ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット   作:グレン×グレン

41 / 80
停止教室のヴァンパイア 8

 

 そのオーラは、小型の核爆発にも匹敵する莫大な威力だった。

 

 半径数百メートルの範囲の物体を粉々に粉砕することぐらいなら普通にできるだろう。

 

 上級悪魔でも直撃すればただでは済まない火力。出せるとするならば最上級クラスは必要な圧倒的な出力。

 

 それを、ヴァーリはぽんと物は試しとぶっ放した。

 

 敵味方入り乱れる乱戦でそんなことをすれば、間違いなく大被害が発生する。

 

 そう、発生する()()だった。

 

「・・・いや、だからね? 危ないからね?」

 

 やれやれと首を振りながら、レヴィアはそれを防ぎ切った。

 

 最上級悪魔クラスの一撃を、文字通り難なく防いだのだ。

 

「・・・面白い、面白いぞセーラ・レヴィアタン」

 

 そしてその隙を突いて腕を振り払ったヴァーリは、警戒のため後ろに下がりながらも興奮が隠せていなかった

 

「ああ、アザゼルや未成熟な赤龍帝にちょっかいをかけることもかんがえたが、しかしやめだ! もっとそそる相手がいるじゃないか!!」

 

 ヴァーリは距離をとると、両腕をレヴィアに向ける。

 

「さあ、ならばまず弱らせてみようか!!」

 

『DividDividDividDividDividDivid・・・!!!』

 

 恐ろしいほどの数の半減を起こす音が鳴り響き、レヴィアの体がわずかな輝きに包まれる。

 

 そしてそれがすべてなり終わると同時にヴァーリは魔力弾を発射するが―

 

「・・・甘い」

 

 レヴィアはそれをもってしてすら微動だにしていない。

 

 さすがにただ事ではないと思ったのか、ヴァーリは一瞬動きを詰める。

 

 その顔面に、蘭の砲撃が叩き込まれた。

 

「・・・貴様」

 

 鎧が砕け、わずかに血を流しながら、ヴァーリは鋭い視線でにらむ。

 

「誇りある白龍皇と魔王末裔の戦いを横から汚す気か?」

 

「弱体化だなんて姑息な手段を使っておきながら、なにを偉そうなことを言っているチンピラトカゲ」

 

 その言葉を想定しうる限り最も相手の神経を逆なでする罵倒の言葉をもって、レヴィアはたたき切った。

 

 ブリテンの白き龍。神や魔王すら殺しうるといわれる頂上存在を宿したものに対して、あまりにも嘲りすぎる言葉をあえてチョイスして叩き込む。

 

 むろん、結果は莫大だった。

 

『・・・ヴァーリ。遊びは無用だ』

 

「同感だ。少し手を抜きすぎたか」

 

 恐ろしく冷たい目でヴァーリはレヴィアをにらみ、そして莫大なオーラがレヴィアを包み込む。

 

「俺も本気を出してやろう。・・・そのまま半減されるがいい!!」

 

『Half Dimension!』

 

 殺意のこもった音が鳴り響き、そしてレヴィアの周囲が小さくなっていく。

 

「物体ごと半減させているというのか!?」

 

 木場はあまりの光景に驚愕する。

 

 同じ禁手だというのにこれだけの圧倒的性能差。これが神滅具の力だとでもいうのか。

 

「言っている場合か! このままではレヴィアが!」

 

 ゼノヴィアはすぐに冷静になると、ヴァーリを狙ってデュランダルを構える。

 

 先ほどまではすべての攻撃を難なくしのいできたレヴィアだが、これはさすがにまずい。

 

 それだけは何とかして阻止しようとゼノヴィアは玉砕特攻も覚悟のうえで突撃を仕掛けようとして―

 

「あの、ヴァーリ?」

 

 蘭が何というかおずおずと声をかけた。

 

「なんだ? 彼女の助命なら聞き入れない」

 

『あの小娘は我ら白龍皇を汚したのだ。相応の報いを受けてもらわねばならん』

 

 ヴァーリとアルビオンはよほど怒っているのかそう告げるが、蘭が聞きたいことはそこではなかった。

 

「・・・あんな攻撃で?」

 

 その言葉に、空気が凍り付いた。

 

 IS部隊も、魔法使いたちも、木場もゼノヴィア、ついでに最終決戦の真っ最中ともいえるアザゼルとカテレアも。

 

