ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット   作:グレン×グレン

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停止教室のヴァンパイア 9

 

 ヴァーリ・ルシファーはこの瞬間、想定以上に敵が強大であることを理解した。

 

 数か月前までただの学生でしかない兵藤一誠が、しかしここまで的確にこちらの隙を突くなどとは思いもしなかったのだから。

 

 しかも、倍加を翼にかけられた結果半減の機能が一時的にマヒするというおまけ付き。これは完全に想定外だ。

 

「しかも、これは龍殺し・・・!」

 

「ああ! ミカエルさんにもらったアスカロンだ!!」

 

 そのままさらに連続で打撃を叩き込まれ、ヴァーリの鎧は半壊する。

 

 そして、そのタイミングを逃す織斑千冬でもない。

 

「悪いが貴様は危険すぎる。・・・ここで終われ!」

 

 打撃を連続でくらい生まれた隙を容赦なく突き、千冬はヴァーリの眼前に到達した。

 

 そして何の躊躇もなく斬撃が走る。

 

 一瞬でヴァーリの両腕は切り裂かれ、そして鮮血が舞う。

 

 切り飛ばされはしなかったものの、しかしこれで当分の間腕を使うことは不可能だった。

 

 こうなればヴァーリはもはやどうすることもできず、そしてイッセーもそれを逃がさない。

 

「終わりだ、ヴァーリ!!」

 

 アスカロンの切っ先を伸ばし、そして全力で突き出す。

 

「まさか、この俺が・・・などというと思ったか?」

 

 その瞬間、莫大な魔力がカウンターで放たれる。

 

 一撃で上級悪魔すら殺しうるだけの破壊力が放たれ、しかしイッセーには届かない。

 

「・・・腕を切ったぐらいでは倒れてはくれんか」

 

「す、すいません、首が…首が」

 

 とっさにイッセーを引っ張って千冬が急速に移動することでそれは避けられた。

 

 ちなみにイッセーがGに耐えられず首を痛めているがそれはまた別の話。

 

「両腕を切りさいた程度で、魔王を倒せると思っては困るぞ、ブリュンヒルデ」

 

「これだから悪魔というのは面倒だ。腕が使えなくても戦闘が可能とか化け物だな」

 

 霊刀の切っ先を油断なく向けながら、千冬はしかし状況がややこしいことに気が付いた。

 

 すでにヴァーリはかなり距離をとっている。これでは瞬時加速を使ってもすぐに気づかれるだろう。

 

 そして半減を使われて弱体化して終わり。ISの機動力が大幅に低下すれば、千冬ではヴァーリに太刀打ちできない。

 

「両腕は使えないが十分なハンデだ。・・・さあ、こんどはどうする兵藤一誠?」

 

「んの野郎・・・っ!」

 

 イッセーは歯噛みしながら頭を回転させる。

 

 無効も相当の痛手を負ったが、しかしそれ以上に警戒心を強くしてしまった。

 

 千冬の対策は取られ、アスカロンも警戒されている。

 

 白龍皇の光翼がバグを起こしている今のうちに何とか状況を打開しなくては―

 

「・・・あ」

 

 その時、視界に白龍皇の宝玉が落ちていることに気が付いた。

 

 もし、これを取り込むことができればと考え―

 

「・・・駄目だな」

 

 レヴィアの言葉を思い出して、それを押しとどめる。

 

『ああそうだな。そんなことをすれば、間違いなくお前の寿命は縮まるぞ』

 

 ドライグの言う通りなら駄目だ。そんなことになればリアスが悲しむ。

 

 だが、ならどうするか?

