど。悪魔としては・・・」
「まあ、俺たちはどうでもいいんだがな、そういうのは」
会談そのものは、アザゼルが茶々を入れる以外は特に問題もなく進んだ。
正直な話、こうも穏便に進むとは思えなかった・・・というのがゲストとして呼ばれている若手たちの総意であるともいえる。
なにせ、今回の件の前にレヴィアはかなり苦い顔をしていたからだ。
『問題なく終わる可能性は、低いと思った方がいいからね?』
まず基本的なところといって悪魔側の現状。
そもそも、現政権は別に戦争そのものを全否定した組織というわけではない。
大きな内乱が起きてまで真なる魔王の末裔たちを追放したのは、あくまで即座の戦争続行が困難だという状況によるものだ。
当然いずれ戦争を再開させることを前提としているものも上層部には少なからずいる。堕天使と天使を滅ぼすべきだと考える者たちは、おそらく旧魔王派と内通している可能性だってあった。
現四大魔王は戦争そのものに反対しているが、彼らだけで政治を動かしているわけではない。むしろ悪魔の中では若手の急先鋒である彼らの発言力は、そこまで高くはないのだ。
旧来の血筋を受け継いでいるバアル家たち大王派の発言力は根強く、彼らの意見を無視することは非常に困難。そしてその多くはフランス革命前の貴族たちといわんばかりに傲慢な者たちが多く、血統主義とそれを根幹とする合理的思考、そして何より下級を見下す思想ゆえに現魔王の政敵である。そんな者たちが上層部の多くを占めている状況では、サーゼクスたちも強権をふるうわけにはいかない。
また、実はレヴィア以外にも旧魔王側の離反者は存在しているが、それに対しても現時点での戦争続行及び末裔たちに見切りをつけただけで、最終的な戦争再開を求める者たちは少なからず存在する。
その弊害が転生悪魔の扱いの差の広さだ。傲慢な悪魔たちは転生悪魔を奴隷か何かのように扱い、それが原因で離反するはぐれ悪魔も少なからず存在する。まあ、力を得たことで暴走した愚か者も多いため、一概にそれが原因だと断言することもできないのだが。
そして、天界および教会に対しても問題は多い。
宗教とは、善悪を定義するものだ。
世界各国において宗教の価値は莫大。一時期においては国際社会において教会の地位は王より上と認識されていたほど。現代においても、ローマ教皇がらみで緊張する国家上層部はごろごろいる。信仰の自由なんてものが認められている国家が多くなってきたのは、つい最近のことなのだ。
それほどまでに、宗教とは己の存在価値にまでかかわるほどのものだと、レヴィアは日本人が多いゆえに宗教の重さをよくわかっていないメンバーに言い切った。
そんな宗教の中でも、一神教というものは排他的な側面があるのだとも。
一神教とはすなわち、真に神と呼べる存在はただ一つだとする考え方だ。
それはすなわち、正義とは一つと断言する考え方であり、それ以外は悪だとする考え方につながりやすい。
そんな宗教において明確に悪と定義されている悪魔や、悪に堕ちた存在とされている堕天使との和平など、行えば不満が噴出することは免れないだろう。
そういう意味では堕天使が一番まともだ。戦争続行派がいるとはいえ、その筆頭であるコカビエルがついさっきただの人間に倒されるという事態を起こしたばかり。しかもその人間は現政権側の真なるレヴィアタンの関係者だ。
つまりは堕天使は悪魔と戦争しても勝てないといわんばかり。さらに勢力の大きさでは一番少ない。
この状態で戦争を行うなど不可能だろう。少なくとも、コカビエルが独断で動いたこともあって発言力は大幅に縮小しているはずだ。
まあ、それはそれとして和平を起こす理由というのも普通に存在する。
はっきり言えばどこも絶滅寸前もしくはその一歩手前なのだ。
天使は神が死んだ以上数を増やせない。人間と交わることで数を増やすことはできるが、少しでも欲望を抱けば堕ちるという難易度の高さ。そんなことはそう簡単にはできない。
