ユーノ・スクライア外伝   作:重要大事

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第10話「狂乱の覇王」

 その世界は、嘗て戦乱に(さら)されていました。

 幾つもの国が乱立し、領土と実りを奪い合い、侵略し合った乱世の時代。

 そんな時代を終わらせるべく、諸国の王達は覇権を巡ってさらに争い、戦乱の規模を大きくして、それでも戦乱の時代からその歴史の終焉(しゅうえん)まで様々な思いを持って生き抜いた人々がいました。

 

 

 

 その世界の名は《ベルカ》―――今はもう歴史の中で名を残すだけの世界。

 

           ≡

 

新歴079年 4月18日

第97管理外世界「地球」

東京都 空座本町 中心街

 

 空座町にある(うなぎ)料理専門店へと訪れたユーノと一護。

 以前から約束していた会食を果たす為に集まった二人は、美味な鰻料理に舌鼓をしつつ、話題は専ら魔導虚(ホロウロギア)関連の事ばかり。今日もユーノを通して得られた 最新情報が一護の耳へと伝わる事となった。

魔導虚(ホロウロギア)が人間を取り込んだ?!」

「恋次さんからの報告によれば、巨大虚(ヒュージ・ホロウ)を素体とした体長60メートル級の魔導虚(ホロウロギア)で、六課の隊長陣も相当手こずっていたとの事です」

「けどよ・・・なんで魔導虚(ホロウロギア)が人間を?」

「これは僕の仮説に過ぎませんが・・・魔導虚(ホロウロギア)が人間を取り込む理由として、()()()()()()()()()()()()()()

「進化だと?」

 興味深い仮説だと思うものの、率直な疑問自体は解消されていない。

 怪訝な顔で見つめる一護を一瞥し、ユーノはうな丼をひと口食べてから、おもむろに語った。

(ホロウ)が無数の魂魄、あるいは同族間同士の食い合いによって強い自我を持ち、やがて進化していくように・・・魔導虚(ホロウロギア)も人間を取り込む事でより強大な『自我』を獲得し成長しようとしているのではないかと思うんですよね」

「つまり人間は、奴らが強い自我を持ったより高次の存在へ進化する為に必要な()()みたいな扱いってわけか」

「いずれにせよ、スカリエッティがどんな目的で魔導虚(ホロウロギア)を作っているのか・・・・・・真の目的を早急に突き止めなければ」

 ユーノの言葉に一護も「そうだな」と共感。鰻重を綺麗に食べ終え、熱々の番茶を啜って口腔内の汚れを漱ぐ。

 やがて、ふと「そういや恋次達の事だけどよ・・・アイツらうまくいってるのか?」と、一護は古き良き戦友(とも)の進捗状況が気になりユーノへ問うた。

「あぁ。それなら大丈夫ですよ一護さん。数日前にも電話しましたけど、至って元気でしたね。六課の子達とも仲良くやれてるみたいですし、僕お手製のプレゼントも送っておきましたから心配は無いかと♪」

「プレゼントねえ・・・昔のお前ならともかく、今のお前が言うとなーんか胡散臭く聞こえるのはどうしてなんだろうな?」

「あ、その台詞恋次さんにも言われましたね。」

 どうやら周りから相当に胡散臭い人間と思われている事が解り、ユーノは今になって若干の焦りと戸惑いを抱いた。

 

           *

 

第1管理世界「ミッドチルダ」

ミッドチルダ西部 R地区 とある採石場

 

 夜分遅くに行われる映画撮影。

 アクション俳優プース・チンネンのキレのある動き数台のカメラへと(つぶさ)に収められる。

「カーット!!」

 激しい戦闘シーンの撮影がひと段落した。

 顔から噴き出した汗を拭い、スタッフからタオルを受け取ったプースに周りは労いの言葉を掛けてくる。

「おつれさまです。ではプースさん、3カット休みです。20分後には撮影再開しますんでお願いしまーす!」

「じゃあそれまでバスの中で休んでるわ」

 疲労した体を今のうちに回復させるべく、移動時に乗って来たバスの方へと向かう。

バスへ乗ろうとした矢先、どこからともなく声を掛けられた。

『・・・アクション映画スターのプース・チンネン氏とお見受けしま』

 暗がりの中で良く見えないが、月光によって僅かに照らし出されたのは、大柄な体躯で獣の様な手足を持つ奇怪な物影だった。

「なんだおまえ?」

 問いかけた次の瞬間―――疾風が駆け抜けるとともに、手刀を振り下ろされた感触を覚えた。

 後に、撮影を再開しようとスタッフが呼びに行ったが、プースは忽然と撮影現場から姿を消し消息を絶ってしまった。

 

 映画の撮影現場から数キロ圏内に位置するF地区。

 世界最強のプロボクサーを目指す筋骨隆々の男、ギデン・サンダースがロードワークに励む。それをサポートするのはギデンのマネージャー兼実の兄・クザンだった。

「いくぞー弟よっ! 俺たち兄弟が力を合わせればお前は最強の男、最強の王になれる!」

「兄さん! オレやるよ! 兄さんとなら何でも出来る気がしてきた!」

「よくぞ言った弟よ! よーしそのまま隣町まで走り込みだ!」

 世界一という輝かしいタイトルを手に入れるべく、今日も血の滲む様な地獄の猛特訓。だが不思議解くにはならない。

 固い絆で結ばれた兄弟の夢へのロード。険しくも二人三脚で走っていくことで、いつか必ず明るい未来が待っている―――そう信じて前へ前へと進み続ける。

『・・・プロボクサーのギデン・サンダース氏とお見受けします』

 唐突に目の前で通せん坊が立ち塞がる。

 自転車を止めたクザン。ギデンも足を止め、怪訝な眼差しで前触れも無く目の前に現れた異様な姿をした怪物の姿と、それが醸し出す異様な圧に動揺する。

「なんだぁ!?」

「貴様は何者だ? 我ら兄弟の夢を阻む物は何人も許さん! 痛い目に遭いたくなければ、今すぐそこを・・・」

 と、クザンがぐだぐだ口上をしていた直後。

 間隙を突いた怪物が懐へと入り込み、腕を強く掴かみかかったと同時にひ弱なクザンの体を力いっぱい投げ飛ばす。

「ぐあああああああ」

 河川敷へと放り投げられたクザン。勢いよく坂を転げ降り、全身を強打したショックで気絶してしまった。

「兄さんッ!! てめえコノヤロウッ!!」

 自分の夢を親身になって応援してくれる優しい兄を理由も無く傷つけた目の前の存在が許せなかった。

 怒りに駆られ、ギデンは豹を彷彿とさせる白い仮面、胸に孔の空いた怪物―――パンテラロードへ渾身の拳を突き立てる。が、鋼鉄の如き頑丈でぶ厚い外皮には鍛え上げた拳も全く通じない。

 我が目を疑い怯んだギデンの腕をパンテラロードは掴み掛かり、軽く叩く程度だが強烈なビンタをお見舞いする。

「ぐあああ」

 パンテラロードからすれば軽く叩いた程度でも、ギデンにとってみれば強烈な一撃には違いなかった。

 圧倒的な力の差を見せつけた末、ギデンへおもむろに近づき、パンテラロードは右手を振り上げながら低い声で呼びかける。

『そんな弱い拳では―――』

 恐怖で全身の筋肉が軋み上がるギデン。

『誰の事も守ることはできません』

 振り上げていた手を、パンテラロードは一気に振り下ろす。

 

 ドンッ―――!