 全員が凍り付く中、レヴィアはポケットに手を入れるとチョコレートを取り出した。

 

「・・・あむ」

 

 そのまま自然体で包装をはがして口に入れると、五回ほど咀嚼。

 

 そして飲み込んで、ヴァーリに視線を向けた。

 

「・・・やめよう。僕らじゃ勝負にならない」

 

 その余裕の姿に、ヴァーリもアルビオンも愕然としていた。

 

『なんだ、その耐久力は! そんなもの、先代レヴィアタンが足下にすら届かぬほどのレベルだぞ!?』

 

「俺が、白龍皇が、傷一つ付けられないだと!?」

 

「あまり僕を舐めないでほしい。これは必要に伴って身に着けた物だ」

 

 レヴィアは腰に手を当てると、普段よく見せる態度をとる。

 

 すなわち、馬鹿な真似をした学友を然り導く説教の態勢だ。

 

「王とはすなわち太陽。民の心の闇を光で照らし慈しむ、癒しの星」

 

 王が健在でいてくれている。ただそれだけでも人の心は安心できる。

 

 階級主義にして血統主義が蔓延している悪魔の社会で、しかも真なる魔王レヴィアタンの末裔だというのならばなおさらだろう。

 

 其の影響力は莫大。ゆえに、もし彼女が斃れれば、その影響は混乱を産む。

 

「ゆえに死なない。ゆえに倒れない。ゆえに傷つかない。それこそが指導者の絶対責務。僕はそれを忠実に守っているに過ぎない。ぶっちゃけそれだけあれば十分だ」

 

 そういうと同時に、レヴィアは莫大な魔力を放出する。

 

 蛇の形をとったそれは、間違いなくレヴィアの全力だ。それらは一斉にヴァーリに襲い掛かり―

 

「・・・なんだ、それは?」

 

 しかし腕の一振りで粉砕された。

 

 ヴァーリが特別本気を出したわけではない。並の上級悪魔の攻撃なら簡単に弾き飛ばせるほど、ヴァーリの、白龍皇の鎧のスペックが高いだけだ。

 

 逆に言えば、並の上級悪魔ていどの力が彼女の全力だということになる。

 

「・・・レヴィアさん、訓練とか研究とかほとんど全部防御方面に割り振ってるんです。戦いになっても自分で勝つ気がなくって」

 

「それはそうだよ蘭ちゃん。戦の武功は眷属(武将)が上げればいい。戦場での王の役目はそこにいることで味方を鼓舞することで十分さ」

 

 だが、それでも流れ弾や強襲で殺される可能性は十分ある。

 

 本陣である以上増援は来るが、しかし間に合わない可能性は莫大だ。

 

 だから死なない。とにかく耐える。

 

 レヴィア・聖羅の、セーラ・レヴィアタンの在り方とはとにかくそれだ。

 

 ゆえに、少なくともあくまでその一点において負ける気は毛頭ない。

 

 最強ではないが無敵の悪魔。それこそがセーラ・レヴィアタンの戦いだった。

 

「おうおう、なんか面白いことになってんじゃねえか」

 

「無事なようだなレヴィア。とりあえず有象無象は撤退させたが」

 

 なぜか金色の鎧に包まれたアザゼルと、特に損傷することなくISを健在させている千冬が、そんなレヴィアをカバーするかのように並び立つ。

 

 そして、気づけば停止結界は解除され、イッセー達も近くに走ってきていた。

 

「お、おい! どうなってるんですかレヴィアさん! なんでヴァーリと戦ってるの!?」

 

「ややこしいから一言で言うよ。ヴァーリが裏切り者、以上」

 

 極限まで必要最低限のことだけを伝えながら、レヴィアはヴァーリをにらみつける。

 

「詰みだヴァーリ。・・・いや、ヴァーリ・ルシファー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・は?」

 

 イッセーは、何がどういうことかわからず首を傾げた。

 

 ルシファーといえば、サーゼクスが担当している魔王の称号だ。

 

 それが何でヴァーリに対してつけられているのかがわからない。

 

 だが、イッセーはなんだかんだで馬鹿ではない。すぐに頭を回転させて状況を把握しようとする。

 

 そもそもルシファーというのは元の悪魔ルシファーがいたからある名前だ。

 

 つまり、もともとの悪魔ルシファーがいることになる。

 

 そして、悪魔は子供を作ることができる。

 

 つまり―

 

