ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット 作:グレン×グレン
そして、戦闘は後方でも発生する。
レヴィアたちが即興で演説を始めようとしたまさにその瞬間だった。
「おい、なんだあれ!!」
悪魔の一人が空を指さし、それにつられた者たちが一斉に空を見上げる。
その空は、黒い霧に包まれていた。
「なんだあれ、魔法か?」
「ありえないだろ! いくらなんでも規模がでかすぎる!!」
「だ、だけどそうとしか考えられないぞ!?」
どよめく若手悪魔たちの中で、一人が何かに気付いたかのように一筋の汗を流す。
「そういえば、聞いたことがある……」
その悪魔は、どんどん顔を青ざめさせていくと震える声でつぶやいた。
「
その言葉に、多くの悪魔たちが悲鳴を上げる。
当然と言えば当然だろう。彼らの多くは戦争を経験していないどころか、レーティングゲームもろくに経験していない若手が大半である。
それが、人類最強の力の一つであるである神滅具を相手にしなければならないなどと、明らかに苛酷に過ぎる。
その動揺は一瞬で伝染し、そして恐慌状態に陥りかけ―
「静まれ!!」
大きな声で、レヴィアが一喝し、意識がそちらに向いた。
「神滅具の相手はこちらでする。君たちは支援に意識を向ければいい!!」
「そのとおりよ。忘れてはいけないことがあるわ」
リアスもまた声を上げると、鋭い視線で皆を見渡す。
「敵は魔王様の命を奪おうとした者たち。そんな無礼な真似をした者たちを許すわけには消していかない。ましてや、後方にいる者たちを優先して倒そうだなんて言う卑怯者をのさばらせておくわけにはいかないわ!!」
そして、さらに声をあげる者たちもいる。
「作戦指揮は私がとります。戦闘に不慣れなものもいるでしょうから、経験がある者たちがカバーをしてください」
「前線には俺たちが出る。だが、この大規模戦闘ではうち漏らしが出るだろうから、お前たちにはその相手をしてもらいたい」
ソーナ・シトリーとサイラオーグ・バアルの落ち着いた姿に、動揺していた悪魔たちも冷静さを取り戻していく。
「そう、そのとおりです」
そして、シーグヴァイラ・アガレスに至っては怒りの炎すら燃やしていた。
「あのようなロボットもどきなどに我々悪魔が何度もやられていては笑い話にもなりません。今こそ悪魔の力を見せつけるときです!!」
戦闘が始まるときに、ベテランは慣れておらず緊張しているルーキーの精神をリラックスさせるため、ジョークを言って和ませる時がある。
当人は真剣に言っていたが、しかし今回は奇跡的にその形になった。
「さあ、行きますよ!! 返り討ちにしてあげなさい!!」
「「「「「「「「「「ぉおおおおおおおおおっ!!!」」」」」」」」」」
近くで見ると目が血走っている節すらあるシーグヴァイラの声に、悪魔たちは歓声を上げて続いた。
「……シーちゃん、なんでISを目の敵にしてるんだろう?」
レヴィアは首をかしげながらも、しかし空を飛んで霧へと向かう。
すでに霧からは何体ものISが現れ、攻撃を開始していた。
「敵は攻撃に放射線を付属させている!! 攻撃は結界で防ぐんだ!!」
「戦うときは決して一人で戦わないで! 何人かでチームを組んで、さらに複数のチームで戦うの!!」
「ISは兵器である以上数には限度があります。人数で勝っている利点を生かしてください」
人類統一同盟の戦いぶりを知っているレヴィアやリアスやソーナが的確に指揮をだし、そして大局の動きはシーグヴァイラがとっていた。
そして、接近してくるISに対して、サイラオーグ・バアルが接近してこぶしを放つ。
「速度は速いが反応が遅い!!」
「ぐぁああああ!!!」
一撃で絶対防御が発動し、ISが一機弾き飛ばされる。
しかし、即座に二機のISがサポートに入り、片方がけん制している間にもう片方が撃破された見方を回収すると交代する。
「練度がたかいな。相応の実力者を連れてきているということか」
「当然です。あなたがいるのですから、サイラオーグ・バアル」
その言葉に、即座にサイラオーグは振り返ると同時に蹴りを叩き込む。
声の主はそれを持っていた剣で防ぐと、地面へと舞い降りる。
そして、視界に移った相手の得物をみて警戒心を高める。
「その剣、聖剣か!!」
「ええ、わがペンドラゴン家に伝わる聖王剣エクスカリバーです」
その言葉に、戦闘を行っている悪魔たちに動揺が広がる。
「聖王剣、だと!?」
「たしか、最強の聖剣とかいう……!」
聖王剣コールブランド。また名をカリバーン。
現状の聖剣の中で、最も最強である聖剣が、そこにあった。
「自己紹介がまだでしたね。私はヴァーリチームのアーサー・ペンドラゴンと申します」
「ペンドラゴン家。あのアーサー王の末裔までもが禍の団に所属しているとはな」
サイラオーグは警戒心を強めながら、しかしいつも通りに構えをとる。
「だが、そう簡単には倒れるわけにはいかん。それに、俺にできることなど寄って殴るしかないのでな」
「それは恐ろしい。ですが、近づいてくるなら切って捨てるまでですね」
そして一秒だけ沈黙が続き―
「に、逃げろおおおおおおおおお!!!」
周囲の者たちが敵味方とわず距離をとるほどの、激戦が始まった。
「さすがにこれはまずいね、僕の眷属全員集合!!」
