ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット 作:グレン×グレン
そんな日常が続いたあくる日、レヴィア達はリアスたちの部屋に遊びに来た。
いつものことではあるが、最近は体育祭の準備関係などであわただしかったため久しぶりではある。
「ヤッホーみんな! 遊びに来たよー!!」
「あら、ちょうどいいタイミングで来たわね、レヴィア」
リアスはそう告げると、魔方陣を展開して映像を映し出す。
「何々? 映画でも見るの?」
「違うわよ。ほら、若手悪魔の次期当主たちでレーティングゲームをするっていう話があったじゃない?」
「ああ、そうだった」
そう、あの会合に出席した若手悪魔たちで、レーティングゲームを行うという催しが出てきたのだ。
人類統一同盟及び禍の団による襲撃の混乱を収めるためのレクリエーションのようなものだが、次期当主たちはみなやる気に満ち溢れていた。
レヴィアもそのために千冬に予定を開けておくように言っておくほどの念の入れようだ。割と本気で勝ちに来ている。
「それで? 確か最初はサイラオーグくんとゼファードルの戦いだったそうだけど」
「なあ、それ勝負見えてないか?」
一夏がひどいことを言うが、しかしそれはまた事実だ。
下馬評いおける順位は、上から順にサイラオーグ・ネバン・シーグヴァイラ・セーラ・リアス・ディオドラ・ソーナ・ゼファードルである。
一番上と一番下の戦いとか、ちょっと上もひどくないだろうかと少しだけ同情している。
「たぶんあれじゃないか? コテンパンに倒せばそのゼファードルってやつも懲りると考えたとか」
「公開処刑ですね」
元浜の推測に同意しながら、小猫が椅子に座った一夏の膝の上に座る。
あまりの自然な流れについ反応が遅れたが、しかしこれはまたストレートにデレている。
「し、自然すぎて反応が遅れた!?」
「あらあら、小猫ちゃんったら抜け目がないですわね」
一人用の椅子に座られた関係上、まったくもってどうしようもない。
これには蘭はもちろんさすがの朱乃も負けを認めるしかなかった。
「あら、その手があったわね。ならイッセー、膝の上に乗ってもいいかしら?」
「え、ええ? マジですか!?」
「だ、駄目です部長さん! イッセーさんの膝の上は一つしかないんですよ!!」
「ほう? なら私は肩の上に乗ろう」
「いや、待って待ってやめてやめてやめないで胸がぐふふ」
「「ぶっ殺す!!」」
リアスたちが触発されて暴走を開始し、最終的に松田と元浜がブチギレるところまでワンセットな中、レヴィアは素直に映像を確認する。
……一言でいえば、ワンサイドゲームだった。
どちらも上級悪魔の次期当主なだけあり、眷属も含めて優秀な者たちによる激戦だった。
だが、それでもサイラオーグ・バアル眷属が圧倒的だった。
一夏や蘭ならまともに戦えるし、千冬なら数人まとめて相手にすることもできるだろう。だが、数が圧倒的に足りていないというのが難点だった。
さらに恐ろしいことに、サイラオーグはそのレーティングゲームで兵士を運用していない。
仮面をつけたその兵士は何もせず、ほかの眷属たちだけでゼファードルの眷属を撃破していた。
そして、追い詰められたゼファードルは一対一の血統をサイラオーグに申し込み、そしてそれをサイラオーグも素直に受け取る。
……そこからがまさに圧倒的だった。
ゼファードルの魔力攻撃は、威力だけならリアスより上だった。
にもかかわらず、サイラオーグはそれをあろうことか素手で弾き飛ばす。
「………小猫、あれできる?」
「無理。蘭は?」
「絶対無理」
蘭と小猫が戦慄する中、サイラオーグが反撃に移る。
ゼファードルは何重もの障壁を瞬時に展開するが、サイラオーグはそれを素手で破壊した。
そしてそこからは、もはや一方的にもほどがある展開だった。
放つ攻撃は素手ではじき、障壁もまた素手で破壊し殴りつける。
その繰り返しにゼファードルはおびえた表情で降参を宣言し、そしてサイラオーグ眷属は圧倒的な勝利を見せた。
下馬評で大きな差があったとはいえ、これは戦慄するほどだった。
「恐れ入ったよ。……とはいえ、ネバンが相手ならそう簡単にはいかないか」
「そうなんですか?」
レヴィアの言葉を聞いて、イッセーが首をかしげる。
正直あの戦闘能力はコカビエルが相手でも勝ってしまいかねないほどだったが、しかしレヴィアは静かにうなづく。
「ネバンは眷属のほとんどを秘匿している。下馬評はあくまで公開されているメンバーの戦闘能力からくる推測だから、下手をすればあいつが一番強い眷属を持っている可能性があるね」
「ええ。彼女は戦力を秘匿する傾向があるから、ほかの次期当主たちと違って戦力の計算が難しいの」