 

 ・・・決まっている。

 

「誰か、助けて下さぁああああい!!」

 

 困ったときは誰かの助けを求めればいい。当たり前のことだ。

 

 そして―

 

「その言葉を待っていたよ、イッセーくん!」

 

 ―レヴィア・聖羅はそれに応えてくれる女神なのだ。悪魔だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レヴィアは最初からこの戦いを千冬とイッセーに任せるつもりなど毛頭なかった。

 

 当たり前だ。チンピラの好き勝手にさせるほど、レヴィア・聖羅は落ちぶれてはいない。

 

 だが、それにしても何らかの形で隙を突く必要があった。

 

 そして、それはつけた。

 

「一夏君まかせた!!」

 

「ああ、任せろ!!」

 

 千冬も一夏も使用しているISは同型機。

 

 日本政府試作実験機不知火は、現行技術で第一世代機を作ればどこまで行けるかをテーマに開発された技術試験機。

 

 ゆえに拡張性や多用途性では大きく劣るが、基本性能で太刀打ちできる機体は現時点で存在しない。

 

 ゆえに、その瞬時加速は超音速。

 

 そして警戒心を強めたとはいえヴァーリの意識は千冬とイッセーに向いている。

 

 その隙を突くには十分すぎた。

 

 コンマ1秒の時間すらかからず、一夏とその背中に張り付いたレヴィアはヴァーリに組み付く。

 

 直後、レヴィアは結界をヴァーリと自分を囲むように展開して拘束する。

 

「セーラ・レヴィアタン! お前はまた邪魔をするか!」

 

「チンピラの好きにさせるほど落ちぶれてはいない!!」

 

 至近距離から半減と魔力攻撃を叩き込まれるが、レヴィアは決して揺らがない。

 

『二天龍の対決を邪魔するとは無粋な!』

 

「三大勢力の戦争を邪魔したトカゲに言われたくないね」

 

 アルビオンの怒りすら適当に流し、そしてレヴィアは結界を一部だけ解除する。

 

「さあ蘭ちゃん! 思う存分ぶっ放しちゃいなさい!!」

 

「わかりました!!」

 

 すでにその方向に波乱が待機し、そして大砲を至近距離で構えている。

 

「無駄だ! その火力では俺は倒せない」

 

 すでに一度攻撃を受けているヴァーリだからこそ断言できる。

 

 五反田蘭の神器の火力は莫大だが、しかしそれにも限度がある。

 

 彼女の火力では白龍皇の鎧を貫けない。それは先ほど実証された。

 

「甘く見られたものだ。ならば覇龍(ジャガーノート・ドライブ)で結界ごと君を粉砕して―」

 

「させねえよ」

 

 ヴァーリの言葉を、イッセーの言葉が遮った。

 

 その位置は蘭の真後ろ。そしてすでにその左腕は蘭の神器へと触れていた。

 

 赤龍帝の力は倍加と譲渡。自らの力を倍加し続け、そしてその効果を他者へと譲渡する。

 

 ならば、この中でも莫大な火力の持ち主に譲渡すればどうなるか。

 

「・・・我、目覚めるは―」

 

「それは―」

 

「―遅い!!」

 

 ヴァーリの詠唱より早く、その一撃が結界ごと彼を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 破壊の奔流の直撃をもろとも受ける形になったレヴィアだが、しかし彼女は傷だらけだが致命傷には程遠かった。

 

「さすがに、ちょっと痛いかな・・・?」

 

 激痛のあまり涙すら浮かべているが、しかしそんなもので済んでいることがどれだけ異常かなどわかりきっている。

 

 なにせ、同じく直撃を受けたヴァーリは動くことすらできずに、禁手を解除して倒れているのだから。

 

「・・・一夏くん、剣を貸してくれ」

 

「え? ・・・ああ」

 

 一夏から剣を借りたレヴィアは、ヴァーリのすぐ近くへと近づくとそのまま剣を振り上げる。

 

「悪いが君は危険すぎる。・・・これで終わりだ」

 

 そして躊躇することなく剣を振り下ろし―

 

「おぉっと。そうはいかねぇぜ?」

 

 ―その真上から現れた男の蹴りを喰らって吹き飛ばされた。

 

 何より驚愕するべきは、レヴィアにその攻撃が()()()()という事実。

 

