ユーノ・スクライア外伝   作:重要大事

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第13話「やさしい拳」

『カレドヴルフ・テクニクス』

 

 第3管理世界ヴァイゼンを中心に活動する総合メーカー。家庭用から業務用まであらゆる魔導機器を開発し、民間では最大手の一角を占める大きなシェアを誇る一大企業である。社外も含めたモーターモービル事業部を持っており、「公的組織向け乗用機」の開発も行っている。

 現在、カレドヴルフ(以後CWと省略)では更なる業績と市場規模拡大を図り、自社製品の採用実績が未だに少ない管理局という大きな市場への食い込みを図っていた。そんな彼らの元に、数年前、彗星の如く現れた一人の天才魔工エンジニアがいた。

 名を【アニュラス・ジェイド】―――その本名は、ユーノ・スクライア。

 

           ≡

 

新暦079年4月27日

第3管理世界「ヴァイゼン」

カレドヴルフ・テクニクス本社開発センター

 

 この日の天候は生憎の雨模様だった。

 だが、アニュラス・ジェイド、ユーノ・スクライアにとっては些末な事だった。今日この日、ユーノは試作品を携えて遠路遥々足を運んだ。

 ユーノが所属する『第1魔導機器開発部門』。CW社内でも特に優秀なエンジニアが多く在籍している。

 扉が開かれると、白衣に身を纏った技術者が熱心に仕事に従事しているのが真っ先に目に飛び込んだ。

 と、同時にユーノが部屋へ足を踏み入れた途端、研究員の一人が気付いたのを機にぞろぞろと集まり出した。

「プロフェッサーユーノ!」

「いらっしゃいませプロフェッサー!」

「プロフェッサー!!」

 プロフェッサーとは、CW社内におけるユーノの呼び名だった。

 若くして優秀な考古学者として注目され、「先生」と称されていたユーノは「先生」という呼称の更に上の「教授」という仰々しい呼び名に当初違和感を抱いていた。

 しかし、いくら注意したところで誰も改めようとしない。それどころか、日を追うごとに社内全域で定着していった。

 やがて、それが彼らなりの自分への接し方なんだと理解し、ユーノ自身も注意すること自体が面倒となり、結果的に今の状況を甘んじる事となった。

 喜々として迎え入れる研究員に軽く会釈し、朗らかな表情でユーノは端的な目的を伝える。

「お邪魔します。ウシヤマ主任はどちらに?」

 

「お呼びですか・・・―――ミスター?」

 群がる研究員を掻き分ける、などと言った事も特になく、自然と作られた道を通ってユーノの前に姿を現したツナギに顎髭を蓄えた男―――キンジ・ウシヤマ。何を隠そう、彼はユーノとともに実在しないエンジニアである【アニュラス・ジェイド】の片割れであり、【ミスター・アニュラス】の異名を持つ男である。

「すみません主任。お忙しい中をお呼び立てして・・・」ウシヤマを見るなり、ユーノは躊躇いなく深々と頭を下げた。

「おっと。いけませんなぁ。ここにいるのは全員あんたの手下だ。天下の【ミスター・ジェイド】ともあろうお方が、へりくだり過ぎちゃ示しがつきません。俺たちは皆あんたの下で働けるのを光栄に思ってるんですぜぇ」

「―――アニュラス・ジェイドは、ここの主任(ヘッド)であるあなたや、皆さんがあってこそ存在しえるんです。ウシヤマさんの技術力が無ければ、この短期間で『レペティション・エミッティング・ユニット』の実用化には至りませんでしたよ」

「あぁー、やめやめ。それよか、仕事の話をしましょうや」

 いつもながらこの人は自己評価が低すぎるなー・・・。ユーノを見ながら内心そんな想いを抱えつつ、話題を切り替える事にした。

「オーケーです、ウシヤマさん。今日の試作品はこれです」

 ユーノもそれに答える形で破顔一笑。

 おもむろに左腕の脇に抱えていたジュラルミン状の物質で覆われた小さな箱を取り出し、施錠された鍵を開ける。

 中から出てきたのは、楕円形型で手の平サイズの小さな装置だった。それを見た途端、ウシヤマはもしやと思いながらユーノへと問う。

「もしかして・・・・・・・・・・・・これは・・・・・・『汎用型飛行端末(デバイス)』、ですかい?」

「ええ。ウシヤマさんに作ってもらった試作用ハードに常駐型制御魔法の起動式をプログラムしたものです」

 端的な説明を受け、箱の中に収まった卵程の大きさの端末を手に取り、ウシヤマはまじまじと凝視する。

「テツ、T7型の手持ちはいくつだ?」

「10機です!」

 威勢よく答えた若手研究員の言葉を聞くや、ウシヤマは振り返り、恫喝した。

「バカヤロウォ! 何で補充しとかねえんだ! あるだけ全部持ってこい!!」

「は、はい!!」

 鋭く鬼気迫る語気に委縮した若手研究員は、直ちに保管庫へと向かった。

「おめえらもボケッとしてねえでとっとと準備に取り掛かれ!!」

 その後も、ウシヤマはこの場に居合わせた研究員全員を見渡し、語気の強い言葉で尻を叩いた。

 

「汎用型飛行魔法だぞ! 現代魔導技術の歴史が変わるんだぁ!!」

 

           ◇

 

4月29日―――

第1管理世界「ミッドチルダ」

ミッドチルダ中央南駐屯地内A73区画

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎

 

「恋次さん!! 恋次さん!! 大ニュースなんです!! ちょっとこれを見てください!!」

 休憩中の恋次を見つけるなり、シャリオは何やら嬉しそうに新聞記事を手に抱えていた。

 気が進まないものの、恋次はひとまず印が付けられている箇所の特集記事の見出しに書かれたミッド文字をおもむろに音読してみた。

「『現代魔導技術革新の先駆者! 奇跡の天才魔工技師アニュラス・ジェイドが汎用型飛行魔法の開発に成功!!』・・・・・・・・・・・・って言われてもよ。正直俺にはよくわかんねえんだが」

「恋次さん、これは奇跡!! いえ・・・最早“神の御業”としか言いようがない画期を成す凄い発明なんですよ!」

「どーすげーんだよ? 魔法使いなんだから空飛ぶくらいどうにでもなんだろう」

「アホだな。あたしらの世界じゃ飛行魔法事体かなり高度な技術なんだ」

「予算や本人の資質もさること、飛び続ける為には常時魔法を発動し続けなければならないんです」

 恋次の中で魔法使い=空を飛べるという考えが前提にあった。

 これを傍で聞いたヴィータやフェイトは即座に恋次の考えを否定し、飛行魔法が現代魔法では習得難易度が高いスキルである事を主張した。

 飛行や浮遊による魔法において、一般的に【飛行魔法】と呼ばれる高高度飛行は安全確保や空間把握能力、飛行魔法の安定出力が必要とされ、高高度飛行の養成は時間がかかる。これは飛行魔法を制御する過程が大きく影響していた。

 魔法で飛行する為には、加速と減速、上昇、下降をするたびに新しい魔法を作動中の魔法に重ねがけしないとならない。必要になる事象干渉力はその度に増大していくので、重ねがけは精々十回が限度である。先天的な大魔力保有者を除き汎用型飛行魔法の安定出力が必要とされる為に、現実的に実現不可能な技術である―――というのが今までの定説だった。

