ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット 作:グレン×グレン
「サジ!!」
ソーナが悲鳴をあげるなか、匙は肋骨が砕ける音を響かせながら数十メートルは吹っ飛びそして倒れた。
それを想定内といわんばかりの冷静な表情で見ながら、ヴァーリは視線を腕に向ける。
そこには、匙がギリギリで接続させたラインがついていた。
「なるほど、ただの雑魚ではないようだ。まあいいか」
あえてそれを引きちぎらず、ヴァーリは残りの者たちへと視線を向ける。
「いいハンデができたようだ。これぐらいあればいい勝負になるだろうね」
そして、あえて頭部の鎧を解除すると不敵な笑みを浮かべた。
「さて、仲間の1人を倒させてもらった。こういうのは怒りを覚えるだろう? それで強くなってくれると嬉しいな」
「てめえ!!」
一夏はISを展開しながら真正面から切りかかる。
「こんなものか? だとしたらさすがに拍子抜けだが―」
「まだまだ!!」
ヴァーリに対してそう答え、一夏もまた切り札を開放する。
次の瞬間、ヴァーリが感じたのは怪力。
今までの一夏では想像がつかないほどの馬力がうまれ、ヴァーリは出力に耐え兼ね膝をついた。
「なんだと? 君は兵士の転生悪魔ではなかったはずだが―」
「ええ、そうですね」
疑問を覚えたその瞬間、後頭部に砲門が押し付けられる。
一夏に気を取られたその瞬間、蘭はすでに行動を起こしていた。
そして至近距離からの砲撃が放たれる瞬間、しかし美猴が砲身に蹴りを叩き込んで軌道をそらす。
「おぉっと! 嬢ちゃんの相手は俺っちがするぜ?」
「あ、邪魔です!!」
砲身と展開した聖剣で防御しながら、蘭は美猴の攻撃を堅実にさばく。
それは、今までの彼女の身体能力ではできないようなものだった。
それをなすのは、ひとえに鍛えた神器の力。
人間の人間としての機能を強化するその能力は、単純な身体能力強化にとどまらない。
反射神経に五感、そして再生能力にいたるまで強化するそれは、戦車の特性と組み合わせることで基礎能力を大幅に強化する。
そこに、多様性においてずば抜けている神器である
技量を含めた戦闘能力ならば千冬が大きく引き離すが、単純な性能でいうならば、蘭こそがセーラ・レヴィアタン眷属最強。
そして、その能力はアザゼルの指導と調整により大幅に向上している。
「面白いねぃ!! こういうのがやりたかったんだよ、俺っちは!!」
「だからってテロに走らないで!!」
正論を出しながら、蘭は至近距離から砲撃を敢行するが、美猴はそれを素早く避ける。
そして、その間に一夏もまた戦闘を継続させていた。
「半減がうまく発動しないな。何をしたのか知らないが面白い!!」
「言ってろ! あと、さっさとレヴィアを解放してもらうぜ!!」
ISの基準値を超えた加速力で弾幕をかいくぐりながら、一夏はヴァーリと攻撃をかわし合う。
向こうが半ば遊び半分だということがわかっているが、史上最強の白龍皇を相手にここまで戦えるのは偉業というほかなかった。
それをなすのが、剣豪の腕《アーム・ザ・リッパー》の能力を生かした戦法。
アザゼルが発展させたのは、神器の能力の拡大解釈。
保有する装備を強化するその能力は当然手に触れている武装ならなんにでも適用される。
そして、ISは今のところ軍用兵器。
その認識を強く持つことで、一夏はISを強化することに成功した。
それは、まさに科学と神秘の融合。
+ではなく×になったことで、一夏の戦闘能力は飛躍的に向上していた。
「ああ、そうでなくては面白くない!! これで少しは楽しめそうだ!!」
「こっちは殺し合いを楽しむ気はない!!」
ヴァーリの言葉を切り捨てながら、一夏は反撃のタイミングを何とか計る。
放たれる魔力弾を交わし、時には切り捨てながら一夏は勝機を図っていた。
そして、敵はヴァーリたちだけではない。
高速起動で遠距離から攻撃を放ってくるISの攻撃は、火力こそ低いが放射線で汚染されておりうかつに喰らえば致命的だ。
それを魔力を使って受け止めながら、リアスもソーナも魔力による面制圧でISを迎撃する。
むろん、敵も精鋭であるがゆえにそう簡単には当たらず接近を許す時もあるが―
「させない」
吹っ切れた小猫の動きは格段に良くなっていたため何とか迎撃が間に合っている。
そんな中、イッセーは攻撃を回避するので精一杯だった。
「クソ! せめて赤龍帝の籠手が使えてれば!」
今の段階では、禁手になりかけていることがあだとなって使えない。
通常のパワーアップを選ぶという手もあったが、しかしこのチャンスを逃したら一になるかわからないという。
そんな中、それでも何とか勝機を手にしなくてはならない。
そして、その最良はおそらく禁手になることだった。
(どうすればいい、どうすれば……っ)
焦る中でも攻撃は激しさを増し、そして一夏たちも追い込まれていく。
一夏はヴァーリ、蘭は美猴を相手にするので精いっぱいで、レヴィアはレヴィアで黒歌の作った結界に封じ込められて脱出が困難。
このままでは押し切られるかもしれない状況だった。
「くそ! 俺はこんな時に……っ!」
「落ち着きなさい、イッセー」
焦るイッセーに、リアスは静かに声をかける。
「これまでもあなたは何度も私達の窮地を救ってくれた。だから私たちもいざとなれば窮地を救うのは当たり前だわ」
状況はこちら側に不利だが、しかしリアスは決して焦らない。
「貴方が大変な時は私たちがカバーする。あなたは貴方のやり方で強くなっていいの」
「その通りです、イッセー先輩」
と、小猫もまたイッセーに声をかける。
「私は仙術には頼りません。あんな忌まわしい力がなくても、強くなれることを証明して見せます」
小猫は、放射線という触れたらアウトといってもいい攻撃を冷静にかわして、的確に一撃をISに叩き込んでいく。
その動きには迷いがない。そしてそれゆえに鋭く速い。
仙術を使わないと心の底から決意したことが、小猫にとっても大きな精神的成長を遂げさせたのだ。
「だから、イッセー先輩はイッセー先輩のやり方で赤龍帝になってください。それを私も望みます」
「小猫ちゃん……」
その言葉に、イッセーは吹っ切れた。
そして、それでようやく自分に何が足りないのか理解できた。
「……部長! 俺、どうすれば
心の底から断言できる。
禁手にいたるには精神的な覚醒が必要とされている。
すなわち、心に大きな衝撃が来ることが必要なのだ。
だから、木場祐斗は復讐心から解き放たれることで禁手にいたれた。
ならば、自分も心を解き放つことで禁手にいたれるはずなのだ。
「……いいわ。それで、何をすればいいの!!」
リアスはそこに一抹の希望をみて、勝機を見出す。
そして、その視線の先、イッセーは真剣な顔で願いを口にする。
「おっぱいを、つつかせてください!!」
所詮、イッセーはイッセーなのだった