 

 数時間後、救急車で搬送される直前で目を覚ましたクザンは、パンテラロードとともにギデンが自分の前から姿を眩ませていた事に半狂乱したと言う。

 

           ◇

 

4月20日―――

ミッドチルダ中央南駐屯地内A73区画

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 総合司令室

 

 この日、阿散井先遣隊は魔導虚(ホロウロギア)に関する有力な情報を仕入れ、それを機動六課主要前線メンバーへと公開すべく、緊急招集をかけた。

魔導虚(ホロウロギア)の体から特殊な粒子が放射されているですって!?」

 驚嘆するクロノに、恋次は「間違いねえ。こいつは翡翠の魔導死神からの確かな情報提供だからな」と、太鼓判を押し、明確に情報源が誰なのかを口外する。

「とりあえずこれを見て欲しい」

 論より証拠という事で、吉良は早速翡翠の魔導死神こと、ユーノから伝令神機へと送られてきた情報を一旦メインモニターへと映し出す。

 画面を注視した時、複雑な組成式や構造式にも似た図、そして問題の特殊粒子について言及されたミッド文字『LEGION』という単語が目に入る。

「翡翠の魔導死神によれば、魔導虚(ホロウロギア)出現時、この世界ではおよそ検出されない筈の特殊な非物質粒子・・・通称“妖子(レギオン)”が測定されたとの事だ」

「レギオン?」スバルが聞いた事の無い言葉に疑問符を浮かべる。

「マルコによる福音書第五章に登場する悪霊の事だよ。それで、店ちょ・・・じゃなかった! 翡翠の魔導死神はレギオンについてなんて言ってるんですか?」

 うっかり口を滑らせいつもの癖で「店長」と口にしそうになった浦太郎。周りから怪訝な眼差しを向けられた時、取り繕った笑みで何とか誤魔化した。

 吉良は全員に対し、その後もユーノからもたらされた情報について説明を続ける。

「現状分かっているのは、レギオンとは思考や感情の活性化に伴い多く放出される粒子である事。全ての魔導師が持っている魔法の根源に迫る粒子・マギオンを消費する事で生成されるものでもあるという事だ」

「ということは、魔導虚(ホロウロギア)は魔導師が持っているというマギオンを消費してそのレギオンとかいうのを作りだしているんですね」

「せやけど・・・なんやまだイマイチ理解出来へんわ。マギオンとかレギオンとか、翡翠の魔導死神さんはどこでそない難儀な情報を仕入れたのかほんま謎やわ」

 

「やっぱりそうだわっ!!」

 唐突に司令室へと木霊する驚嘆の声。

 居合わせた全員が声の主、シャリオ・フィニーノへ目を転じれば、彼女は嬉々としながら手には一冊の雑誌らしきものが握られていた。

「シャーリー、それは?」当惑の眼差しでフェイトがおもむろに尋ねる。

「今週発売されたばかりの『魔法科学雑誌』の最新号です! 先日アニュラス・ジェイドが発表したばかりの新事実が掲載されたページを読み返したんですけど、その中にマギオンと呼ばれるものに関する記述が載っていたんです!!」

「え・・・本当なの!?」

「どういうことだ? なぜ翡翠の魔導死神は、公にされる以前の新情報を持っていたんだ?」

 疑念を浮かばせる機動六課前線メンバー。そんな折、六課へと入ったとある通信連絡が状況を一変させた。

 

 最初に目を通したのは機動六課ロングアーチ管制官の一人で、平時は機器整備員でもあるアルト・クラエッタ二等陸士だった。

「八神司令、クロノ提督。また妙な事件です」

「どうしたんだ?」

「手掛かり無しの連続失踪事件です。失踪しているのは主に格闘系の実力者。一昨日は映画俳優とプロボクサーが失踪したという報せが地上部隊に寄せられたんです」

「それで?」

「失踪した被害者と一緒にいた目撃者によれば、街頭試合を申し込まれた後すぐに気絶してしまい、目を覚ますといつの間にか犯人と一緒に消えていたそうです・・・」

「街頭試合・・・」

 聞いた直後、珍しく眉間の皺を寄せ思考に耽るスバル。彼女はこの事件に何らかの違和感を抱いてならなかった。

「街頭試合とはねぇ。このご時世にも居たんだなストリートファイター! ちなみに、俺の一番好きなのはザンギエフだけどな!」

「それって悪役でしょ先輩。ていうか誰もそんな話興味ないし」

「てめえザンギエフを馬鹿に済んじゃねえぞ! ザンギエフのいないストリートファイターなんざ、スカート捲らねーマチコ先生と同じなんだよ!」

 どうでもいう事に拘泥し怒号を発する鬼太郎。

 その傍らにいながら、スバルは真剣にただ一つの事に対して思考を張り巡らせていた。

(格闘家ばかりを狙った街頭試合・・・・・・こんな事件、前にもどこかで・・・・・・なんなの・・・・・・この胸騒ぎは・・・・・・?!)

 

           *

 

St(ザンクト).ヒルデ魔法学院 初等科・中等科棟

 

 St(ザンクト).ヒルデ魔法学院―――ミッドチルダ首都クラナガンにあるヴィヴィオ達が通う聖王教会系列の魔法学校。良家で且つ魔法資質の高い優秀な少年少女が足繁く通う学び舎は、世間一般的に「エリート学校」と見なされていた。

 

 キーン! コーン! カーン! コーン!

 

 終業ベルが鳴り、生徒達が各々帰路へとつく時間。一人の少女が物静かに校庭の片隅を歩いていた。

 碧銀(へきぎん)の髪を靡かせ、右目が紫で左目が青の虹彩異色の瞳を持つ少女の名はアインハルト・ストラトス(12)―――この学校の中等科に所属する生徒だ。

 そして彼女こそ、古代ベルカ時代にあったシュトゥラ王国の国王「覇王イングヴァルト」の末裔である。

 彼女は校内でも特異な存在だった。物静か気風ながらもどこか近寄り難い雰囲気を醸し出す事から、クラスメイトも積極的な関わりを持たず、彼女自身もそうした行動を起こそうという気が無かった。

 だがしかし、ここ最近はそうした日常にある劇的な変化が訪れた。

 

「アインハルトさぁ―――ん!!」

 真後ろから甲高い少女の声が聞こえてきた。

 おもむろに振り返るアインハルト。小走りで走って来たのは、初等科に在籍する高町ヴィヴィオだった。

「ごきげんよう。ヴィヴィオさん」

「あ、はい! ごきげんよう。すみません、おまたせしました!」

「いえ。私も今来たところですから」

 ほんの一週間前に鮮烈な出会いを果たした二人。

 奇しくもヴィヴィオは、聖王の血をベースにスカリエッティの手により生み出された人造生命体。その彼女が300年の時を経て今を生きる覇王の子孫とこうして巡り合ったのは、何とも数奇な偶然・・・いや、最早必然なのかもしれない。

「ヴィヴィオー! アインハルトさーん!」

「おまたせ~」

「待たせちまったな!」

「あ、リオ! コロナ! バウラにミツオ!」

 そうこうしている間に仲間達が続々と集まって来た。

「もう~バウラが掃除中に遊んだりしてるから、ボクまで先生に叱られる羽目になったんじゃないか!」

「ワリーワリー!!」

「リオとコロナも今日は遅かったね」

「いやー、ゴメンゴメン。日直だったから職員室行ってたんだ」

「コロナさんもお疲れ様です」

「ありがとうございます、アインハルトさん」

 今迄ずっと一人でいるのが当たり前だったアインハルトにとって、今過ごしている時間は大きな転機とも呼べる。年下の後輩達から良く慕われ、彼女自身も不思議と一人でいるよりも決して悪くないという思いに駆られる。