「でもでも!! 今回アニュラス・ジェイドはこの定説を180度覆して汎用型魔法型の実現に成功したんです!!」

 喜々として語るシャリオの妙な迫力にやや引き気味の恋次は、体裁を装い「・・・どうやったんだよ?」と、聞いてみた。

「発動中の魔法の発動時点をハードディスクレコーダー機能付きのデバイスに正確に記録させたんですよ」

 質問に回答したのはシャリオではなく、たまたま近くを通りかかった浦太郎だった。

「つまり、デジタルな処理を人間ではなく機械に補完させる事で常駐型飛行魔法を可能にしたんですね」

「へぇー。世の中にはすげーこと考える奴がいるんだな。つーかこう言うのって誰も思いつかなかったのか?」

「頭の良い人というのはそれだけ思考が柔軟って事です。常識に捕われないからこそ、革新的とも言えるアイディアを生み出すいうもんですわ。うちらの同期で頭の柔らかさゆうたらそうやな・・・・・・やっぱしユーノくんに敵う人はまずおらんわな」

「文系と理系もどっちもトップクラスの実力で、デバイスの整備とかもできるし、思考も柔軟だから、案外ユーノなら考えつきそうかもね」

 と、未だ音信不通の幼馴染を本人の居ないところで大絶賛するはやてとフェイト。

 本人が聞いたらどんな反応を示すのだろうか・・・内心そう思いながら、恋次はなのはを含めた美人な幼馴染達の胸中において、存在感を色濃く残すユーノの事が何だか羨ましいと思い始めた。

 

           *

 

第97管理外世界「地球」

東京都 松前町 スクライア商店

 

 今日も日がな一日、ユーノは近所でも評判の良い駄菓子兼雑貨屋の店主としての役目を全うしていた。

「お待たせしました♪ ご注文の品々ですので確認してください」

「いつも悪いわねユーノちゃん」

「いえいえ。お客さまは神様ですから♪ お客さまあらずしてこの商売は成り立ちません」

「本当にアンタって子は今どき見ないくらい健気なんだからー」

 多彩な才能を持つ人間、所謂“天才”と称する人間は世の中には一定数存在する。

 しかし、レオナルド・ダ・ヴィンチに見られる様々な分野において顕著な業績を残し、万能人と言われる“異次元の天才”は指を数えるほど、または殆どいない。

 そうした事からも、若くして語学に科学、魔法、考古学、更には商才を如何なく発揮するユーノはまさにダ・ヴィンチの再来とも言えた。

「毎度ありがとうございます!」

 もっとも、本人は自分を才能ある人間だとは欠片も思っていない。元よりユーノは自己評価が著しく低い。性格的な問題もさること、彼の周りには突出した才能を若くから発揮した幼馴染達の存在が大きかった。

 特に高町なのは―――彼女の天賦の才能振りと自身のスキルを比較した場合、ユーノは自分の中の魔法の才能など凡人程度でしかないと過小評価した。客観的な視点に基づいた時、それが甚だ程度の酷い間違いであると本人が認識する事はなかった。

 

 ピピピッ! ピピピッ!

 懐にしまっていた携帯電話がメールを受信した。

 中身を確かめると、浦太郎から『汎用型飛行魔法の完成おめでとうございます』という端的な内容の祝電が書かれていた。

 ユーノはタッチ画面を操り、『まだ完成とは言えないけど・・・ありがとう』と簡単な文言で返信。

 すると、再び浦太郎からメールが返って来た。

 本文には、『店長、前々から頼んであった例のものを送ってくれましたか?』と、別の話題について触れていた。

 読んだ後、やれやれと今にも言い出しそうな顔を浮かべながら、『今日か明日中には送られると思う。あとで給料から天引きさせてもらうよ』と、釘を刺した文章を返信した。

 そんな折、ふと聞こえた足音にユーノは耳を傾ける。

 音のする方へ目を転じれば、常連客の白鳥が立ち尽くしていた。しかし、その表情はいつになく真剣そのものだった。

「・・・ユーノ店長・・・」

「おやァ。白鳥さんじゃないですか♪ 何か御用・・・」

 扇子片手に飄々と呟いた直後、白鳥はユーノの眼前で唐突に土下座をした。

「頼みがある・・・! 私を鍛えてほしい・・・!!」

「は・・・はい?」

 突然の懇願ゆえにユーノは訳がわからなかった。

 プライドの塊のような男が一切の恥や外聞をかなぐり捨てて土下座をしたその裏にある事情をユーノは思案する。

 

           ◇

 

4月30日―――

第1管理世界「ミッドチルダ」

ミッドチルダ東部12区内 パークロード

 

「ギン姉と一緒の休暇なんてほんと久しぶりだねー♪」

「そうね。進路が別々になるとなかなか一緒の時間合わせるのも大変だもんねー」

 機動六課スターズ分隊所属スバル・ナカジマとその姉ギンガ・ナカジマ―――二人は死別した母、故クイント・ナカジマの月命日である今日、同じ休暇を過ごしていた。

 当初の予定通り墓参りを終え、姉妹は半日ほど残した余暇を満喫すべく市内を散策していた。

「ねえギン姉! このあたりに新しくできたお店にね、イチゴメロンパンっていうのがおいしいパンが売ってるんだって! いっしょに食べよう!」

「はいはい」

 無邪気に子供っぽい笑みを浮かべるスバルに、ギンガは母親が子供を見守るときのような穏やかで優しい表情で笑い返す。

 それぞれが独立し自分達の道を歩み始めても変わる事の無い姉妹の絆。屈託ない笑みを浮かべる二人はこのとき、まだ気づいていなかった。

 平和なひと時を過ごしているこの間にも、自分達に秘かに目をつけ潜伏していた敵―――戦闘機人トーレによる陰謀が進められようとしていたのだ。

 

「タイプゼロ・ファースト及びタイプゼロ・セカンド・・・・・・おまえ達の楽しい余暇は間もなく終わりを告げる。精々今のうちに今生の別れを済ませておくことだ」

 

           *

 

 同日―――機動六課首脳部及び阿散井恋次は、対古代遺物(ロストロギア)関連脅威対策を議題とする会議に出席し、魔導虚(ホロウロギア)や機人四天王との戦闘に関する答弁を行っていた。

 

           ≡

 

時空管理局地上中央本部 大会議室 特別公聴会

 

「時空管理局本局海上司令及び機動六課部隊長、八神はやて二等陸佐」

「はい!」

 正装に身を包み、潔い返事をするとともに、はやては凛々しい表情で登壇。

 眼前に映る地上本部関係者並びに本局や各世界の代表者らが見守る中、はやては臆さず答弁を開始する。

「只今のご質問にございました、新型魔力駆動炉ザックーム壊滅時における戦闘機人の干渉についてですが・・・」

「ふぁ~~~・・・///」

 答弁中誰もが神経を尖らせている中、会議に出席していた恋次はつまらなそうに大欠伸。手持無沙汰を一切隠そうとしなかった。

 隣に座っていたなのはは呆れた様子で小声で恋次に注意を促す。

「恋次さん、ダメですよ。いくら退屈だからってそんなあからさまにあくびなんてかいたら」

「だ、誰もそんなこと言ってないだろう!」

「口には出していなくても態度で直ぐに分かります」

 フェイトから痛い言葉が返ってくる。その後、同席していたクロノが気難しい表情で次のように語った。

「機動六課はただでさえ地上部隊から“金食い虫”だの“情報公開不足”だのと責められているんだ。少しくらいこうやってサービスしないとこちらの活動予算が取れなくなる」

「やれやれ・・・どこの組織も似たり寄ったりかよ」

「仕方ないですよ。それが組織で生きるって事なんですから」

「あぁ~あ・・・どっかのお気楽駄菓子屋店主が羨ましくて仕方ねーぜ」

 