また、イッセーがアスカロンをミカエルから託されるということがあった。
その時ミカエル自身が言ったそうだ。和平を結ぶつもりだということを。
悪魔側にしても、一応トップはサーゼクスであり、一応大王派も大勢は戦争継続は困難と考えている。これが主流ではあるのだ。
ゆえに、和平を結ぶといわれて反対はしないだろう。それで反対派が動いたとしても、旧魔王の末裔たちのところに行くだけだ。
問題は堕天使側だが、こちらに関しても危険度は少ない。
堕天使側が戦争を望むなら、コカビエルを止めに行く必要は全くないのだ。つまり止めるために白龍皇という強大な戦力を送り込んだ時点で、堕天使側の意向も分かっている。
わかっているが、だからこそ危険なのだ。
千年以上にわたる怨恨。その遺恨は根強いだろう。少なくとも、戦争を経験した世代に反対する者は多いはずだ。
若手に関しても、若いということは極端な方向に走りやすく、注意も必要だ。
そんな側からしてみれば、この会談を台無しにしたいというものは多いだろう。
実際、外では護衛の兵士たちがにらみ合いを続けていて、一歩間違えれば戦闘が勃発しかねない雰囲気だった。
ゆえに、レヴィアは非常に緊張していた。
「・・・アザゼル。それでは今回の事件について、貴方の意見を聞きたいのだが」
サーゼクスも緊張感をにじませながら、そこについて聞いた。
それに対して、アザゼルはやれやれと言わんばかりの態度で首を振る。
「コカビエルを罰したことでわかりきってるだろうが。・・・神の子を見張るもの《グリゴリ》の幹部で戦争強硬派はコカビエルだけだよ。お前の妹の前であいつは俺のことこき下ろしてただろうが」
いう間でもないだろうが、といわんばかりの態度にほとんどの顔がしかめるが、しかりアザゼルは気にしなかった。
実際、イッセーの家の前に現れたコカビエルはアザゼルをこき下ろしていたことが判明している。
戦争に興味がなく、
「どこもかしこも一枚岩じゃないことぐらい、組織の長ならわかんだろ? 俺のところはコカビエルがそうだったってわけ。だからヴァーリ動かして止めたんだろうが」
それが答えと暗に言い切ったアザゼルだが、しかし話はそれだけでは終わらない。
「なら、なぜ神器の使い手を集めている? 最初は戦争再開のための戦力確保だと疑ったものだ」
「全くです。白龍皇だけでなく、
サーゼクスとミカエルの疑念の言葉に、アザゼルは心底いやそうな顔を見せる。
「研究のためだよ。あと神滅具の二人は成り行きだがな。・・・鳶雄の方は五代宗家のはぐれ者に
嫌なことを思い出した顔でそう告げるアザゼルに、非難の視線が殺到した。
表の人間を数百人も巻き込む大騒ぎを起こしていたなど、問題以外の何物でもない。
「何をやっているんだアザゼル」
「魔法少女がお仕置きしちゃうわよアザゼル♪」
「産まれる前から人生をやり直しなさいアザゼル」
「集中砲火で罵倒すんな! 責任取って何とかしたから安心しろ! 学生全員何とか救出したっつーの! そんなに俺の信用はないのかよ!?」
「「「その通り」」」
非常に辛辣だった。
「ったく。戦争起こす気なら、グレモリーとこのヴァンパイアやらそこのヴリトラにアドバイスなんてしねえっつーの。手土産にまとめてごっそり教えてやろうって腹積もりなんだぜ、俺は」
耳をかっぽじりながらそう返し、アザゼルはにやりと笑う。
「・・・つまりは和平のための餌ってやつだ。どうせ、お前らのそのつもりなんだろう?」
その言葉に、各陣営は少しの間が驚きの表情を浮かべる。
全く驚いていないのは、そもそも事情がよくわかっていないイッセー達三人組と、おそらくそのあたりのことを前もって言われていたヴァーリだけである。
だが、その言葉によってことの趨勢は決定した。いや、誰もが欲していた足掛かりが遂に生まれたのだ。