「そ、そいつは先代魔王様の子供か何かなのか!?」

 

「いい線ついてるな赤龍帝。ああ、そいつは初代ルシファーの曾孫だ。ルシファーの孫と人間の間に生まれた結果誕生した、魔王と神滅具のハイブリットさ」

 

 なぜかアザゼルが自慢げにそう答える。

 

「断言しよう。あいつは将来過去現代未来すべてにおいて最強の白龍皇になる」

 

「なら、そうなる前に倒さないと手が付けられなくなるね」

 

 レヴィアはパチンと指を鳴らすと、すぐ隣に眷属が並び立った。

 

「事情はサーゼクスさまから聞いたぜ、レヴィア」

 

「レヴィアさん! ぶっちゃけ怖いんでこれ終わったらご褒美お願いします!!」

 

「ああ、だが俺の眼鏡がうなる時だ!」

 

 状況をいまだ完全に飲み込めたわけではないが、しかし一夏も松田も元浜も戦闘準備だけは万全だった。

 

「面白い。・・・だが、このタイミングでは俺は赤龍帝とやりたいと思うんだが・・・」

 

「馬鹿馬鹿しい。・・・なんで和平会談を台無しに仕掛けたトカゲの要望を聞かなきゃいけないのさ。タコ殴りオンリーに決まってるじゃないか」

 

 再びトカゲ扱いしながら、レヴィアは鋭い視線をヴァーリに向ける。

 

「僕のかわいいイッセーくんに、そんなチート白龍皇ぶつけるわけないだろう? チンピラが正々堂々なんて百年早い」

 

「レヴィアさん。マジギレしてるんじゃないか?」

 

「っていうか白龍皇って確か超すごいよな? チンピラ扱いって・・・」

 

「先輩たち、いまは黙っててください」

 

 松田と元浜が後ろで少し引くほどのキレ具合だが、しかし蘭からしてみれば納得だった。

 

 自身の魔王としての影響力を常に考慮している生き方を選んだレヴィアからしてみれば、まったくそんなものを気にせずに思うがままに力をふるうヴァーリは好ましいものではないだろう。

 

 それが、お気に入りいの一人であるイッセーを狙っているとなれば相当に機嫌が悪くなるはずだ。

 

「・・・ふむ、しかしまあそれも仕方がない。あまりに残念だ」

 

「おい、お前ひどくない? 俺だって一生懸命生きてるんだよ!?」

 

 ものすごく哀れな視点で見られ思わずイッセーは大声を張り上げるが、しかしヴァーリは心底哀れんだ。

 

「先祖に何ら異能にかかわる者のいない、奇跡的に転生悪魔になっただけのただの高校生が赤龍帝。かくや、人の極致を併せ持つ魔王の末裔にして、堕天使総督の薫陶を受けた白龍皇。なんだ、この笑えるぐらいの圧倒的な差は」

 

 ヴァーリは心から嘆いていた。

 

 闘争を愛する存在として、運命の宿敵の存在は彼の心に大きな割合を示していた。

 

 それがふたを開けてみれば、あまりにも隔絶したさがありすぎる。

 

 少なくともいま戦えば決着がどうなるかなど自明の理だ。これではあまりにもドラマがない。

 

 そこで、ヴァーリは一つあることを思いついた。

 

「そうだ。ドラマチックな過去を一つ増やしてみるというのはどうだろうか?」

 

「・・・何のつもりだ、ヴァーリ」

 

 レヴィアはいつでも攻撃を放てるように準備しながら、しかし念のため聞いてみる。

 

 それが、よくなかった。

 

「・・・俺が彼の親を殺そう。俺のような頂上の存在に肉親を殺され復讐に走れば、少しは見所が増えそうに―」

 

 その言葉はそれ以上続かなかった。

 

 否、続ける余裕が全く存在しなかった。

 

 とっさに歯をかみ合わせて一撃を防ぐ。そうでなければのどから刃が突き通っていただろう。

 

「さっきから黙って聞いていれば、耳が腐るようなことばかりを言ってくれる。・・・もういい、貴様はここで死ね」

 

 刃物のごとき冷徹な敵意を秘め、織斑千冬が刃をふるう。

 

 それを見て、ヴァーリはにやりと笑うと距離をとる。

 

「面白い。怒りの感情はいい。強さに直結するからね。誰かのために戦える義憤なんてもう最高じゃないか!!」

 