           *

 

第97管理外世界「地球」

東京都 松前町 スクライア商店

 

 恋次からお気楽駄菓子屋店主と揶揄されるユーノは、一護との電話会談、もとい近況報告の真っ最中だった。

『白鳥が修行を申し出ただと?!』

「ええ」

『どういう風の吹き回しだよ。あいつ俺の中じゃそんな熱血キャラじゃ無かったと思ってたんだがよ』

「僕も同じです。理由を聞いても特に答えてくれませんでした。ただ、あんな真剣な眼差しで懇願されたら無碍(むげ)にも出来ません。それに白鳥さんはうちの貴重な顧客ですから」

『で、結局面倒見てやることにしたのか?』

「もちろんタダでとは言ってません。修行をつける代わりに店の手伝いをしてくれるのを条件に承諾を得ました♪」

『だとしても、アイツがそこまでガチになる理由ってのが気になる所だよなー・・・・・・ひょっとして()()()()と関係してるんじゃ?』

 あのこと―――と言うワードにはユーノにも心当たりがあった。

 ここでは多くを語る事はしないが、その事件が白鳥礼二にとって一つのターニングポイントになったという点はユーノも一護と同感だった。

「いずれにせよ白鳥さんの能力(チカラ)は今後の魔導虚(ホロウロギア)征伐には欠かせないものとなります。少なくとも、今のうちに力を蓄えておいて損はありません。僕はそう判断しました」

『相変わらず用心深い事だな。わかった、白鳥の事はお前に任せるよ』

ふぅと一呼吸を置く。やがて、一護はトーンをやや低めに変えてから、電話越しにユーノへ尋ねた。

『なぁユーノ・・・そろそろ話してくれてもいいんじゃねえか? お前がどうして四年前のあの事故の後、魔導虚(ホロウロギア)の出現と襲来を予言出来たのかを?』

 問われた直後、ユーノは一護からの問いに同じく低いトーンでおもむろに答える。

「・・・・・・僕は遭遇したんですよ。あの事故の時に―――」

『遭遇?』

「真っ白な空間において『あれ』は僕に語りかけて来ました。いや、言葉などという原始的な手法だけではなく()()()()()と称して僕の頭に直接思考波を送りつけて来たんです。そこに在ったのは明確過ぎる知性。恐らく、彼らは僕らよりも遥かに高い次元―――『時間』と『空間』すら超越する驚異的な知性です。そのとき、僕は見たんです。この世の真理と呼ばれるものの断片を」

『真理だって?』

「彼らが何故僕にそのようなものを見せてくれたのかはわかりません。ここからは僕の仮説となりますが、彼らは僕と言うプローブを通してこの次元世界の行く末を知りたがっているのかもしれません。光と闇、秩序と混沌、生と死、それらが複雑に絡み渦巻き合う世界がどのような顛末(てんまつ)を辿るのか・・・見届けようとしているのかもしれません」

『・・・・・・俺たちの想像すら及ばない知性、言わば“世界の意志”とも呼べる連中によってこの世界は試されている、そう言いたいわけか?』

「ええ。人類がこの先未来を得る資格が有るか否か――――――全てを見届ける為に」

 

           *

 

第1管理世界「ミッドチルダ」

ミッドチルダ東部12区内 パークロード

 

「あーん! ・・・ん~、おいしい~~~♪ この甘くてサクサクした食感、女の子の好みが解ってらっしゃる♪♪」

 出来立てのイチゴメロンパンを賞味するスバルは誰が見ても幸せそうだった。

 隣に座って同じものを食べていたギンガも微笑ましい妹の無邪気な姿を見ながらクスクスと笑みを零す。

「本当にスバルったら美味しそうに食べるんだから」

「だっておいしいんだもん。あ、ねーねー! これ食べたらアイス屋さん行こう! あと、それから・・・!」

「だいじょうぶ。そんなに慌てなくても時間はたっぷりあるわ。のんびり行きましょう」

「あはは・・・ごめんギン姉。でもさ、あたしこうしてギン姉と一緒にいられるのがやっぱりうれしいんだ」

 ややトーンダウンとしたスバルの声。ギンガはしんみりとした顔で語り出したスバルの言葉にじっと耳を傾ける。

「・・・JS事件でギン姉が連れ去られたとき、あたしは我を忘れてギン姉を取り戻そうと必死だった。それからすぐにギン姉と本気で戦って・・・こうしてまた一緒の時間を過ごすことができる・・・・・・それが本当に幸せなんだ」

「スバル・・・。」

「だからこれからもずっと一緒にいようね!」

 純真無垢な曇りない笑みを浮かべ、スバルはギンガの手を取った。

 ギンガは妹の手のひらから伝わる温かい体温、彼女自身の優しさに包み込まれる事がこの上なく嬉しかった。

 若干頬を紅潮させながら、ギンガはスバルに破顔一笑。

「ええ―――もちろんよ」

 

 ドカ―――ン!

 

 突如として起こった大爆発。

 スバルとギンガは我に返るなり、近くで黒煙がもくもくと上がり、ひっきりなしとばかりに爆発する風景を目の当たりにした。

「なに!?」

「今の爆発は・・・!」

「か、怪物だぁぁ!!」

 恐怖を煽る単語を口にしながら逃げ惑う人々。

 爆発の後、スバル達の視界に映ったのは平和な日常を引き裂く諸悪の根源―――魔導虚(ホロウロギア)が闊歩する姿だった。

魔導虚(ホロウロギア)!!」

「ギン姉!!」

「行きましょうスバル!」

 人々の平和と安全を脅かす脅威を排除する為、二人は魔導虚(ホロウロギア)の元へ直行する。

 

           *

 

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 総合司令室

 

「スバルとギンガからの緊急連絡です。ミッド東区パークロードにて魔導虚(ホロウロギア)の出現を確認したとのことです!」

「なんだと!?」

 シャリオからの報告を聞いたシグナムは、苦虫を噛み潰したような顔つきへと変わる。

「主達が留守をしているこんな時にも出るとは・・・・・・了解した。こちらも直ぐに応援を寄こす。二人には出来るだけ敵の注意を惹きつけるよう伝えてくれ」

 部隊長代行役を預かるシグナムは、今いるメンバーの中から応援役としてヴィータと鬼太郎の二人を選出する。

「ヴィータ、桃谷、至急現場に向かってくれるか?」

「おうよ!」

「っしゃー! 俺に任せろ」

 

           *

 

ミッドチルダ東部12区内 パークロード

 

 街に出現した魔導虚(ホロウロギア)・バルバロイは、幼生虚(ラーバ・ホロウ)をそのまま肥大させたような姿をした異形の怪物だった。

 仮面から生えた不気味な触手は目に映る標的を須らく捕え、捕食する。今も目の前で必死で逃げ惑う幼子へと襲い掛かっていた。

『ふははははは・・・さーてと、そろそろ喰うかのう!!』

「いやああ・・・いやああああ!!!」

 背後から迫る不気味な触手が、悲鳴を上げる子供の体を捕えようとした―――次の瞬間。

 