 今迄の生活では満たされないままでいた心の空虚さは、次第にヴィヴィオ達と同じ時間を過ごす日々の中で次第に薄れ、当初は戸惑いがちだった雰囲気にも次第に馴染んできた―――そんな気がしてならなかった。

「おっしゃ! んじゃ六人そろったところで・・・」

「だね! チームナカジマ、今日も練習に・・・」

「「「「しゅっぱ―――つ!!」」」」

「しゅ、しゅっぱーつ・・・」

 ただし・・・ヴィヴィオ達の異様なテンションの高さにだけは未だ馴染めずにいた。

 

           *

 

ミッドチルダ中央区画 クラナガン中央病院

 

 格闘家ばかりを狙った失踪事件について調査をしていた機動六課は、恋次とスバルを派遣し、行方不明となったプロボクサー、ギデン・サンダースの兄で唯一の目撃者でもあるクザンが入院している病院へと足を運んだ。

「それで、襲われた時の状況と言うのは?」

「まるで弟の力を試されているみたいで、こんなデカい体をした豹みたいな顔の怪物だった! おまけに胸に孔も空いていた!」

()()()()()()?!」

 聞いた瞬間、二人は顔を見合わせ驚愕の表情を浮かべるとともに、共通の見解に達している事を確認し合う。

「すみませんが、その豹みたいな怪物の話―――もう少し詳しく説明してもらえませんか?」

 

           *

 

 クザンから得た証言により、失踪事件の根幹に魔導虚(ホロウロギア)が深く関与しているのを突き止めた機動六課は、本格的な調査に乗り出す事にした。

 

           ≡

 

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 総合司令室

 

「やっぱり魔導虚(ホロウロギア)の仕業だったか」

「ストリートファイトが趣味の魔導虚(ホロウロギア)か・・・いったいどんな奴なんだ?」

「豹みたいな顔つきだって言っていましたけど」

 証言を基に作成されたデジタル画像を見ながら悶々とするメンバー。(ホロウ)の特徴を捉えた白い仮面は豹の顔つきそっくりで、胸部には確りと空いた孔がある。

 だが、ここで一つ大きな問題がある。端的に言えば肝心の魔導虚(ホロウロギア)の居場所が(よう)として掴めていないという事だった。

「で、どうやってとっ捕まえる?」

 恋次が難しい顔で思考に耽るメンバーへ妙案は無いかと意見を求めるが、皆首を横に振るか、目を合わせない。

「捕獲も大事ですが、それ以上に優先するのは失踪した人々の救出です」

 真っ当な事を呟くフェイト。確かに彼女の言うとおり、失踪した人々は未だ発見されていない。そればかりか目撃情報さえ出ていないのである。

 やがて、ルキノが人々が失踪したポイントから失踪時刻などを細かくまとめたデータをモニター画面へ表示した。

「ここ数日間で失踪した人々のポイントです。B地区からR地区にかけて範囲が限定されています。そして事件は全て、日没以降から夜明けまでの間に起こっています」

「単に夜の闇に紛れての行動でもないようですね」

「敵には白昼堂々行動できない弱みでもあるのだろう」

「夜行性の魔導虚(ホロウロギア)ッ!」

「なーるほど。つーことは夜活動できて昼間ゴロゴロしてるクズ人間を片っ端からしょっ引いてくればいいって寸法だ!」

「鬼太郎さん、冗談はそれくらいにしてくださいね♪」

 威圧感溢れるなのはの笑みは鬼太郎ばかりか、見る者すべてに異様な恐怖感情をもたらした。

 はやても少々肝が縮んだが、気を取り直しておもむろに席を立ち、集まったメンバーへ大号令を発した。

「ほんなら、機動六課前線一同B地区からR地区のパトロールに出発や!」

「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」

 

           *

 

 こうして機動六課は、事件に関与している魔導虚(ホロウロギア)に関する手がかりを見つけるべく、失踪ポイント付近を徹底的に虱潰しに当たる事にした。

 空の上からはスターズのなのはとヴィータ、ライトニングのフェイトとシグナムが広範囲で捜索する。

「こちらスターズ1、2―――エリアP41からQ07まで異常なし」

『了解。こっちも今のところ異常なし』

『引き続き調査を続行する』

 

 同じ頃、地上での捜査に当たっていた他のメンバーも、順次都内を車で巡回をしながら逐次報告を行う。

「こちら亀井浦太郎。上に同じく異常なし」

『スターズ4、こちらも異常は見当たりません。捜索範囲をもう少し絞ってみます』

 

「ありがとうございましたー」

 失踪現場近くにある商店街で聞き込み調査を行っていたスバルと吉良。

これといった有力は得られないものの、地元住民への注意喚起はまめに行いながら、地道な情報収集を続ける。

「なかなか有力情報は得られませんね」

「まあ夜行性だというからね。昼間活動している人間はそうそう出くわす機会も無いだろうし」

 今回の魔導虚(ホロウロギア)の特徴は主に二つ。夜行性であり、格闘家のような「強い相手」を狙っているという事。

 これらの条件に当て嵌めた時、昼間活動している一般人が襲撃に合う機会は稀有な事例であると言っていいだろう。

「ようスバルー。こんなとこで何やってんだ?」

 そのとき、目の前から歩いてきた一人の女性に突然声をかけられた。

 ボーイッシュな服装にスバルとは真逆の赤毛のショートヘア、スポーツバックを肩からぶら下げた少女が怪訝な顔で彼女を見ていた。

「ノーヴェ!」

「知り合いかい?」

「というより家族です。ノーヴェ・ナカジマって言います」

 偶然にもスバル達の前に現れたのは、JS事件で戦闘機人の一人として事件に大きく関わりながら、その後更正プログラムを経てナカジマ家の養子となったスバルの義理の妹【ノーヴェ・ナカジマ】だった。

「えっと・・・スバル、そっちの人は・・・彼氏か?」

 見慣れない人物、しかも少し陰気で喪服を思わせる衣装に身を包んだ年上の異性と行動を共にする義姉の趣味を一瞬疑ったノーヴェ。

 これを聞いた途端、スバルは顔を真っ赤にして即座に否定した。

「もう~~~ノーヴェったら違うから! この人は吉良イヅルさん、あたしが今担当してる事件で捜査協力をしてもらってる民間協力者さんだよ」

「あぁ・・・その、よろしく。」

「いえ。こっちこそ変なこと言ってすみませんでした。不束な姉ですがどうぞよろしくお願いします」

「ちょ、ノーヴェ! それってどういう意味!?」

「言葉通りの意味だけど何かあるか?」

 絶妙なボケとツッコミだな・・・内心そう思いながら、吉良はこの場に居合わせたノーヴェにもダメもとで聞き込みをする事に。

「ノーヴェと言ったね。最近ここらで格闘家ばかりを襲って誘拐しているっていう事件が発生しているんだけど、何か知らないかい?」

「格闘家ばかりを襲撃!? おいスバル、まさかまたアイツが・・・!」

「違うよ! そんな筈ないって! あの子に限ってそんな・・・それはノーヴェが一番分かってるでしょ?!」

「あの子? スバル、ノーヴェもひょっとして何か知っている事があるのかい?」

 事件の概要を説明した直後、ノーヴェの態度は豹変した。それに呼応するかの様にスバルも彼女が言う事を否定した。

 二人の応酬を見ていて違和感を抱いた吉良は、率直に何を知っているのかと問う。

 すると、観念した様子でスバルが罰の悪そうに今の今まで隠していた事について話をし出した。

「あの・・・吉良さん。実は皆には言おうか言わないかずっと迷ってて・・・・・・言えなかった事があるんですけど・・・」

「えっ。」

魔導虚(ホロウロギア)が街頭試合を申し込んでるってところが気になりまして・・・・・・以前にも今回の事件と似たような騒ぎがあったんです。しかも襲撃者は、まだ12歳の中学生の女の子だったんです」

