ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット 作:グレン×グレン
全てを語り終え、レヴィアは紅茶を一口飲むとため息をついた。
「思えば、間違いなく人生最大の失態だよ。当時は僕も幼かったとはいえ、うかつなミスで二人を死なせるところだったんだから」
思い出すのも嫌だったのか、レヴィアはとても苦い顔をしている。
それはそうだろう。自分のうかつな行動が原因で二人を死なせたのだ。
悪魔の駒で蘇生させたとはいえ、一度死んだことには変わりない。そのショックは計り知れなかった。
「俺としては、レヴィアさんがそんな失敗したことがあるってのがびっくりだ」
「だろうね。僕もレヴィアさんは基本的に何事もそつなくこなすイメージがあったよ」
元浜と祐斗が信じられないという顔でつぶやくが、しかしそれはほぼ全員の意見ではある。
あのヴァーリですらぽかんとしているといえば、それがどれほどかわかるだろう。
「レヴィア、貴女それしゃべってよかったの?」
「別にいいさ。調べればすぐにわかること、いつかはテレビ番組で取り上げられるぐらいの覚悟をしないとね」
気遣ってくれるリアスにそう答えると、レヴィアはもう一度紅茶を飲む。
「まあねえ。僕だって未熟な時代はあったんだよ。その失敗が取り返しが半分ぐらいつかないかっただけさ」
確かに一夏と蘭は生き返ることで一命をとりとめたが、しかし一度は死んだのだ。
その事実は決して覆らない。レヴィアの人生には、子供じみた我儘で死人を出したというあからさまな失点が刻まれた。
そして、それをレヴィア自身が許すことは一生ないだろう。一夏と蘭との絆が生まれれば生まれるほど、それは消えようのない傷跡となる。
「なあ、レヴィア―」
「ストップだよ、一夏くん」
何か言いだそうとする一夏を、レヴィアは手で制す。
「誰が何と言おうと、僕は致命的な失敗をしでかした。それは一生変わらないし変えちゃいけない」
そう、それはレヴィアにとって致命的すぎる失敗。
守る王が守ろうとしたものを己の不手際で失った。それは誰が何と言おうとレヴィアにとって取り返しようのない失態に他ならない。
だからこそ、レヴィアはより執念をもって守りを固めた。
その結果が、フェンリルの爪からすら他者を守る結界の使い方だった。
それを誇りに、そして恥と思い、レヴィアは静かに全員を見据える。
「皆覚えておくといい。……取り返しのつく失敗は一度ぐらいした方がいいけど、取り返しのつかない失敗は一生心に残る。そんなものない方が人生得だよ?」
そうわざと軽い口調でそういうと、レヴィアはヴァーリを人にらみする。
「特にチンピラは後の社会復帰が大変なんだから、少しはよく考えておくといい、チンピラ」
「………覚えておこう」
普段ならチンピラ呼ばわりで速攻さっきを出すであろうヴァーリだが、なぜか今回は静かだった。
「ヴァーリの奴、なんか様子がおかしいな」
「そりゃ大絶賛育ての親裏切ってるからな。思うところあんだろ?」
「聞こえてるぜい?」
松田とイッセーのボソボソ話に、美猴がさらりとツッコミを入れる。
とはいえ、これで話はまとまった。
「チンピラなんかの力を借りるのは腹立たしいけど、人の恥部まで話してやったんだからせいぜい肉璧になってくれ」
「ふむ、興味深い話を聞いた代金位は支払うべきだな」
……普通に殺気が大量に放たれているが。
それはともかく、その後の準備は急速に進んでいった。
イッセー達は龍王ミドガルズオルムに相談に行き、対策を始めている。
そして、その結果として切り札が到着した。
「これが、ミョルニルかい?」
「ああ。つってもレプリカだがな」
レヴィアにそう答えながら、アザゼルはやれやれと苦笑する。
「にしてもオーディンの奴、そんなもの持ってるならもっと早くばらしてくれてもよかっただろうによ。まったくずるいぜ」
「だろうね。で? 誰が使うんだい?」
そう。それが問題だ。
なにせ、ミョルニルは純粋な心の持ち主でしか使えないといわれている。
欲に生きる悪魔が本来使えるようなものではない。
「まあ、振るえるとしたらイッセーぐらいだろ。さすがにヴァーリに渡すわけにはいかねえしな」
「でもイッセー君の場合、間違いなく単純な鈍器としてしか使えないよね?」
そう。純真ではなく色欲の塊でありイッセーが、ミョルニルを本来の形で使えるかといわれるとまったくもって微妙だった。
「と、とりあえず試してみましょう。誰かが使えることが判明すればそれでいいわけじゃない?」
リアスがとりあえずそういって、話の方向性を決めてみる。
と、いうことでヴァーリチームを除く全員が試してみたが、しかしイッセーぐらいしかまともに持ち上げられるものはいなかった。
必然的にイッセーが使うことになるが、果たしてこれで勝てるのだろうか?
