ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット   作:グレン×グレン

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冥界合宿のヘルキャット 7

 

 結界が解けたことで、すぐにでも一夏達は悪魔の増援に保護された。

 

 向こうでも戦闘が起こっていたため増援の数は少ないが、しかし粒よりの精鋭が送り込まれているあたり、サーゼクスの情がうかがえる状態だった。

 

「一夏さん!!」

 

 戻ってきて早々に、一夏は蘭に抱き着かれた。

 

「一夏さんが戦闘中だって聞いて、心臓止まるかと思ったんですからね!!」

 

「あ、ああ。俺もまさか戦闘になるなんて思わなくって……」

 

 困った顔で一夏はレヴィアに助けを求める表情を浮かべるが、しかしレヴィアは静かに首を振った。

 

「あきらめな、一夏くん。こういう時は男は問答無用で悪いと相場が決まってるんだよ」

 

 そういって突き放すが、実際レヴィアも余裕がない。

 

 なにせ、すでにホテルからある程度離れたところには、ホテルを襲撃するための人類統一同盟の部隊が接近しているのだ。

 

 いくら悪魔の数が少ないからといえど、あれだけの大部隊を魔王が大量にいて警備も厳しいはずのこのホテルの近くに準備するなど、並大抵の存在の所業ではない。否、数を考えれば一流の術者でも不可能に近いだろう。

 

 それだけのことをあっさりとやってのけるあたり、人類統一同盟はやはり兄弟であるというほかない。

 

「そういえば、イッセーくんたちは?」

 

「リアス先輩と小猫は、今医務室に運ばれてったよ。兵藤はその付き添いだ」

 

 どうやらリアスたちもただでは済まなかったようだ。

 

 しかし、それも仕方がないといえば仕方がないだろう。

 

 孫悟空の末裔である美猴に、SSランククラスのはぐれ悪魔である黒歌。この二人は間違いなく上級悪魔以上の使い手である。

 

 いかにタンニーンの援護があったとはいえ、それだけの相手と戦って生き残ったとなれば、もはや褒めるほかないだろう。

 

 しかし、ことはそう簡単にはいかないはずだ。

 

「一夏君、いまこのホテルには人類統一同盟を主力にした禍の団の手勢が大量に迫ってきているけど―」

 

「闘うにきまってるだろ」

 

 即答だった。

 

「サーゼクス様達は、できる限り若手を非難させようとしているみたいだよ?」

 

「何言ってんだ。どうせ、お前だって逃げる気はないんだろ?」

 

 その言葉に、レヴィアもまた不敵な笑みを浮かべる。

 

「まあね。前線で大暴れするつもりはないけど、前線に近いところで兵士を鼓舞することぐらいはやらせてもらうよ」

 

「だったらなおさらだな。俺はお前を守る戦車(ルーク)だからな」

 

 ああ、その言葉を待っていた。

 

「もちろん私も参加しますよ! レヴィアさんは私()が守るんですから!!」

 

 そう、一夏にひとりだけじゃないことを強調しながら、蘭もまた頷いた。

 

「しっかし松田君と元浜君には悪いことしたかな。もっとゆっくり慣らしていくつもりだったんだけど、本格的に戦闘に巻き込みすぎてるし……」

 

「こんど、女でも紹介してやったらいいんじゃないか?」

 

「そうですね。二人だったらそれだけで許してくれると思いますよ?」

 

 そんな軽口をたたき合いながら、レヴィア達は静かに敵のいる方へと向いた。

 

 そして、戦線が準備される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、レヴィア達は後方に配属された。

 

「うん、サーゼクス様たちならそうするって知ってた」

 

「なんか、肩透かし喰らった気分だなぁ」

 

 若手悪魔たちはほぼ全員が参戦を表明したが、しかし配属箇所は後方だった。

 

 あくまで全線で戦うのは今の大人の役目、とでも言わんばかりのサーゼクスの采配だが、しかし当然といえば当然である。

 

 なにせ、サーゼクスは若手を危険に巻き込みたくないというのが本心なのだ。言ったそばから前線に投入など避けるのが普通だろう。

 

「とはいえ、これもまた必要な役目よ。気合を入れていかないといけないわね」

 