 白龍皇の全力すら蚊に刺された程度で済ませたレヴィアの耐久力を突破した事実に、何よりレヴィアが驚愕した。

 

「・・・なんだって?」

 

「受け身ぐらいとれ!!」

 

 其のまま地面に激突しかけたレヴィアを、真っ先に我に返った千冬がかっさらうようにしてすくいあげる。

 

 そして千冬は切っ先を、新たな敵手に向けて突き付けた。

 

「・・・何者だ、貴様!」

 

 そこにいるのは、まるで中国の英雄譚からそのまま引っ張ってきたかのような姿の男。

 

 そんな冗談みたいな存在だが、しかしここは科学の粋持つ人界の戦いの場ではない。

 

 何より鉄壁のレヴィアにダメージを入れたという事実そのものが、或る意味でヴァーリを超えるほどの脅威であることを物語っていた。

 

「あ? 誰かと思えば美猴じゃねえか。お前さんも禍の団に入ったのかよ」

 

「よぉ総督殿! ま、俺っちは自由気ままに生きたいんでね」

 

「・・・あの、敵ですよね?」

 

 旧知の仲のごとく挨拶を交わすアザゼルと男に、蘭はツッコミを入れる。

 

「っていうかあいつ誰だ? レヴィアにダメージ入れるだなんてどんな化け物だよ」

 

 一夏は剣を構えながら警戒を続けるが、しかし男は千党体制をとらない。

 

 厳密にいえば警戒はしているが、積極的に戦闘を行う意志は見受けられなかった。

 

「そいつは美猴。闘戦勝仏の末裔だよ」

 

「「・・・とーせんしょーぶつ?」」

 

 きいたことがない名前に、一夏とイッセーは同時に首を傾げた。

 

「西遊記の孫悟空の仏としての名前だよ」

 

「この業界にいるなら、それ位は知っておけ一夏」

 

 レヴィアと千冬がため息をついて補足をする中、美猴はヴァーリに肩を貸して起き上がらせた。

 

「おいおいヴァーリ。お前さんがやられるとかすごいことだなぁ、オイ」

 

「まあな。赤龍帝も存外できるし、これは楽しめそうだ」

 

 ぼろぼろになりながらも、ヴァーリはとても楽しそうに笑みを浮かべる。

 

「そっか! 今度は俺っちとも戦ってくれよ赤龍帝! ま、いまは逃げるけどな」

 

 そういうなり、美候は棍を呼び出すと地面に突き立てる。

 

 次の瞬間、二人の足元に黒い闇が広がるとずぶずぶと沈んでいく。

 

「逃げる気か!」

 

「ああ、だがその前にやることがあるな」

 

 そういうと、ヴァーリは魔力を展開すると魔法陣を呼び出す。

 

「頼まれていたことを忘れていた。さあ、宣戦布告を受け取るといい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まさかヴァーリを下すとは。やってくれるな、セーラ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法陣から現れるのは一人の男。

 

 オレンジ色の長い長髪を持った一人の美青年。

 

 そして、その姿を見たレヴィアは目を見開いて驚愕する。

 

「なぜ、なぜあなたがここにいる?」

 

「それは、私が人類統一同盟の一員だからだよ」

 

 驚愕するレヴィアにこともなげに答える男は、アザゼルを見ると優雅に一礼する。

 

「お初にお目にかかるアザゼル総督。私は人類統一同盟第一実験部隊ヒーローズ隊長にして技術顧問を務める、シャロッコ・ベルゼブブだ」

 

 …ここに、新たな戦いの幕開けが始まろうとしていた。

 




ヴァーリ、首の皮一枚で助かる。美候には当分頭が上がらないでしょう。

流石のレヴィアも仙術までは対応しきれなかった。レアスキルすぎるので対抗するための特訓相手にも困る類ですので仕方がないですが、其のため美候や黒歌は彼女の天敵です。









そして、ついに登場人類統一同盟の指揮官。

あと二話ぐらいで終わりますです、ハイ。
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