「中学生の女の子だって!? 待ってくれ、それは何かの冗談のつもりかい?」

「冗談でもなんでもねえ。ぜんぶ本当の事なんっす!」

 スバルに便乗したノーヴェも語気強く彼女言葉に嘘は無いと言い張った。やがて、吉良にも分かるように当時襲撃の被害を受けたノーヴェが詳細を説明した。

「その女の子、アインハルトって言うんですけど・・・・・・そいつはヴィヴィオと同じ学校に通ってる生徒で・・・いろいろと複雑な事情もあって、今はあたしが面倒見てるチームで一緒に格闘技の練習をしてるんです。ちょうどこれからその子達のところへ行く予定だったんです」

「・・・・・・わかった。なら、僕らも一緒に同行させてもらえるかな? 君の言うアインハルトという少女を僕もこの目で確かめたい」

 

           *

 

 ノーヴェの承諾を得た吉良とスバルは、ストライクアーツと呼ばれる格闘技を行う為にヴィヴィオ達が集まっている都内の公民館へ足を運んだ。

 

           ≡

 

ミッドチルダ 中央大4区 公民館・ストライクアーツ練習場(トレーニングスペース)

 

「スバルさん! 吉良さん!」

「あの赤毛のおじさんの知り合いの兄ちゃんだ!」

 子供達からの厚い歓迎に満面の笑みを浮かべるスバル。一方の吉良はややこう言った雰囲気に苦手意識があるのか、終始顔が引きつったまま。

「ヴィヴィオー。元気にしてた?」

「はい! わたしもクリスもすこぶる元気です! それと吉良さん、先日は危ないところを助けていただいてありがとうございます!」

 礼儀正しく元気よくハキハキと事件の時のお礼を口にするヴィヴィオ。

 吉良は固かった表情を若干和らげると、「あれくらいの事は当然だよ。魔導虚(ホロウロギア)を殲滅し、この世界の霊魂を護る事が今の僕たちに与えられた使命だからね」と、返事をする。

「つーわけで。今日はスバル達がお前らの練習を見学するけど、それに気を散らさずしっかり練習に励むこと!」

「「「「「「はいっ。よろしくお願いします!」」」」」」」

 

 ノーヴェ・ナカジマを指導者として結成された【チームナカジマ】は、ヴィヴィオの友人であるコロナ、リオ、バウラ、ミツオ、アインハルトらを加えた全六人構成。

 少数ながらも非常に伸び代が高く潜在能力の塊とされる彼女達の実力はめきめきと上がっており、周りからも一目置かれる存在となっていた。

 二階にある観覧スペースからスバルと一緒に練習風景を眺めていた吉良も、正直これほど熱の籠ったものだとは思っていなかった。

 何よりも驚いたのは、文系のイメージが強いヴィヴィオが想像を上回るハードな格闘技を趣味としているという点だった。

「なのはくんの娘・・・ヴィヴィオは文系でありながら格闘技にも精通していたのか。腕前もなかなかのものだね」

「みんなと練習頑張ってますからねぇー」

 しかし、ここを訪れた本来の目的を忘れたわけじゃない。ヴィヴィオ達の練習を見るかたわら、吉良が目を光らせたのはチームの最年長者たるアインハルトだった。

「・・・あの子がアインハルトかい?」

「はい。この前ヴィヴィオと模擬戦をしてからいろいろあって、今は同じチームのメンバーです」

 現在、彼女はリオと黙々と打ち込みの練習をしており、誰よりも必死そうに技を磨き上げているように思えた。

(・・・まだ粗削りだが、技量は相当なものだな。恐らく、同年代とは比べ物にならないハードなトレーニングを積んでいるのだろう。だが、あの澄んだ瞳の奥に秘めたものはなんだ? 僕にはまるで彼女が何かに()()()()()()()()()()()()()()()

 

 練習の合間、アインハルトは自販機でスポーツ飲料を購入し一息ついていた。

「ちょっといいかな?」

 すると、彼女との接触の機会を窺っていた吉良が頃合いを見計らい、アインハルトへ声を掛けてきた。

 きょとんとした顔つきの彼女が吉良へ怪訝な眼差しを向ける。

 彼女は戸惑っていた。何の因果で顔も名前も知らない男性、しかも黒装束の衣装に身を包んだ男性から話しかけられたのか。

「あの・・・私になにか?」

 率直に問いかけるアインハルト。吉良は終始当惑する彼女の気持ちを考慮しつつ、少しでも距離を縮める為、入念に言葉を選んで話をし出す。

「先ほど君の練習を拝見させてもらったよ。驚いたな。まさか君ほどの歳であれだけ強いとは思わなかった」

「いえ。私はまだ強くなど・・・・・・」

「あの型はなんだい? ヴィヴィオ達の使っていたストライクアーツ・・・だったか。あれとはだいぶ勝手が違っていた様だが」

覇王流(カイザーアーツ)と言います。私にとって覇王流(カイザーアーツ)は、私の存在理由全てです」

 12歳の少女の口から飛び出た重い一言。怪訝する吉良に彼女はその後も覇王流にまつわる話を続けた。

「古代ベルカ諸王時代、それは天下統一を目指した諸国の王による戦いの歴史。その歴史の中に名を刻む『覇王』クラウス・イングヴァルト―――彼は私の祖先であり、私は彼の・・・覇王の身体資質と覇王流、それらと一緒に少しの記憶もこの体に受け継いでいるんです」

「記憶を受け継ぐ・・・?」

 彼女は非常に珍しい『記憶継承者』である。

 記憶継承者は自分以外の人物、親や先祖の受け継いでおり、個人差があるため一概には言えないが、アインハルトの場合―――先祖である過去の王、クラウス・イングヴァルトの記憶や知識、体験した出来事や感情まで様々な事を自分の記憶のように思い出す事が出来るのである。

「かつて覇王こと、クラウス・イングヴァルトは武技において最強を誇った一人の王女・・・後の『最後のゆりかごの聖王』であるオリヴィエ・ゼーゲブレヒトに勝利する事ができませんでした。覇王の血は歴史の中で薄れていますが、時折今でもその血が色濃く蘇る事があります」

「・・・・・・・・・・・・」

「天地に覇をもって和を成せる、そんな『王』であること。私の記憶にいる「彼」の悲願なんです。弱かったせいで、強くなかったせいで、()()()()()()()()()()()・・・・・・守れなかったから」

 ポタポタ・・・。少女の双眸から零れ落ちる涙。物静かだった彼女が覇王について語り出した途端に感情的な態度をとった。

「そんな数百年分の後悔が・・・私の中にはあるんです。だけどこの世界にはぶつける相手がもういない。救うべき相手も守るべき国も世界も・・・・・・!」

「だからストリートファイト紛いの街頭試合を片っ端から申し込んでいたという訳か」

「! な、なぜそれを!?」

 知られたくない自分の中の黒歴史を赤の他人が知っていた事に、アインハルトは酷く動揺した。

「スバルとノーヴェから聞いたんだよ。でも、今の君には君の拳を受け止めてくれる仲間がちゃんといるじゃないか。なにより、君がそれを望んでヴィヴィオ達の傍にいるのがその証拠だと僕は思うよ」