状況が動いたと判断し、レヴィアは即座に身内を集合させる。
「番号!」
「一夏だけに一番!!」
「つまらないです。二番、蘭!」
「松田くんと元浜君ははぐれてるか。そっちは?」
レヴィアはリアスとソーナに確認をとる。
そして、、そちらもそう簡単にはいかなかった。
「こっちはイッセーと小猫だけだわ。ソーナ、そっちは?」
「こちらも、すぐに合流できたのは匙だけです」
そうお互いにため息をつくリアスとソーナだが、それはそれで仕方がない。
何せ今は混戦状態である。まだまだ若手である自分たちでは、この混乱状態の中味方の位置を完全に把握することなどできないだろう。
「とにかくすぐに探さないとね。今は指揮をシーちゃんがとってくれてるからいいけど、だからって何もしないわけにはいかないし……」
とにもかくにも合流しなければと動こうとして、しかしレヴィアは動きを止める。
「……またお前らか、チンピラ共」
心底いやそうな顔をしながら振り向けば、そこには黒歌と美猴を引き連れて、ヴァーリ・ルシファーが空に浮かんで立っていた。
「やあ、上から君をできれば殺しておくようにと頼まれたんだよ。俺としても、白龍皇を愚弄した君はできるだけ早く滅ぼしておこうと思っていてね」
「チンピラとしてフルスロットルで名を穢しているのは君のほうじゃないか」
あっさり一蹴しながらレヴィアは戦闘態勢をとるが、しかし警戒心は強い。
三人の眷属が全員そろっていれば話は違うが、しかし今回敵は強大だ。
千冬抜きでこの人数を相手に戦うのは、窮地というほかなかった。
「このチンピラ軍団が余計なタイミングで出てくるね……っ」
「レヴィア。さっきからチンピラ言い過ぎよ。品がないわ」
「あまり挑発するのもいかがなものかと思うのですが?」
心底いやそうな顔をするレヴィアに、リアスとソーナからの指摘が入るがもう遅い。
ヴァーリはすでに攻撃態勢に入り、そして黒歌と美猴もそれに続く。
「んじゃ、再戦といこうぜぃ!」
「やっぱり白音は返してもらおうかにゃん」
「さあ、そろそろ懺悔をするというセーラ・レヴィアタン!!」
真っ先に放たれるのは、ヴァーリからの魔力攻撃。
そして、それを制圧射撃として美猴が回り込む。
狙いはもっとも倒しづらいレヴィア。ヴァーリとしてもさんざんチンピラ扱いされたことから真っ先に倒したい相手だった。
だが、そんなものはレヴィアも想定内。
「チンピラの考えることはわかりやすくていいね!!」
逆に、レヴィアは真正面から突撃を敢行する。
自身の周囲に魔力結界を展開。そしてその頑丈差を利用して無理やり二人の攻撃を押し切り、距離を詰める。
「やはりこの程度ではやられてくれないか。俺を腹立たせるだけでなく昂らせもするとはね」
「それはどうも! だけど僕は王なんで―」
不敵に笑ったレヴィアを飛び越え、レヴィアに隠れて接近した蘭と一夏が同時に攻撃をし変えた。
「―私たちが!」
「矛になるさ!!」
蹴りと斬撃がヴァーリに襲い掛かり、しかしヴァーリもそれを魔力結界で防ぐ。
「甘いね。こんな神器だから必然的に体術も収めて―」
「甘い」
ヴァーリの言葉を遮り、レヴィアはヴァーリを結界に封じ込めた。
「……足止めが狙いか!!」
「最強戦力は抑えておかないとね!!」
レヴィアは即席の作戦が成功したことににやりと笑うとそのまま後ろを振り向く。
「さあ! 今のうちに反撃を―」
「レヴィア!!」
リアスの声がとび、しかしそれは間に合わなかった。
薄氷を割るかのような音とともに、結界があっさりと粉砕される。
「ふふん♪ 結界を割るのは力押し以外にもいろいろあるのよね」
黒歌の得意げな声が響く中、ヴァーリの手がレヴィアをつかむ。
だが、レヴィアもまた余裕の表情を崩さない。
少なくとも、覇龍を使われなければヴァーリといえどレヴィアに有効だを与えることはできないのだ。ならば覇龍を発動しようという段階にならなければ、レヴィアもまた慌てる必要はない。
「それで? 僕をどうやって倒すって?」
「いや、どうやら君は後回しにした方がいいようだ」
その言葉とともに、ヴァーリはレヴィアを投げ飛ばした。
二天龍の膂力による投擲は、レヴィアを一瞬で数百メートル上空へと投げ飛ばす。
そして、レヴィアが体勢を整えた瞬間に多重結界がレヴィアを包み込んだ。
「特性の封印結界にゃん♪ これを割るのは最上級悪魔でも苦労するわよ?」
「ご苦労だった黒歌。とりあえず、先ずは前菜からいただいた方がよさそうだ」
黒歌に礼を言いながら、ヴァーリはその視線を一夏と蘭に向ける。
「さて、それではこの場に立つ資格のない者たちから倒すとしようか」
そして、次の瞬間には匙の眼前にヴァーリは立っていた。
「……匙!」
イッセーが慌てて動くが、しかし間に合わない。
「てめえ、俺が一番弱いってか!!」
「いや、近くにいる弱い奴を選んだだけだ。少なくとも最弱ではないだろうが―」
しかし、躊躇せずヴァーリは拳を匙の顔面に叩き込んだ。
全力はあえて出さない。そんなことをしなくても一撃で戦闘不能にはできるし、そそりもしない相手を殺すために全力を出すなど面倒以外の何物でもない。
そして、一撃で匙は吹き飛ばされた。
倒せないのなら、そもそも闘わなければいい。レヴィアは象徴としての能力特化なので、そもそも戦闘における優先順位は直接的脅威度だけで見るなら低いのです。