ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット   作:グレン×グレン

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冥界合宿のヘルキャット 6

 

「あれ? 一夏君たちはどこ行ったの?」

 

 パーティ会場で、レヴィアは一夏を探していたが見つからなかった。

 

 そろそろイベントの一つとして、アースガルズの主神であるオーディンがゲストとして招かれる頃だ。

 

 レヴィアも魔王末裔の一人としてあいさつをする可能性があり、その時眷属がそろってなければ恰好がつかない。

 

 なので一夏たちと合流しようとしたのだが、一夏の姿を見つけることができず困り顔だった。

 

「それが目を離した隙にどこか行っちゃったんです。どこかで女性とフラグを立ててなければいいんですけど」

 

 蘭もため息をついて困り顔だったが、しかしこればかりはどうにもならない。

 

 もはや生理現象としてフラグを立てるあの男のフラグメーキングを止めるのは、二人にとっても難易度の高い所業だった。

 

「それで、どうするんですかレヴィアさん。千冬さんは任務中だから言い訳立ちますけど、織斑の方はやばくありませんか」

 

 元浜の懸念ももっともだが、しかしこれはどうしようもない。

 

「うーん。なぜか念話もつながらないし、これはこっそり抜け出して逃げるしかないかな?」

 

「いや、レヴィアさんそれはどうですか?」

 

 松田にツッコミを入れられるほどの発言をしているが、しかし時はすでに遅かった。

 

『皆様! 北欧の主神であるオーディン様が、やってまいりました!』

 

 その言葉に、多くの者たちの視線が一斉に集まった。

 

「うわっちゃぁ……」

 

 レヴィアは思わず額に手を当てる中、すぐにでも会場は熱気に包まれる。

 

 とにかくすぐにでも逃げなければと思いながら、レヴィアはこっそりと一歩一歩後ろに下がる中、サーゼクスがオーディンを迎える。

 

「御足労、ありがとうございますオーディン様」

 

「ふぉっふぉっふぉ。聖書の教えの餓鬼どもが、仲良しごっこをすると聞けば、少しは見てみたいと思うものでな」

 

 そんな挑発まがいのことをあっさりと告げるオーディンだが、少なくとも敵意はない。

 

 そして、レヴィアはなぜかオーディンとは仲良くできるような気がしていた。

 

「……まずい。あの神様レヴィアさんの同類な気がしてきた」

 

「ってことは俺たちも仲良くできそうだな」

 

「レヴィアさん、後であいさつしましょう」

 

 蘭が直感で危険性を考慮し、そして変態二人組は速攻で友情を結べるとすら感じ始める中、話はさらに進んでいく。

 

「ではオーディン殿。異議がなければ、条約の碑にご調印を」

 

「うむ」

 

 そしてオーディンが、和平の碑に触れようとした瞬間、それは起こった。

 

「……ふむ、これはさすがに介入するべきかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その声とともに、黒い霧が発生する。

 

「三人とも、僕の近くに!!」

 

 「「「はい!」」」

 

 速攻でレヴィアが結界を生み出して霧から逃れる中、黒い霧から幾人もの影が現れる。

 

「……やはり来たか、シャロッコ・ベルゼブブ」

 

「シャロッコと呼んでくれ。私は半分は悪魔だが本質を人間としているんだ」

 

 その言葉とともに、黒い霧をかき分けてシャロッコが姿を現す。

 

 そして、その後ろには何人もの人間が連れられていた。

 

「ほう? お主が人類統一同盟ではしゃいでいる魔王の末裔か?」

 

「……ああ、そしてあなたが戦争を何度も起こしてきたアースガルズの主神だね」

 

 オーディンの皮肉を皮肉で返しながら、シャロッコは不敵な笑みを浮かべる。

 

「こいつが人類統一同盟の1人か!」

 

「賊を取り押さえろ!! 魔王様の御前で狼藉を働かせるな!!」

 

 即座に悪魔たちが反応する中、シャロッコはしかし動かない。

 

 代わりに動く者たちが何人もいた。

 

「ハハハハハ! 木っ端悪魔風情がほざいてんじゃねえぞ!!」

 

「まったくね。雑魚に用はないのよ?」

 

 一瞬で爆発と聖なるオーラが乱舞し、うかつにも接近していた悪魔たちが一瞬で惨殺される。

 

 中には上級悪魔すらいるにもかかわらず、たった二人によって十数人もの悪魔が一蹴された。

 

 その事実に、続こうとしていた者たちが足を止める中、オーディンは髭を撫でつけながらまじまじと見つめる。

 

「なるほど、いうだけのことはあってそこそこできる奴らを集め取るようじゃな。……昔なら英雄(エインヘリヤル)の一人としてスカウトしておったぞ」

 

「あったりまえだぜジジイ! なにせ俺たちは英雄の魂を継いでるからな!!」

 