 破顔一笑した吉良は一人辛い思いを抱え込んで苦しんでいる彼女が、どこか自分と通ずるものがあり、無碍に放っておけなかった。

 優しい笑みで言って来た吉良の言葉を聞き、アインハルトは暫しだんまりを決め込んだ。

「すみませんが・・・練習に遅れるので失礼します」

 静かに立ち上がりボソッとした声で呟き、足早に吉良の前から立ち去った。このとき、吉良は彼女から一秒たりとも目を離さす事は無かった。

 

           *

 

 その日の夜、失踪ポイント近郊で機動六課によるある大胆な作戦が決行された。

 

『臨時ニュースです。特定地区における行方不明者捜索中の管理局機動六課は、今夜有力な情報を元に作戦を展開します。一般の方々には日没以降は争い事は勿論、格闘技などのスポーツも控えて頂くようお願いします』

 

           ≡

 

午後10時27分―――

ミッドチルダ西部 B地区 公共魔法練習場

 

 テレビの報道効果もあってか、いつもなら人の気配が疎らに感じられる場所に一般人の姿は無く、居るのは機動六課の囮作戦担当員だけだった。

「おらあああああああああ」

 悪漢に扮した鬼太郎が鉄パイプを振り回し大暴れする。これに便乗するのは同じく囮作戦担当に割り当てられた阿散井恋次、亀井浦太郎の二人。

「吉良さん、これでホントにいいんですよね・・・」

「正直僕にもわからないや」

 囮作戦の様子を近くで見守っていたスバルと吉良は、作戦とは思えない本物さながらの闘争行為に些か不安を募らせる。

「クッソー! ちっとも来ねえじゃえかよ魔導虚(ホロウロギア)のヤツ!」

「やっぱりこの作戦気が触れてるとしか思えないですよ」

 

           ≒

 

数時間前―――

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 総合司令室

 

 失踪事件解決に向け、部隊長・八神はやての口から魔導虚(ホロウロギア)捕獲及び人質救出の為の作戦プランが発表された。

「囮作戦だぁ!?」

魔導虚(ホロウロギア)が夜行性で強い人を狙ってちゅうことが一つの事実なら、敵を誘き寄せて捕まえる以外に私達に出来る事は無いと思います」

「確かに試してみる価値はあるかもしれない」

「おーし! いっちょやってやろうぜ!」

「今夜は長い夜になりそうだね♪」

「待ってください! いくらなんでも危険すぎるような・・・」

魔導虚(ホロウロギア)を捕獲するためとはいえ、仲間同士で模擬戦さながらに暴れるなんて」

 賛否両論の声が上がる。

 無論、周りからこうした反応が向けられる事ははやても容易に想定していた。だからこそ、彼女はとっておきのカードを切る事にした。

「みんな思うところ色々あるようやな。でも大丈夫。なぜならこの作戦は(ホロウ)退治の専門家の方にやってもらうからや!!」

 狡猾さを孕んだ彼女が目を転じたのは他でもない。死神・阿散井恋次だった。

「お、おい待てよ! まさか俺に面倒ごと押し付けるつもりじゃねえだろうな!?」

「だって・・・か弱い乙女を戦場に出すなんて出来る訳ないでっしゃろ?」

「お前のどこがか弱いだぁ!? そう言う科白(せりふ)はもっと塩らしい性格になってから吐け!!」

「恋次さん以外に適任は居ないと思うんですけどー。だって恋次さん、強いんでっしゃろう?」

(このちびダヌキがぁ~~~!!)

 背丈は低くても、はやての腹の中は恋次が思ってるよりも黒かった。

 湧き上がる怒りの感情。吉良は爆発寸前の恋次を宥めるとともに、流れ的に自分も作戦に参加する意思を示した。

「何かあった時は私が全責任を負う。クロノ提督、それで何とかお願い出来んへんか?」

 監査役であるクロノに深々と頭を垂れ懇願するはやて。

 険しい表情のクロノは暫し思考に耽ると、悩みに悩んだ末に苦渋の結論を出した。

「・・・・・・わかった。僕としてもあまり素直に賛同は出来ないが、背に腹は代えられない。今回の囮作戦を許可する」

 

           ≒

 

「行くぜ行くぜ行くぜぇ!」

 振り下ろされる大刀。

 恋次と浦太郎は同時に避け、すかさず恋次が鬼太郎の背後へ回り込んで押さえつけ、浦太郎が動けない鬼太郎の正面へと回り込む。

「ごめん先輩ッ!」

 ゴンッ、ゴンッ。鬼太郎の顔面を容赦なくタコ殴り。

「ぐっほ・・・! ぶっほ・・・!」

 囮作戦と銘打って日頃のストレス発散を込めたパンチは予想以上に痛かった。

「悪く思うなよ!」

 そう言うと、恋次は浦太郎と一緒に鬼太郎の体を力いっぱい投げ飛ばした。

「ノアアアアアアアアアアア」

 投擲され、砂利で覆われた地面に激しく背中を強打。顔を殴られた時以上の痛みが全身を駆け巡った。

「バカヤロウ! 本気で投げる奴があるかよ!」

 

 ピピピピッ・・・。

 ちょうどそのとき、魔導虚(ホロウロギア)出現を検知したという報せが吉良の伝令神機へと入った。

「吉良さん!」

「来るぞっ!」

 スバルと吉良が注意喚起を行った直後、歪んだ亜空間から失踪事件の犯人―――魔導虚(ホロウロギア)・パンテラロードが静かに姿を現した。

『・・・元管理局地上部隊の魔導師、亀井浦太郎氏・その他強者の方々とお見受けします。あなた方にいくつか確かめさせて頂きたい事があります』

 今までの魔導虚(ホロウロギア)には見られない物静かさ。だが醸し出す雰囲気、霊圧は紛れも無く魔導虚(ホロウロギア)で、恋次達は闘争本能を剥き出しにするパンテラロードへ敵意を向ける。

「出やがったか。噂のストリートファイター紛いの魔導虚(ホロウロギア)!」

「何者だてめえは?」

『私はカイザーアーツ正統、ハイディ・E・S・イングヴァルト。『覇王』を名乗らせて頂いています』

(覇王だと・・・―――!?)

(まさか・・・!)

 敵方が名乗り上げた『覇王』の名に周章狼狽する吉良とスバル。

 パンテラロードは相も変わらず覇王らしからぬ禍々しい姿で、恋次達に威圧感をぶつけ続ける。

「『覇王』とは随分と大層な名だな。伊達に強い奴ばかりを狙ってるだけの事はあるな」

「で、その『覇王』様が僕たちの何を確かめたいのかな?」

 浦太郎が問いかけると、鋭い爪の生えた拳をぎゅっと握りしめ、パンテラロードは自らの望みを暴露する。

『あなた方の力と私の力。いったいどちらが強いのかです』

「ほお・・・何の為にだ?」

『―――本当の強さを知り、それを手に入れたいんです』

「はっ・・・・・・。おもしれえじゃねえか」

 俄然やる気に満ち、相手に触発された恋次の闘争心も一気に昂ぶった。

 だが、彼が実際の相手をする事は無かった。戦いの直前、恋次を制止させたのは他でもない吉良だった。

「相手なら僕がする。君は下がっていてくれ」

「吉良? お前いったい・・・」

「どうしても()()と面と向かって話をしたいんだ」

 吉良はこのとき、パンテラロードの正体を看破していた。

 いつもは積極的に前に出ようとしない吉良が自分から前に出る事など極めて稀であり、相応の理由があった。

 彼の瞳から伝わる熱心な思い。それを機微に感じ取った恋次は、ふぅ・・・と、溜息を吐いた。

「―――わーったよ。今回はお前に譲るよ」

 潔く恋次は吉良にその場を任せて鬼太郎達と一緒に後退した。

(吉良さん・・・・・・どうかあの子を助けてあげてください・・・・・・)

