ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット 作:グレン×グレン
事態が急変したのは次の日の朝だった。
「リアス先輩から呼び出しって、いったい何なんだ?」
「それが、何でもはぐれ悪魔祓いが出てきたみたいなんです」
「これまた面倒なことだね。このあたりは悪魔の勢力図になって久しいんだけど」
そう言葉を交わしながら、レヴィア達は生徒会室に足早に向かっていた。
早朝、リアスから火急の要件が出てきた。
なんでも、兵藤一誠が悪魔の仕事で家に向かったところ、はぐれ悪魔祓いと鉢合わせたというのだ。
悪魔祓いというのは、教会に属して悪魔を滅ぼす戦士たちのことである。
天使の力を借りて光力をふるう悪魔祓いは、優秀なものならば上級悪魔でも警戒に値する実力を発揮することもある。
敬虔な信徒である彼らは、そうであるがゆえに誠実でありまじめな人物であることが多い。少なくとも善の側の存在であろうとしている者たちが大半だ。
だが、彼らも人間。中には殺戮の快楽の酔いしれ、道を外すものもいる。
そういった者たちの多くは粛清されるが、中には逃げ出して堕天使の庇護下に入る者たちも何人もいるのだ。
どうにもそのうちの一人と出くわしたらしい。
しかも堕天使も何人も関与しているらしい。
数を減らした堕天使にしては相当の規模の事態といえる。これは現地レベルとはいえ警戒に値する状況に違いなかった。
「・・・遅くなって失礼。それで話は?」
生徒会室に入るなり、レヴィアはそう尋ねた。
「とりあえず、いまのところは膠着状態ですね」
そう返すのは、支取蒼那ことソーナ・シトリー。
現レヴィアタン、セラフォルー・レヴィアタンの妹。そしてシトリー家の次期当主である彼女は、ある目的のために駒王学園に転入している。
そして、彼女もまたこの地の悪魔の一人である以上事情は聴いている。。
「あくまで偶発的な戦闘でしたので、こちらとしてもこれ以上のもめ事は避けるべきでしょう。三大勢力の戦争を私たちの勝手な都合で行うわけにはいきませんから」
冷静にそう答えながら、ソーナは資料を提出する。
そこに映っているのは白い髪の神父だった。
「できれば私は相当の報復をしたいのだけれど? だってイッセーが襲われたんだもの」
不機嫌そうな表情を浮かべて、リアスは足を組みなおした。
情愛の深いグレモリーの中でも、特にリアスは情愛が深い人物だ。
イッセーのことも可愛いと思っておりお気に入りであり、それゆえに相当腹に据えかねているのだろう。
「まあ落ち着いて。うかつに事を大きくするわけにはいかなでしょ?」
レヴィアはそういってとりなすが、しかし心中は穏やかではない。
レヴィアにとってもイッセーは可愛い弟分だ。できることなら落とし前はつけさせておきたかった。
「とりあえず、組織の一員として動いているのか独自に動いているのかは調べないとね。まずはそこから判断しないと」
「それについては眷属を動かしています。どうやら独自に動いているようですね」
ソーナの動きは実に素早かった。
つまり、今回の件はあくまで現場による独断。其れならやりようはいくらでもある。
現場で小競り合いの殺し合いが起きることなど日常茶飯事。別段珍しいことでもない。
ましてや新旧魔王の血族があつまっているこの街で事を起こしたのだ。相当の報復をされても独断行動ならどうとでもなるだろう。
「OK。だったら今回の件はリアスちゃんがメインで、僕たちがバックアップに回ろうか。ソーナちゃんは念のため警戒しててよ」
「意外ね。兵藤くんはレヴィアのお気に入いりみたいだし、自分でどうにかするものだと思ったけど」
「人の眷属の報復にでしゃばる気はないよ。まあ、やってくれっていうならやるけど」
そういいながら視線を向けるレヴィアだが、リアスは不敵な笑みを浮かべると立ち上がった。
「結構よ。私の下僕のお礼参りは私がするわ」
そうはっきりと断言してから、リアスはしかし少し顔を曇らせた。
「とはいえ、できれば手助けしてほしいところもあるのだけれど」
「何かしら? 正直、あなたたちだけでも事足りる戦力だと思うけれど?」
ソーナの疑念ももっともだが、しかしリアスが語ったことは別の意味で面倒なところだった。
なんでも、イッセーがその堕天使勢力のシスターと懇意になっていたらしい。
どうも不当な理由もしくは騙された形で堕天使側に入ったらしい。イッセーとしてもできることなら助けたいと思っているようだ。
「話を聞く限り堕天使に与するような子じゃないらしいし、助けられるのなら助けてあげたいのだけれど、そちらは許可してくれるかしら?」
「ああ、そういえばシスターを道案内したとかそんなこと言ってましたね」
一夏も昨日聞いた話を思い出して、詳しく説明する。
「そんなことあったんですか。なんていうか・・・すごい偶然ですね」
「引きが強いというかなんというか。さすがはリアスちゃんの眷属だねぇ」