「人類統一同盟を勝利に導く若き英雄。もっと褒めてくれて構わないわよ?」

 

 そう答えながら、シャロッコの護衛らしく二人の人間は悠然と構える。

 

 この状況下で余裕を見せるその姿は、一歩間違えれば侮蔑とすらとらえられただろう。

 

 だが、その実力を認めるのは当然のこと。

 

 誰もが警戒して反撃を躊躇する中、シャロッコは笑みを浮かべて一礼する。

 

「さて、今日は何をしに来たのかというとだ。……新兵器の実践試験もかねてここを襲撃させてもらおう」

 

 そういいながら指を鳴らすと同時、映像が浮かび上がる。

 

 そこには、巨大な物体があった。

 

 楕円のような形をしたその空飛ぶ物体には、中央部に巨大な砲門が展開されている。

 

 その横幅は推定50メートル。それが翼もローターもなしに空に浮かび、しかも静止している光景は明らかに異形の力があるとしか考えられない。

 

 だが、それは純然たる科学の産物だった。

 

「ISの技術を利用して開発した、最新鋭戦略ガンシップだ。これのテストもかねて、いまから三時間後にこのホテルを襲撃させてもらう」

 

「とんど余裕だなオイ。魔王四人に俺とミカエル、そしてオーディンのジジイがいるってのに勝てると思ってんのか?」

 

 茶化すようにアザゼルが挑発を仕掛けるが、しかしシャロッコは首を振った。

 

「まさか。君たちまで殺せるとはさすがに考えてないよ」

 

「……なるほど、そういうことか」

 

「ああ、なるほどな」

 

 その言葉に、アジュカとアザゼルは不快そうな表情を浮かべる。

 

「どういうことだ、二人とも」

 

「簡単なことだ。文字通りこれは実践テスト。下級悪魔から神すらいるこの状況を利用して、文字通り新兵器がどこまで戦えるかの試験をおこなうのだよ」

 

「おそらく対異形戦術のテストも兼ねてんだろ? 超国家組織なら金も資源も有り余ってるし、余裕だな、オイ」

 

「技術者なら、作ったものの限界を知りたがるの当然のことだろう? ついでに無人兵器もいくらか用意したから、テストに付き合ってくれ」

 

 その言葉とともに、シャロッコの姿が再び霧に包まれる。

 

「因みに、白龍皇も今回のテストに参加するぞ。魔王相手にどこまで戦えるか見てみたいと言ったら真っ先に名乗り出てくれたからね」

 

「……そんな、真なるルシファーの末裔までもが」

 

 悪魔の一人が唖然とする中、シャロッコたちは完全に霧へと包まれる。

 

「そうだ、レヴィアの眷属とリアス姫だが、ついでに見物に来たヴァーリチームと接敵しているぞ。助けに行くなら早くした方がいい」

 

「なんだと!?」

 

「うそでしょ!?」

 

 サーゼクスとレヴィアを驚愕させる事実を付け加えながら、シャロッコたちは闇へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空間が歪み、森中が特殊な変質を見せ始める。

 

「……これは、空間に干渉する術式!?」

 

 リアスが目を見開く中、黒歌は得意げに唇をゆがめると木から飛び降りる。

 

「流石に時間まで干渉はできないけどね? だけど、そろそろシャロッコも動くでしょうし邪魔は入らないにゃん♪」

 

「そいつぁいいや。俺もちょっとは体をうごかしたかったからねぃ」

 

 首をコキコキと鳴らしながら、さらに美侯までもが戦闘態勢をとる。

 

 それを警戒しながら、一夏は即座に不知火を展開する。

 

「それがあなたのIS? ちょっと試させてもらうにゃん」

 

 黒歌がさらに怪しげな笑みを浮かべると、一瞬で森の中が霧に包まれる。

 

 そして、変化はすぐに訪れた。

 

「な、これは……っ!」

 

「……うぅ」

 

 リアスと小猫が顔色を悪くさせてうずくまる中、しかしイッセーと一夏は何ともなかった。

 

「お前、いったい何をしたんだ!!」

 

「悪魔にとって有害な毒霧にゃん。赤龍帝は予想外だったけど、ISのスーツはやっぱり宇宙用なだけあって厄介ねぇ」

 

 想定外の緊急事態に、一夏は歯ぎしりをする。

 

 そしてさらに、事態はもっと悪い方向へと進んでいった。

 

「ま、まずい織斑!!」

 

「どうした、兵藤!!」

 

「赤龍帝の籠手が起動しない!! なんでも禁手にいたりかけてるせいらしいけど……」

 

「マジかよ!?」

 

 これはさらに状況がまずい。

 

 このままでは一夏一人で黒歌と美猴を同時に相手しなくてはいけなくなる。

 