「リボルバー・・・キャノン!!」

 間一髪のところ、現場へ駆けつけたスバルの強烈な打撃が触手へと炸裂。

 小規模の爆発を伴いながらも一緒に居合わせたギンガによって子供は事無きを得た。

「うりゃああああああああ」

 スバルは子供へと襲い掛かったバルバロイ目掛け魔力を込めた回し蹴り全力で叩き込み、勢いよく吹っ飛ばした。

「もう大丈夫だよ! 今のうちに逃げて!」

「うん! ありがとう!」

 無事子供を逃がし、二人は目の前の標的・バルバロイと対峙する。

『ふふふ・・・匂いが・・・するのう・・・頭の足らん、餌の匂いが! ひひっ! ひひひひひひひひっ』

 不気味に笑う魔導虚(ホロウロギア)に軽蔑の眼差しを向けるナカジマ姉妹。

 どんな能力を秘めているのか皆目見当がつかない。得体の知れない敵を注視しながら、ギンガは一歩前に出ようとする。

「スバル。まずは私が出て様子を見てそれから・・・「ギン姉」

 すると、姉の言葉を遮りスバルが言った。

「悪いんだけど、ここは私一人に任せてもらえる」

「え!?」

 いきなりの言葉に戸惑いを露わにするギンガ。

 よく見れば、スバルの瞳はいつものようにただ澄んでいる訳ではなかった。明らかに別の感情が混在していた。

 一言で言えばそれは『怒り』の念。今、スバルは眼前の敵に火を見るより明らかな強い憤りを抱いていた。

「アイツはあんな小さな子にも容赦しようとしなかった。死の恐怖に怯える子供をまるで楽しそうに追い回すあの姿を見て、私は思ったの。コイツだけは私が自分の手で倒すべきなんだって。だから―――私のわがままを聞いてほしい」

 その時、ギンガは強い覚悟を露わにしたスバルを阻む事が出来なかった。それこそ、彼女の()く手を命を懸けて。

 決意を固めたスバルはバルバロイの前に立った。

『ひひっ! ひっ! 先ずはお前からか! え!? 小娘!』

「・・・戦う前にアンタに聞いておきたいことがある」

 低い声を発したスバルは、対峙する敵に向かって問いかける。

「今迄に・・・何人の人を襲ったの? その中に命を奪ったのは何人いた?」

『・・・はて何人かのう。ひひっ。悪いが数までは憶えちゃおらんよ』

「それを・・・一度でも悔いたことはある?」

『・・・愚問じゃのう小娘。儂とてぬしらと同じ心は有る。人間を喰ろうて悔やまぬ日などあるものか・・・今とてそうじゃ・・・先ほどのことを悔いておる・・・! あの幼子の! 恐怖に怯え切った顔を見ながらその五体を喰い損ねたことを!! 悔いておったところだ小娘!!! ひひひひひひひひひひひひひ』

「そっか」

 弁解の余地など微塵も無い。そう判断したスバルは、リボルバーナックルに搭載されたカートリッジを二発ロードし、足下に青く光るベルカ式魔法陣を展開した。

(来るか・・・来い! 来い来い来い! 喰ろうてやるわ!!)

 

 ドンッ―――。鈍い音が響いたと思えば、バルバロイは自身を支える脚の一本が血を吹いてもげている事に気付いた。

「!!」

 驚愕する暇も無く、背後から感じる強い魔力。気付けば、瞳の色が黄色に変化し戦闘機人モードを如何なく発揮させるスバルが拳を突き立てていた。

(迅い!!)

振動拳(しんどうけん)―――!」

 戦闘機人モードとなったスバルが使用する振動破砕の共振波を右手のリボルバーナックルのナックルスピナー周囲に留め、任意対象のみを確実に粉砕する応用技。

 専用愛機マッハキャリバーとの鍛錬と協力によって初めて制御が可能になったスバル・ナカジマ最強の破壊技。

 本来ならば人には決して振るえないこの技だが、異形の怪物・魔導虚(ホロウロギア)であれば話は別。一切の躊躇なく破壊力抜群の拳を炸裂させた。

 爆発が伴うほどの威力だが、スバルは決して臆さず距離を置き、確実に止めを刺すための魔法を構築する。

「マッハキャリバー! ギアエクセリオン!!」

〈Yes Budy〉

 主人からの要求にローラーブレード状に変化した愛機は忠実に答える。

 両脚のブレードに付与されるなのはのフライアーフィンを模した二つの翼。この状態に変化したとき、スバルは魔力と戦闘機人のエネルギーの同時使用が可能となる。

「一撃必倒おぉぉおおおおッ!!」

 威勢のいい声を上げ、かつて自分を絶望から救った恩人・高町なのはの砲撃魔法を自己流にアレンジ、大成させた技を目の前の敵へと叩き込む。

「ディバインぅぅぅううう!!! ・・・・・・バスターぁぁぁあああ!!!」

 

 激しい轟音と魔力爆発。

 青白い砲撃の嵐に呑みこまれたバルバロイの影をスバルは釣目で見つめ、煮え切らない怒りの籠った声で問いかける。

「少しはわかった? 殺されそうになる側の気持ちって言うのが」

 土煙が晴れたとき、スバルとギンガの目に映るバルバロイは多少の傷こそ作るも、未だ余力を残した姿だった。

『・・・ひひ・・・なかなかやりよるのう小娘・・・じゃがやはり主は若いなぁ。その一直線さが仇となる』

「今さらそんな負け惜しみ吐くんだ。悪いけど、このまま倒させてもらう」

『・・・小娘が舐めた口を利きよるわ。いいじゃろう・・・そこまで舐められては致し方ないのう。その真っ直ぐな心を今すぐ犯してやろう!!!』

「!!!」

 思わず目を見開くスバルは咄嗟の回避が出来なかった。

 バルバロイの体が突如して破裂したと思えば、触手の一部がスバル目掛けて飛んでき、彼女の腕へと巻き付いた。

「スバル!!」

 懸念したギンガが慌ててスバルの元へと駆け寄ろうとしたが、直後、接近するのを躊躇った。

 本能的に近づいてはならないという危険シグナルがギンガの行動を制止させたのだ。

「・・・す・・・ば・・・・・・る・・・!?」

 一抹の不安を掲げ、恐る恐るスバルへと声をかける。

『・・・何じゃ。儂を呼んだか小娘』

 スバルに巻き付いていた触手が消えた途端、振り返ったスバルの声は先ほど消滅したはずのバルバロイのものへと変貌を遂げ、同時に全身から(ほとばし)る魔力も禍々しいものへと変化していた。

 異様に長く伸びた舌、血色のいい肌は死人の如く真っ白なものへと変わり、愛嬌のある笑顔はこの上も無く不気味と化す。そんな変わり果てた妹の姿を凝視しながら、ギンガはただただ恐怖に怯え立ち尽くす。

 

【挿絵表示】

 

「・・・す・・・スバル・・・・・・あなた・・・」

『・・・何故・・・そう何度も儂の名を呼ぶ・・・? そんなに儂が心配か小娘・・・? そんなに儂が・・・愛しいか小娘?』

 最早スバルとは言えない異形の徒へと変貌を遂げた妹の姿から、ギンガは思わず目を背けたくなった。

 だが直後、異形と化したスバル自らギンガへと接近してきた。

『そんなに儂が愛しくば・・・先ずお前から喰ろうてやろう!!!』

 バルバロイによって体を乗っ取られたスバルに攻撃されそうになった折、応援に駆け付けた鬼太郎が烈火を盾にギンガを護った。

「・・・鬼太郎さん――――――・・・!」

「へっ。間一髪だったぜ!」

「つらあああああああああああ」

 鬼太郎との連携で頭上からヴィータがアイゼン片手にスバルへと殴りかかる。

 スバルの体を奪ったバルバロイは軽快な身のこなしで攻撃を避け、対峙する三人との距離を牽制した。

「ギンガ! 状況を説明しろ! なんでスバルがお前に攻撃してきたんだ!?」

魔導虚(ホロウロギア)はどこだ!?」

魔導虚(ホロウロギア)は・・・・・・スバルに・・・・・・!」

「「な・・・・・・。」」

 ようやく状況を理解し、驚愕を露わにする鬼太郎とヴィータ。

 スバル・ナカジマと融合を果たしたバルバロイは彼女の魔力を糧に、急速な進化を遂げる。その姿を以前とは比べ物にならない強靭かつより禍々しい(ホロウ)のものへと変貌させていく。