 隣で同じく待機しているリアスは、そういって真剣な顔をする。

 

「いい! ここで私たちがだらけた表情を浮かべれば、当然周りの兵士たちにも伝染するわ。いつでも前線に駆け付けれるように覚悟を決めておきなさい!!」

 

「うふふ。部長もやる気に満ち溢れてますわね」

 

 そういう朱乃の表情も、口調とは裏腹に真剣だ。

 

 じっさい、すでに戦線は開かれており、被害者の報告も少なからず出てきている。

 

 そのほとんどは下級中級だが、上級悪魔からも戦線を離脱するほどの負傷者が生まれているのだ。当然警戒するべきだ。

 

 後方で待機しているものは、レーティングゲームや模擬戦を経験していないものも多い。必然的に心構えが足りていないものもいる。

 

 そういうおびえている者たちを勇気づけるのも、また若手の代表たちの役目なのだろう。

 

「さて、それじゃあ即興の演説とかでもして活を入れるとしますかね」

 

「それは良いわね。私もグレモリーの跡取りとして、そういう経験の一つも積んでおきたいと思っていたわ」

 

 そういいながら、レヴィアとリアスは席を立つと、兵士たちが集まっているところへと向かっていく。

 

 そんな姿を見ながら、イッセーは少し沈んだ表情を浮かべていた。

 

「どうしたんだい、イッセーくん」

 

 その様子を見かねて祐斗が声をかけると、イッセーは沈んだ表情のまま左腕を掲げる。

 

「俺は今回役に立ちそうにないんだよ。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)がまだ機能を停止してるからさ」

 

 そうため息をつくイッセーだが、しかし当然といえば当然だろう。

 

 これまで、イッセーは短期間に幾度となく危機に巻き込まれてきた。

 

 そして、そのほとんどにおいてイッセーは仲間に助けられたからこそここにいる。

 

 レヴィアたちがいなければ、アーシアは一度死んでいた。

 

 一夏が粘らなければ、レーティングゲームには負けていた。

 

 千冬が来てくれなければ、コカビエルは倒せなかった。

 

 そして、レヴィア眷属が全力を出さなければヴァーリを倒すことはできなかった。

 

 神や魔王すら圧倒するといわれている赤龍帝を宿すものとして、これは本心から情けないといえるだろう。

 

「結局俺、一人じゃ何もできないからさ。情けないだろ?」

 

 本当に心底からそう思ってしまい、イッセーはため息をつく。

 

 じっさい夏休みの特訓でもイッセーは禁手にいたれず、パーティ会場での戦いもまた、一夏が一人で奮戦したようなものだ。

 

 そんな駄目な結果が連続して出てきたことで、イッセーはすっかり自信がなくなってしまっていた。

 

「……イッセーくん」

 

 その姿に、祐斗はどういって励ましたらいいか思案する。

 

 僕が君を守るから……などといっても効果はないだろう。むしろ、そんなことになっていることこそをイッセーは気にしているのだから。

 

 どんな言葉を投げかければいいのかと祐斗は悩み、しかし―

 

「お前、そんな馬鹿なこと考えてんのか?」

 

「まったくだ。ふざけてるなこの野郎」

 

 と、松田と元浜が後頭部を遠慮なく度突き倒した。

 

 しかも勢いよく地面につんのめって、イッセーは前頭部を床にしこたま打ち付けた。

 

「痛ってぇええええええええ!! なにすんだお前ら!!」

 

 涙目になりながらイッセーは怒鳴るが、松田も元浜も逆に胸倉をつかもうかといわんばかりの勢いでイッセーをにらみつける。

 

「イッセー。それは俺たちに対する嫌味か、ああん?」

 

「そうだぞこの野郎! さんざん大活躍してるくせに、何ふざけたこと言ってんだ、あぁん?」

 

 言われてみればその通りである。

 

 なにせ、イッセーはなんだかんだでしっかりと活躍してるのだ。

 

 レイナーレにとどめを刺したのはイッセーだ。ライザーにとどめを刺したのもイッセーと一夏だ。コカビエルの時も何体もの堕天使にとどめを刺している。白龍皇ヴァーリにも一発叩き込んだ。

 

