ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット   作:グレン×グレン

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ハードモードである以上、当然強くならねばならないわけで―


冥界合宿のヘルキャット 4 特訓開始、そして強くなれ

 

「大変だな、お前ら」

 

 夜、グレモリーの城でアザゼルはそう感想を告げた。

 

「いや、そんな簡単に言わないでくださいよ!」

 

 もちろんイッセーはそう突っ込むしかない。

 

 なにせ、悪魔になって半年もたってないのに政争のど真ん中に放り込まれたのだ。

 

 しかも上級悪魔になってハーレム王になることが夢のイッセーにとって、転生悪魔の権利に改革を行うと言い切ったネバンの発言は寝耳に水だ。

 

 彼女の政策が実現すれば、少なくともイッセーがハーレムを築く可能性は大きく下がる。

 

 だからこそ、イッセーは声を張り上げた。

 

「どうにかなんないんですか、アザゼル先生!!」

 

「そうですよ先生!!」

 

「俺たちのハーレムが台無しに、台無しに!!」

 

 松田と元浜も大声を張り上げるが、しかしアザゼルはいやそうな顔をした。

 

「無茶言うなよ。他勢力の政治にそこまで首突っ込めるわけねえだろうが。……ま、俺たち堕天使の首脳陣はコカビエルが抜けて一枚岩だがな」

 

「「「クッソうらやましい!!」」」

 

 三人同時に大声を張り上げた。

 

 確かにそれはうらやましい。

 

「ま、俺らのところも中堅どころは怪しい輩が何人かいるからな。天界も、悪魔祓いの連中が不満を募らせてるっていうしいろいろ大変ではある」

 

「そうなんですか?」

 

 リアスのフォローのためにレヴィアが城までついてきたため当然ついてきている一夏もそう聞く。

 

「これから戦争が起きるかもしれないってのに、なんでそんなことしてるんだろうな」

 

「そんなもんだよ。ま、ネバンの奴は馬鹿じゃねえから最低限の足並みはそろえてくれるだろうさ」

 

 アザゼルはそういいながら酒を飲むが、しかしかなり気になる展開ではある。

 

 展開ではあるのだが―

 

「あら、蘭ちゃんは胸が大きくなったのかしら?」

 

「あ、朱乃さん!? つかまないでください!」

 

「あらあら、同じ男を愛する者同士仲良くしましょう? それに揉んだら大きくなるっていいますし、一夏くんも喜びますわよ」

 

「一夏さんは胸の大きさでひいきするような男じゃないで―ひゃうん!?」

 

 展開だが―

 

「アーシア。今私たちは良いことを聞いた。リアス部長に負けない大きさになるためにも揉み合おうではないか」

 

「ゼノヴィアさん? あの、できれば私はイッセーさんに・・・あん!」

 

「リアスちゃん! こうなれば僕たちも同じようにもみ合いたいと思わないへぶぁ!?」

 

「貴女は別の目的が見え見えなのよ!」

 

 ―いや、さいごは別にいい。

 

 とりあえず集中している余裕がないのである。

 

「「「「「………」」」」」

 

 木場と一夏は雑念を飛ばすように体を洗い始めるが、しかしイッセーたち三馬鹿は透視を会得せんといわんばかりの勢いで男湯と女湯を隔たる壁を見据えていた。

 

 そして、そこにアザゼルがニヤニヤしながら近づいていく。

 

「ところで三人とも、お前ら胸をもんだことはあるか?」

 

「はい! レヴィアさんとリアス部長やアーシアの胸をもみっと!!」

 

「お前なんで三人も!? お、俺だってレヴィアさんのちっぱいぐらいなら!!」

 

「お、俺もレヴィアさんだけですが……」

 

 イッセーに対して嫉妬の視線が集まるが、しかしそれはともかく話は進む。

 

 ちなみに一夏は蘭の胸も揉んだことはあるがそれは別の話。

 

「じゃあ、女の乳首をつついたことは?」

 

「……その発想はなかった!?」

 

 なぜかなどという必要は全くないが、レヴィアの愕然とした声が響いた。

 

「レヴィアの反応だとこりゃなさそうだな。お前ら乳首はポチっとつつくんじゃなくてズムっとつつくんだぞ? 胸が指に埋没していく様は圧巻だぜ?」

 

「……レヴィアさんの胸はそこまで沈みません」

 

「……リアス先輩の胸は沈むだろうな。見てみたいな、ホント」

 