あきれ半分で蘭とレヴィアが感心し、それを聞いたリアスはほおを膨らませる。
「どういう意味よ」
「言ったとおりだよ。君、レアキャラばかり引き当ててるじゃんか」
リアスの眷属の特性を思い出しながら、レヴィアは軽く笑う。
彼女の眷属は、その来歴だけでいうのならば間違いなく最上級だ。
しかも実力も若手の中では優秀極まりない。間違いなく将来的にレーティングゲームのトップにたてるだろう。
「そういえば、イッセーくんに自分の駒価値伝えてないのかい? あの子、だいぶ落ち込んでたけど」
「・・・そういえばそうね。転生の時に駒は見せたはずなのだけど」
イッセーくんは結構ぬけてるところもあるからねぇ。とレヴィアは苦笑した。
「できれば伝えてやってください。あいつ、結構落ち込んでましたから」
「そうね、わかったわ織斑くん」
リアスが一夏にそう告げたとき、部屋に飛び込んできた人がいた。
その影を見て、蘭はきょとんとした表情を浮かべる。
彼は慌てて飛び込んでくるような類ではなかったからだ。
「あれ? 木場先輩じゃないですか」
「や、やあ五反田さん。・・・部長、大変です」
さらりと挨拶をするのはさすがだが、しかし表情は割と切迫していた。
「・・・兵藤君が、堕天使に襲われました」
レヴィア・聖羅は兵藤一誠のことをよく理解している。
彼は、基本的にはただの一般人だ。
先祖代々さかのぼっても、異形の猪児にもかかわってこなかった生粋の一般人。そんな中に突然神滅具が降ってわいても向こうが困るだろう。
性格は、読んで字のごとし。スケベすぎるのが難点だが、それさえ除けは一つのことにまじめに取り込み、仲間に対しては誠実であろうとする近年そうは見かけない好漢だ。
一度覗きを強行しているので女子からの人気は高くないが、しかしいい側面をちゃんと見てくれているので、普通に話し合う程度のことならば数多い。
そして何より、彼は今時珍しいぐらいの情熱的なパワータイプなのだ。
一度こうすると決心したのなら、上記の特性はすべてその補佐に回る。
・・・つまり、リアスはイッセーを説得できなかったということだ。
「だからって下僕だけで行かせる? また豪快な手段をとってくれるねぇ」
「大丈夫よ。祐斗と小猫がいるなら、たとえ相手が中級堕天使だってどうにかなるわよ」
そういい合いながら二人が見下ろすのは、堕天使レイナーレが連れてきた三人の堕天使だ。
調子に乗っていたのか、上に黙って行動しているということまでぺらぺらとしゃべってくれて助かった。おかげで行動を躊躇する必要性が欠片もなくなったのだ。
これは完璧に人の領地で実験行為を行った堕天使側が悪い。殺されても文句は言えないだろう。
「うん、だけど殺すのはやめておこうか」
「そう? 私としては落とし前はつけておきたいのだけれど?」
バチバチと魔力を漏らすリアスをみて、下級でしかない堕天使たちはガタガタと震えている。
今更になって格の差を突き付けられて、心が折れていたといっても過言ではなかった。
それをかばって両手を前に出したレヴィアがなだめに入る。
「落ち着きなよリアスちゃん。ここはイッセーくんの気持ちも考えてあげないとね」
「イッセーの?」
その言葉に、リアスは何か問題があったかと考えて思い直す。
特にこれまでの悪魔としての対応に問題はなかったはずなのだが・・・。
「・・・血を見たこともない一般人の前で、不用意に殺しをするべきじゃないって話だよ」
「そんなに問題かしら? 死刑にされて当然の行動をしているものしか滅してないのだけれど?」
リアスからしてみれば心底疑問だった。
脱走した挙句人間を襲う悪魔に、自分の領地で実験を無断で行ってる堕天使。
どちらも尋ねるまでもなく滅ぼす対象だ。堂々と見せつけてもむしろ誇らしさしか出てこないが・・・。
「普通の人間はね、目の前で殺しなんてものが行われたらショックを受けるんだよ。そのあたりしっかりと考えて行動しなきゃだめだよ」
そうたしなめてから、レヴィアは廃教会に視線を向ける。
堕天使たちの言っていたことが本当なら、すぐにでも助けに行ってやりたいところだ。
だが、イッセーのことを思うともう少しだけ任せてみたいという感情も沸き上がる。
これはきっと、兵藤一誠の殻を破るチャンスなのだ。
リアスそれは同意見なのか、無言で廃教会を見つめていた。
「あらあら。では、私はこのカラスたちを堕天使たちに引き渡す手続きを行ってまいりますわ」
「お願いね、朱乃。あと、少し心配だからできれば早めに戻ってきて」
「それは心配ないでしょう。だって、一夏くんがいるんですもの」
ニコニコしながら朱乃はさらりと流し、堕天使たちを魔法陣の中に送り込んでいく。
「・・・勝てるかな?」
レヴィアは不安に駆られて尋ねるが、リアスはむしろ自信ありげだった。
「勝つわよ。ええ、必ず」
その確信の理由がわからなくて、レヴィアはそれを聞いてみた。
そして、理由を聞いたら確かに確信できるもんだと納得した。
ああ、それは確かに根拠にしては十分すぎるだろう。