 なんだかんだで要所要所で重要な活躍をしていることを考えれば、撃墜数が少なく雑魚との戦いでも苦戦している松田や元浜にとっては腹も立つだろう。

 

 だが、二人はそこまで言うと二かっと笑った。

 

「だけど、俺たちはハーレム王あきらめないぜ?」

 

「もちろん強くなるのもな! お前はどうすんだ、イッセー」

 

 そんな二人の、決意にあふれた様子をみてイッセーは面食らった。

 

 確かに、二人とも自分よりも活躍していないが、しかしちゃんと結果を残してはいる。

 

 そして、イッセー自身と同じぐらい、ハーレムをあきらめてないのだ。

 

「まったく。悪いところだけ見て自分の結果を見ないとか馬鹿だな、お前」

 

 元浜は眼鏡をキランと輝かせると、イッセーをしっかり見つめて断言した。

 

「お前は俺たちよりもしっかり活躍してるんだ。そんな奴が、俺たちよりもハーレム建設が遅れるわけないだろ」

 

「まったくだぜイッセー」

 

 松田もまた、イッセーの背中をバンバンたたきながらにかっとわらった。

 

「お前の方が何倍もすごいんだから、こんなところでへこたれてんじゃねえよ。今がダメなら明日頑張ればいいだけだろ?」

 

「松田、元浜……」

 

 二人の励ましに、イッセーは涙すら浮かべながら立ち上がった。

 

「そうだな! 俺はハーレム王になる男なんだから、こんなところであきらめてられないよな!!」

 

「そうですよ、イッセー先輩」

 

 と、さらに蘭が現れると笑顔を浮かべる。

 

「実は私も禁手には目覚めてないんです。もう何年も前からそうなのにですよ?」

 

「え、そうなの?」

 

 意外に思いイッセーは聞き返すが、蘭は苦笑すると頷いた。

 

 本当にこれは意外だとイッセーは思っていた。

 

 なにせ、蘭はアザゼルが目をつけるほどの神器に対する奇才の才能の持ち主だ。それなら特訓で禁手に目覚めてもおかしくないだろう。

 

 だが、しかし蘭は静かに首を振った。

 

「禁手っていうのはそういうものなんです。だから、イッセー先輩が目覚めて一年もたってないくせに禁手にいたれないことを落ち込む資格なんてありませんからね!」

 

 そう厳しめのことを言う蘭だが、しかしその表情は笑顔だった。

 

「だけどまあ、一夏さんとは別ベクトルでいい男なのは認めます。だから頑張れば彼女の一人ぐらいはできますよ」

 

「‥‥‥‥‥‥‥マジか」

 

 心底信じたくても信じられないような顔で、イッセーが驚いた。

 

 そして、その瞬間に怒涛の物理攻撃が頻発した。

 

「この野郎!! ふざけたこと言ってんじゃねえぞ!!」

 

「マジ殴る、マジで殴るぞ!!」

 

「ぎゃっぁあああああ! なんで!?」

 

 割と本気で物理攻撃が飛び交う中、蘭と祐斗は顔を見合わせると苦笑した。

 

「流石にこれは擁護できないね」

 

「一夏さんとそっくりです」

 

 かつての一夏を思い出してしまい苦笑する蘭だが、しかしその表情が少し曇る。

 

「まあ、一夏さんとは違う意味で厄介そうですけど」

 

 はぁ、と蘭はため息をついた。

 

 どうも、イッセーはレイナーレに殺されかけたことがトラウマになっているらしい。

 

 確かに、蘭も一夏に裏切られればトラウマになるのは断言できる。

 

 イッセーにとっては待ち望んでいた彼女ができたと思ったら、全てうそだったうえに殺されかけているという隙を生じぬ連続コンボだ。上げて落とされている。

 

 もしかすると、恋愛恐怖症になっている可能性だってある。

 

「あの、木場先輩―」

 

 それに気が付いたから、蘭はそれとなくフォローをお願いしようとして―。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小猫」

 

 戦闘の音が響く中、一夏は小猫のところに向かっていた。

 

「どうしましたか、一夏先輩」

 

 振り返る小猫の表情はここ最近の中でいえば、むしろかなり明るい方だった。

 

 戦場の近くにいるというストレスがあっても、姉と同様になりかねないというトラウマの方が重かったということだろう。

 