 松田と元浜は沈み込むが、しかし論点はそこではない。

 

「ち、乳首は玄関のブザーじゃないですよ!」

 

「いや、あれはある意味ブザーだ。押すとなるんだよ、いやーんって」

 

「……蘭ちゃん、ぽグヘァ!?」

 

「押させませんよ!! 松田先輩と元浜先輩で満足してください!! それに千冬さんの方があるでしょう!?」

 

「すでに三十回挑んで全部切り捨てられたよ!!」

 

「じゃああきらめてください!!」

 

 女湯でどんどん漫才が繰り広げられているが、しかし誰も気にしない。

 

 そんなもん話をした時点で想定の範囲内なのがレヴィアクオリティなのである。

 

「っていうかイッセー。そもそも覗きをする時点でまだまだ二流だ」

 

「なんですって!? じゃあ一流だとどんな領域に!?」

 

 そんな言葉に愕然とするイッセーの肩を、アザゼルはつかんだ。

 

「こうだ。男なら混浴だぞイッセー!!」

 

 そしてイッセーはアザゼルに分投げられ―

 

「来ないでくださぁああああい!!!」

 

「ぎゃぁああああああああああ!!」

 

 壁を乗り越えるより先に、それごと撃ち抜いた蘭の砲撃で吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして一夜明け、レヴィア達もまたアザゼルの指導を受けることになる。

 

「さて、それじゃあまずは誰からきく?」

 

「あ、じゃあ僕からは要望を一つ」

 

 真っ先にレヴィアは名乗りを上げる。

 

「防戦特化型でお願いします!!」

 

「お前、徹底してるなぁ」

 

 一周回って関心する類のあきれを見せたアザゼルだが、想定の範囲内なのかすぐに表情を改める。

 

「お前は確かに頑丈だ。根本的に戦闘での役目を鼓舞のための象徴として割り切っているがゆえにシンプルで隙が無い。生存能力ならすでに魔王どころか半端な神すら超えるだろう」

 

 割とべた褒めだが、しかしアザゼルは首を振る。

 

「だが、あそこまでヴァーリを怒らせた以上それだけでは無理だ。次戦うときは覇龍(ジャガーノート・ドライブ)を使ってくるだろうから、お前でもやばい」

 

「む、確かに主神クラスの力を出されたらさすがに厳しいね」

 

 レヴィアもさすがにそこまでおごり高ぶってはいないのか苦い顔をする。

 

「だから、俺が興味本位の実験用に作った過負荷空間に放り込んだうえで、和平で鬱憤がたまっている堕天使の集中攻撃を受けてもらう。やばそうになったら監視役に止めさせるが、少しずつ伸ばして頑丈さを伸ばしていけ」

 

 普通なら顔が青くなりそうな訓練内容だった。少なくとも、はたから聞いているイッセー達は顔が青くなっている。

 

 だがレヴィアは動じない。それどころか笑みすら浮かべていた。

 

 マゾなわけでは決してない。それを乗り越えられるという自信が生み出す笑みだった。

 

「了解。それで一夏くんたちは?」

 

「ああ、続けていくぞ」

 

 そして、アザゼルは視線を松田と元浜に向ける。

 

「お前らは手放しで絶賛してやる」

 

『え?』

 

 想定外の誉め言葉に、二人はもちろん全員驚いた。

 

 はっきり言ってこの場の中で一番戦術的価値の低い二人だが、しかしアザゼルは心の底から褒めていた。

 

「神器もなく、異能の関係者でもなく、しかも経験も浅いくせにここまで戦えれば褒めるしかねえよ。お前らはグレモリーの兵士たちに一から戦闘訓練を受ければいい。それだけできっと伸びるだろうさ」

 

 おざなりではなく心底本気でそう言ってから、続いてアザゼルは蘭に視線を向ける。

 

 その顔は少し上気しているが、しかしそれは性的興奮ではない。

 

「さあ、お前は実に興味の対象だ」

 

「え? は、はい・・・」

 

 変態を投入されかけた恨みもあるためいろいろと警戒してる蘭だが、しかしアザゼルは素直に評価する。

 

「普通そういうのにはデメリットがいくつもあるんだが、特に性質が近いわけでもない神器三つを適合させるとはやるじゃねえか。…よし、お前は始原の人間(アダム・ササピエンス)を徹底的に鍛えさせてやる。グリゴリの研究所行だ」

 

「……あの、調子が悪くなってきたんで帰っても」

 