『ひひひひ・・・若い血肉・・・(みなぎ)る魔力・・・そして決して折れない屈強な体・・・・・・これぞ正しく儂の求めていたものよ! ひひひひひひひひひひ』

 奪った獲物が極上だった事を実感しつつ、不気味な笑みとともに新たな仮面を形成。

 こうして誕生した新たな魔導虚(ホロウロギア)・ブレイキングシェイカーを遠目から観察していた機人四天王トーレは口元を緩める。

「仲間と融合した魔導虚(ホロウロギア)を手に掛ける事がお前達には出来るか? 否。出来る訳が無い。なぜならお前達は揃いも揃って詰めが甘いのだからな」

 

           *

 

時空管理局地上中央本部 大会議室 特別公聴会

 

「以上の事からも明らかなように、我々機動六課といたしましては国民の安全の確保と・・・―――」

 ブーッ、ブーッ、ブーッ。

「!」

 ロングアーチから届いた緊急連絡。

 『魔導虚(ホロウロギア)出現』という端的な文言で書かれた内容を見るなり、はやては焦慮(しょうりょ)に駆られた顔を浮かべる。

「く・・・ミゼット議長! 現在、東部12区内パークロードにて未確認生命体『魔導虚(ホロウロギア)』による破壊活動が行われています」

 会議に参列していた本局統幕議長ミゼット・クローベルに顔を向け、たった今入って来た情報を踏まえた報告を行う。

「八神はやて以下五名、機動六課正規任務に復帰したく思います!」

 自らの役目を全うすると宣言するはやてを真摯に見つめ、クローベルは静かに首肯する。

「機動六課出動や!!」

「「了解!」」

「おっしゃあ!! 待ってたぜ!!」

 このときを待ちわびていたと言わんばかりの威勢の良さ。秘かに退屈な会議を抜け出す策を練っていた恋次にとって、今回の一報は渡りに船だった。

 会議を途中退席したはやてはクロノ、フェイトの二名を連れて隊舎へ帰還し、なのはと恋次を現場へと向かわせる事にした。

「私たちは一旦隊舎まで戻ります」

「恋次さんはなのはとともに至急現場に向かってもらえますか?」

「おし。わかった」

「任せて、クロノ君」

 

           *

 

同時刻―――

ミッドチルダ東部12区内 パークロード

 

「うおおおおおおおおおおお」

 複雑な思いで目の前の敵にグラーフアイゼンで殴りかかるヴィータ。

 ブレイキングシェイカーに進化した魔導虚(ホロウロギア)は、撃ち込まれる鉄球の悉くを弾き、スバルから奪ったリボルバーナックルから霊圧と魔力を圧縮した弾丸を放つ。

「トライシールド!!」

 飛来する攻撃をギンガはベルカ式魔法陣を模したシールドで回避。攻撃が止んだ頃合いを見計らい、鬼太郎が前方へと飛び出す。

「うりゃああああああああああ」

 火炎を纏った斬撃を繰り出すも、ブレイキングシェイカーは不気味な笑みを浮かべながら真正面から受け止め、何事も無かったように傷ついた箇所を超速再生する。

『無駄じゃ! そのような(なまく)らな攻撃など儂には利かんぞ!!』

「チキショー。厄介なことになったぜ」

「おい鬼太郎、あの下衆野郎からスバルを引き剥がすことはできねえのかよ!? おめえも死神なんだから考えろよ!」

「俺は恋次達みたいな正規の死神とは違うんだよ!!」

『ふふふ・・・知恵を絞っているな! 小娘の中から儂だけを引き剥がす方法を考えておるのだろう!! 残念だが無意味な事よ!! 儂の魂魄融合率は通常の幼生虚(ラーバ・ホロウ)とは比べ物にならぬ! 死神の斬魄刀を用いたところで、この融合が解けることは永劫ない!!』

「そんな・・・・・・。」

 絶望的な一言にギンガは絶句し真っ青な顔となる。

『あとはこれからじっくり一晩かけて儂が此奴の魂魄を! 内側から喰らい尽くすだけのことだ!!』

 そう宣言したブレイキングシェイカーは、スバルから奪ったリボルバーナックルを使い、共振波をスピナー内部に留め、溜めこんだエネルギーを一気に足元へと解き放つ。

「「「ぐああああああああ」」」

 足元から伝導される衝撃。技の性質は周知の通り極めて凶悪だ。敵対する相手の五体のみを確実に粉砕する為に組まれた術式は、一般人より遥かに鍛えられたギンガ、ヴィータ、鬼太郎の体にたちまち深い傷を刻み付けた。

『ふはははははははははは!!!』

 全身血塗れとなって動けなくなった三人を見、虫の息と判断したブレイキングシェイカーが敢えて止めを刺すという事はなかった。

 成り行きで手に入れた極上の体をさらに満喫すべく、甲高い笑いを上げながらその場から失踪した。

 血溜まりが出来るほどの凄惨たる現場。

 ぐったりとするヴィータと鬼太郎の近くで横たわるギンガは、混濁する意識下、一人スバルを思いながら酷く傷つき神経ケーブル剥き出しとなって火花を上げる自身の右腕を見つめる。

「す・・・ば・・・・・・る・・・・・・」

 静かに唱えた直後、ギンガの意識は完全に飛んでしまった。

 

           ≒

 

十年前―――

ミッドチルダ西部 エルセア地方

 

「お姉ちゃん・・・どうしてお母さん死んじゃったの?」

 それは、幼いギンガが幼いスバルから問われた言葉だった。

 最愛の母・クイントを先の戦闘機人事件で亡くして傷心するスバル。母の墓前、クイントから託された形見のリボルバーナックルを手にし双眸には涙を溜めていた。

 ギンガは、自分よりも深い悲しみに苛まれている妹を見つめ、零し欠けた涙を拭ってから妹の問いかけに答える。

「スバル・・・お母さんはね、みんなを守るためにがんばって、それで天国に行ったんだよ」

「ううう・・・お母さん・・・・・・」

 堪えていた思いがとうとう抑え切れなくなった。

 声を押し殺して泣き出すスバルだったが、ギンガがおもむろに手を包み、優しく声をかけて来た。

「ほーら。いつまでも泣いていたら、お母さんに心配かけちゃうよ」

「お姉ちゃん・・・」

「わたし、決めたんだ。お母さんの分まで強くなって、お母さんの意志をつぐんだって。だからもう泣かない」

「・・・・・・うん、わたしもお姉ちゃんといっしょに強くなりたい!」

 固く誓い合った幼い姉妹。片腕ずつ託されたリボルバーナックルを各々の利き腕へと嵌め、その手を互いに取り合った。

「いっしょに強くなろう。あなたとわたしで」

「うん!」

 

           ≒

 

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 医務室

 