「小猫、あの、力の件なんだけど」

 

「……正直、まだ少し怖いです」

 

 小猫は、少しだけ肩を震わせた。

 

「あんな姉のようになるのが怖くてたまりません。ですが、それでも足を引っ張らないためには―」

 

「いや、必要ない」

 

 一夏は、小猫の言葉を遮った。

 

 これはたぶん、自分が言わないといけないことだと思ったからだ。

 

「一夏先輩?」

 

「小猫、望んでもいない力なんかで強くなる必要なんてない。そんなことは、きっとリアス先輩も望んでない」

 

 それ以上に、そんなものを見るのは自分の気がすまない。

 

「いやいや手にした力なんかで強くなる必要なんてない。もっとよく考えて、そのうえで強くなればいいさ」

 

 一夏は、それが言いたかった。

 

 守れる強さを持ちたいという感情から強さを求めている一夏にとって、強さとは誇れるものだ。

 

 だけど、小猫は大切なものを守るために誇れない力を手にするという。

 

 それはどうしても納得がいかなかった。

 

「小猫。これは古い考え方かもしれないけど、男ってのは守るものがあれば強くなれる」

 

「……本当に古いですね。今は男女同権ですよ?」

 

「ああ。だけど、俺はそんな男になりたいんだ」

 

 だから、これだけははっきり言おう。

 

 蘭には悪いが、黒歌を前にはっきり言ったのだ。男として責任はとる。

 

「お前を守る分だけ、俺はさらに強くなる。俺を強くしてくれることを、お前の力と思ってくれていい」

 

 だから、足手まといだなんて思わないでくれ。

 

「家を守るっていうのも立派な強さだ。だから、胸を張ってくれていい」

 

 守ると決意したから、それだけの強さを手にする。

 

 それで本当に強くなれたのなら、それはきっとその守大将がいるからこその強さだ。それはつまり、その対象の力といっていい。

 

「だから、無理して強くなろうだなんて思わなくてもいい! むしろ守られてくれ!!」

 

「………」

 

 真正面からの言葉に、小猫は顔を真っ赤にさせていた。

 

「あの、意味わかっていってます?」

 

「後で蘭と朱乃さんには土下座する!! ここまで言ったからには男として責任はきちんと取る!!」

 

 そう、だから―

 

「いやいや力を使うぐらいなら、俺に守られてくれ。 俺が小猫の分まで強くなって見せるからさ」

 

「……一夏先輩」

 

 その言葉に、小猫は一夏の胸に顔をうずめた。

 

「我儘、言ってもいいですか?」

 

「ああ、なんだ」

 

 答えは決まりきっているが、しかしあえて一夏は尋ねる。

 

 このあたり、レヴィアの教えがしっかりと根付いていた。

 

「私は、怖いまま力を使いたくないです。だけど、やっぱり足手まといは嫌です」

 

「ああ、それで?」

 

「だから、一夏さんを使わせてください」

 

 ああ、一度でいいからそんな言葉が聞きたかった。

 

 でもまあ、きっと小猫は強くなるだろう。

 

 弱いままでいられるような女ではないのだから。

 

 だけど、それでも―

 

「―ああ、それが男の本懐ってやつだ」

 

 しっかりと抱きしめて、一夏は約束した。

 

「俺の力になってくれ、小猫。それが必要なくなるまで、俺はずっとお前の力になってやるか」

 

「………にゃぁ」

 

 そんな、ほっとした声を小猫は聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………そして、戦闘は激化する

 




本格的に一夏がフラグを小猫に。









ずっと前から少し思ってたんですよ、忌々しい力を振り切って新しい力を手に入れるという物語もあるのに、使いたくない力を使ってまで強くなることに意味があるのか……というよりそれで本当に強くなれるのか。

自分は凡人以下ですので、やる気になれないことに本気を出すのが苦手なタイプです。そんなタイプからしてみれば、いやでいやで仕方がないことを無理やりやっても身にならないと思うんですよ。やるならせめてやってもいいやって思える程度のことにしておかないとと。

なので、この展開は一度でいいからやってみたいものでした。いい機会ですので一夏とイッセーのフラグ立ての区別を兼ねてやってみました。
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