 言うなり、ヴァーリは魔力弾を一斉に放つ。

 

 対IS戦術の基本に忠実な攻撃。それを魔王クラスが放てば、それこそ一瞬で勝負はつく。

 

 ・・・しかし、そんな常識など人類最強(ブリュンヒルデ)には通じない。

 

 外野ですら気づかないであろう一瞬のわずかな隙間を見つけ、その周りの魔力弾を破壊しながら、即座に間合いを詰め治す。

 

 だが、白龍皇の力の本質はそこではない。

 

「甘いぞ、織斑千冬」

 

 ヴァーリはためらうことなく腕をかざす。

 

 白龍皇を突破するというのであれば、この半減を乗り越えてからでは話にならない。

 

 セーラ・レヴィアタンがいなければ停止するほかなかった異能をろくに持たぬ身で、果たしてどうするというのか?

 

 そんな憐みと一抹の期待を胸に半減が発動し―

 

「どこを見ている?」

 

 声は、彼の右隣りで聞こえた。

 

 疑念を浮かべながら振り返るが、それは悪手。

 

 一瞬の閃光とともに、鎧が切り裂かれてヴァーリの胸から血が噴き出す。

 

 ダメージこそ軽症だが、しかしただの霊刀で神滅具の鎧を突破するなど、偉業以外の何物でもない。

 

 だが、ヴァーリに驚愕はそこにはなかった。

 

「・・・バカな、半減が発動していない!?」

 

「愚か者が、その手の手品で私を何度も止められると思うな」

 

 愚鈍な生徒を見るかのように、戦闘を繰り広げながら千冬は言葉を重ねる。

 

「どれだけ貴様の半減の力が強大であると、それはISの第三世代武装と大して変わらん。すなわち、相手を認識して初めて効果を発揮する」

 

 その会話の合間に半減を再び放とうとするが結果は同じ。

 

 一瞬で視界から消えた千冬が、再びまったく別の咆哮から攻撃を仕掛けてくる。

 

「未熟者のその手の能力の発動など、眼を見ればわかる。タイミングさえ分かればあとは瞬時加速(イグニッション・ブースト)で回避して、そのまま攻撃を加えればいいだけのことだ」

 

「・・・ハハハハハ! やってくれるじゃないか織斑千冬! コカビエルを倒すだけのことはある!!」

 

 その圧倒的な戦闘センスに、ヴァーリは心から歓喜した。

 

 聞けば、織斑千冬は古流武術の経験があると聞く。その手の武術には光彩の色で相手の動きを推測する技法があると聞くが、つまりはそれなのだろう。

 

 白と白が高速で打ち合いながら、そして必殺の一撃を狙いすます。

 

 ああ、これはまた喜ばしい出来事だ。

 

 何ら異能とかかわっていないただの人間が、霊刀一つで自分と渡り合うことなど奇跡としか言いようがない。

 

 自分のような存在こそ奇跡と思ったことはあるが、しかし彼女の別の意味で奇跡のような存在だ。

 

「素晴らしいぞ織斑千冬! さあ、この勝負をもっと楽しもう!」

 

「下らん。貴様のような外道との殺し合いに歓喜するようでは、一夏に合わせる顔がない」

 

 歓喜を込めた心からのことばだったが、千冬は冷たい視線をもって切って捨てる。

 

「それに、レヴィアも行っただろう? 貴様はよってたかって集団でボコると」

 

「!?」

 

 気づけば、後ろから誰かに取りつかれていた。

 

「・・・なあ、俺の母さんも父さんも普通の人間なんだよ」

 

 怒りで声を震わせながら、赤い龍の鎧を身にまとってイッセーはヴァーリに告げる。

 

「それを、お前の勝手な都合で殺されてたまるか!!」

 

 そして、全力の左拳が叩き込まれた。




光り輝かんばかりの防御力特化型。それがレヴィア。

ホーリー編で出てきたステータスを使って例えると、王の素質とテクニックはともかくそれ以外は最下位争いをするのがレヴィアですが、しかしディフェンスのステータスがあれば他を比較にすることすらおこがましいほどの耐久力を発揮するのがレヴィア。とにかく耐久力だけは同年代で追いつけるものなどいません。普通に魔王クラスを超えています。

反面攻撃力などは間違いなく低い。とにかく武将としてではなく戦意向上のための象徴としての側面を追求したのがレヴィアの強さです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。