「うぅ・・・・・・」

 微睡を終えたとき、おぼろげな視界が徐々に開かれる。

 夢から醒めたばかりのギンガを心配そうに見つめる二人の人物。なのはと恋次が顔を覗き込んでいた。

「ギンガ! 気が付いたんだね」

「なのはさん・・・・・・ここは?」

「見ての通り医務室だ」

 言われて辺りを見渡すと、恋次の言う通り今いる場所は六課の医務室だった。隣に置かれたベッドには自分と同じく負傷したヴィータと鬼太郎がベッドで寝ていた。

「・・・そっか・・・わたしは」

 命こそ助かったものの、突きつけられる現実はあまりに非情だった。

 ギンガは物憂げに顔を下に向け、包帯が巻かれた右腕を空いている左腕でぎゅっと強く握りしめる。

 なのはと恋次は顔を見合わせ、ギンガの気持ちを察しつつ声をかける。

「・・・スバルの事は、私も悔しいよ。まさか魔導虚(ホロウロギア)になるだなんて思ってもみなかった」

「にしても、あの振動拳って奴は洒落にならねえな技みたいだな。何しろお前とヴィータ、鬼太郎の臓物の半分ちょっとが潰れちまってたらしいからな。よく生きてるなって言われてもおかしくねえんだぜ」

「その点に関してはマリーさんとシャマル先生に感謝してもし切れません」

「私やマリーさんだけの力じゃないわ」

 すると、機動六課医務官にして、ヴォルケンリッター湖の騎士・シャマルがギンガの言葉に割って入って来た。

「なのはちゃん達がここへ運び込む前、ある程度のダメージは既に回復していたもの」

「え? じゃあ、誰かが応急処置をしたって事ですか?」

「・・・あれは応急処置なんてレベルじゃない。整復はおろか三人とも既に危険水域を脱した状態だった」

「い、一体誰がそんな事を?」

 吃驚するギンガになのはの口から意外な人物の名が飛び出した。

「翡翠の魔導死神さんだよ」

「え!?」

 数刻前―――瀕死の重傷だったギンガ達の窮地に駆け付け、シャマルとマリエルによる施術を受けるよりも先に、翡翠の魔導死神は三人が直面した生命の危機を脱するのに一役買っていたのだ。

「さっき本人と直接会って話を聞いたわ。医者の私から見ても、彼のトリアージと治療は完璧だったわ。おまけに戦闘機人であるギンガの体質を見極め、鬼太郎さんとヴィータちゃん、双方の体に合わせた適切な治療を施した。だから私とマリーさんがやったのは引継程度。ほんとびっくりしちゃうわ。ヘタな医者や技術者なんかよりもよっぽどすごいんだもの。もっとも、あのあと直ぐにいなくなっちゃったけど」

「そうですか・・・・・・。」

 九死に一生を得てもなお状況は最悪と言っていい。

 ギンガは魔導虚(ホロウロギア)と融合し、悪の枢軸と化した妹の事を思いながら、自身の不甲斐なさを呪い双眸から涙を零す。

 

(スバル・・・・・・私は・・・・・・あなたを失いたくない・・・・・・!!)

 

           *

 

 トーレは魔導虚(ホロウロギア)化したスバルこと、ブレイキングシェイカーを伴い、ミッド市街地を高所から見下ろしていた。

「ふふふ・・・タイプゼロ・セカンドの力を取り込んだ魔導虚(ホロウロギア)の力はまさに絶大。ドクターの目論みに外れはなかったな」

『足りぬぞ・・・まだこんなものでは足りぬ! より強い魔力を・・・魂を所望する!!』

「ならば、望み通り思うがまま存分に求めるがいい。お前の心を満たす為に。お前に勝てる者などこの世のどこにも居はしないのだからな―――」

 

           *

 

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 総合司令室

 

「スバルに魔導虚(ホロウロギア)が取りつき、その体ごと取り込まれたなんて・・・」

「どうしてこんな事になってしまったんでしょう」

「私のせいです。あのとき私が前に出ていれば、スバルは・・・」

「いや、俺らがもっと早くに駆け付けてれば」

「あたしも同感だ。部下ひとり助けられないダメな上司だ」

 ギンガだけじゃない。鬼太郎もヴィータも、各々が自らの責任と強く感じ自らを非難する。

 司令室に集まったメンバーが見守る中、はやては嘆息を突き、両手を組んだまま渋い表情で語り出す。

「・・・誰のせいだせいじゃないだの、今はぐだぐだ言うてても何も解決せえへん。奪われたものは必ず取り戻す。それが私たち機動六課や」

「問題はどうやって助け出すかだが・・・」

魔導虚(ホロウロギア)がスバルの魂魄と強烈な力で融合している以上、安易に切り離す事はおろか、下手をすれば彼女の命そのものを奪いかねない」

 吉良が最も懸念しているのは、通常魂魄であるスバルと霊体である魔導虚(ホロウロギア)の魂魄を如何にして傷つけずに分離するかである。

 強い力で結びついた魂魄同士を切り離す際、一歩間違えただけでスバルとそれを繋ぐ因果の鎖は完全に千切れ、人間の姿には戻ることおろか、一緒に昇華させてしまう恐れがあった。

 最悪救出できたとしても、後遺症を抱えずにスバルが元の生活を送り続けられるという保障はどこにも無いのである。

「仮に万策持ってして、それでもなおスバルから魔導虚(ホロウロギア)を切り離せなかった場合は・・・どうしますか?」冷静に浦太郎が客観的な意見を吉良に求める。

「そのときは―――スバルを殺すしかない」

「え!?」

「そんな!!」

 吉良の口から飛び出た衝撃的な一言に、なのはとティアナは声を揃えて驚いた。

「吉良さん、いくらなんでも極論なんじゃ・・・!「いや、吉良の言う事は正しい」

 フェイトが慌てて反論しようとした矢先、話に割って入った恋次が吉良の考えに共感を示した。

「死神は死を司る神と名乗っちゃいるが、任務の過程でいつ自分が死ぬかどうかもわからねえ。常に死と隣り合わせ・・・・・・それはお前らだって同じはずだ」

「だけど、それでもスバルを殺すなんて真似は・・・!」

「俺だって願い下げさ! いや俺だけじゃねえ。みんなそうだ! 誰だって仲間を斬り捨てるような事をしたい奴なんざいねえ!! でもな・・・・・・どんなにがんばっても、どんなに足掻いても、どうすることもできねえ事だってある。そんな現実に直面した際お前らはどうする? 希望の無い世界に絶望するか? 何も出来ずに歩みを止めるのか?」

 語気強く問いかける恋次を凝視メンバー。

 直後、恋次は「否っ!!」と口にし、自らの信念からくる言葉を語った。

「どんな運命が待ち受けても俺は絶対に後ろは振り向かねえ。ただ前に向かって進み続ける。たとえ仲間が死ぬことになったとしても・・・・・・その覚悟がお前らにはあるのか?」

