ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット 作:グレン×グレン
夏休み明け。それは、学生にとって特に憂鬱な日の一つ。
だが、兵藤邸の住人たちにとってはあまり関係ない日であった。
それは単純な理由だった。
「また来たの?」
「ええ、また来たわ」
レヴィアとリアスがあきれ半分で見つめる先には、非常に豪華な家具や食べ物などの送迎品の山だった。
「ディオドラくんも攻めるねぇ。どうやらこれは本気らしいよ」
「かもしれないけどイッセーのご両親にも迷惑だわ。これ以上続くようなら苦情を言わないと」
冥界から帰還したあの日以来、ディオドラはアーシアにいくつもの贈り物を捧げていた。
愛をささやく手紙から、食事の招待状。さらには映画のチケットまで。
それはもう、財力に有り余るものだからこそできる物量作戦だった。さすがはアスタロト家の次期当主であるというべきか。
同じ金持ちとしてまあわからなくはないという感情を込めながらレヴィアは軽くため息をつく。
そしてその直後。
「あ、アァアアアアシアァアアアアアアア!!!」
そんなイッセーの絶叫が響き渡った。
「イッセー!? いったい何が―」
「大方アーシアちゃんがディオドラに嫁ぐ夢でも見たんじゃないの?」
慌てるリアスを押しとどめながら、レヴィアは適当に食品を見繕うと食べ始めた。
「うんおいしい。腐らせるのもあれだし、今日の朝食はこれにしたら?」
「あなた、余裕ねぇ」
レヴィアにリアスはあきれるが、しかしまあ気持ちはわかる。
なにせアーシアはイッセーにぞっこんだ。そうでもなければそもそも敬虔な信者なのに男女同衾などするわけがない。
そんなことは誰もが知っている。知らないのは当のイッセーだけである。はっきり言って杞憂にもほどがあるというほかない。
「イッセーくんも鈍いねぇ」
「本当だわ。私の気持ちにも少しぐらい気づいてくれてもいいのに……」
二人は同時にため息をついて、とりあえず階段を上っていく。
そしたら、一夏がドタバタしながら降りてきた。
「レヴィア! リアス先輩!! イッセーがいきなり絶叫を―」
「たぶん大丈夫だから落ち着こうか」
慌てる一夏にそう返しながら、レヴィアは視線をその背中に向ける。
そこには、寝ぼけた状態で小猫が抱き着いていた。
「……なつかれたねぇ?」
「あ、ああ。俺もちょっと驚いてる」
「にゃぁ……一夏さん……」
すごく気持ちよさそうな表情で抱き着いている小猫を起こすのも忍びない。というかなぜその体勢を寝ぼけながら維持できる。
そんなことを思いながら、レヴィアは苦笑する。
「どこもかしこもラブコメしてるねぇ。僕もちょっとしたくなってきたよ」
「レヴィアの場合、ラブコメっていうかメイクラブコメだけどな」
「5点」
「厳しい!!」
「ああ、紫藤イリナちゃんのこと? そういえば言ってなかったね」
風紀委員室で、レヴィアはそうあっさりと発言した。
それに、駆け込んだ松田と元浜は白い目を向ける。
「いや、言ってくださいよレヴィアさん」
「全くですよ。おかげで俺たち驚いたじゃないですか」
確かにちょっと悪いことをしたかもしれない。
「紫藤イリナさんって、教会の人でしたよね? こんなところにきていいんですか?」
資料をまとめながら蘭がそういうが、レヴィアはあっさりとうなづいた。
「むしろ遅いぐらいだよ。魔王の妹二人と堕天使総督がいる三大勢力和平締結の地なんだから、教会からも一人ぐらい送った方がいいだろうしね」
「そういうもんか?」
一夏としてはよくわからないが、それにレヴィアは苦笑する。
「そういうもんだよ。政治っていうのは難しいのさ」
そう微妙に辟易した表情で告げるレヴィアは、実際政治の苦しみに振り回されてきたものだ。
それはともかく、実際この地は三大勢力にとって重要な地だろう。
先ほどレヴィアも行ったが、ここは三大勢力が和平を締結した土地だ。ある意味和平の象徴ともいえるこの地は、三大勢力の精神的に重要なはずだ。
しかも、リアスとソーナといった魔王血族が管轄を行っている。そのうえ、その指導役といってもいい地位についているのは神の子を見張るものの総督だ。
天界もしくは教会からも、人員を派遣するのは当然の流れだろう。むしろしなければ天界をよく思わないほかの勢力から非難が出かねない。
そういう意味では、聖剣使いとはいえ一介の聖剣使いであるイリナが担当というのはむしろ問題がある部類だろう