「千冬さんが間に合うかどうかは割とギリギリだし、これ、結構やばくないかなぁ」
「仕方がねえ。こうなったらお前にも来てもらうぞ、匙」
と、レヴィアの不安を解消するためかアザゼルは匙の肩をつかんだ。
「え? お、俺ですか?」
そんなことを言われて驚くのは匙だ。
それはそうだろう。匙の戦闘能力はこの場でいうならば中堅だ。
それがいきなり奥の手的扱いを受ければ混乱もする。
「なに。前からお前に関しては試してみたいことがあったんでな。ちょっとそれを試すために改造……もとい特訓を」
「改造って言った! 改造っていいきってから適当に言いつくろったよこの先生!!」
あまりにも不吉な言葉に匙は涙すら浮かべるが、しかし状況はそれを許さない。
「匙、……がんばれ」
「……頑張ってください」
その被害という名の実験を受けた記憶のあるイッセーと蘭がぽんと肩を置き、匙は絶望の表情を浮かべた。
「た、助けてくれぇえええええ!!! 誰か、か、会長ぅうううううう!!!」
………ドナドナドーナードーナーという歌が、聞こえてきそうだった。
なんというか、もうかわいそうすぎて何も言えない。
何がひどいかというと、本当に状況は危険であるため止めるのも気が引けるということだ。
「……そういえば、イッセー君のドッペルゲンガーを作ったときは学園が大惨事になったね」
「言わないでください。俺、その時は何も悪くないのにひどい目にっ!!」
「いや、俺たちもなぜか殴られたんだけど」
「完璧にまきぞえだよな」
変態四人組がなんというか微妙な空気になる中、ふとイッセーは話を変えるべき思いついたことを告げる。
「そういえばドライグ、アルビオンとは話さないのか?」
本当に何気ない言葉だったが、それにレヴィアは食いついた。
「それは興味深いね。二天龍同士の会話だなんて、録音したら高値で売れるぐらいの貴重なものだろう」
『いや、セーラ・レヴィアタンには悪いが特に話すことはないな。なあ、白いの?』
と、ドライグは同意を求めるようにアルビオンへと問いかける。
『話しかけるな。私の宿敵に乳龍帝などいない』
ものすごい冷ややかな返事が返ってきた。
明らかに怒気が含まれている。それもレヴィアにチンピラ呼ばわりされたときに匹敵するレベルで。間違いなく激怒である。
『ま、待て! 誤解だ!! 乳龍帝と呼ばれているのはあくまで宿主の兵藤一誠だ!!』
ドライグは真剣にそう弁明するが、しかしその返答は冷たいオーラだった。
完全に聞く耳を持たないもののそれだ。
『乳をつついて覚醒し、乳をつついて覇龍から解除だと!? 何をふざけた進化を遂げているのだ、赤いの!!』
『俺だって泣いた! 涙が止まらんのだ!! うぉおおおん!!!』
『うぐっ。どうして、どうして我ら誇り高き二天龍がこんな目に……っ』
号泣する二天龍に、その場にいた者たちは何かを言うことができなかった。
「……アルビオン、また泣いているのか? 兵藤一誠を模したテレビ番組を見ていた時も泣いていたな」
「っていうかなんで見てるんだよそんなの」
ヴァーリの発言に一夏はついツッコミを入れる。
「姉様、暇なんですか?」
「失礼ね、これでもいろいろとしてるにゃん」
姉妹が仲を復活させるかのように会話を始めるぐらい、なんというか緊張感が緩んでしまった。
「……兵藤一誠。すまないが、こういう時はどうやって慰めるべきだろうか?」
「知るか! 俺に聞かれても困るよ!?」
「まったくだよチンピラ。君のところのチンピラ猿が発端なんだから切腹させたらいいんじゃないかな?」
「どさくさに紛れて俺っちを始末しようとしてるんじゃねぃ!!」
もはや戦闘前の会議とは名ばかりの漫才会場と化してしまっていた。