 さすがにそれは苦戦すると思われたが……。

 

「リアス嬢たちが森に行ったと聞いて念のために来てみれば、これはまた面倒なことになっているな」

 

 空がさらに暗くなり、思わず振り仰いだ全員が目を大きくする。

 

 そこには、15メートルを超える人型のドラゴンがいた。

 

「タンニーンのオッサン!! 来てくれたのか!!」

 

 イッセーが歓喜の声を上げる中、同様に歓喜の表情を浮かべる者もいた。

 

「いよっし! 龍王の一体とかやりがいのある相手だぜぃ!! 黒歌、あいつは俺がもらうぜ!」

 

「いいわよ。私はIS使いの方を相手するわ」

 

 いうが早いか美猴は空を飛びタンニーンと激戦を繰り広げる。

 

 そして、一夏と黒歌はお互いににらみ合った。

 

「さぁて、先ずは小手調べにゃん♪」

 

 展開されるのは大量に生み出される魔力や妖力の弾丸。

 

 広範囲攻撃という対IS戦術の基本ともいえる戦法だが、しかし今の一夏には通用しない。

 

「甘いぜ!! 俺だってレヴィアの戦車(ルーク)だ!!」

 

 拡張領域(パススロット)から巨大な楯を呼び出すと、一夏は即座に展開してその攻撃をやすやすと防ぐ。

 

「アザゼル製の人造神器(セイクリッド・ギア)……でもなさそうね。異形の技術が使われてるけど普通の楯でもないみたいね」

 

「ああ、こいつは俺の神器で強化してあるからな!!」

 

 返答と同時に、一夏は即座に切りかかる。

 

 訓練の成果が如実に表れているその流れるような防御からの反撃は、しかし空を切った。

 

 気づけば、大量の黒歌が森中に現れている。

 

「残念にゃん♪ 私は直接戦闘よりこういった戦いの方が得意なの」

 

 そして、虚空から魔力弾が放たれる。

 

 ハイパーセンサーの全方位視界ゆえに防御することは難しくないが、しかしこれはなかなか厄介だった。

 

 なにせ、どういう術式か科学的なハイパーセンサーの探知すらかいくぐっている。

 

 これでは当てるのが難しいのは確実だ。

 

「さあ、どうするのかニャン? このままあきらめて白音を渡してくれるっていうなら、見逃しても構わないけど?」

 

「冗談きついな! つまらないんだよ」

 

 一夏はそれをバッサリと一蹴する。

 

「いいか! 家族ってのは一緒にいて、そしてお互いを助け合う生き物だ!! 勝手に振り回すような関係じゃねえ!!」

 

 どこにいるかわからない黒歌に対して、一夏はしかし一歩も引かずに吠える。

 

「お前の都合で勝手に奪い取れると思ってるなら、俺が許さねえ!!」

 

「言ってくれるニャン。それなら、アンタが白音の家族になるっていうの?」

 

 その挑発交じりの言葉に対して、一夏はかけらもためらわなかった。

 

「当たり前だ!!」

 

 一夏ははっきりと断言する。

 

 そういえばレヴィアと蘭が口を酸っぱくして言っていた。

 

 女の子を助けるときは覚悟しろ。一夏が助けると高確率でフラグが立つ。そんなことを何度も言われた気がする。

 

 だが、かまうものか。

 

 少なくとも今は言っていい。それだけは断言できる。

 

 だから、責任を取れというのならば覚悟しよう。

 

 そのうえで、しっかりと守り通して見せる。

 

「何度も死線を潜り抜けて、一緒に住んでる仲なんだ。家族にぐらいなってやるさ!!」

 

 そう、だからここで負けるわけにはいかないと気合を入れ―

 

「……そう」

 

 なぜか、ほっとしたような声を聴いた。

 

「美猴? なんか白けたから私帰るにゃん。早くしないとおいてくわよ?」

 

「うぇっ!? ちょっと待てよ、いまいいとこなんぜぃ?」

 

 美候からもちろん反対の声が聞こえるが、しかし黒歌はためらわない。

 

「だって暑苦しいんだもん。こういうのは白音向きだわ。私はちょっと面倒だからパス」

 

「……へいへい。だったら仕方がねえから帰るとするかぃ!!」

 

 その言葉に意見を変えるつもりがないとすぐにわかったのか、美猴は即座に黒歌を回収するとすぐ飛び去る。

 

「逃げる気か!!」

 

「きにすんなぃ! どうせ明日すぐに戦うんだからよ!!」

 

 追いすがろうとするタンニーンに美猴がそう告げる中、さらに黒歌がダメ押しといわんばかりに幻術を展開する。

 

 ……その言葉の通り、次の日から激戦が巻き起こる。

 

 そして、異形社会は人間の科学が脅威と呼べるレベルにまで高まっていることを痛感することとなる。

 

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