「ええ。天界は和平を結ぶことで意見を一致しています。・・・ですがいいのですか?」
「いいに決まってんだろうが。すでに二度の大戦がおこり三度目が続いている今の世界で、俺たちが戦争なんてやってたら表も裏もどっちも滅びかねないだろう?」
最後の確認をとるミカエルににやりと笑うアザゼル。
それに対して、ミカエルの苦笑を浮かべてうなづいた。
「ええ、天使の長である我々がいうのもなんですが、すでに原因である主も魔王もいないのです。・・・神の子を導くという大義よりも戦争を優先するなど愚かでしょう」
「それはよかった。我々悪魔も先に進むためには戦争を終わらせなくてはならない。・・・次の戦争をすれば、悪魔は滅ぶ」
真剣な表情でそう告げるサーゼクスに、アザゼルは静かにうなづいた。
「ああ。そんなことをすれば、三すくみは今度こそ共倒れ。そしてそれはほかの神話連中や人間界にも波紋を産む。俺らの喧嘩ごときのために、世界を一つダメにするなんてばからしいだろう?」
そう告げるアザゼルは部屋中を見渡し、そして両手を広げる。
「神も魔王もすでにくたばったが、しかし世界は数百年も存続している。髪がいなくても世界が回るってことの証明だ」
そして数分間の間、静かに彼らはお茶を楽しんだ。
グレイフィアの淹れる紅茶は茶葉も高級ならば腕も確か。茶の味そのものを嫌う人物でもなければ、うまいということに異存はなかった。
「ごちそうさまでした。まさに悪魔の誘惑とでも名付けるべきでしょうね」
「お褒めの言葉、ありがとうございます」
ミカエルがそうほめながら紅茶を飲み干し、そして視線をイッセーに向ける。
「さて赤龍帝。話し合いも大体が終わりましたし、貴方のお話をお聞きするべきでしょう」
その言葉に、全員の視線がイッセーに集まった。
「イッセー。お前何言ったんだ?」
「え、いや、言ったっていうか、聞きたかったっていうか・・・」
思わぬ展開に問いただす松田にイッセーは戸惑うが、民変えるがすぐに助け船を出した。
「先日アスカロンを預けるときに、聞きたいことがあると仰ったのですよ。あの時は時間がなかったのでお断りしましたが、会談も大体終わりましたのでちょうどいい機会と思ったのです」
その言葉に、イッセーは決意を決めたらしい。
真剣な表情を浮かべると、視線をアーシアに向ける。
「アーシア。・・・アーシアのこと、聞いてもいいかな?」
「・・・イッセーさんがよろしいのでしたらかまいません」
その言葉にうなづいて、イッセーは立ち上がるとミカエルと向き合った。
「・・・なんで、アーシアを追放したんですか?」
「そんなの言うまでもないことじゃないか」
その言葉に、レヴィアは速攻で口をはさんだ。
「異形社会に赤十字なんて概念はない。敵を治療したなんてその時点で問題行動だよ?」
「ある意味間違ってはいませんね。悪魔を治した・・・その事実は、今の我々にとって破滅を生み出しかねないのです」
ミカエルはさらに続ける。
聖書の神は、信仰の力を借りて奇跡を起こすためにシステムを作り上げた。そして、それは聖書の神が死んだ後も奇跡を起こすシステムとして機能している。
だが、熾天使たちが動かしている現状では、聖書の神が動かしていたころよりも大きく劣る機能しか持たない。それゆえに聖書で記されている時代に比べて奇跡の取りこぼしが生まれてしまうのだ。
そんな状況下で信仰に揺らぎが起きれば、天界や教会は大きく被害を受ける。
そう、主が作り出した力である神器が悪魔を治してしまうという事実は、非常に悪影響を与えてしまうのだ。
「・・・そんな彼女を教会においておくことはシステムに異常を発生してしまいます。そしてほかにも―」
「―主が死んでしまっていることを知っているものも、当然悪影響の元ってわけだ」
ミカエルの言葉を遮って、アザゼルがそうまとめる。