 吉良同様、魔導虚(ホロウロギア)の正体が誰であるのかを悟ったスバルは、絶えず不安な眼差しでこの戦況を見守るとともに、吉良の行動一挙手一投足に注目する。

 おもむろに前へ出ると、吉良は覇王を自称するパンテラロードに言葉を投げかける。

「まさか君が魔導虚(ホロウロギア)になるとは驚きだよ。一体何があったんだい・・・()()()()()()

『・・・・・・・・・・・・』

 パンテラロード、もといアインハルトは何も答えず、静かに覇王流の構えをとる。

「話す事は何もない・・・そういう事だね。仕方がない。君がそう言うつもりなら、僕もそれ相応の覚悟は出来ているよ」

 腰に帯びた斬魄刀を手を掛け、ゆっくりと引き抜く。

 対峙する二人を恋次達は固唾を飲んで見守る。

 そしていよいよ、前代未聞―――覇王と死神による戦いの幕が切って落とされた。

 

 刹那、無言のままパンテラロードは高速で疾駆。前方の吉良目掛けて飛び膝蹴りを叩き込む。

「くっ・・・・・・」

 凄まじい衝撃と威力が斬魄刀へ重く圧し掛かる。

 吉良は想像を遥かに上回る力に驚愕するも、辛うじて第一打を受け切った。

 だが、怯んだ吉良にパンテラロードは容赦ない拳打を繰り出し徹底的に攻勢を崩さない。

 ガードの上から何とか攻撃を防ぐものの、魔導虚(ホロウロギア)化したアインハルトの並外れたパワーに吉良は終始驚愕をし続ける。

(脈絡と受け継がれた天性の魔法スキル。そこに(ホロウ)の力を融合する事で得られる圧倒的な破壊力・・・・・・これは思ったよりも危険な力だ)

『今のはほんの小手調べです。次は本気でいきます』

挑発するように唱えた瞬間、パンテラロードは一瞬で吉良の間合に入り込んだ。

「何だと・・・ッ」

「今のは自己加速魔法!?」

(いや違う。今のは紛れもない―――“響転(ソニード)”だ!)

 霊圧を完全にすり抜けて瞬時に相手の間合に入り込むこの高等技法について、吉良はよく知っていた。

 名を『響転(ソニード)』。(ホロウ)の上位種に当たる破面(アランカル)が得意とする高速歩法技。

 死神の瞬歩とも似ているが、それ以前に目の前の魔導虚(ホロウロギア)がこの技を使用するものとばかり思わっていなかった為、吉良はただただ呆然とする。

覇王空破断(はおうくうはだん)

 拳撃と共に強烈な衝撃波を飛ばして攻撃するパンテラロード。吉良は衝撃波に飛ばされながらも何とか持ち堪える。

 息つく暇も無い戦況に終始言葉を失う恋次達。

 防戦一方の吉良はダメージを最小限に抑えると、身も心も変わり果ててしまったアインハルトを見ながら悲痛に満ちた顔つきとなる。

「・・・本当の強さを知り、それを手に入れるか。そのやり方がこれだというのか?」

『否定はしません』

「失踪した人達はどこにいる?」

『ご安心ください。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 霊圧が一際強い場所を確認した際、吉良が見る限り失踪した人々は余す事無くパンテラロードと化したアインハルトの中へと取り込まれ、文字通り彼女の血となり肉となって力を与えていた。

 事実を知った吉良は、悲しそうに目を細め、やがて彼女へ言葉を放つ。

「僕には君の気持ちがわからない。こんな事の為に君自身が汚れる理由は無い。今の君は明らかに正気じゃない」

『私は正気です。そして、今よりもっと強くなりたい』

「だったら何故ヴィヴィオ達の期待を裏切る様なことをするんだ!? 一度は道を踏み外したが、過ちに気付き更正の道を進んでいた筈の君が・・・たとえこの世界に守るべき聖王がいなくても、守るべき国も世界が無くなったとしても、君がそんな風に苦しんでまで強さを求める理由が僕にはわからない!」

「吉良・・・・・・」

 いつになく感情を露わにする吉良の姿が恋次の目に焼き付いた。

『ご厚意痛み入ります。ですが、やはり私にとって確かめたい強さとは―――生きる意味は表舞台にはありません』

 まるで今までの自分を否定するような言動だった。

 魔導虚(ホロウロギア)と化した事で正気を失い狂乱の覇王と化したパンテラロードは、吉良との距離を詰めるどころか、離れた距離で足下に碧銀のベルカ式魔法陣を展開する。

(―――構えた。あの距離で何を・・・するつもりだ・・・!?)

 彼女の行動の真意を必死に考える吉良。

 と、次の瞬間。またしてもパンテラロードが間合いに入り込んだ。

 吉良は咄嗟に飛んでくる拳を紙一重で避けるものの、その拳速は今迄とは比べ物にならないものだった。

(迅い!? 今のは響転(ソニード)覇王流(カイザーアーツ)を組み合わせたものか!)

 などと分析をしている暇すら重大な隙である事に吉良は気付けなかった。僅かな間隙を突いたパンテラロードの正拳突きが吉良の下腹部へと直撃する。

「が・・・・・・ッ!」

 衝撃は体内の内臓に強いダメージを与えた。

『列強の王達を全て斃し、この天地に覇を成すこと。それが私の成すべき事であり、私の生きる意味です』

 言うと、空中高く飛び上がったと同時に吉良目掛けて踵落としを炸裂。

 足下がおぼつかない吉良はどうにかその一撃を避ける事が出来たが、あまりに凄まじい勢いの為、衝撃で地面が陥没した。

『弱い王に生きている価値がありますか? 私にとってはまだ何も、ベルカの戦乱も、クラウスの悲願も、まだ何ひとつ―――終わってなどいないのです』

 独白を続けた末、足下へ再びベルカ式魔法陣を展開する。

 全員が凝視すると、パンテラロードは足から練った力を拳を勢いよく大地へと打ち下ろす事で魔力を放出。離れた距離の吉良を攻撃をする。

覇王断空拳(はおうだんくうけん)

 打ち下ろされた断空は地を這い、射線上に立つ吉良目掛けて飛んで行く。

 次の瞬間、豪快な轟音と舞い上がった粉塵が周囲一帯へと広がった。

「吉良さん!!」

「ウソでしょう!!」

「んなのアリかよ!?」

「吉良ぁ!! しっかりしろ!!」

 あまりに規格外な強さに、終始目を疑う面々。吉良の姿は完全に粉塵の中へと消えた。

『弱さは罪です。弱い拳では・・・・・・誰の事も守れません』

 多量の土煙が舞う様子を静謐に眺めながら、パンテラロードは仮面越しに悲嘆に満ちた声色で呟いた。

 

 

-――「面を上げろ・・・・・・『侘助』」

 

 

 その時、漂う土煙に溶け込むような低い声が聞こえた。

 パンテラロードが目を凝らすと、煙の中から乾いた表情を浮かべる吉良と、数字の『7』を思わせる奇妙な鉤状の刃へと変化した斬魄刀が姿を表した。

『どうして・・・・・・?』

 確かな手応えを感じていた。にも関わらず、吉良は決して倒れずに目の前からゆっくり、ゆっくりと近づいてくる。

(私の覇王流が通じなかった・・・・・・いや、そんな筈はない。この体は間違いなく強いのに、どうして・・・・・・。)