「安心しろ。織斑にも来てもらう予定だからよ」

 

「頑張ります!」

 

 乙女心巧みに操る交渉センスは、下手な悪魔より悪魔らしかった。

 

 そして、一夏は一夏で警戒しながら話を聞く。

 

「単刀直入に言おう。レヴィアの眷属で一番普通なのはお前だ」

 

 ……その言葉に、一夏は黙って受け止めた。

 

「戦闘技術は年齢とは不釣り合いなぐらいに習得している。センスもいい。神器も強力な部類だ。……それだけだ」

 

 そう、それだけだ。

 

 幼少期から古流戦闘術を学び、そして相性のいい神器を保有している一夏は、間違いなく年齢不相応の強さを持っている。ライザーと渡り合える下級悪魔などそうはいないだろう。

 

 だが、裏を返せば特筆すべき強さを発揮しているわけではない。

 

 神器を移植して完全に適合する蘭や、ハーレム作りたさに急激に戦闘能力をのばしてきた松田や元浜に比べれは、その戦闘能力の成長速度は驚くに値するものではない。

 

「普通に強い。言葉にすれば誉め言葉だが、しかしそれだけだ。普通の強さの範疇内で、これからこいつらについていくのは困難だろう」

 

「わかってます。……だから、お願いします」

 

 一夏は真剣に頭を下げる。

 

 古い価値観だの時代錯誤だの言われているのは承知の上だ。

 

 それでも、一夏は男として女である蘭やレヴィアを守りたい。少なくとも守られるだけなのは死んでもごめんだ。

 

「俺を、強くしてください」

 

「ああ、だからとりあえず用意してある。……お前の場合は神器の強化だな」

 

「今のままでも織斑の神器は強力ですよね? ただの剣が木場の魔剣創造よりの頑丈になるってすごいことじゃ?」

 

 イッセーは素直にそうほめるが、アザゼルは静かに首を振った。

 

「それだけじゃあこれからの戦いにはついていけそうにない。……剣豪の腕(アーム・ザ・リッパー)は能力の拡張性が非常に大きい」

 

 そう告げると、アザゼルはにやりと笑った。

 

「だが、グリゴリの施設で研究しながら強化していくぞ。ついでに武闘派連中見繕ってやるから、そいつらのうっぷん晴らしにも付き合ってやってくれ」

 

 その後、アザゼルはグレモリー眷属の強化の方へお話を勧めた。

 

 中には朱乃や小猫に嫌っている力を使えなどというなかなかきつい話が出てきたが、しかし強くなるという観点においては間違ったことは何一つ言っていない。

 

 そして、最後にイッセーの番になった。

 

「さて、それではイッセーの番だが……来たな」

 

 そういいながらアザゼルが外に目を向けると、イッセーは目を見開いた。

 

 そこには、巨大なドラゴンが飛んできていた。

 

 ……五大龍王と呼ばれる存在がいる。

 

 これは、邪龍と二天龍を除いた強大なドラゴンのことだが、もともとは六大龍王だった。

 

 聖書にしるされしドラゴンが、転生悪魔となったことで除名されたからだ。

 

 それが目の前にいるドラゴン、タンニーンだった。

 

「まったく、堕天使の総督がグレモリーの領内で好き勝手とは、どんな時代だ」

 

「いい時代だろ? ……つーわけで、お前の師匠はこいつだぜ、イッセー」

 

「え、え、ええええええ!?」

 

 なんでも、ドラゴンの特訓とは常に実戦形式らしい。

 

 とにかく禁手に至るための体づくりを行い、そして可能ならば禁手に至ることがイッセーの命題だった。

 

「頑張れイッセー君。もし禁手になれたらご褒美を考え痛い痛い痛い痛いよリアスちゃん!」

 

「人の眷属の貞操を何だと思っているのかしら? これ以上、イッセーを貴方色に染め上げたりなんてしないんだからね!」

 

 途中で漫才が発生したが、結局イッセーは連れ去られていった。

 

 どなどなどーなどーなーという音楽が聞こえてきそうだったが、まあ死なないだろうとは思うので皆気にしないことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日、それぞれの人たちは努力を重ねてきた。

 

 あるものは、独自の発想でさらなる修練を重ね、或る者は愚直に言われたことを突き詰めようとし、またある者は受け入れることができずに独自に動いていた。

 

 

 そしてそんな中、レヴィアは山道を走っていた。

 

 飛んだ方が早いが、トレーニングを行う必要もあるので走って特訓もした方がいいと判断したのだ。

 