「そこのデュランダル使いが悪魔になったのは、それが原因だということなんだろ?」
「さすがはアザゼル総督。お見通しというわけか」
レヴィアが茶化すが、しかしその流れでもミカエルは苦渋の表情を崩さない。
「全ては我々セラフの失態。あなた方にはいくら詫びても足りないでしょう」
「・・・そうだよ、なんで真面目に信仰してるアーシアが―」
言いつのろうとしたイッセーの手を、アーシアが握って止める。
「やめてくださいイッセーさん。私は、ミカエル様のことをうらんでなどおりません」
「ええ、私もアーシアと同じです」
ゼノヴィアも立ち上がり、祈るように手を組みながらミカエルに視線を向ける。
二人とも、許しを通り越して感謝すら覚えている表情だった。
「イッセーさんにリアス部長、そしてほかにも大切な人ができました。私は今の立場に不幸なんて感じていません」
「私もそうです。何より、事情を聴けば当然の判断。より多くの信徒のために不利益をあえてかぶるなど信徒の本懐です」
「・・・レヴィア、そういうもんなの?」
「まあ、殉教は尊ばれるね」
納得できていないイッセーにレヴィアがフォローするようにそうまとめ、ミカエルは苦笑を浮かべながら頭を下げた。
「貴方方の寛大な心に、心からの感謝を」
「おいおいやめとけミカエル。逆に恐縮してるぜ?」
くっくっくと笑いながらアザゼルはミカエルを止め、そして視線がアーシア達に向けられる。
「第一、そこの嬢ちゃんたちが悪魔になったのは俺ら堕天使のはねっかえりが原因だろうが」
「・・・ああ、アーシアは堕天使に殺されそうになったし、ゼノヴィアが追放されたのもコカビエルのせいだろうが!! 俺も殺されかけたしな!!」
激昂するイッセーに対し、アザゼルはしかし揺るがない。
「レイナーレとかいうやつとコカビエルの件は悪かったが、お前の件については謝らん。当時のお前はあまりにも危険すぎたからな。第三次世界大戦のさなかに人間界で俺らのせいで大災害を起こすわけにはいかねえんだよ」
「おかげで俺は悪魔だよ」
「それが不満かい? ほかのところの転生悪魔はともかく、お前さんの待遇は抜群にいいと思うがねぇ?」
「そこ、おちょくらない」
からかうように告げるアザゼルに、レヴィアは鋭し視線を向ける。
「・・・組織に属してるわけでもない奴のために、わざわざ手を貸してやる義理はないかもしれないけど、それでも危うく死ぬところだったんだ。気づかなかった僕が言うのもなんだけど、謝れとは言わないからもう少し態度を変えてくれないかな?」
「お気に入りを殺されかけてご不満か、セーラ・レヴィアタン。・・・まあ、そういうことなら考えはあるさ」
レヴィアの軽く殺気が込められた忠告にもおどけながらかわし、アザゼルは一同を見渡した。
「そこのシスターも悪魔祓いも赤龍帝も、ついでにほかの連中もまとめて特大のプレゼントで返してやるから安心しな」
その言葉に一同は首をかしげるが、しかしアザゼルは話を変えた。
「・・・さて、それではそろそろ本格的な問題について思慮するべきだろう。ちょうどいいところに関係者もいるしな」
その視線が向かう先、織斑一夏と織斑千冬。
なぜ視線が集まるのか不思議に思いながら警戒する二人に、アザゼルは一枚の写真を見せた。
それはプリクラ写真だった。
写っているのはアザゼルと一人の女性だった。
すごく仲がよさそうだった。
そして、それは信じられないことだった。
「・・・た、束!?」
「ど、どういうことだ!?」
信じられない光景に二人は狼狽し、そしてアザゼルはにやりと笑った。
「ふっふっふ。何を隠そう、俺は束のマブダチだ!」
考えれば考えるほど、サーゼクスたちの難易度が高いことがよくわかる内容。ホントアンチ共はもう少し手加減をしてやれよ。
それはともかくISD×Dでは書けなかったことがようやく掛けました。