 先ほどまでの彼とは打って変わって、肌は異様に青白く、その気配からは、魂魄の揺らめきが一切感じられない。彼の病的なまでに後ろ向きな雰囲気を、そのまま肉体にも反映させたかのように見える。

 恋次達も吉良の雰囲気の変化に終始肝が冷えた。霊圧は感じられるのだが、驚くほどに静かだ。生命というものをまるで感じさせない、ある意味で確かに『死神』という名にふさわしい空気を纏ったその男は、パンテラロードを見て静かに口を開いた。

「・・・・・・弱さは罪か。どうにも最近の子供はやけに達観しているようだが、君の歳でその境地に達するのは些か早いな」

 言うと、深い溜息を吐いた吉良は、静かに斬魄刀・侘助を構える。

「いいだろう。君が戦いを望むなら、僕もそれに付き合おう。但し、僕は君ほど優しくはない」

 吉良はパンテラロードによって粉砕された瓦礫を片手で持ち上げ、そのままパンテラロードへと投擲する。

 数十キロはあろうかという頑強な石が、まるで発泡スチロールのように軽々と投げ放たれたのだ。

『っ!!』

 パンテラロードが慌てて避けると、地面へと激突した途端、瓦礫は重い音を立てて粉々に砕け散る。

(脆そうな体なのに、予想を遥かに上回る膂力(りょりょく)―――! この人はいったい?!)

 これは一部の者しか知らない秘匿事項である。護廷十三隊三倍体副隊長・吉良イヅルは、十年前の『霊王護神大戦(れいおうごしんたいせん)』で命を落としながら、狂気の科学者・(くろつち)マユリの手によって死体のまま蘇生させられ生き永らえていた。

 彼もまたアインハルト同様に様々なものを背負い、幾本ものの楔に魂を穿たれながら、それでも戦う道を選んだ。

 命すら失った自分の身に残された、ただ一つの矜持(きょうじ)を護る為に。

 

「破道の五十八―――『闐嵐(てんらん)』!」

 パンテラロードにとって意外だったのは、吉良が斬魄刀ではなく鬼道で口火を切った事だ。

 範囲をコントロールしているのか、通常の『闐嵐』よりも細く、その分勢いの増した竜巻がパンテラロードの体に襲いかかる。

 防御を発動させて瓦礫などの飛来は防ぐが、その風の勢いで、身体ごと吹き飛ばされてしまった。

「おいおい吉良のヤツ、前に俺と戦った時よりも強えじゃねえか! あんときとは比べ物にならねえ霊圧だぞ!」

「ていうか吉良さん、あんな怪力だったんですか?」

「恋次さん、どういう事ですか一体!?」

「これにはいろいろ事情があるんだよ。ま、例えあいつがどんな風に変わっちまったとしても俺ら死神のやる事は同じさ。そうだろう吉良?」

 同じ真央霊術院で学び、死神として志を同じくした恋次と吉良。歩み道は違っても、考えた方が真逆でも、彼らが歩みべき道はいつだって一つだった。

 すべては護廷十三隊の死神として―――尸魂界(ソウル・ソサエティ)と現世の霊魂を護る為、それを脅かす敵を討ち滅ぼす為に戦うのだ。

 

 侘助の斬撃を幾度となく受け、徐々に追いつめられていたパンテラロードの顔に焦りが見え始めた。

(強い! 私が今まで戦ってきた中で最も・・・・・・!)

 吉良の実力の程を知らない、見誤っていたパンテラロードは、目の前に立つ死神がこれまで対峙してきたどの個体よりも強い存在だと判断する。

(ここは牽制して隙を突くしか―――)

 そう思った矢先、彼女の身体に異変が生じた。

 突然、全身の筋肉を動かす力が低下し始めたのだ。いや、低下したのではない。肉体そのものの比重が増し体が重くなったのだ。

『これは・・・・・・体が・・・・・・だるい・・・・・・』

「・・・・・・ようやく気付いたか。僕もそろそろだろうとは思っていたけどね」

 溜息を吐く吉良を見て、パンテラロードは意味が解らないという顔を浮かべながら、重くなった体を地に付けた。

「斬りつけたものの重さを二乗に重くする。二度斬れば更に倍。三度斬ればそのまた倍。それが僕の斬魄刀『侘助』の能力」

 目の前のパンテラロードへ吉良は淡々とした口調で説明する。

「君は不用意にも、侘助の斬撃をその体ですべて受けていた。そして、君の体はついに自分の体を支えていられる重さの限界を超えてしまったんだ」

『そんな・・・・・・私はまだ・・・・・・こんなところで負ける訳には・・・・・・』

 必死で体を起こそうと力を入れるが、このとき既に一本の腕にかける比重が数百キロを超えていた為に、パンテラロードは立ち上がる事はおろか、真面に体を動かすことさえ叶わなかった。

「・・・単純な力比べだけなら、僕は君よりもずっと弱いだろう。だが、戦ってきた場数なら君よりもずっと上だ」

『舐めないでください・・・私の体には300年分の戦いの記憶があるんです・・・』

「僕は現役で160年近く戦い続けているよ」

 記憶の中で経験した戦いと、実際に現実を生きて経験した体験は同じようで大きく異なる。吉良は強さへの渇望に固執するパンテラロードを見ながら、生気の籠っていない声色で教唆を与える。

「・・・本当の強さを知り、それを手に入れるのが君の目的だったね。なら教えてあげるよ。君が求めている強さは、本当の強さなんかじゃない。ただ人を傷つけるだけの暴力だ。その暴力をどれだけ求め、振り回したところで、君が目指すべき『覇王』には一歩たりとも近づけない」

『・・・っ!!』

「・・・戦いは英雄的であってはならない。戦いは爽快なものであってはならない。戦いとは絶望に満ち、暗く・恐ろしく・陰惨なものでなくてはならない。それでこそ人は戦いを恐れ、戦いを避ける道を選択する。僕の斬魄刀は、斬りつけたものの重さを増やし続け、やがて斬られた相手は重みに耐えかね地に這いつくばる。そして必ず、侘びるかのように(こうべ)を差し出す。故に、『侘助』」

 言葉の意味ひとつひとつに重みを感じられた。

 パンテラロードは今ようやく、この男に戦いを挑みかかった自分の愚行そのものに気が付いた。

『私は・・・・・・強さの意味をはき違えていた・・・・・・こんな惨めな姿を晒すなどあってはならない。今の私に、弱い王に生きてる価値などありません』

「・・・・・・たとえどれだけ惨めでも、弱くても生きているだけで価値はある。少なくとも僕はそう思うよ」

 自嘲気味に言うパンテラロードに、吉良は更に自嘲の色が深い言葉を口にした。

「本当に価値が無いのは僕だ。だけど、生きる屍となりながらそれでも護廷十三隊にしがみついている僕に出来るのは、価値のあるものを護る事だけだ・・・・・・それだけなんだ」

『何を・・・仰っているんですか? あなたは今、こうして生きているではありませんか?』

「生憎僕は既に死んでいる。でも君は生きている」

 だからこそ、彼は目の前の少女に、どうしても言いたい一つの我儘があった。

「・・・他の全てを無くしたとしても、君が今を生きる『覇王』であるという事実だけは残ってる。例え他の何を奪われようとも、その事実だけは変わらない。だから君はこれからも生きろ。生きて、その上で君の答えを見つけるんだ」

 真摯に自分へと向けられた吉良の言葉。

 それを聞き、パンテラロード・・・いや、アインハルトは、少しだけこの死神を理解できた気がした。

 彼もまた自分と同じ咎を背負っている。彼にとって咎とは世界と自らを繋ぎ止める楔なのだ。

 自らの身に咎を背負い続ける事で、世界との繋がりを保っているのだろう。

 