 息を切らして汗を流しながら走る中、レヴィアは目的地に到着する。

 

 そこは、端的に言って地獄だった。いや冥界は地獄の別称だが。

 

「ぎゃぁああああああああああ!?」

 

「どうした? その程度では白龍皇と戦ったら死ぬぞ?」

 

「いや、あんな奴と一人で戦うわけないからぁああああ!!」

 

 悲鳴を上げながら巨大なドラゴンに追いかけまわされるイッセーの姿に、レヴィアは軽くめまいがした。

 

 さすがのレヴィアもダメージを受ける、最上級悪魔タンニーンの火球。

 

 いくら手加減されているとはいえ、そんなものを連発されている状況下でよく生きていると感心すらしてくる。

 

 今時ハードトレーニングなど逆効果といわれているのに、ハード通り越してヘルといわんばかりの過酷さに、憐みを覚えて涙を浮かべ始めていた。

 

「うう、イッセーくん頑張れ」

 

「いや、助けてください!!」

 

 思わずイッセーはツッコミを入れた。

 

「む? 誰かと思えばレヴィア姫か」

 

「やあ、タンニーン。数日ぶりだね」

 

 そういうと、レヴィアは担いできた荷物を掲げた。

 

 魔力を最大限に生かしたとはいえ、ちょっとしたドラム缶ぐらいある荷物は、簡単だった。

 

「ご飯にしよう。差し入れだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うまい! マジでうまい!!」

 

 涙を流しながらガツガツとサンドイッチをほおばるイッセーに、レヴィアはニコニコしながらお茶を飲む。

 

「うんうん。こう美味しく食べてくれると作った身としてもうれしいよ」

 

「レヴィア姫は料理もできたのか。人に創らせている印象があったのだが」

 

「まあ、駒王町ではあまり使用人を連れてきたくないしね。一夏くんも蘭ちゃんも料理できるから、自然と簡単な料理ぐらいは」

 

「ドラゴンサイズのサンドイッチを作るのは簡単とは言わんだろうに」

 

 そう世間話をしながら、タンニーンとレヴィアはイッセーを見る。

 

「それで、どんな感じなんだい?」

 

「特訓、という意味では順調だ。てっきり数日で逃げ出すかと思ったが存外に粘る」

 

「根性が取り柄なところがあるからねぇ」

 

 好きな弟分を褒められて、レヴィアはニコニコ笑顔になるが、すぐに真顔になる。

 

「でも、禁手の方はダメと?」

 

「ああ。まあ、禁手というものは難易度が高いものだ。アザゼルも今夏中はダメでもともとだと考えていただろう」

 

 その通りだ。

 

 神器に関して規格外の素質を持っている蘭ですら、禁手にはいまだ到達していない。

 

 それほどまでの高難易度技能が禁手。神器の究極系。

 

 それを対数か月前まで異形の存在も戦いも知らなかったイッセーに求めるのは、確かに問題だった。

 

「とはいえ、それができないことには白龍皇と戦うのは無理なんだよねぇ」

 

 千冬は初戦で圧倒したが、しかしそれもヴァーリがISの能力をなめてかかっていたことが大きい。

 

 単純な戦闘能力ならほぼ同等といっていいが、半減がネックになるため次の戦闘では苦戦は免れないだろう。

 

 それに対抗するためには味方の戦力を強化する必要があり、対存在である赤龍帝の強化は必要不可欠だった。

 

「なんかすいません。俺が弱っちいせいで」

 

「仕方がないよイッセーくん。年季が違いすぎるしね」

 

「確かにな。しかし覇龍を制御までできるというのは厄介だ。そもそも発動できるようになるのがどっちが先かで二天龍対決は決着してきたようなものだからな」

 

 三人そろって重苦しい溜息をついた。

 

「それで、レヴィアさんはどうしてこんなところに?」

 

「だから差し入れ。体力付けるついでに大事な君の様子を見に来たんだよ。まあ、あともう一つ用事があるんだけどね」

 

 そう苦笑すると、レヴィアは懐から一枚の手紙を取り出した。

 

「……イッセーくん。君は割と上流階級の方々に気に入られているようだ。礼儀作法のトレーニングもしろとお達しだよ」

 

 この地獄の訓練から逃れられることを喜ぶべきか、それとも戦闘とは別の意味で難しい訓練がやってきたと嘆くべきか。イッセーは心底悩んだ。

 

 

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