 時として仲間の(しかばね)を越えてでも任務を遂行しなければならない。機動部隊で戦うことの意義、覚悟を問いかける恋次の言葉になのは達は押し黙った。

 誰もが口籠り沈黙を破れずにいた(みぎり)、満を持して口を開いたのはギンガだった。

「私は・・・・・・私はスバルを助けたいです」

 全員の注目がギンガへ向けられる。ギンガは周りからの視線を一身に浴びると、曇りない眼で素直な気持ちを語り出す。

「もし恋次さん達の言うようにあの子を助けられないと分かったとしても、それでも私は残酷な運命に抗います。だって、私はあの子のお姉ちゃんですから」

「ギンガさん・・・・・・」

「たとえ1パーセントの可能性がある限り、私は諦めたりなんかしません。絶対にスバルを救ってみせます!」

「うん。私もギンガと同じ気持ちだよ。スバルは私の大事な教え子だもん。かわいい愛弟子を助ける為なら何でもするよ」

「という事ですわ。死神のお二人には悪いですけど、機動六課のメンバーは部隊長の私に似てみんな駄々っ子でわがままなんですわ」

 自嘲しながらもどこか誇らしげに語るはやて。聞いていた恋次は思わず鼻で笑った。

「へっ。違いねえ。とんだ馬鹿ばかりだぜ。だが、俺はそんな馬鹿な奴らを見過ごせない大馬鹿な男でね」

 機動六課という組織において、恋次は認識した。機動部隊でありながらその信念はどこか子供染みており、ただそれでいて決して希望を捨てず巨悪に立ち向かおうとする彼らの前向き且つ力強い結束を。

 彼らなりの覚悟を認めた恋次と吉良はギンガ達の言葉に共感を示し、改めて機動六課と協力する姿勢を貫くことにした。

「意気込んだところ悪いんだが、ぶっちゃけ助けるための具体的な勝算や算段は何ひとつないんだぜ」

 雰囲気をぶち壊すように鬼太郎が痛いところを突いてきた。

 確かに、鬼太郎の言うとおり現状で打開策は無いに等しい。このままではスバルを救い出す事はおろか、魔導虚(ホロウロギア)を倒すことすらままならない。

 隔靴掻痒(かっかそうよう)し、居合わせた者達が苦悶の表情を浮かべていたそのとき―――。

 

『希望はまだ潰えていないさ』

 唐突に聞こえてきた声に反応するメンバー。

 司令室のメインスクリーンに砂嵐が生じたと思えば、次第に映像が安定し、翡翠の魔導死神の顔が映し出された。

「翡翠の魔導死神さん!」

「どういうことですか? 希望は潰えていないって?」

『・・・結論から述べると、君達の仲間を救う手だてが全く無いわけじゃない、という事だよ』

「なんだって!?」

「スバルを助ける方法があるんですね!!」

 喜々として問いかけるなのはに翡翠の魔導死神は「あるにはある」と呟き、その直後注意を促した。

『但し、この方法はある種博打に近い。罷り間違えば仲間を救うことはおろか、自らも命を落としかねない危険な選択肢。それでも君達は仲間を救いたいか?』

「もちろんです」

「たとえ1パーセントしか可能性が無くても、私達は諦めません。仲間を・・・妹を助けられるのなら、この身の事は決して惜しみません!」

『・・・・・・それが君の覚悟と言う訳だね』

 妹を助け出したいという一心を言葉に起こし、ギンガは今の素直な気持ちを真っ直ぐにぶつける。

 翡翠の魔導死神は暫し沈黙に入り逡巡―――やがて、彼女の覚悟と決意を信じてみるという決断を下した。

『相分かった。では、これより具体的な手筈を説明する』

 

           *

 

ミッドチルダ 首都クラナガン

 

『ふはははははははは』

 再び街へ解き放たれたブレイキングシェイカー。

 欲望のまま、手にした力を存分に奮い、恐怖に顔を歪める人々から選りすぐりの魂を喰らわんとする。

 そこへ、急報を聞きつけたスターズ分隊並びに阿散井恋次と吉良イヅルが降り立った。

『ひひひひ・・・獲物がのこのこやってきおったか。おもしろい!! まとめて食ろうてやろうか!!』

「いいか。手筈通りだぞ」

「チャンスは一度だけ。二度は無い」

「「「「はい!」」」」

 返事の後、ギンガは懐から手の平サイズの小さな細長いスイッチの様なものを取り出す。

 それを見つめながら、数分前に翡翠の魔導死神から受けた説明を今一度思い出し、頭の中で反芻させる。

 

 

数時間前―――

機動六課 ミッドチルダ隊舎 総合司令室

 

『―――魂魄に直接埋め込まれた異物質を取り出す方法は二つしか無い。超々高度の熱破壊能力で外殻である魂魄を蒸発させて取り出すか。何らかの方法で魂魄組成に直接介入して強制的に分離させるか。スバル・ナカジマ防災士長を救う為には後者しかない』

 モニター画面を通じて説明を行う翡翠の魔法死神。

 しばらくして、翡翠に輝く転送魔法陣が司令室中央へと浮かび上がり、召喚されたのは異物質を強制的に魂魄から剥離させる装置だった。

『僕が用意したそれを使えば、彼女の魂魄と融合状態にある異物質・・・すなわち魔導虚(ホロウロギア)を強制剥離する事が出来る。もっとも、この方法で魂魄組成に介入できるのは一度切り。チャンスは一度しかない。あとは君達の働き次第だ』

 

 

(スバル・・・・・・今度はお姉ちゃんが助けるから!)

 一度妹の手により救われた命を、妹を救う為に使う。ギンガは決意を胸に、悪しき姿となったスバルと相対する。

「みんな、いくよ!」

「「「「「はい(おう)(ああ)!」」」」」

 なのはの号令を機にスバル・ナカジマ救出及び魔導虚(ホロウロギア)討伐の作戦が開始された。

 最初になのはとティアナがブレイキングシェイカーの左右に立ち、両サイドからの射砲撃を行う。

「スバル!! 私たちで正気のアンタに戻してあげるから!!」

「少しだけ痛いのがまんしてくれる!?」

 足元にミッド式魔法陣を展開、二人は苦々しくも一時の躊躇いと迷いを捨て去り、異形と化したスバル目掛けて攻撃を仕掛ける。

「クロスファイアー・・・シュートォ!」

「エクセリオン・・・バスターッ!」

 右からは正確無比なオレンジの弾幕。左から全てを飲み込む桜色の魔力の奔流が怒涛の如く押し寄せる。

 爆煙から飛び出したブレイキングシェイカーはウィングロードで空中に逃げ、負傷した箇所を即時再生させながら甲高い笑いを浮かべる。

『ははははははははは。甘いわぁぁ!!』

「甘いのはてめぇだ」

 背後へと回った阿散井恋次とヴィータ。

 二人は相手の動きを予測し、中空へ逃れたところを一気に突く為、待ち構えていた。

「「つらあああああああ」」

 蛇尾丸とグラーフアイゼンによる同時攻撃がブレイキングシェイカーを直撃。

 凄まじい衝撃が全身へと加わり、抵抗する間もなくアスファルトへと叩きつけられる。

『ぐっ・・・・・・お、おのれ貴様らぁ!!』

「自壊せよ ロンダニーニの黒犬 一読し・焼き払い・自ら喉を掻き切るがいい。縛道の九、『(げき)』!」

 刹那、完全詠唱によって発動した吉良の鬼道が効果を発揮。ブレイキングシェイカーは赤い光によって動きを封じられた。

『ぐおおおおおおおおおお・・・な、なんだこれは!? 動けん!!』

「今だ、ギンガ!!」

 

「ブリッツキャリバー・・・・・・フルドライブ!」

 