 程なくして、アインハルトは自らの体に取り込んでいた人間数十人、そして幼生虚(ラーバ・ホロウ)との融合を自力で解いた。

 双眸から零れた涙は手の甲から地面へと滴り落ちる。

 スバルが正気に戻ったアインハルトを優しく抱擁し保護をする。

 一方の吉良は、黙したまま手持ちの侘助を封印状態へと戻し、元の鞘へと納めた。

 

「やはり・・・生きた人間の子供はパワーこそあるものの、心を癒す力が強い為に魔導虚(ホロウロギア)の素体としては不向きなようだな」

 吉良とアインハルトとの戦いの模様を別所で観察していた者がいた。

 自らの足で地上へと赴き、素体であるアインハルトを魔導虚(ホロウロギア)にした張本人―――機人四天王・トーレは空の上からこの光景を眺めていた。

「だがまぁいい。お陰でまたひとつ良いデータが取れた」

 当初の目的とは違う結末にはなったものの、十分な成果は得られたと実感。差し当たっての任務を終えると、トーレはインヒューレントスキル【ライドインパルス】を用いて、その場を瞬時に立ち去った。

 

           ◇

 

 この事件の後、アインハルトは自らの手記に次のような記述を綴っている。

 

 

 自分は、変わらなければならない。

 ただ過去の記憶に縛られて、何も見ずに、何も聞かずに、同じ場所をぐるぐる回る亡霊のような自分から脱却し、こんな自分を受け入れてくれた人達と共に前に進む時が来た。

 その勇気をくれたあの黒衣の男性にもう一度会えた時、私は言いたい。『あなたが護った物には確かに価値があった。だからあなたも胸を張ってください。あなたの成した事は、決して無価値な存在ではありません』と、正面から堂々と告げる為に。

 

 彼女はもう、その歩みを止める事はないだろう。

 現代の覇王は今、新たな時代で新たな仲間とともに動き始めた。

 ゆっくりと、しかし、熱い魂をその身に宿しながら。

 例え、数秒後に世界が終わるのだとしても。

 最期の瞬間が訪れるまで、生き足掻き、胸を張り続ける為に。

 

 覇王が自分に残した覇王流が、古代ベルカの王達が護ってきたモノは、決して無価値ではなかったと―――

 彼らの成した事に確かに価値はあったのだと、世界に証明する為に。

 

 

 

 

 

 

参照・参考文献

原作:久保帯人 『BLEACH 38巻』 (集英社・2009)

原作:都築真紀 作画:藤真拓哉『魔法少女リリカルなのはViVid 1、12巻』 (角川書店・2010、2014)

原作:久保帯人 『BLEACH13BLADEs』 (集英社・2015)

 

 

 

 

 

 

教えて、ユーノ先生!

 

ユ「前回に引き続きスクライア商店の従業員紹介第二回目♪ 今日は亀井浦太郎だ」

「浦太郎は、地球出身の魔導師で、なのは達の三つ先輩に位置する。当時の所属は地上本部首都防衛隊。最前線に立って、防衛ラインを護っていた誰もが認めるエース級の魔導師だ」

「得意魔法は、現在浦太郎しか使い手が確認されていない『水』の魔力変換資質を用いた水流魔法。豊富な技のバリエーションで敵を一網打尽だ」

浦「僕にとっては魔法戦も女の子を口説き落とすのも、例えるなら干潟の釣りと同じだね」

ユ「干潟の釣り?」

 譬えの意味が分からないでいるユーノに、浦太郎は自信満々に解説する。

浦「水の感触を感じながらロッドを振って、水面に近い目線でルアーを操作して、ヒットした魚をすぐ手元まで寄せてくる。この感触は・・・そう! 女の子を抱き寄せた時に感じるおっぱいの感触そのもの!!」

ユ「おいおい・・・魔法の話はどこいったんだよ」

浦「ここからが肝心だよ!! うまいことベッドへと誘い込んだら、次に優しく体をいたわりながら神秘なる園を開拓していくんだ。女の子と一緒に気持ち良くなって、最後の最後にフィニッシュを叩き込む!! あぁ・・・想像するだけでムラムラが止まらない!!」

 いつの間にか猥談へと成り下がった浦太郎の話。

 ユーノは自分を含め、これ以上卑猥な話を聞かされたくなかったので、ちょっとキツメのお灸をすえてやる事に。

ユ「破道の五十四―――『廃炎(はいえん)』!」

 ドカーン!!

浦「ふぎゃああああああああ!!」

 ちょっとお灸を据える・・・・・・だけでは済まない大火力だった。

 

 

 

魔導師図鑑ハイパー!

 

 ハラオウン家・リビングにて―――

 クロノ・ハラオウンと妻エイミィ、義妹フェイト、実母リンディらは子供には決して見せられない極上のホラー映画を鑑賞していた。

『お前の後ろにだぁぁぁ!!!』

エ・フ・リ「イヤアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 臨場感溢れる内容とおどろおどろしい演出に大絶叫する女性陣。一方のクロノはほぼ無表情で映画を見続ける。

 視聴後、女性陣は映画の内容について感想を述べ合う。

エ「いやー。美由希ちゃんから薦められた『お前の後ろだぁ!』、かなりすごかったね」

リ「よくあんな怖い内容を思いつくわねーって、作った人に感心しちゃうわ」

フェ「クロノは怖かった?」

ク「馬鹿を言うな。ユウレイだのお化けだの、あんな得体の知れないものに怖がるなんて、みんな揃いも揃って臆病だな。僕は眼に見えるものしか信じない」

リ「でもそうなると、死神の存在は認めるって事になるわよね?」

 ぐうの音も出ない鋭い指摘に思わず口籠るクロノ。

 

 その日の夜、寝室で眠りに就こうとするクロノだったが―――

ク「・・・・・・・・・・・・」

 今日見たホラー映画の恐怖映像が脳裏に焼き付いてしまった為、目が冴えて一向に寝付けなかった。

ク「ダメだ・・・・・・頭では否定しているのに、身体が恐怖を覚えてちっとも眠れん! 認めない・・・僕は絶対に認めないからなぁぁ!!」

 結局クロノはその日、一睡も出来ずに朝を迎える事となったという。




次回予告

吉「新型の魔力炉『ザックーム』の視察に向ったはやてくんとマリエル技官」
エ「しかし、ザックームは既に機人四天王の手に落ちていた。そして、救出へと向かった僕たちを待ち受ける最悪の事態とは・・・」
ユ「次回、ユーノ・スクライア外伝・・・『ジャハンナム・トラップ』。再びあの人物も登場するのでお楽しみに!」






登場魔導虚
パンテラロード
声:能登麻美子
覇王イングヴァルトの末裔、アインハルト・ストラトスが機人四天王トーレの手によって、幼生虚と融合して誕生した魔導虚。
昼間は普通の人間に戻っているため機動六課に魔導虚として感知されず、夜になると魔導虚となって活動を開始する。アインハルトを素体としている為、魔法の大半は覇王流であるが、破面特有の高速移動能力「響転(ソニード)」を使う事が出来る。
本当の強さを知り、それを手に入れる事を目的に格闘技の使い手を中心とした強い者達に街頭試合を申し込んでは倒した相手ごと体に取り込んでいた。しかし、子供はパワーこそあるものの心を癒す力が強い為、魔導虚の素体に向かないことから吉良との戦いの末、斬魄刀による浄化を受けることなく元の人間に戻った。
名前の由来は、スペイン語で「豹」を意味する「Pantera」と、英語で「覇王」を意味する「Overlord」を組み合わせたもの。
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