「むしろ人員としては役者不足なぐらいだよ。出すなら位階の高い天使か、枢機卿クラスの聖職者を教師として送り込むぐらいじゃないとだめだと思うけど……」
「それについては心配はいりません」
レヴィアの言葉を遮って、ソーナが風紀委員室に入ってきた。
「あ、ソーナちゃん」
「俺もいますよ、レヴィア先輩」
匙もまた連れ立って入ってきた中、ソーナは眼鏡を持ち上げると苦笑を浮かべる。
「どうやら悪魔の駒の技術を使って転生天使なるものを天界は生み出したようです。ミカエル様直属だそうですよ」
「本当ですか?」
蘭はその言葉に首を傾げた。
割と問題発言をさらりとぶちかましたことは記憶に新しい。
そんな人物が天界のトップの直属とは、ある意味で不安になる選抜だった。
「まあ、エクスカリバーの使い手ともなれば相応の立場になるでしょう。それに、兵藤君の幼馴染らしく問題児ですが悪人ではありませんし」
「さらりとひどいですね、生徒会長」
元浜がその言い様にドン引きするが、しかしソーナの視線は鋭く元浜に突き刺さった。
「貴方もですよ。かつて覗きの常習犯だったことを忘れないように」
「それは大丈夫だよ」
そんなソーナの警告を受け止めるのは、レヴィアだった。
彼女はにっこりとほほ笑むと、悠然と手を組んで言い放つ。
「僕が吸い取ってるからね。大丈夫大丈夫!」
「それもまた問題ですけれど」
辛辣なツッコミが飛んだ。
そんな会話の中、松田はふと疑問に思って匙に声をかける。
「そういえば、転生悪魔ってチェスの駒をベースにしてるよな?」
「ああ、俺もお前も兵士だしな」
「だったら、転生天使もチェスの駒をモチーフにしてんのか?」
「いいえ?」
松田の言葉に答えるのは、ソーナだった。
「転生天使はトランプをモチーフにしているようです。紫藤さんは
「なるほど、一番槍担当なのか」
「たぶんそういう意味じゃないと思うぞ?」
一夏が安直な想像をして、それに元浜が眼鏡を光らせてツッコミを入れる。
そして、元浜はふと首を傾げた。
「そういや、意味といえばちょっと気になることが」
「ん?」
レヴィアが首をかしげるが、そのまま元浜はレヴィアに質問をした。
「なんで織斑と蘭ちゃんは戦車なんですか? 蘭ちゃんはともかく、織斑は騎士のイメージがあるんですが」
それは、何ともなしにかけられた言葉だった。
だが、その言葉に風紀委員室は凍り付いた。
「………ん?」
「あれ? なんだ?」
松田と元浜が慌てて周りを見る中、レヴィアが何か言うよりも早くソーナが眼鏡を持ち上げた。
「そういえば、もうすぐ体育祭ですね」
かなり語気の強い口調だった。
明らかに、話を変えるという強い意志が感じられている。
「風紀委員にもしっかり仕事をしてもらいますので、ちょっと別室で話しましょうか」
「え、いや、その」
「レヴィア」
戸惑うレヴィアに、ソーナはより強い語気で言い放つ。
「……うん、じゃあ行こうか」
それに、レヴィアは珍しく消沈した表情でうなづくとソーナについていった。
「俺、なんかまずいこと言っちゃったか?」
そうとしか考えられないので、元浜は冷や汗を流す。
それを見て、一夏と蘭はため息をついた。
だがそれは、決して元浜を非難するものではない。
むしろレヴィアにあきれているのが半分。そして自己嫌悪が半分だった。
「ちょっと、いろいろあってな」
「すいません。いつか話しますからもうちょっと待ってくれませんか?」
二人して心底申し訳なさそうに言っているのを見せられたら、誰も何も言えなかった。
そんな空気の中、一夏は天井を見上げると、どこか遠くを見る目つきで何かを思いつめる。
「……強く、なりたいよなぁ」
「ですよねぇ」
はあ、と、一夏と蘭は同時にため息をついた。
一夏と蘭が悪魔になった理由は、まあ前作を読んでいただければすぐわかる内容です。あれとほぼ変わっておりません。
あと、ISキャラをいつ出すのかについての説明ですが、基本的にはゲストキャラとして出す方向にしようかと思っております。
著作転生生徒のケイオスワールドで、オリジナルキャラをどいつもこいつも何回も出番を出すようにして出そうとして、数が多すぎて書き切れなかったことを反省し、こちらではキャラの数を極力少なくするための努力と思ってください。それはともかく続編の方ではオリジナルキャラクター出まくってますが、それは作品の都合上仕方ない部分もありますのでご容赦を。