 ギンガの一声を受け、スバルと完全同型のAIユニットを搭載したインテリジェットデバイス《ブリッツキャリバー》はフルドライブモードへ移行する。

 溢れ出す紺色の魔力の波動。白を基調としたギンガのローラーブレードにもスバル同様に一組の翼が施される。

 全魔力を左腕に嵌るリボルバーナックルへと集中。十分に魔力を練った頃合い、ギンガはブレイキングシェイカーの元へ突進する。

「はあああああああああああ」

 魔力と戦闘機人としての力を全て解放し、スタートダッシュを切った。

 持ちうる力の全てを捕われた妹の魂を救い出す、ただ一点のみに主眼を置いたギンガは、翡翠の魔導死神から託された異物質強制剥離装置を起動させる。

 装置の起動によって、ギンガの左腕が特殊な外皮を纏ったものへと変質。全神経を集中させるとともにギンガはブレイキングシェイカーの胸部目掛けて拳を突き立てる。

「スバルゥゥゥウウウ!!!!」

 

 ドンッ―――。

 

 場の空気が重い沈黙に閉ざされる。

 固唾を飲んで見守る中、ブレイキングシェイカーを貫通したギンガの左腕が、中に潜んでいた魔導虚(ホロウロギア)の本体である幼生虚(ラーバ・ホロウ)を外側へと引きずり出す。

「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 スバルの魂魄から引き剥がされた幼生虚(ラーバ・ホロウ)は、即座に吉良の手により処分された。

 やがて、傷口の復元とともに魔導虚(ホロウロギア)化したスバルの肉体から怪物だった時の表皮が剥がれ落ち、五体満足で人間本来の姿を取り戻した。

「スバル!!!」

 ギンガが声を張り上げた直後、スバルは満身創痍でギンガに微笑みかけ、やがて力無くその場に倒れこんだ。

「「「スバル!!」」」

「だいじょうぶか!?」

 慌てて駆け寄るなのは達。ギンガは倒れたスバルを抱きかかえ、安否を確かめる。

「スバル! お願い目を開けて!! お姉ちゃんの声を聴いて!!!」

 震える声で必死に呼びかける。双眸から止め処なく零れ落ちる涙。

 そんなギンガの切実な願いを聞き入れ、スバルはおもむろに意識を取り戻し、ややぼやけた視界に映る姉の姿を見つめる。

「ぎん・・・ねえ・・・」

「よかった・・・・・・ほんとに、よかった・・・・・・///」

 失わずに済んだ妹の命。その手にある確かな温もりを愛おしく感じたギンガは、スバルをぎゅっと抱きしめる。

 怪我の癒えていないスバルには力いっぱい抱きしめるギンガの力加減に少し戸惑ったが、今はそれ以上に優しい姉の温もりを全身で受け入れたいと思った。

 

「ギン姉・・・・・・・・・ありがと・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

参照・参考文献

原作:久保帯人 『BLEACH 16、20巻』 (集英社・2005)

 

用語解説

※1 整復=骨折や脱臼の生じた箇所を、もとの正常な位置になおすこと

※2 トリアージ=最善の救命結果を得る為、多数の負傷者を分別し、治療の優先度を決める事

 

 

 

 

 

 

教えて、ユーノ先生!

 

ユ「今日は機動六課について改めて情報を整理しよう♪」

「JS事件解散後に再編された機動六課の正式名は、『時空管理局本局 特定遺失物管理及び特殊脅威対策班』。古代遺物(ロストロギア)《アンゴルモア》の回収とそれ端に発する通常部署では対処に困る災害、テロ事案を一手に請け負う精鋭の機動部隊だ」

「全体的な構成は前回と殆ど変わっていない。実働部隊である《スターズ分隊》と《ライトニング分隊》、司令塔である《ロングアーチ》から成る。ここに恋次さん達が民間協力者として加わっている形となる」

一「俺思ったんだけどさ、ここの部隊って男女比がものすげー不均一な気がするんだが・・・・・・」

 一護からの鋭い指摘に、ユーノは「ある種仕方のないことなんですよ」と、諦めたように呟いた。

ユ「元々はやてが身内を中心にその友だちを呼び集めて作ったような部隊ですからね。しかも、高いポテンシャルを秘めた魔導師や通信士が女性ばかりっていうのもある意味悲しい話です」

一「じゃあ恋次たちが来ない間、あのエリオって子供はずっと肩身の狭い思いをしてたってわけか・・・・・・」

ユ「エリオかぁ・・・・・・あの子も思春期だからな。いろいろと女性関係で難しい年頃ですね。主にフェイトやキャロとかの接し方で。まさかとは思うけど、あの歳でフェイトと一緒にお風呂に入ったりはしないよなー・・・・・・」

 ユーノが懸念する中、実際の所は・・・・・・読者の皆様のご想像に任せます。

 

 

 

魔導師図鑑ハイパー!

 

配「お届け物でーす」

 配達職員が浦太郎宛てへと届けた郵送物。

 中身を改めると、中には発泡スチロールで梱包されドライアイスでキンキンに冷やされたアイスのカップが出て来た。

浦「キタキタキタきたぁ―――!!! 待っていましたよ♪」

ス「浦太郎さん、これ・・・アイスですか?」

浦「そ。僕の故郷のアイスで『ハーゲンダッツ』っていうんだ♪」

な「ハーゲンダッツって確か、小さくて割と高級なアイスでしたよね? それがどうしてここに・・・?」

浦「わざわざ地球から取り寄せたんだよ。やっぱアイスと言ったらハーゲンダッツでしょ」

 亀井浦太郎はハーゲンダッツアイスが大好物だった。

 ミッドチルダに来てから食べる機会を逸していたが、今回ユーノに頼んで相当数と種類を揃えてもらった。

ス「うわぁー、見てるだけでおいしそうですね~~~!!」

浦「スバルも食べるかい?」

ス「いいんですか!! 是非とも頂きます!!」

 アイス好きのスバルも浦太郎の好意に甘えてハーゲンダッツをひと口。

 バニラアイスを口の含んだ瞬間、今まで味わった事の無い口どけの柔らかさと奥深い味に感慨を受ける。

ス「なにこれ・・・!! こんなに味わい深いアイス今まで食べた事がありません!!」

浦「それがハーゲンダッツなのさ。この味を知ってしまったら、最早普通のアイスは食べれない・・・・・・これで君も晴れて大人の中身入りさ」

ス「浦太郎さん・・・ありがとうございます!! あたしを大人にしてくれて!!」

 アイス好きな二人にしかわからない感動と世界観。

 なのはは苦笑いを浮かべながら、二人を一歩引いた場所から見守った。




次回予告

ユ「ある日、平和な村が謎の寄生生命体に襲われた」
「白き異空間に閉じ込められた鬼太郎とエリオを襲う。魔導虚(ホロウロギア)・マグニアの弱点を探せ!」
「次回、ユーノ・スクライア外伝・・・『霧が来る』。お楽しみに♪」






登場魔導虚
バルバロイ→ブレイキングシェイカー
声:岩田光央
パークロードに出現した魔導虚。幼生虚をそのまま肥大化させた姿をしており、仮面から触手が生えている。
通常の幼生虚より強力な魂魄融合能力を持ち、隙を突いてスバルの体を乗っ取り、彼女の魔力を糧にして「ブレイキングシェイカー」へと進化を遂げた。進化後はスバルの魔法だけでなく戦闘機人でもある彼女の能力を如何なく使い、ギンガ達を追い詰める。
最終的に、翡翠の魔導死神によってもたらされた魂魄間の異物質を取り出す方法を用いたギンガと、なのは達の活躍でスバルから直接幼生虚を強制的に分離させられ、吉良の手によって息の根を止められた。
名前の由来は、ギリシア人の他民族に対する呼称で、「聞きづらい言葉を話す者」または「訳の分からない言葉を話す者」の意を表す言葉から。
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