リアスのことばに、その場のほとんどが息をのむ。
それほどまでに真なるアスモデウスの血は強力ということか。
「それはそれとして、あれが歴代バアルで一番無能といわれながらも次期当主候補に収まった男だよ。松田君や元浜君は覚えておくといいよ」
「え、あれで一番無能!?」
レヴィアの言葉に、松田は目を見開いた。
当然だろう。あんな圧倒的な戦闘をおこなったものが、歴代で一番無能などとあり得ない。
だが、それにアザゼルもリアスもうなづいた。
「そのとおりよ。サイラオーグは、バアル家の特性である消滅を受け継ぐことはおろか、魔力をかけらも持たずに生まれてきた」
「魔力を何より重視する悪魔からしてみりゃ無能以外の何物でもねえ。今のバアル当主は苦虫をかみつぶした気分だろうな」
「あれだけ強いのに? 俺が当主なら喜びそうなもんだけどな」
一夏としては全く理解できなかったが、しかしレヴィアはそれに苦笑する。
「バアル家当主としては憤死ものだよ。彼は一時期サイラオーグを家の恥だの欠陥品だの言ってたぐらいだからね」
「だろうな。だが、それでも次期当主として認められるほどにサイラオーグは力を高めた」
アザゼルはそういうと、ステータス表を展開する。
そこに現れたステータスを見て、何人かは唖然となった。
サイラオーグはサポートやウィザードなどの数値は非常に低いが、パワーの数値だけは天井にまで達している。
二番手であるネバンですらギリギリ半分といったところ。明らかに圧倒的だった。
「因みに、ディフェンスをステータスにするとこうなる」
そういてアザゼルが新たなステータスをつけると、こんどはレヴィアのステータスが天井をあっさり通過してのまま反対側の壁まで到達した。
「俺たちの主すげえ!!」
松田の驚愕も当然だろう。
「しかし、彼ほどの存在ですら蔑視するとは、バアル家は魔力至上主義ですね」
「まあ、代々受け継ぐ才能を全く持ってないものともなれば思うところもあるだろうけどねぇ」
祐斗のため息交じりの評価に、レヴィアは苦笑交じりでフォローを入れる。
「しかし血反吐を吐くほどの修行によって手にいれた格闘技で、サイラオーグくんは次期当主の座を手に入れた。……努力が必ず身を結ぶとは言わないけれど、努力っていうものは実に馬鹿にできないものさ」
「ああ、お前らもよく覚えとけよ」
レヴィアを肯定しながら、アザゼルはそう皆に発破をかける。
「奴は、産まれたときから何度も何度も勝負の度に打倒され、敗北し続けた男だ。華やかに彩られた悪魔の純血種のなかで、泥臭いまでに血まみれの世界を歩んでる野郎だよ」
「だけど、それを乗り越えた彼は間違いなく本物。……レーティングゲームで戦う時は覚悟しておかないと、ゼファードルみたいに終わるよ」
アザゼルもレヴィアも心からサイラオーグを敬意と警戒の視線で見る。
だが、その会話の中に気になる点があった。
「終わる? 私たちは、ディオドラと戦ったらゼファードルと戦うことになるものとばかり思ってたけど―」
「いや、無理ですよリアス先輩」
一夏が、それに対して返答する。
「アイツは心が折れました。少なくとも当分は戦いの場になんて立てないでしょう。……下手したら一生」
「なるほど。教会の戦士の中にもそうなって脱落したものは何人もいた。それほどまでの恐怖を刻まれたということか」
ゼノヴィアが一夏の言葉にうなづき、そして再び戦慄が走る。
「お前らも十分に気を付けておけ。あいつは対戦者の精神もたつほどの気迫で向かっている。あいつは本気で魔王になろうとしているから、そこに妥協も躊躇も一切ないぞ」
アザゼルのその言葉に、全員がうなづいた。
「とりあえず、僕は千冬さんを呼び戻してネバン対策に充てるとして、リアスちゃんはディオドラ対策をどうするんだい?」
「そうね。対決前のランキングはデータによる予想に過ぎないし……」
そういってリアスが考え込んだ次の瞬間だった。
部屋の片隅で、人ひとり分の転移用魔方陣が展開される。
その魔方陣の紋章を見て、レヴィアは嫌そうな表情を浮かべた。
「うわぁ、ついに業を煮やして直接乗り込んできちゃったのかぁ」
そのいやそうな声とともに、さわやかな表情を浮かべた青年が姿を現す。
「ごきげんよう、リアスさん。アーシアに会いに来ました」
ディオドラが、その姿を現したのだった。
レヴィアすごい。
非常にとがったステータス構成のレヴィア。普通こういうタイプは格上を打倒しやすい代わりに格下に足元をすくわれやすいのですが、レヴィアの場合は格上には勝ち目がほぼないけれど格下に倒されることもほぼないというぶっ飛んだステータスに。そもそも格上を一人で倒す気もないから望みどおりです。